CFOメッセージ

MESSAGE FROM THE GROUP CFO お客さまや社会・経済のコロナ禍からの回復に貢献するとともに、株主還元と成長投資のバランスの取れた資本運営を行っていきます。 取締役 執行役専務 グループCFO 中島 達 MESSAGE FROM THE GROUP CFO お客さまや社会・経済のコロナ禍からの回復に貢献するとともに、株主還元と成長投資のバランスの取れた資本運営を行っていきます。 取締役 執行役専務 グループCFO 中島 達

 2020年度はコロナ禍により引き起こされたさまざまな社会課題、それに伴う人々の意識や行動の変化、金融市場の変動等への対応を余儀なくされた1年となりました。我々SMBCグループも、従業員の安全に最大限配慮しつつ、金融・非金融両面から、お客さまへのサポートを最優先してきました。そうした中、グループCFOおよびCSOを兼務する私が併せて意識してきたのは、2020年4月にスタートした中期経営計画で掲げた成長施策の進捗状況です。すなわち、Transformation & Growthとして掲げた7つの重点戦略分野の強化策、経費効率における優位性を拡大するためのコストコントロール施策、資本面の優位性を活かしたインオーガニック成長への取組といった中期経営計画の施策が、コロナ禍による大変困難な業務環境においても所期のペースで進捗を示し、期待する効果を出せるかを注視してきました。

 2020年度決算を経て、我々のビジネスに対する影響もクリアになりました。決算の数字自体からは、コロナ影響と打ち消し合って中期経営計画の施策の効果が見えにくくなっているものの、ベースとなる収益力は、しっかりと強化できた1年でありました。SMBCグループが、この困難な状況においても各種施策を着実に推進し、その具体的な成果を示すことができたことを大変心強く感じています。この流れを加速することで、そして、コロナ禍で生じたさまざまな変化を積極的に捉えてビジネスチャンスにつなげることで、2021年度、さらに中期経営計画の最終年度である2022年度へ向けて、より力強く、収益力の強化を進めることができると確信しています。

足元の業務環境

(1)2020年度決算の総括

 連結業務純益は、コロナ禍によるマイナス影響が約1,000億円あったにもかかわらず、前年度並みの1兆840億円となりました。期初にある程度想定していた通り、我々が本来得意としているクレジットカードやコンシューマーファイナンス、航空機リースが苦戦を強いられました。一方で、資産運用ビジネスや起債ニーズの高まりを受けた海外証券ビジネスが好調に推移したことに加え、当初想定していなかった経費の減少もあり、連結業務純益へのマイナス影響は期初想定した1,700億円を大きく下回る結果となりました。
 与信関係費用は国内外で増加したものの、各国の政策効果や流動性支援が奏功し想定比低位に抑制されたこと等から、当初想定を900億円程度下回る3,605億円となりました。
 その結果、コンシューマーファイナンス事業における利息返還損失引当金の繰入等、将来のリスクに対するプロアクティブな対応を行ったものの、親会社株主純利益は5,128億円となりました。ここでも、マイナス影響額は想定の3,100億円を大幅に下回り、1,900億円となっています。

2020年度決算の総括

(2)中期経営計画の進捗

 SMBCグループは、収益性、効率性、健全性の3つを中期経営計画の財務目標として掲げ、経営効率にこだわった運営を行っています。2020年度、収益性を表す「ROCET1」は、親会社株主純利益が大きく減益となったことにより、目標の8.5%に対し、6.9%にとどまりました。他方、効率性を表す「ベース経費*1」は、コロナ影響下での事業活動の制約や、コスト削減施策により、前年度を200億円程度下回る水準となりました。また、健全性を表す「CET1比率*2」は9.8%と、コロナ影響を踏まえた運営目線9.5%程度の範囲内で推移しています。

  • *1営業経費から、成長投資にかかる経費や収益に連動して増加する経費、一時的な要因等を除いたもの
  • *2バーゼルⅢ最終化・除くその他有価証券評価差額金

財務目標

財務目標

 施策面では、7つの事業戦略とコストコントロール施策に注力してきました。2020年度の親会社株主純利益は、コロナ影響を除けば7,000億円と、コロナ禍以前に想定していた中期経営計画1年目とほぼ同程度の水準になり、我々が中期経営計画の各種施策をしっかりと推進し、収益力を強化することができたことを示しています。
 たとえば、資産運用ビジネスでは、SMBC日興証券、SMBC信託銀行、三井住友銀行の関連機能統合による富裕層のお客さまとの取引強化、ペイメントビジネスでは、コロナ禍で加速したキャッシュレス化の流れを先導することによる飛躍的成長に取り組んできました。さらに、資産効率の向上へ向けたセールス&トレーディングビジネスやアセットマネジメントビジネスの強化、アジアの成長を取り込むためのフランチャイズ拡大もしっかりと進めることができ、中期経営計画の1年目として、着実な一歩を踏み出すことができたと思っています。
 一方で、コロナ禍も含めた業務環境の変化によって、我々の取り組むべき課題がより明確になった部分もあります。具体的には、投資銀行業務拡大による非金利収益の増強を目指してきた海外CIBビジネスにおいては、海外の社債発行市場が活況を呈する中、競合他社との差が開く結果となりました。
 こうした変化を捉えて各施策を適切に修正しつつ、3年間で連結業務純益1,000億円増加という目標の達成を確実なものにしていきます。

(3)コストコントロール

 経費効率の高さは、我々の競合他社に対する優位性のひとつです。その強みをさらに確固たるものにするために、中期経営計画では、「国内のビジネスモデル改革」「リテール店舗改革」「グループベースの業務集約・効率化」の3つの主要施策により、3年間で1,000億円のベース経費削減を目標として掲げました。
 2020年度はコロナ禍で一部施策に遅れが出た一方、デジタルシフトの加速や、事業活動の制約に伴う当初想定しなかった経費の減少等、追い風となる変化もあって、業務効率化による人員削減も進み、年間350億円のベース経費削減を実現しました。ここからさらに、デジタル化の加速を踏まえて、各ビジネスモデルの変革を進め、従来の削減目標1,000億円に加え、100億円から200億円の追加削減を目指していきます。
 また、IT投資におけるCEO枠を活用してグループ統一会計システムの導入にも取り組み、中期的にグループ各社の経理業務を集約・標準化して、業務効率化とコスト削減を目指します。変化の波に乗り遅れることなく、グループ全体でコストコントロールに全力で取り組み、今回追加した分も含めて、目標達成にこだわっていきます。

資本政策

持続的な株主価値の向上

(1)コロナ影響下における資本運営

 我々が健全性指標とするCET1比率は、バーゼルⅢ最終化の影響を織り込み、その他有価証券評価差額金を除いたベースで10%程度を目標としていますが、現在は、コロナ禍に苦しむ国内外のお客さまへの資金繰り支援を最優先に位置付け、その与信の増加分に相当する0.5%を切り下げて、9.5%を中心に±0.5%を運営目線としています。コロナ関連与信は、2020年7月のピーク時には計10兆円まで増加しましたが、起債市場の回復に伴って特に海外で返済が進み、年度末には期初想定の範囲内に収まった結果、CET1比率はコロナ関連与信による低下影響0.3%を含め、9.8%となりました。これは運営目線のレンジの中でも高い方での着地であり、足元で遵守すべき現行規制ベースにおいても、所要水準8%を大きく超過しています。
 コロナ影響下においても十分な健全性を維持し、この後ご説明する株主還元や成長投資に向けた資本余力も十分有していると考えていますが、今後の状況を見極めつつ、CET1比率の目標は徐々に従来の10%程度に戻していきたいと考えています。

2020年度・2021年度の資本配賦

2020年度・2021年度の資本配賦

(2)株主還元強化

 我々の株主還元の基本は配当であり、累進的配当、すなわち減配せず、配当維持もしくは増配を原則としています。また、中期経営計画の最終年度である2022年度には、配当性向40%に到達することを目標に掲げています。2020年度は、コロナ影響による親会社株主純利益の減少で、配当性向は51%と一時的に40%を超過した形になっていますが、これをもって目標達成とするつもりはありません。最終年度の親会社株主純利益の目標である7,000億円超を達成した上で、配当性向を40%とするのが我々の目指すところです。2021年度は、この達成に向けた着実な一歩として、期初予想の段階から10円増配の200円としました。
 一方、自己株取得については、2021年5月の決算発表時点では、国内ではワクチン接種が十分に進展せず、変異株の感染拡大が続き、緊急事態宣言も再度延長される等、コロナ禍の収束は見通せず、不透明な環境が続いていたことを踏まえ、実施の判断を見送りました。とはいえ、株価が割安な水準にとどまる中、自己株取得に対し、投資家の皆さまから期待する声が多かったことは十分に認識していますし、私自身も、我々の資本の水準だけを見れば、5月の自己株取得発表も不可能ではなかったと考えています。今後のコロナ影響や国内経済回復の動向を注視しながら、年度中も引き続き、機動的な自己株取得の実施を検討していきます。

株主還元推移

株主還元推移

(3)成長投資

 中期経営計画において、「Growth」を基本方針のひとつに掲げており、オーガニック・インオーガニックともに、成長分野にはしっかりと資本を投入し、グループの持続的成長を追求していきます。
 インオーガニック成長については、健全性を維持しつつ、「SMBCグループの戦略に合致すること」「ROCET1が8.5%以上展望可能であること」「リスクマネジャブルであること」の3つの投資規準の下、ディシプリンを徹底して、持続的な成長に資するかどうかを軸に判断します。
 コロナ禍を経て、業界再編や事業見直しがグローバルに進み、我々の重点戦略領域においても優良なM&A案件の候補が出てきました。中長期的には株主還元とのバランスを図りつつ、短期的には積極果敢にインオーガニック成長にも取り組んでいます。
 ターゲットとしては、「資本・資産効率の高い投資」および「中長期的な成長に向けたビジネスプラットフォームを創るための投資」の2つを考えています。前者は我々がグローバルに強みを有する航空機リースやミドルLBOファイナンス、後者はアセットマネジメント、アジア、証券、デジタル等の分野を想定しています。
 アセットマネジメントについては、インパクト債券投資に特化した英国のAffirmative Investment Management Partners Limitedとの資本業務提携や、プライベートエクイティファンド投資に特化したエー・アイ・キャピタル株式会社の子会社化等、特徴的な運用戦略を持つ国内外の運用会社をパートナー化して、中期経営計画で重点戦略に掲げた「グローバルベースでのアセットライトビジネス推進」に取り組んできました。また、三井住友ファイナンス&リースにおいても、不動産アセットマネジメントに強みを有するケネディクス株式会社を子会社化し、不動産事業の強化に取り組んでいます。
 また、アジアについては、「第2・第3のSMBCグループを創る」ことを目指してマルチフランチャイズ化を図っており、これまでインドネシアでの取組を進めてきました。2021年に入り、ベトナムの消費者金融最大手VPBank Finance Company Limited、フィリピンの商業銀行Rizal Commercial Banking Corporation、インドのノンバンクFullerton India Credit Company Limitedへの出資を発表しました。従来三井住友銀行の支店や既存出資先で行っている大企業取引と併せ、SME・リテールビジネスに参入することで、中期経営計画で掲げたアジアのフランチャイズ拡大に向けて、フルバンキングのプラットフォームづくりを一歩進めることができました。

(4)政策保有株式の削減

 2015年9月に発表した、5年間で5,000億円削減という目標を超過達成し、さらに5年間で政策保有株式3,000億円を削減する計画を発表しました。その初年度である2020年度は550億円を削減しました。加えて、売却についてお客さまの応諾を取得済の未売却残高が540億円あるため、2021年3月末時点で1,090億円の削減に目処がついたことになります。
 政策保有株式の削減は、株価変動リスクの抑制はもちろん、特にバーゼルⅢの最終化における所要資本の増加影響を抑える効果も大きく、資本政策上も非常に重要です。議決権行使助言会社の姿勢の厳格化や、東京証券取引所の市場区分の見直し、コーポレートガバナンス・コード改訂等を受けて、お客さま側でも縮減の動きが広がっていくことも見込まれますので、引き続きお客さまとの十分な対話を重ねながら、精一杯削減を進めていきます。

政策保有株式の削減

ステークホルダーとの対話

 業務環境の変化や業務の多様化が進む中で、SMBCグループの戦略と全体像をご理解いただくために、タイムリーに積極的な情報開示を行っていくことが重要だと考えています。2020年度は、コロナ禍で通常とは異なるコミュニケーションが求められましたが、そうした中、国内外の投資家の皆さまとのオンラインでの面談やスモールミーティングを多数開催し、これまで以上に適時適切な情報提供ができたと考えています。
 これらの対話は我々にとって新たな気づきや学びを得る貴重な機会であり、投資家の皆さまのESGやSDGsへの関心の高まりを受けて、2020年度は当社として初めて、ESGの取組に関するスモールミーティングを開催しました。また、株主還元への強い期待も実感しており、いただいたご意見を踏まえて今後の配当や資本政策にも取り組んでいきます。
 2020年度、日本証券アナリスト協会より、前年度に続いて銀行部門のディスクロージャー優良企業に選定されたほか、当社として初めて、個人投資家向け情報提供部門でも優良企業に選定されました。高い評価を頂戴したことは大変嬉しく、今後もこれらの取組を継続していきます。
 投資家やアナリストの皆さまと建設的な対話を重ねることは、グループCFOとしての最も重要なミッションのひとつだと考えています。今後も株主・投資家の皆さまにとって有用な情報を積極的に開示していくとともに、双方向の対話を通じて、持続的な成長と企業価値の向上を実現していきます。

取締役 執行役専務
グループCFO

取締役 執行役専務 グループCFO 中島 達 取締役 執行役専務 グループCFO 中島 達