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三井住友フィナンシャルグループ

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MESSAGE FROM THE GROUP CFO 資本の厚さを活かし、新型コロナウイルスに苦しむお客さまの資金繰りを全力でサポートした上で、株主還元強化・成長投資も追求していきます。 取締役 執行役専務 グループCFO 中島 達 MESSAGE FROM THE GROUP CFO 資本の厚さを活かし、新型コロナウイルスに苦しむお客さまの資金繰りを全力でサポートした上で、株主還元強化・成長投資も追求していきます。 取締役 執行役専務 グループCFO 中島 達

グループCFO兼CSO就任一年目は、新中期経営計画(以下、新中計)策定の年でした。
昨年、「企業経営において財務戦略と事業戦略は一体不可分」だと申し上げた通り、両者を司るCFO兼CSOとして常に両方の視点から立案・検証することができ、改めて兼任体制のメリットを実感しました。
今後はこの計画を実行していくフェーズに入りますが、引き続きこのメリットを活かし、俯瞰的かつスピーディに取り組んでいきます。

経営効率のさらなる向上

 SMBCグループでは、「強靭で質の高いグループ経営」を目指して、「資本効率・資産効率・経費効率」の3つの経営効率の向上にこだわった運営を行っています。

前中期経営計画の振り返り

 前中期経営計画(以下、前中計)では、我々の競争優位性およびビジネスの成長性に基づいて事業ポートフォリオを4つの象限に分類し、この分類に沿って、スピーディーな事業再編を通じたグループ体制の最適化および資本・資産効率の向上を図ってきました。

 たとえば、「Transform」、「Enhance」に該当する関西地銀およびリース事業は、資本効率・資産効率を追求するため、非連結化を通じてリスクアセットを削減しました。一方で、成長性はあるもののグループの競争優位性が高くない「Build」に位置するアセットマネジメントビジネスに関しては、英国TTインターナショナル買収・米国Aresへの出資等、本格的な海外展開のために経営資源を投入しています。

グループ再編による資本・資産効率の向上

グループ再編による資本・資産効率の向上 グループ再編による資本・資産効率の向上

 財務目標としては、収益性・効率性・健全性を表す指標として、ROE・経費率・普通株式等Tier1(CET1)比率の3つを掲げました。新型コロナウイルスの影響を受けて2019年度のトップラインが落ち込んだこともあり経費率目標は未達となりましたが、ROEおよびCET1比率は目標を達成し、着実に成果を上げることができたと思っています。

前中期経営計画の財務目標
ROE*

ROE* ROE*

経費率

経費率 経費率

CET1比率*

CET1比率* CET1比率*

新中期経営計画の財務目標

 新中計においても、経営効率の向上にこだわった運営を行う方針は変わりません。CEOメッセージにもあるように、基本方針の「Transformation」で抜本的な効率化とリモデリングによる収益成長に取り組むとともに、「Growth」では資本の活用によるさらなる成長を追求します。

 したがって、財務目標についても「収益性・効率性・健全性」の3つの指標を維持しますが、収益性はROEからROCET1に、効率性は経費率からベース経費による管理に変更します。

 「収益性」については、健全性と同様にCET1を重点管理する観点から、分母をCET1とするROCET1に変更し、8.5%以上の水準を目標とします。前中計の目標であったROE7〜8%というのは、ROCET1に換算すると概ね8〜9%に相当しますので、新しい目標は、実質的に0.5%程度高い水準を目指すものになります。

 「効率性」については、経費コントロールと成長投資の両立を実現するため、ベース経費という概念を導入して管理することとしました。定義については後述しますが、2019年度の水準比削減することが目標です。

 「健全性」については、前中計と同様、バーゼルⅢ最終化による規制影響を加味し、その他有価証券評価差額金を除いたCET1比率で10%程度を目標とします。

新中期経営計画の財務目標 新中期経営計画の財務目標

コストコントロール

 新しく効率性の指標とした「ベース経費」は、営業経費から、成長投資にかかる経費や収益に連動して増加する経費、一時的な要因等を除いたものです。「経費率による管理ではどうしても縮小均衡に陥りがちで、成長のための投資等が十分にできない」という前中計での反省を踏まえて導入したものであり、決して、経費を使うための言い訳として経費率から切り替えたわけではありません。連結経費の9割程度がベース経費に該当しますので、ここをしっかりコントロールすることで、効率性の向上は十分に可能だと考えています。

 前中計では、「業務改革による効率性向上」「リテール店舗改革」「グループ内事業再編」の3つの主要施策を通じて、目標の500億円を上回る540億円の経費削減を実現しました。それでも、海外ビジネスの強化にかかる経費やシステム経費の増加により、ベース経費は3年間で約700億円増加しています。

 新中計でも、やはり海外ビジネス・システムにかかる経費が3年間で1,000億円弱増加しますが、より一層コストコントロールの手綱を締めることで、「ベース経費を増やさない」という高い目標にチャレンジします。具体的には、「国内のビジネスモデル改革」「リテール店舗改革」「グループベースの業務集約・共通化」を通じて、前中計の倍額となる1,000億円の削減を目指します。

3年間のベース経費増減イメージ

3年間のベース経費増減イメージ 3年間のベース経費増減イメージ

資本政策の基本方針は不変

 新中計においても、引き続き、健全性確保・株主還元強化・成長投資をバランスよく実現していきます。

持続的な株主価値の向上 持続的な株主価値の向上

十分な健全性の確保

 前中計で資本蓄積を進めた結果、健全性指標のCET1比率が目標である10%程度に到達しました。これは、2023年から2028年にかけて段階的に適用されるバーゼルⅢ最終化の影響を織り込んだ上で、その他有価証券評価差額金を除いて算出したものです。我々が現在求められている現行規制ベースのCET1比率で見れば2020年3月末で15.5%と、所要の8%を大きく上回る十分な資本余力を保持しています。

 この資本の厚みという我々の強みは、現在のような危機局面においてこそ最も威力を発揮します。この強みを活かして、まずは、新型コロナウイルスに苦しむ国内外のお客さまに対する資金繰り支援にしっかりと対応していきます。このため、2020年度末では当初新中計の1年目の計画としていた残高と比べてリスクアセットが5兆円増加する見通しで、これはCET1比率で見れば0.5%の低下影響にあたります。したがって、当面の資本運営として、CET1比率を新中計の財務目標10%程度から新型コロナウイルス関連の貸出金の増加分に相当する0.5%を切り下げて、9.5%程度で運営していく方針です。また、この資本の十分性があるからこそ、後述する株主還元および成長投資に対しても、積極的なアクションが取れると考えています。

株主還元のさらなる強化

 前中計では、3期連続で合計40円の増配を実現するとともに、合計1,700億円の自己株取得を実施しました。新中計においても、「配当を基本に、機動的な自己株取得も実施する」という当社の株主還元の方針は不変です。また、累進的配当、すなわち、減配せず、配当維持もしくは増配を原則とし、2022年度までに配当性向を40%まで引き上げるという点についても、継続して取り組んでいきます。

 2019年度の配当については、親会社株主純利益が目標の7,000億円を超えたことに加え、配当性向目標40%に向けて、期初予想比・前年比ともに10円の増配となる190円としました。2020年度の配当予想は、大幅な減益を予想している状況ではありますが、累進的配当方針に基づき、同じ190円で据え置きとしています。分母である親会社株主純利益が大幅な減益となることで、2020年度の配当性向予想は65%となりますが、これによって「配当性向40%を達成」とするつもりはありません。足元は厳しい業務環境にありますが、新中計の3ヵ年でしっかりと親会社株主純利益を成長させるとともに、その分母に基づいた配当性向40%を実現すべく、さらなる増配を目指します。

 自己株取得については、2020年5月の実施は見送りとしました。我々の株価が現在非常に割安な水準にあることは認識しています。しかし、今はまず、新型コロナウイルスに苦しむ国内外のお客さまへの資金繰り支援に対する資本活用が最優先である上、新型コロナウイルスの影響を見極めるにはもうしばらく時間が必要であることから、このような判断に至りました。

株主還元推移

株主還元推移 株主還元推移

将来に向けた成長投資

 資本蓄積の途上にあった前中計とは異なり、CET1比率が目標水準に到達したことで、新中計は将来の成長に向けた資本活用ができるステージとなります。

 もちろん資産効率は引き続き重視しますので、低採算アセットや政策保有株式の削減は進めていきますが、同時に、成長分野にはしっかりとリスクアセットを投入していきます。低採算アセット・政策保有株式の削減分も合算し、7つの重点戦略領域を中心に3年間で5,000億円の資本を投入し、5兆円のリスクアセット増加を図る計画です。
なお、新型コロナウイルス関連の貸出金に伴うリスクアセット増加については、2022年度末までにはすべて返済され、影響はニュートラルと見ています。

 M&Aを通じたインオーガニック成長についても、健全性の確保を前提に、投資規準を満たす案件を追求していきます。ターゲットは従来同様、「海外における資本・資産効率の高い投資」および「中長期的な成長に向けたビジネスプラットフォームを創るための投資」の2つです。前者には、我々がグローバルに強みを有する航空機リースやミドルLBO等の投資案件およびアセットマネジメント事業の買収等が、後者には、アジアにおける商業銀行業務のほか、証券、信託、デジタル関連の投資案件が該当します。

 我々はリーマン・ショック後に売りに出された航空機リース事業(現SMBC Aviation Capital)を欧州の銀行から買収しましたが、現在のようなマーケット環境では、従来より低い価格で優良な投資案件に出会えるチャンスも多くなります。もちろん、3つの投資規準に則り、ディシプリンを持った投資判断を行っていきます。

 2020年度は親会社株主純利益を4,000億円と予想していますが、配当は据え置きとしているため、2019年度同様に2,600億円を充当することになります。さらに、新型コロナウイルスに苦しむ国内外のお客さまに対する資金繰り支援にしっかりと対応した上で、残りの資本の活用方法を検討していきます。

新中期経営計画におけるリスクアセットの増減額

※下記表は左右にスクロールしてご覧ください →

新中期経営計画におけるリスクアセットの増減額 新中期経営計画におけるリスクアセットの増減額

2019年度・2020年度の資本配賦

※下記表は左右にスクロールしてご覧ください →

2019年度・2020年度の資本配賦 2019年度・2020年度の資本配賦

政策保有株式の削減

 2015年10月より5ヵ年で簿価5,000億円の削減を目指してきましたが、期限まで半年を残した2020年3月末の段階で約4,800億円を削減し、売却についてお客さまの応諾を取得済のものを含めれば約5,500億円の削減に目処をつけ、計画の達成が確実となりました。

 新中計に合わせて政策保有株式も新たな削減計画へと移行し、2020年4月以降の今後5ヵ年で、合計3,000億円の削減を目指します。

 これまで削減が相応に進み、現在残っている銘柄にはより丁寧な交渉を必要とする先も多く含まれるため、前計画と比べると削減ペースは低下しますが、中長期的に削減を進めていく方針に何ら変わりはなく、削減に向けた交渉を今後も精一杯続けていきます。

政策保有株式の削減 政策保有株式の削減

より充実した投資家コミュニケーションを目指して

 投資家やアナリストの皆さまと建設的な対話の場を持つことは、グループCFOとしての最も重要なミッションのひとつだと考えています。

 2019年度は、定例であるマネジメントによる国内外の投資家の皆さまへの個別訪問やスモールミーティング、各事業部門長によるIR Dayに加えて、皆さまの関心の高いテーマであるSMBCグループのキャッシュレス戦略に関する説明会等を開催しました。こうした場で投資家・アナリストの皆さまから頂戴したご意見を取り入れることで、より良い新中計や資本政策が策定できたのではないかと感じています。

 また、SMBCグループでは「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」提言への対応として、2019年4月にグローバル金融機関で初めて、気候変動による財務影響を試算・開示しました。この時は気候変動による物理的リスクのみを対象としていましたが、その後もシナリオ分析の高度化を進め、2020年1月には、移行リスクについても開示しています。

 こうした取組について、日本証券アナリスト協会の「ディスクロージャー優良企業(銀行部門)」および日本IR協議会の「IR優良企業賞」をはじめ、高いご評価を頂戴したことは大変嬉しく思っています。

 2020年度は新型コロナウイルスの影響により、5月の投資家説明会がウェブ開催となったほか、国内外の投資家の皆さまへの個別訪問もウェブ会議・電話会議で行う等、これまでとは異なる対応が求められています。しかし、こうした非常事態においてこそ、対話の質を落とすことなくタイムリーな情報提供を行っていくことが、私の責務だと考えています。新型コロナウイルスの動向により、我々の業務環境や収益予想に変更がある場合には適時適切な開示を行っていく予定ですし、非財務情報やESG情報の開示にもさらに注力していきます。2020年6月には、SMBCグループとして初めて、ESGをテーマとしたスモールミーティングも開催しました。

 引き続き、皆さまにとって有用な情報を積極的にご提供していくとともに、我々の持続的な成長と企業価値の向上にもつなげていきたいと考えています。

ディスクロージャー優良企業 IR優良企業賞 ディスクロージャー優良企業 IR優良企業賞

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