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三井住友フィナンシャルグループ

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MESSAGE FROM THE GROUP CEO 未来を切り拓く 三井住友フィナンシャルグループ 取締役 執行役社長 グループCEO 太田 純 MESSAGE FROM THE GROUP CEO 未来を切り拓く 三井住友フィナンシャルグループ 取締役 執行役社長 グループCEO 太田 純

「想定外」を乗り越える

 世界が大きく揺れています。新型コロナウイルス感染症は、瞬く間に世界中へ拡がり、今も各国で甚大な被害をもたらしています。年始の段階で、この新たな感染症の影響がここまで拡大すると予見できていた人はいないでしょう。まさに「想定外」の事象と言えます。しかし、ここ数年、この「想定外」というフレーズを聞く機会が増えてきたのではないでしょうか。「100年に一度」レベルであるはずの大規模な自然災害が、ほぼ毎年のように起きており、前回の米大統領選やBrexitの国民投票も、事前の予想を覆す結果でした。

 これらをすべて「想定外」と片づけるのは容易ですが、果たして本当に「想定外」だったのか。新型コロナウイルス感染症以前にも、人類はコレラ、天然痘、SARSといった新たな感染症と何度も闘い乗り越えてきましたが、今回、パンデミックがかくも急速かつ全世界的に拡がったのは、これまで我々が恩恵を受けてきたグローバリゼーションが持つ負の側面が顕在化したためと考えられます。同様に、激甚化する自然災害の背景には地球温暖化の進行があり、ポピュリズム台頭の根底には、これまでの戦後経済発展の礎となってきた民主主義の揺らぎや限界といった構造変化があったと言えるでしょう。つまり、ここ数年我々が目の当たりにしている出来事は、遠からず起こり得る事象だったとも言えるわけであり、持続的な成長に向けては、ブラックスワンによって経営環境が激変したとしても柔軟に適応して乗り越えることができるように、日頃よりビジネスモデルを進化させ、組織としてのさらなる高みを目指していくことが重要と考えています。

世界がかくも混乱する中においても、
一歩立ち止まって物事を冷静に鳥瞰し、
時代の中長期的なトレンドを見極める、
そんな経営の舵取りが求められています。

 その一方で、こうしたリスクを過剰に深刻なものと捉えたり、歪曲して認識したりすることは、時代の潮流や経営の方向性を見誤る元凶とも成り得ます。新型コロナウイルス感染症は、人々の価値観を根底から変えるとも言われていますが、私は、このような時こそ、本当に変わるものと変わらないものを慎重に見極めなければならないと考えています。変わるものの代表例は、未来社会「Society 5.0」の実現に向けたデジタルシフトの加速でしょう。足元では、感染拡大抑制を目的にデジタル取引を選択するお客さまが増えており、政府による緊急事態宣言が発令された2020年4月は、三井住友銀行で個人のお客さまによるリモート取引者数が前年比+36%、SMBCクラウドサインで手掛ける電子契約は前月比10倍に急増しました。デジタル取引は、利便性やコスト面で優位である上、利用者の増加によるネットワーク効果によって便益がさらに拡大しますので、新型コロナウイルス感染症終息後も減少せず、むしろ加速度的に増加を続けるでしょう。一方で、世界の人々が何百年、何千年にわたって培ってきた習慣や生活様式、仕事や家族に対する価値観等は、そう易々と変わるものではありません。たとえば、フェイス・トゥ・フェイスのコミュニケーションなしに、お客さまのニーズや課題に真にマッチした提案ができるのか、生身の人間関係が希薄化する中で、若手従業員の育成やコーポレートカルチャーの伝承が可能か、といった点については、よく検証する必要があります。つまり、世界がかくも混乱する中においても、一歩立ち止まって物事を冷静に鳥瞰し、時代の中長期的なトレンドを見極める、そんな経営の舵取りが求められています。

巨大タンカーの舵を切る

 経営環境の変化を乗り越えるためには、絶えず強靭かつ柔軟な組織を構築し、ビジネスモデルを進化させる必要がありますが、その鍵を握るのがイノベーションです。イノベーションと言うと、特定の天才による閃きを想像しがちですが、そうとは限りません。むしろ、小さな変革の種が組織全体から生まれるよう、従業員全員が新たなビジネスの創造に向けた挑戦を続けるカルチャーを醸成することが、我々の持続的な成長には重要だと考えています。

 そのため、私は2019年4月の社長就任来、従業員に対して「カラを、破ろう。」と呼び掛け、前例や固定観念に囚われず、新しいことに積極的に挑戦するよう促してきました。社内で手を挙げた人には経営資源を渡して新会社を設立し、社長をやってもらいます。これまで9社設立していますが、今後も「社長製造業」として社内起業を後押ししていきます。ニュースで大きく採り上げられた「ドレスコードフリー」も、従業員のマインドセットを変えることを企図しています。一人ひとりが風通しの良い組織の中で自由に夢を追えるような企業カルチャーを目指します。

 とは言え、これは簡単なことではありません。社長はそう言うけれども、実際に挑戦して失敗したら叱られるのでは、とためらう人は必ずいますし、変化を機会と捉えず、痛みと感じてしまう人が多いのも事実です。だからこそ、私は、同じメッセージを繰り返し発信し、社内起業の成功例を積み上げ、失敗を決して責めず、むしろ挑戦した勇気を称えることで、新たな分野に挑む従業員の背中を後押しし続けます。

 SMBCグループは、世界で10万人もの従業員を抱える、船に例えるなら巨大タンカーのような組織です。そんな巨艦の舵を切ること。傍から見れば変化はゆっくりに見えるかもしれませんが、いざ正しい方向へと針路が定まり、しっかりと前へ進み出した時の推進力は、とても大きなものになると信じています。

グローバルソリューションプロバイダーへ向けて

 では、我々の巨大タンカーは、どこへ向かって進むべきなのか。2020年4月、SMBCグループの目的地となるビジョンを、「最高の信頼を通じて、お客さま・社会とともに発展するグローバルソリューションプロバイダー」へと刷新しました。

 これは、お客さま・社会が抱えるさまざまな課題に応えるために、金融機能をさらに研ぎ澄ませるのはもちろんのこと、非金融領域も含めた質の高いソリューションの提供をグローバルベースで追求していくことで、グループとして持続的な成長を実現していきたい、という考えを反映したものです。

 このビジョンの実現に向けて、我々が進むべき方向性は3つあります。

情報産業化

 1つ目の方向性は、情報産業化していくということです。

 情報やデータは、バランスシートには計上されない非常に価値の高い資産として、金融機関のみならずグローバルにさまざまな業界が利活用を目指しており、今後は、この目に見えない資産をいかにP/Lに落とし込んでマネタイズするかが企業の勝敗を分ける鍵となります。我々は、銀行、証券、コンシューマーファイナンス等の各ビジネスラインで莫大な決済・信用情報を蓄積している上、データ利活用の前提となる個人情報保護やセキュリティ確保にも強みを有しています。

 たとえば、三井住友カードでは、2019年、キャッシュレスに必要な機能をワンストップで提供する決済プラットフォーム「stera」をリリースしましたが、同時に、蓄積した決済データをAIを活用して集計・分析することで、加盟店の経営戦略策定や新商品開発、マーケティング戦略立案等に役立てていただくサービス「Custella」も提供しています。こうしたビジネスをさらに発展させれば、将来的には「データ+α」のビジネス、たとえば情報銀行や広告ビジネス、あるいは個人のお客さまに対するパーソナライズド・マーケティングといった、幅広い領域へのビジネス展開が可能となります。

プラットフォーマー化

 2つ目の方向性は、プラットフォーマー化していくということです。

 我々は、預貸金や決済サービス等を通じて、国内外の法人・個人のお客さまとお取引いただいています。この永年の信頼関係に基づく強固な顧客基盤を活用すれば、我々は金融機能をベースに多様なサービスを展開するプラットフォーマーになることができます。

 プラットフォームの拡大に向けては、自前主義にはこだわりません。金融機能がアンバンドリングしていく中で、一部の機能を旧来の金融機関以外が担うことは自然な流れであり、金融と非金融は、切磋琢磨すべきライバルとしてだけでなく、お互いを補完するパートナーでもあると考えています。たとえば、先般、中堅・中小企業のお客さまのデジタル化を支援する法人向けデジタルプラットフォーム「プラリタウン」を設立しましたが、SMBCグループだけでなく、外部パートナーの多様なサービスも加えることで、プラットフォームの付加価値をスピーディーに高めていきます。そして、プラットフォームにより多くのお客さまにお集まりいただくことでさまざまな情報が蓄積され、我々とお客さまのみならず、お客さま同士でもビジネスが次々と生まれるような、1つのエコシステムとしての発展を目指していきます。

ソリューションプロバイダー化

 3つ目の方向性は、ソリューションプロバイダーになっていくということです。

 お客さまが抱えるニーズが、多様化・複雑化する中、さまざまな課題に対し解決策を提供する、最も「頼れる」存在になる必要があります。日本がどこよりも早く直面している超高齢社会を例に取りましょう。金融機関が超高齢社会への対応を考える際、どうしても既存のプロダクトを起点に、老後の資産形成に向けてどのような金融商品を提供するかという発想に陥りがちですが、ここからブレークスルーする必要があります。高齢者の方々が抱える悩みは、資産形成にとどまらず、介護、医療、遺産相続、家族との関係等、多岐にわたります。運用商品や貸出といったプロダクトや手段のみではなく、お客さまのニーズが生まれた動機まで深掘りし、非金融のプレーヤーとも協働しながら真に付加価値の高いソリューションを一体的に提供していきます。

新中期経営計画に込めた思い

 このビジョンを実現し、金融の未来を創るための着実な一歩として、2020年度、我々は新たな中期経営計画へと踏み出しました。この計画は、グループの中堅・若手社員とともに、1年以上かけて検討を行い策定したものです。目下、新型コロナウイルス感染症という検討の途上にはなかった「想定外」の事象が生じていますが、元々、米中貿易摩擦をはじめとする地政学リスクの台頭や、母国市場の縮小、気候変動への対応といった不可逆的な構造変化を踏まえて厳しい業務環境を想定し、逆境を乗り越えてさらなる成長を実現するための戦略を皆で考え抜いてきたとの自負があります。このため、現下の情勢を踏まえても軸をぶらすことなく、自信を持って前へ進んでいきます。

 新中計の基本方針として、「Transformation」「Growth」「Quality」の3つを掲げました。
まず、厳しい競争環境を勝ち抜いていくため、既存事業のビジネスモデル改革とコスト構造改革に徹底的に取り組みます。前中計においても、基本方針としてDiscipline、Focusを掲げ、生産性の向上に注力してきましたが、新中計においては「Transformation」へと一段と進化させ、抜本的な効率化とリモデリングによる収益成長に取り組んでいきます。

 たとえば、経費コントロールでは、国内ビジネスモデル改革、リテール店舗改革、グループベースの業務集約・共通化によって、前中計の倍となる1,000億円のコスト削減を目指すほか、リスクアセット運営では、低採算アセットや政策保有株式の削減を引き続き進めていきます。

 一方で、資本蓄積の途上にあった前中計と異なり、新中計はCET1比率が目標に達し、資本をはじめとした経営資源の余力を活用できるステージとなったことを踏まえ、中長期的な成長、「Growth」が見込まれる事業領域に対しては、経営資源を果断に投入していきます。

 たとえば、インオーガニック戦略においては、ディシプリンを徹底しつつ、資本の余力を活かし、資本・資産効率の高い事業・ポートフォリオや、中長期的な成長に向けたビジネスプラットフォームを入手する機会を積極的に追求していきます。また、IT投資においては、デジタル案件やキャッシュレス等、私が将来有望と判断した事業に機動的に投資できる「CEO枠」を1,000億円確保しています。

 「Quality」は、経営基盤に関する方針です。サステナビリティ経営の加速をはじめ、従業員の能力発揮に向けた人材マネジメントや、健全なリスクテイク促進に向けたリスクアペタイト・フレームワークの高度化等、グローバル金融グループとして、ステークホルダーの皆さまからの期待に応えるべく、経営基盤の不断の強化に取り組んでいきます。

 現在、我々のボトムラインは実力ベースで6,400億円程度です。前中計では、与信関係費用の戻りや政策保有株式の売却益が加わって、財務ベースのボトムラインは3年連続で7,000億円を超過しましたが、私は、この利益水準に満足していません。新中計では、重点戦略への取組を通じて連結業務純益を1,000億円伸ばし、実力ベースでも7,000億円を超えるボトムラインを目指していきます。

7つの重点戦略

 実力ベースの利益水準引き上げに向けては、7つの重点戦略に注力します。各戦略については、後のページで各事業部門長から詳細に語ってもらうこととし、私からは「Transformation & Growth」を表す特徴的な戦略を2つだけ紹介します。

資産運用ビジネスのサステナブルな成長

 人口が減少し続けていく日本でリテールビジネスのサステナブルな成長を実現させるためには、成長分野への経営資源の重点的な配分と、効率性の追求を同時にしっかりと行っていく必要があります。効率性の追求に向けては、店舗改革をはじめとする対面取引の生産性向上や、デジタル・リモートによる非対面チャネルの高度化により、お客さまの利便性を維持・向上させつつコスト構造改革を進めます。その一方で、保有資産20億円以上を有する大口富裕層のお客さまに対しては、三井住友銀行、SMBC日興証券、SMBC信託銀行の多様なサービスを「SMBC Private Wealth」という新ブランドの下で一本化し、エッジの効いた運用商品に加え、事業承継、信託、手厚いコンシェルジュサービス等のトータルソリューションを提供していきます。また、マスアフルエント層のお客さまに対しては、お取引データを活用し、個々のお客さまの嗜好やライフステージに合わせたパーソナライズド・マーケティングを展開します。これにより、資産運用ビジネスにおいてトップラインの成長と損益分岐点の引き下げを同時に実現していきます。

アジアのフランチャイズ拡大

 我々は、「マルチフランチャイズ戦略」の下、アジアの新興国に第2・第3のSMBCグループを創るべく、10年・20年の計で取り組んできました。足元では、新型コロナウイルス感染症の影響により、本戦略の主要対象国であるインドネシア経済も減速が予想されます。しかし、我々がこの戦略を策定した際に決めたことが3つあります。すなわち、フルラインの金融事業展開を目指すこと、地元経済に根差すローカライズされた企業になること、そして時々の環境が変化しても「絶対に逃げない」ということです。今回のように景気が急激に後退すると、全世界的に母国回帰の動きが強まり、海外事業からの撤退という議論が起こりがちです。しかしそれでは、その国の中長期的な経済成長とともに歩むことはできません。かつての日本がそうであったように、インドネシアのような中長期的なGDP成長が見込まれる国に寄り添い、景気が後退しても逃げず、しっかりと根を張って事業基盤を構築していきます。そして、今後はインドやフィリピン等、他国への横展開に加え、証券、リース、コンシューマーファイナンスといったグループ事業も拡大し、総合的な金融グループとして、さらなる高みを目指していきます。

ステークホルダーの皆さまへ

 新中計のさらにその先を見据えて、ステークホルダーの皆さまに対する、私のコミットメントをお伝えします。

お客さまの未来を待ち受ける

 まずは、新型コロナウイルス感染症の影響に苦しむお客さまのサポートに最優先で取り組みます。これまで我々は、お客さまの生活に欠かせない金融機能の提供を継続できるよう、三井住友銀行のすべての支店の営業を十分な安全措置を講じた上で継続してきたほか、個人・法人のお客さまの資金繰りを支えるため、通常より金利水準を抑えた貸出や返済期間の延長等、柔軟に対応してきました。お客さまや社会が一刻も早く元の姿に戻れるよう、社会インフラとしての機能をしっかり果たしていきます。

 また、我々が目指す方向性として、情報産業化、プラットフォーマー化、ソリューションプロバイダー化の3つを挙げましたが、これは今後お客さまが進んでいく未来を思い描き、その中で、我々金融機関が果たせる役割とは何なのかを考え抜いて導いたものです。お客さまに相談されてから行動するのではなく、お客さまや社会の行く先を常に考え、お客さまが未来を思い立った時に、我々にはすでにサポートの準備ができている、そんなプロアクティブなソリューションプロバイダーを目指していきます。

従業員が前向きに夢を追いかけられる職場を創る

 まず、今回のコロナ禍の中で、お客さまの生活に欠かせない金融機能の維持に向けて、日々の業務に矜持を持って励んでいるすべての役職員に対し、心から感謝の念を伝えたいと思います。私には、金融機能の提供を継続するためにも、10万人を超える従業員を感染症から守る責務があります。支店での感染予防徹底やメンタルも含めた健康状態のケア等、従業員が安心して健康に業務を継続するためのサポートを最大限続けていきます。

 また、私は、従業員が明るく前向きに自分の夢を追いかけられる職場を目指しています。従業員のエンゲージメント向上や挑戦を促す人事制度は、単に枠組を作るだけで掛け声倒れに終わってしまっては全く意味がありません。実際に活気溢れる組織となるよう、先に述べた社内カルチャーの醸成に加え、社内SNSの整備も進めています。グループの従業員同士が国や部署の隔てなく日常的に交流し、誰かがアイデアを出せば、周りが「いいね!」と応援する。できない理由を探すのではなく、どうしたらできるかを皆で考える。現在のような厳しい業務環境においても、従業員が楽しい気持ちで自発的に仕事に励みイノベーションの種が自ずと湧いてくる、そんなワクワクする職場を創っていきます。

持続可能な社会を、お客さまとともに創る

 サステナビリティとは、現代の世代の誰もが経済的繁栄と幸福を享受できる社会を創り、それを将来の世代にしっかりと受け渡すこと、と捉えています。昨今、地球温暖化による気候変動やサプライチェーンにおける人権侵害等、さまざまな環境・社会問題がグローバルな規模で生じており、ファイナンスを通じてあらゆる産業の結節点となっている金融機関に期待される役割も極めて大きくなってきています。

 我々は、事業を通じた社会的な課題の解決とSDGsへの取組を一層強化すべく、2020年4月に「SMBCグループ サステナビリティ宣言」を公表し、その遂行のための10ヵ年計画として「SMBC Group GREEN×GLOBE 2030」を策定しました。具体的なアクションプランとして、2030年までの10年間で、環境分野では、グリーンファイナンス10兆円の実行や三井住友銀行のCO2排出量の30%削減を目指すほか、社会分野では、ファイナンシャル・インクルージョンの実現に向けた金融リテラシー教育を150万人に実施するとともに、アジア新興国におけるリテール金融サービスの拡大等に取り組んでいきます。また、ガバナンス分野では、サステナビリティ経営を支える基盤として、コーポレートガバナンス、リスクガバナンスの不断の高度化を進めていきます。

 しかし、こうした取組は我々だけでは限界があり、個人・法人のお客さまを巻き込んで大きな潮流を作ることが重要です。先般立ち上げた環境・社会課題解決に取り組むコミュニティプラットフォーム「GREEN×GLOBE Partners」を通じ、環境や社会に関連する情報提供やセミナー開催に加え、参加者同士のマッチングや、社会課題解決に資するプロジェクトの立ち上げ等に取り組むことで、持続可能な社会をお客さまとともに創っていきます。

株主価値を財務・非財務両面で最大化する

 前中計の下では株主還元強化を打ち出し、3期連続で計40円の増配を実現した結果、配当性向が30%から37%へと上昇したほか、自己株取得も2回/合計1,700億円実施しました。新中計においても株主還元強化の方針は不変であり、配当を基本に、自己株取得も機動的に実施していきます。足元では新型コロナウイルス感染症により厳しい業況に直面していますが、新中計での事業戦略を着実に遂行して、3ヵ年ではしっかりとボトムラインを伸ばしつつ、配当性向も40%を目指し株主還元強化を進めていきます。

 また、こうした定量的・財務的な還元強化に加えて、非財務面での長期的な企業価値向上も、株主の皆さまにとっては極めて重要であると認識しています。これまで述べてきたような「3つ方向性」に即したお客さまへの付加価値の提供や、持続可能な社会の実現に向けたESGに対する取組に注力することにより、非財務的な企業価値の向上にも取り組んでいきます。そして、今後も財務情報のみならず非財務情報も積極的に開示し、株主の皆さまとの情報の非対称性を緩和しつつ、株主資本コストを低減させることで、株主価値の持続的な向上に努めていきます。

未来を切り拓く

 中国戦国時代の「列子」という典籍に「愚公山を移す」という説話があり、私の座右の銘のひとつにしています。昔、中国のある高い山の麓に、愚公と呼ばれるお年寄りが住んでいました。目の前にある大きな2つの山が通行の妨げになるということで、一念発起して山を掘り始めました。それを見た近所の人から「馬鹿じゃないのか」「そんなことをしてもお前が生きているうちにその山はなくならないぞ」と言われても、愚公は「いやいや、私が死んだら息子が続ける。息子が死んだら孫が継ぐ。ずっとやり続ければ、いつか山はなくなる」と答えて決して諦めませんでした。すると、それを聞いた神様が「その志やよし」として山を移してくれたという説話で、怠らず営々と努力を続ければ、どんな大事業も成し遂げられるという含意です。

 現在、我々はグローバルな景気後退と不可逆的な構造変化に直面し、大変厳しい業務環境に置かれていますが、私は、ビジョンの実現に向かって着実な一手を打ち続ければ、必ずやいつの日か山が動き、明るい金融の未来を切り拓くことができると信じています。組織としてのさらなる高みを目指し、私自身が先頭に立ち、従業員一同、全力で取り組んでいきますので、ステークホルダーの皆さまには、今後もより一層のご理解・ご支援を賜りますよう、何卒宜しくお願い申し上げます。

三井住友フィナンシャルグループ<br>取締役 執行役社長 グループCEO 太田 純 三井住友フィナンシャルグループ<br>取締役 執行役社長 グループCEO 太田 純

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