• SMBC
  • SMBCグループ

三井住友フィナンシャルグループ

文字サイズ

SMBC Group Report 2019 CEOメッセージ

金融の未来を創る 弛まぬ自己改革により、更なる高みを目指します 三井住友フィナンシャルグループ 取締役 執行役社長 グループCEO 太田 純 金融の未来を創る 弛まぬ自己改革により、更なる高みを目指します 三井住友フィナンシャルグループ 取締役 執行役社長 グループCEO 太田 純

2019年4月、三井住友フィナンシャルグループの執行役社長に就任いたしました。
グループCEOとしての私の最大の使命は、これまでの長い歴史で築き上げた事業基盤や強みを確りと引き継ぎ、
SMBCグループをさらに成長・発展させていくことです。
経営にあたっての基本的な方針や、グループとして目指す方向性は不変であり、私自身が先頭に立って、
「最高の信頼を通じて、日本・アジアをリードし、お客さまと共に成長するグローバル金融グループ」という
ビジョンの実現を目指してまいります。

我々が直面している未来

 我々には今、進化が求められています。
 世界では、戦後の何十年にも亘って、グローバル経済が発展を続ける上で前提となってきた資本主義の在り方に、歪みと揺らぎが生じています。とりわけ、これまで米国が主導してきた世界秩序の枠組に綻びが目立つようになりました。米国は自国第一主義へと舵を切り、保護貿易主義に代表される反グローバリズムの動きが急速に広がっています。米国に寄り添ってきた欧州でも、ポピュリズムや反政府運動が勢いを増し、欧州統合の理念であった民主主義や多文化主義が厳しい局面に晒されています。一方、世界経済におけるプレゼンスを高めてきた中国は、独自の国家資本主義に邁進し、経済や先端技術、軍事等を巡る米国との覇権争いは長期化の様相を呈しています。新たな令和の時代は、グローバルなリーダー役が不在の、混沌とした世界の幕開けとなりました。
 国内でも、新しい局面に移りつつあります。随分前から分かっていたことではありますが、本格的な人口減少社会に突入し、今後さらに、国内市場に縮小圧力が強まっていくことが予想されます。今から約20年後の2040年、世界の総人口は約20%増加する一方、日本の生産年齢人口は20%以上も減少すると予測されています。しかし、こうした状況は、旧来型ビジネスモデルから脱却する好機とも捉えられます。たとえば、業務効率化や働き方改革等を進めることで、ひとりひとりの潜在能力を最大限に引き出すことが可能になります。また、官民が協力してイノベーションや生産性向上に取り組めば、低下した国際競争力を取り戻すこともできるでしょう。人口減少や世界における相対的地位の低下といった逆風の中でも、日本には、まだ成長できる余地が十分にあると考えています。
 各国の金融政策を見ても、前例なき超金融緩和が流動性をもたらし、日本銀行の総資産は500兆円を優に超え、戦後初めて日本のGDPを超える規模へと膨らんでいます。欧米の中央銀行と合わせると約1,600兆円規模となり、これは金融危機から僅か10年ほどで、欧米日の中央銀行の総資産が約4倍の規模へと膨らんだこととなります。こうして生じた流動性は、資産バブル発生のリスクを高めるため、金融市場を不安定化させる要因になります。今後、各中央銀行は、果たして出口戦略を円滑に進めることができるのか、未だ嘗て誰も経験したことのない未知なる領域への挑戦となります。
 デジタライゼーションは、様々な業界において、異業種を含めたパラダイムシフトを引き起こしています。昨今、産業構造の変化やテクノロジーの進化によって、業界の垣根や業態の壁といった旧来の「境界」が曖昧になってきており、我々の金融業界にも、流通、通信、ITといった様々な異業種のプレイヤーが参入を続けています。そう遠くない将来、金融業界では、銀行、証券、保険というこれまでの業態別の区分はすっかりと意味を失い、預貸金、決済、投資といった、機能別の括りのみが残っているのかもしれません。
 こうした構造変化に共通することは、それが我々にとって不可逆的であり、かつ甚大なインパクトを孕んでいるということです。即ち、母国市場の縮小や、異業種からの参入等による競争の激化は、ただ待っていればいつか解決するような循環要因ではなく、我々が、正面から対峙せねばならない不都合な真実であり、持続的な成長を続けていく上では、時代の先を見据えて進化を重ねていくことが、これまで以上に求められています。

SMBCグループの歩みと強み

 しかし、このような劇的な構造変化は、今に始まったことではありません。グループの中核銀行である三井住友銀行は2001年に発足しましたが、当時は、永年に亘り日本経済を蝕むデフレの環境下、国内の不良債権問題が深刻化し、金融業界が大再編時代へと突入した局面であり、まさに嵐の中での船出となりました。その後、公的資金を完済し、成長へと舵を切ったのも束の間、2008年には、米国のサブプライムローン問題に端を発した世界的な金融危機が生じ、そこでの教訓は、先般のゲームチェンジとも言える国際的な金融規制強化にも繋がりました。
 それらには、我々の経営を根本から揺るがすものもありましたが、我々は都度、自らを強靭な組織・金融グループへと創り変え、質を伴う成長を続けてきました。このような変化を通じて築き上げた、我々の普遍的な強みが3つあります。
 1つ目は、お客さまとの永年の信頼関係に基づく、強固な顧客基盤です。
 SMBCグループは、銀行・リース・証券・コンシューマーファイナンス等、各業界におけるトップクラスの企業で構成され、特に銀行、証券に関しては、メガバンクの三井住友銀行と三大証券の一角のSMBC日興証券という、ユニークな組み合わせが強みです。また、国内リテールでは、クレジットカード会員数、カードローン残高といった主要分野で本邦No.1のポジションにあり、お客さま数は4,300万人、従業員数は5万人に上ります。
 海外においては、従来、欧米非日系の多国籍企業やASEAN主要国における地場の優良企業等、主に法人のお客さまとの取引を深耕し、高いプレゼンスを築いてきましたが、2019年2月、インドネシアの地場銀行BTPNとインドネシア三井住友銀行の合併が完了し、同国において、ホールセール・リテールビジネスをフルラインで展開するプラットフォームを構築しました。合併新会社の従業員数は約2万人に上り、以前からBTPNと協働で進めてきたデジタルバンキングの顧客数は、既に700万人に達しています。
 2つ目は、時代の変化を見据えたプロアクティブかつスピーディーな取組により構築した、事業基盤です。
 母国市場である日本では、これまで長い間、低成長・低金利という商業銀行にとって厳しい業務環境が継続していますが、グループ発足以来、我々は外部環境に合わせて業務・地域のウィングを拡大し、収益源の多様化を進めてきました。その結果、三井住友銀行以外のグループ会社が連結業務純益に占める割合は、銀行業務中心であった2003年度の8%から上昇し、2018年度には51%と初めて過半に達しました。その間、親会社株主純利益は3,304億円から7,267億円へと拡大しており、我々は、質を伴いながら成長を実現しています。
 海外事業は、我々の成長ドライバーとして、グループ発足以来、業務純益ベースで年平均13%もの高い成長率を成し遂げ、連結業務純益に占める割合は、2003年度の5%から、2018年度には33%へと高まりました。その中では、グローバルに競争力を有する事業領域も増えてきており、今から33年前、私を含め僅か4名のチームが、「いつか世界一に」と夢見て立ち上げたプロジェクトファイナンス業務も、今や世界第2位という屈指のポジションへと登り詰めています。
 また、ここ数年は、新興国経済の減速や国内でのマイナス金利導入、国際金融規制の強化等を踏まえ、トップライン成長から効率性を重視する経営へと舵を切り、地銀・リース等のグループ事業再編やRPA(Robotic Process Automation)・店舗改革等のコストコントロールの徹底によって、さらに質の高い事業基盤を構築しています。

業務・地域のウィング拡大

連結業務純益に占める割合 連結業務純益に占める割合

 3つ目は、お客さま起点で高度なソリューションを提供する、優秀な従業員です。
 金融グループの経営において、最も大切な経営資源は「人」です。一般には差別化が困難とされる金融業界において、我々が永年に亘り、本邦メガバンクグループの中で最も厚い利鞘や、トップレベルのひとり当たり業務純益を維持できているのは、高い営業力、専門性、モチベーションを有する従業員が、お客さまの真のニーズを理解し、スピーディーかつ的確なソリューションを提供し続けてきたこと、その信頼とノウハウの積み重ねにほかなりません。
 そして、従業員がさらに高いパフォーマンスを発揮できるよう、働き方改革に向けた取組も進めています。我々は、RPAをグループベースで導入し、既に世界トップクラスの活用実績を誇ります。世間では、金融機関におけるRPAの導入が「人員リストラ」の文脈で語られることがありますが、それは間違っています。デジタル技術を活用しながら、従業員を生産性の低い業務から解放し、付加価値の高い仕事や企画業務に注力できるようにすることで、お客さまに提供する商品・サービスの質を向上させることが狙いです。このような取組は、従業員のモチベーション向上や働き方改革にも繋がるものであり、ひいては我々の成長にも寄与します。

10年先・20年先を見据え、
ステークホルダーの皆さまに対して私が取り組むこと

 以上の不可逆的で甚大な外部環境の変化と、我々の変わらぬ普遍的な強みを踏まえつつ、10年先・20年先を見据えて、ステークホルダーの皆さまに対し、私は、以下のことに取り組みます。

お客さま:お客さま本位の徹底と、新たな付加価値の提供

 「お客さまに、より一層価値あるサービスを提供し、お客さまと共に発展する」、これは、我々の経営理念の、第一に掲げていることです。そして、この実現に向けて、SMBCグループのすべての役職員が共有する価値観・行動指針として定めている「Five Values」の最上位にも、「Customer First」(常にお客さま本位で考え行動する)を掲げています。お客さまのニーズやご意向を踏まえつつ、良質な商品・サービスの提供に継続的に取り組むことが、お取引の深耕ひいては我々の成長にも繋がるものと考え、お客さま本位の運営を徹底しております。
 今後も、我々は歩みを止めることなく、お客さまに対するより良いサービス、新たな付加価値の提供を追求していきます。昨今、「銀行不要論」を耳にすることがありますが、私は、「銀行が不要になるのであれば、我々自身が銀行でなくなればいい」と考えています。デジタル化の進展等によって金融機能の在り方が変化し、お客さまにとってより安価で利便性の高い商品やサービスが次々と生まれ、それが経済・社会の発展に繋がっていくのなら、そしてその担い手が「銀行」と呼ばれる企業以外の人達によってもたらされるのなら、我々は「銀行」であり続ける必要はありません。我々自身が弛まぬ自己改革により、その担い手になっていく覚悟です。

私は、「銀行が不要になるのであれば、我々自身が銀行でなくなればいい」と考えています。 私は、「銀行が不要になるのであれば、我々自身が銀行でなくなればいい」と考えています。
株主:還元の更なる強化と、持続的な成長を通じた、株主価値の最大化

 株主の皆さまに対しては、株主還元の更なる強化と持続的な成長を通じた、株主価値の最大化に向けて、最大限の努力を続けていきます。
 我々の資本政策の基本方針は、健全性確保、株主還元の強化、成長投資をバランス良く実現していくことですが、健全性確保については、2019年3月末、バーゼルV最終化時ベースの普通株式等Tier1比率が、中期経営計画で目標とする10%程度に1年前倒しで到達しました。これにより、我々の資本政策は、従来の資本蓄積を優先させるフェーズを脱却し、株主還元の強化と成長投資にフォーカスできるステージへと移行したと理解しています。
 今後は、蓄積される利益を株主還元と成長投資にバランス良く配分し、株主還元の更なる強化と企業としての持続的な成長を実現し、株主価値の最大化に努めます。なお、成長投資については、国内・海外ビジネスの成長を加速するオーガニックな投資は勿論のこと、インオーガニックについても、海外における資本・資産効率の高いビジネスやポートフォリオに対する投資、中長期的な成長に向けたビジネスプラットフォームを創るための投資を、ディシプリンを利かせて検討していきます。
 株主還元は配当を基本とし、次期中期経営計画の期間中を目処に、配当性向40%への引き上げを目指しています。また、機動的な自己株取得についても、2018年5月に700億円実施し、2019年5月には1,000億円の実施を決議しました。因みに2019年度の総還元性向は50%を見込んでおり、利益の丁度半分を株主の皆さまに還元する形となります。現中期経営計画の開始前年度である2016年度の総還元性向30%から、現計画の3ヵ年で20%の上昇となり、株主還元の強化を着実に進めています。

従業員:明るく前向きに自分の夢を追いかけられる職場づくり

 従業員に対しては、ひとりひとりが明るく前向きに、自分の夢を追いかけられる職場を作ります。
 私は、就任以来、従業員に向けて「カラを破ろう」と呼び掛けています。今まさに激動の時代を迎えている金融業界において、カラに閉じこもる、即ち、前例や固定観念に囚われ自己改革を怠るようでは、時代の流れから瞬く間に置き去りにされます。従来、金融機関は保守的で減点主義等と揶揄されもしてきましたが、今や新たなことに挑戦し、失敗し、それを糧とし教訓として、次なる挑戦へと如何に繋げていくかが問われています。従業員が、勇気を持って新たな分野に挑み、周りがそれに刺激を受けて、新たなビジネスが次々と生まれる、そんな活気溢れる職場を作っていきます。
 また、従業員ひとりひとりが活き活きと働き、最大限その能力を発揮できるよう、人事制度も改定していきます。たとえば、現在三井住友銀行では、Fair:より公平に処遇・評価される制度、Challenge:より高度な業務への挑戦意欲を高めるとともにその努力に報いる制度、Chance:誰もがその能力を最大限発揮できる機会がある制度という3つをキーワードに人事制度の改定を進めており、従業員の新たな挑戦を後押しします。さらに、私は今後、グループCEOとして、次世代のリーダー育成や適材適所の人材配置等に、グループベースでより一層真剣に取り組んでいきます。従業員が、明るく前向きに自分の夢を追いかけられるよう、カルチャーの醸成と制度の整備に努めること、これは経営者としての最も重要な責務の一つと考えます。

就任以来、従業員に向けて
「カラを破ろう」と呼び掛けています。

環境・社会:事業を通じた社会的な課題の解決と、SDGs(持続可能な開発目標)への取組

 昨今、地球温暖化による気候変動や、新興国を中心とするサプライチェーンにおける人権侵害等、様々な環境問題・社会問題がグローバルな規模で生じています。それに伴い、ファイナンスを通じあらゆる産業との結節点となっている金融機関に期待される役割も、極めて大きなものとなってきています。持続可能な社会の実現に向けて、事業を通じた社会的な課題の解決とSDGsへの取組を、グループ一体となって強化していきます。
 我々は、持続可能な社会の実現を重要課題の一つと認識し、2018年10月、従来のCSR委員会を発展させた「サステナビリティ推進委員会」を設置しました。私自身が委員長となり、経営トップとしてのコミットメントの下、非財務的視点を軸としたサステナビリティ経営を推進していきます。また、中長期的に取り組む社会課題として「環境」「次世代」「コミュニティ」を設定し、その課題解決に向けて注力すべき10項目のSDGsを選定の上、各課題への対応を事業部門の施策に組み入れ、事業を通じた取組を進めています。我々の取組は、世界の主要なESGインデックスに多数組み入れられる等、外部からも高い評価をいただいています。これまでの具体的な取組について、環境(E)、社会(S)、ガバナンス(G)に分けてご説明します。

・環境への取組

 我々は、環境に対し、他社に先駆けたプロアクティブな取組を続けています。2017年12月、金融安定理事会(FSB)が提唱する気候変動対策に関する枠組である「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」に賛同して気候変動に関するシナリオ分析を行い、2019年4月には、グローバル金融機関として初めて財務的影響の具体的な数値を開示しました。また、2019年2月には、国連環境計画・金融イニシアティブが提唱する責任銀行原則についても、逸早く賛同を表明しています。
 さらに、環境に配慮したファイナンスへの関心が高まる中、三井住友銀行では、気候変動等の環境影響に鑑み、石炭火力発電所への融資を超々臨界およびそれ以上の高効率の案件に限定する方向で厳格化したほか、資金使途を環境関連プロジェクトに限定したグリーンボンドの発行等に取り組んでいます。また、SMBC日興証券では、2018年9月に「SDGsファイナンス室」を新設し、お客さまのグリーンボンドをはじめとするSDGs債の発行・資金調達をサポートしています。

・社会への取組

 社会の観点では、次世代に向けた取組として、三井住友銀行・SMBC日興証券・SMBCコンシューマーファイナンス等、グループ各社の業態に応じた金融リテラシー教育に力を入れているほか、人口動態の変化を見据え、高齢者や障がい者、認知症の方を含め、あらゆるお客さまに安心してご利用いただける設備やサービスの導入を、グループベースで進めています。
 また、我々の強みである従業員が、さらに活き活きと働けるよう、ダイバーシティの推進も加速させていきます。女性管理職の比率は上昇基調にあり、たとえば三井住友銀行では「2020年度目標の20%」を前倒しで達成したため、「2019年度末までに25%」との目標を新たに掲げています。海外拠点の部店長ポストにおける現地採用従業員の比率も年々上昇を続け、2019年4月時点では34%に達しています。しかし、その一方で、「性別」や「現地採用」といった区分を意識している限り、ダイバーシティへの取組は道半ばの状態であるとも感じています。ジェンダー、国籍、価値観等、多様なバックグラウンドを持つ従業員が自由闊達に議論を重ね、その多様性が新たなイノベーションを生む、そのような組織が意識することなく当たり前に存在するよう、ダイバーシティをグループ全体で推進していきます。

・ガバナンスへの取組

 我々は、コーポレートガバナンスに完成形はないものと考え、継続的なコーポレートガバナンスの強化・充実に向けた不断の取組を、グループ・グローバルベースで進めることにより、実効性の一層の向上を目指しています。2017年4月、事業部門制・CxO制を導入して新たなグループガバナンス体制を整備し、同年6月には、指名委員会等設置会社へ移行しました。取締役会では、社外取締役の知見を活かしながら、重要なテーマをより一層重点的に審議することが可能となり、大局的な議論が増加したと実感しています。2019年6月には、取締役の人数を17名から15名に減員し、全取締役に占める社外取締役の比率が47%へと高まりました。また、同月、三井住友銀行とSMBC日興証券は、業務執行の迅速化と取締役会の監督機能向上を目的に、監査等委員会設置会社へと移行しています。
 2018年8月には、世界の政治・経済・ビジネスに精通した有識者をアドバイザーとして選任し、グループ経営会議の諮問機関としてSMBCグループ・グローバル・アドバイザリー・ミーティングを立ち上げました。毎年数回ミーティングを開催し、世界の潮流変化や、各国の政治・経済情勢等について、有益な提言を受けています。また、コンプライアンスサーベイを実施し、社内の従業員の声を経営に吸い上げる取組を行うことで、ガバナンスの実効性確保にも努めています。

中期経営計画
「SMBC Group Next Stage」の進捗

 我々は、2017年4月より、新たなグループ経営体制の下、中期経営計画「SMBC Group Next Stage」を実行中です。「Discipline」「Focus」「Integration」の3つの基本方針に基づき、これまでご説明してきた環境変化への対応や更なる強みの強化に向けた、様々な施策に取り組んできました。
 2018年度までの状況を振り返りますと、施策面・業績面ともに概ね順調に進捗しています。
 「Discipline」については、三井住友ファイナンス&リース・関西アーバン銀行およびみなと銀行・BTPN・三井住友カード等、グループにおける事業ポートフォリオの再構築を矢継ぎ早に実行して資本・資産効率の向上に繋げました。また、三井住友銀行の国内全430店舗の次世代店舗化(2ヵ年で259店舗実施)やRPAを活用したグループベースでの業務改革等によって、コスト削減に努めてきました。中期経営計画では、主要施策により3ヵ年で500億円のコスト削減を目標としていますが、2ヵ年で360億円の削減を実現しています。
 「Focus」については、7つの戦略事業領域の其々において施策を実施し、着実に成果が上がりつつあります。リテール事業部門では、フロー収益からストック収益中心への収益構造のシフトを目指し、資産管理型ビジネスへの転換を着実に進めているほか、国際事業部門では、BTPNとインドネシア三井住友銀行の合併によってマルチフランチャイズ戦略を加速させています。アセットマネジメントビジネスにおいては、2019年4月、三井住友アセットマネジメントと大和住銀投信投資顧問との合併が実現し、三井住友DSアセットマネジメントが発足しましたが、合併後の運用資産残高は約21兆円となり、国内第8位の規模へと成長しました。
 「Integration」については、これまでご説明したESGやグループ経営の高度化等に対する取組が、着実に進展しています。
 事業部門毎の詳しい取組については、後の各部門のパートに譲り、私からはデジタライゼーションおよびリスク管理に対する取組をご説明します。

主な成果

Discipline Focus Integration 資本・資産効率向上に向けたグループ再編を矢継ぎ早に実施 主要施策によるコスト削減目標500億円に対し、360億円を実現 各事業部門において、中期経営計画における主要施策を着実に推進 戦略事業におけるM&A推進(クレジットカード・インドネシア・アセットマネジメント) 指名委員会等設置会社への移行、事業部門制・CxO制によるグループ経営の高度化 普通株式等Tier1比率目標に1年前倒しで到達、資本政策の新たなステージへ Discipline Focus Integration 資本・資産効率向上に向けたグループ再編を矢継ぎ早に実施 主要施策によるコスト削減目標500億円に対し、360億円を実現 各事業部門において、中期経営計画における主要施策を着実に推進 戦略事業におけるM&A推進(クレジットカード・インドネシア・アセットマネジメント) 指名委員会等設置会社への移行、事業部門制・CxO制によるグループ経営の高度化 普通株式等Tier1比率目標に1年前倒しで到達、資本政策の新たなステージへ
デジタライゼーションへの取組

 今後、あらゆる業界において、競争優位性の大きな決定要因となるのがデジタライゼーションであり、我々も「進化の先を行く金融グループ」「既存の枠組に囚われることなく、イノベーションを起こす新しい金融グループ」を目指し、キャッシュレス・データの経営資源化・新たなビジネスの創造をテーマに取組を加速しています。
 たとえばキャッシュレスへの取組については、日本は口座振替等の高度に発達した銀行システムが存在し、現金に対する信頼性も高いこと等から、諸外国と比べてキャッシュレス化が進んでおらず、本邦におけるキャッシュレス決済は、今後中長期的な成長が見込まれる有望なマーケットと捉えています。マーケットを俯瞰すると、クレジットカードの決済額が約50兆円程度に留まっているのに対し現金決済は約130兆円もあり、キャッシュレス決済の促進によってこの現金決済部分のパイを取り込んでいくことが、大きなビジネスチャンスに繋がると考えています。我々は、グループに三井住友カードとセディナを擁し、イシュイング業務とアクワイアリング業務の双方において日本のトップティアのステータスにあります。競争優位の更なる拡大に向け、EC・ネット決済分野のリーディングカンパニーであるGMOペイメントゲートウェイ社、および世界最大規模のペイメントネットワークを有するVisa社と、次世代決済プラットフォームの構築に関して戦略的に提携しています。
 さらに、資本・業務提携先であるアメリカのSquare社との協業を通じ、中小事業者・個人事業主へのカード決済に対応した端末の無償提供等によって、キャッシュレス決済の裾野拡大にも努めています。今後も、日本のキャッシュレス化推進に向けたフロントランナーの役割を果たしていきます。
 また、近年デジタル技術が発展し、多種多様で膨大なデータの収集と分析が可能となっていますが、「21世紀の石油」と呼ばれるデータの利活用に対しては、金融業界のみならず、グローバルに様々な業界が注目しています。我々は、銀行・証券・コンシューマーファイナンス等のグループ各社で、膨大な決済情報や信用情報を有しています。また、データの利活用に際しては個人情報保護やデータのセキュリティ確保が大前提であり、永年培ってきた信頼と情報管理に関するノウハウは、お客さまの不安感を払拭する上での大きな強みです。我々は既にこの分野で先行しており、三井住友銀行ではAIを用いて企業の業況変化を検知するシステムを開発したほか、SMBC日興証券ではAIによる個別株式の株価予測を活用した投資情報サービスの提供を開始しました。このような取組が評価され、先般、経済産業省・東京証券取引所による「攻めのIT経営銘柄2019」に、銀行業から唯一選定されています。
 異業種との共創を通じた新規ビジネスの創造も重要なテーマです。我々は、2017年9月に渋谷にオープンイノベーションハブの「hoops link tokyo」を開設し、その中で、外部企業とSMBCグループで行うワークショッププログラム「SMBC BREWERY」を開始しました。先程ご紹介したAIを活用した投資情報サービスも、SMBC日興証券がこのプログラムを通じて将棋AIで有名なHEROZ社と出会い、創出された新たなビジネスです。

日本のキャッシュレス化推進に向けた
フロントランナーの役割を果たしていきます。

リスク管理への取組

 我々グローバル金融機関が管理すべきリスクファクターは極めて多岐に亘りますが、地政学リスクの拡大や金融緩和政策の長期化等と並び、足許で特に意識しているのはマネーローンダリング・テロ資金供与対策とサイバーセキュリティです。
 グローバルにテロの脅威等が高まる中で、マネーローンダリング・テロ資金供与対策に関する国際的な目線は急速に厳しさを増し、諸外国の当局が多額の制裁金を科す事例も多く見られます。犯罪やテロに繋がる資金の動きを看過することは、犯罪組織・テロ集団への犯罪収益の移転等を通じて健全な市民生活の阻害にも繋がりかねません。また、金融機関における態勢の脆弱性がひとたび顕在化すれば、本邦の金融システムに対する国際的な信頼を揺るがす問題に発展する恐れもあります。2019年秋には、日本に対するFATF第四次相互審査のオンサイト検査が予定されています。今回の審査にあたっては、我々経営陣が主導してSMBCグループ内で横断的なプロジェクトチームを立ち上げ、外部知見も取り入れつつ、マネーローンダリングにかかるリスクや顧客管理手続の見直し、さらには、関連するシステムの強化や役職員の意識醸成等を、確りと進めています。
 また、デジタライゼーションや情報の利活用の進展によって、ビジネスや業務プロセスがデジタル化され利便性が飛躍的に高まる一方、あらゆるシステムがグローバルにインターネットに接続された結果、昨今、サイバーセキュリティにかかるリスクが格段に高まってきています。我々は金融という重要な経済・社会インフラを担っていますが、サイバー攻撃によるシステム障害・情報漏洩・改竄等の発生は、我々の業務はもとより、本邦の国民生活や経済活動、さらにはオープンネットワークを介して世界各国にも甚大な影響を与えかねません。我々は、サイバーリスクをトップリスクの一つに位置づけ、2018年3月に策定した「サイバーセキュリティ経営宣言」の下、日々巧妙化するサイバー脅威に対し、経営主導で、セキュリティ人材の育成による予防・発見やサイバー事故からの早期回復に向けたコンティンジェンシープランの策定といった、グループベースでのセキュリティ強化策に取り組んでいます。

今後の戦略の方向性

 2019年度は、3ヵ年の中期経営計画の最終年度、言わば総仕上げの年となります。上記の施策が奏功し、これまでのところ、計画で掲げた3つの財務目標は、健全性・資本効率・経費効率のいずれの指標においても順調に推移しています。しかし、グローバル経済の先行きに不透明感が高まる中、「時代の一歩先」「お客さまが求めているものは何か」を常に追求し、2019年度も緊張感を保ちながら、グループ一丸となって様々な施策を成果に結び付け、目標を達成したいと考えています。
 次期中期経営計画については、従来の延長線上でなく、自由な発想の下で新しいビジネスの可能性も含め、議論を深めていく予定です。時代の変化に応じて自らを改革するという我々の強みを最大限発揮し、お客さまの真のニーズにお応えするため、今後目指していくべき戦略の方向性として、以下の3点を考えています。

果敢な構造改革

 厳しい収益環境に対応すべく、ビジネスモデルの進化と経営資源の最適化を中心とした構造改革を実行していきます。たとえば、リテール事業部門では、店舗改革やデジタライゼーションの推進等を通じたコスト削減に加え、資産管理型ビジネスへの転換を一層進めていくことで、持続的な成長を可能とするほか、国際事業部門では、バランスシートの拡大に依存しない成長モデルへの転換を図っていきます。また、ビジネスの成長性や収益性・効率性を踏まえ、インオーガニックを含めた成長投資による業務・地域のウィング拡大に加え、事業の選択と集中や、経費コントロールの強化をさらに進めていきます。

不断のイノベーション

 デジタライゼーションの進展等によって伝統的な金融業界の在り方が変わり、我々が果たす役割やお客さまが我々に期待することも変化する中、勝ち残りに向けて、不断のイノベーションを実践していきます。異業種との共創を通じた新規ビジネスの創造や、データの経営資源化、プロセスオートメーション等をテーマに、次なる時代を見据え、お客さまに常に新しい価値を提供してまいります。

グループ総合力の最大化

 事業部門制・CxO制導入により、グループ経営体制はこの2年間で着実に進化した一方、グループのシナジーについては、様々な分野において未だ拡大の余地があります。成長領域に対する投資拡大・人的戦力の投下等、グループ各社の企業価値をいかに高めていくかに加え、グループ間の更なる協働の拡大やグループベースでの資源配分の最適化により、お客さまへの対応力強化を実現し、グループ全体で企業価値の極大化を追求していきます。

金融の未来を創る

 これまで我々は、不良債権問題やグローバル金融危機等、様々な難局に対峙しましたが、そのたびに自ら進化を続けてきました。今、我々が直面する構造変化は、それらに匹敵する、あるいは上回るインパクトをもたらしかねないものですが、変化に向き合い、自らを創り変えることによって、我々の競争優位性を飛躍させ得る千載一遇の好機でもあります。
 私は、これまで申し上げてきたSMBCグループの強みを活かし、長期的なビジョンの下で戦略を着実に遂行しつつ、時代の一歩先を読んだ先進的な取組に果敢にチャレンジしていけば、新しい時代を切り拓き、金融の未来を創ることができると確信しています。我々は弛まぬ自己改革により、金融グループとして更なる高みを目指していきます。
 ステークホルダーの皆さまには、今後ともより一層のご理解・ご支援を賜りますよう、何卒よろしくお願い申し上げます。

2019年7月

三井住友フィナンシャルグループ
取締役 執行役社長 グループCEO
太田 純

三井住友フィナンシャルグループ 取締役 執行役社長 グループCEO 太田 純 三井住友フィナンシャルグループ 取締役 執行役社長 グループCEO 太田 純