CEOメッセージ

SMBC GROUP REPORT 2023 SMBC GROUP REPORT 2023

質の伴った成長を実現する

 「記録」よりも「記憶」に残る仕事。

 これは私が、新中期経営計画策定に向けた社内セミナーで、従業員から「質の伴った成長をするには具体的に何をすればいいか」と聞かれた際に伝えた言葉です。我々金融機関のビジネスは、お客さまからの信頼を基盤としています。信頼とは、コンプライアンスはもちろんのこと、安全・安心な事務・システム、お客さまのニーズを捉えた提案等、日々の仕事の積み重ねの上に成り立っています。数字上の成長だけに囚われず、真にお客さまに寄り添ってベストなソリューションを提供する努力を続けていけば、自ずと成果がついてくる。そのような「質の伴った成長」を実現するために、我々は今後どうしていくべきか、問題意識を従業員全員と共有し、一緒に考えてきました。

 前中期経営計画は、新型コロナウイルス感染症が瞬く間に世界中へ広がる中で始まり、その後も、ロシアによるウクライナ侵攻や、急激な円安、デフレからインフレへの転換、欧米の金融機関破綻を端緒とした不透明感等、先行きを見通しづらい難しい環境が続きました。しかし、そうした中においても我々は着実に歩みを進め、最終的には、連結業務純益・ボトムライン利益ともに、当初の目標を大きく上回る水準で締めくくることができました。また、アジアのマルチフランチャイズ戦略や海外証券ビジネス等、将来の持続的成長に向けた布石も着実に打ってきました。

 一方、課題も明確になりました。コロナ禍において、それまで我々が強みとしてきたビジネスが大きく落ち込み、より強靭な事業ポートフォリオへの変革を迫られています。また、グループ一体となったガバナンス体制を構築しようとしていた中で、コンプライアンス上の問題が発生する結果となり、経営基盤の強化は最重要課題です。

 今、我々を取り巻く環境は、大きく変化しています。グローバル化の反転やデカップリング、海外での金融緩和の終焉、デジタル化の一層の加速、気候変動問題への対応。個人の価値観は多様化し、消費に社会課題解決のストーリーを求める考え方も増えてきました。テクノロジーの進化は目覚ましく、生成AIにより驚くほど高度かつ自然な文章の作成が可能となった一方、我々利用する側にも十分にリスクを認識した上での活用が求められます。

戦略は不変。戦局を見極め、戦術を見直す

 以上の通り、我々は今、パラダイムシフトの真っただ中にいますが、そうした中においても、SMBCグループの進むべき方向性は変わりません。「最高の信頼を通じて、お客さま・社会とともに発展するグローバルソリューションプロバイダー」というビジョンは、経営環境が変化する中においても、金融機能を研ぎ澄ませ、非金融領域も含め質の高いソリューションの提供をグローバルベースで追求し、グループとして持続的な成長を実現することを目指して定めたものです。我々は、このビジョンの実現に向け、しっかりと歩みを進めていきます。

 一方、現下のパラダイムシフトは、旧来のしがらみを断ち切り、新たな未来を切り拓くチャンスでもあります。時代の大きな転換点においても、正しい方向に向かって力強く前進しつつ、戦局の変化を柔軟に見極め、スピード感をもって戦術を見直していく。こうした努力を愚直に重ねていくことで、我々は「質の伴った成長」を実現できると信じています。

 その実現に向けて、今般、我々SMBCグループは、新中期経営計画「Plan for Fulfilled Growth」を定めました。この「Fulfilled Growth」という言葉は、2022年の統合報告書で述べた「幸せな成長」の英訳として用いたものです。私は、経済の成長とともに、社会課題が解決に向かい、そこに生きる人々が幸福を感じられることが、「幸せな成長」だと考えています。企業としての使命を果たし、ステークホルダーの皆さまの期待に応えて、「幸せな成長」の時代に貢献していきたい。新中期経営計画「Plan for Fulfilled Growth」には、そんな私の強い決意を込めています。

 新中期経営計画では、基本方針として「社会的価値の創造」「経済的価値の追求」「経営基盤の格段の強化」の3つを掲げました。それぞれの基本方針について、くわしくご説明します。

戦略は不変。戦局を見極め、戦術を見直す

社会的価値の創造を柱に据える

SMBCグループは、三井と住友が
長きにわたり受け継いできた社会的価値の創造を目指す
事業の精神をもって、経済の成長や社会課題の解決をリードし、
そこに生きる人々が幸福を感じられる「幸せな成長」に貢献していきます。

 「幸せな成長の時代を創る」。

 2022年の統合報告書において、私はこれまでの人生を振り返り、高度経済成長期からの「成長」の30年、バブル崩壊からデフレ脱却に苦しんだ「停滞」の30年に続く、これからの30年をどのような時代にしたいと考えているかを、この言葉で表しました。

 「社会課題の解決を通じ、持続可能な社会の実現に貢献する」ことは、SMBCグループの経営理念に掲げられています。我々はこれまでも、「現在の世代の誰もが経済的繁栄と幸福を享受できる社会を作り、将来の世代にその社会を受け渡すこと」を目指し、時代の変化に対応しつつ、社会課題の解決に幅広く貢献してきました。

 しかし、地球の温暖化、人権の侵害、貧困・格差の拡大等、世界が直面する社会課題は拡大・深刻化の一途を辿っています。わが国においても、「失われた30年」とも呼ばれる長期の低成長に陥り、少子高齢化・人口減少は一段と加速しています。

 私は、今後、経済的価値の追求に加え、社会的価値の創造がより一層重要となり、社会的価値を創造できない企業は、経済的価値を追求する資格すらなくなる、と考えています。社会的価値を生み出す企業こそが、世界の「幸せな成長」に貢献する企業です。そのために我々SMBCグループは何をなすべきか、従業員一人ひとりが意見を持ち寄り、経営会議や取締役会でも議論を重ね、1年にわたって検討してきました。

 「社会的価値の創造は、本業の範囲内で行えば十分だ」という意見もありました。しかし、社会とは、我々が事業を営む上での礎であり、社会の発展なくして企業の持続的成長はあり得ません。だからこそ、我々は「社会的価値の創造」を経営戦略の柱のひとつに据え、時代の変化を先取りし、短期的には経済的価値に直結しない領域にも積極的に取り組んでいくことを決断しました。そして、我々が特に解決を目指すべき喫緊の社会課題として、「環境」「DE&I・人権」「貧困・格差」「少子高齢化」「日本の再成長」の5つを新たな「重点課題(マテリアリティ)」に定め、その解決に向けたゴールを設定し、事業戦略に落とし込みました。

 今後、それぞれの課題解決に向けたアクションプランを具体化し、「社会をより良くしたい」との思いを持つ従業員が自発的に参画する仕組を作ることで、一人ひとりが働きがいを感じつつ社会課題の解決を目指す取組を、グループ全体へと広げていきます。SMBCグループは、三井と住友が長きにわたり受け継いできた社会的価値の創造を目指す事業の精神をもって、経済の成長や社会課題の解決をリードし、そこに生きる人々が幸福を感じられる「幸せな成長」に貢献していきます。

環境

 緑の地球を未来へと受け渡すこと。これは今の時代を生きる我々の使命です。

 SMBCグループは、気候変動をはじめとするサステナビリティへの取組を、経営戦略上の重要課題と位置付け、脱炭素社会への円滑な移行に向けて、グループ一丸となって取り組んでいます。2023年度も、石炭セクターに対するフェーズアウト戦略の強化や、高排出セクターでの2030年中期目標設定等を着実に進めています。ただし、カーボンニュートラル実現に至る道筋は一本ではありません。秩序ある公正な移行に向けては、次世代技術の確立が不可欠であり、各国固有の事情にも十分に配慮しつつ、2050年までの現実的なルートとスピードを、お客さまとともに丁寧に見定めていく必要があります。SMBCグループは、金融機関としての矜持を持って、エネルギー安定供給の確保と長期的な脱炭素化の実現に最大限貢献すべく、トランジションや技術革新に向けたお客さまの取組をしっかりと支援していきます。

貧困・格差

 今回、我々のような金融機関が、「貧困・格差」を新たなマテリアリティと定めたことに、違和感を覚えた方も多いかもしれません。しかし今、発展途上国のみならず、厚生労働省の調査によれば、日本においても約7人に1人もの子どもが相対的貧困の状態に陥っており、親の所得格差が子どもの将来の所得格差につながるという、世代を超える「貧困の連鎖」が深刻な問題になっています。この負の連鎖を、なんとしても断ち切りたい。そんな強い思いから、本業の範囲を超え、経済的価値に直結しないこの社会課題に取り組むことを決意しました。SMBCグループは、パートナーとなる事業会社やNPOと連携しつつ、子どもたちに教育や挑戦の機会を提供します。また、我々が投資しているアジアの発展途上国においても、マイクロファイナンスの提供やそれに伴うコンサルティング活動を通じて、貧困層の社会的自立支援や、金融包摂の促進に注力していきます。

従来の延長線上にない成長を目指す

従来の延長線上にない高い目標の実現に向けて、
これまで掲げてきた「Transformation & Growth」を
一段と進化させ、3つの観点を重視して重点戦略領域に取り組んでいきます。

 グローバルな金融機関として世界に伍していくため、次期中期経営計画のボトムライン利益目標を1兆円以上とし、これからの3年間では、その通過点として9,000億円の実現を目指します。そのために、まずは人手に頼った生産性の低いビジネスや、低成長・低採算のアセット、環境変化により保有意義が低下した投資を、これまで以上に大胆に削減します。そして、それによって捻出した経営資源を成長投資や経営基盤強化にしっかりと割り振ることで事業ポートフォリオを変革し、資本効率の向上とレジリエントな業務運営を実現します。また、これまで種をまいたマルチフランチャイズ戦略をはじめとする成長投資については、その果実を着実に刈り取ることができるよう、しっかりと道筋をつけていきます。コストコントロールについても、国内のビジネスモデル改革やグループ機能の集約、海外業務の効率化を通じて、ベース経費の削減に全力で取り組んでいきます。

 ただし、この収益目標には国内の金利上昇は織り込んでいません。今後、本格的に金利環境が変わる場合には、しっかりチャンスを掴み、目標を引き上げることも考えます。

 従来の延長線上にない高い目標の実現に向けて、これまで掲げてきた「Transformation & Growth」を一段と進化させ、3つの観点を重視して重点戦略領域に取り組んでいきます。第1に、国内のマスリテールと中小企業向けホールセールビジネスにおいては、徹底したデジタル化や決済ビジネスの強化等を通じて、より効果的に顧客基盤を拡充しつつ、安定的かつ効率的なビジネスモデルを再構築します。第2に、国内外の大企業向けホールセールビジネスは、バランスシートの拡大に過度に依存しないビジネスモデルへ転換し、グループ各社の機能を活かしたフィービジネスの強化やリスクソリューションの多様化を進め、お客さまに対する付加価値をさらに高めるとともに、資産効率の向上を図ります。第3に、海外ビジネスについては、ポートフォリオの入替を進め、世界最大かつ安定的な成長が見込まれる米国市場やマルチフランチャイズ戦略の対象国を中心に、グループを牽引する力強い成長を目指します。

 各戦略については、各事業部門長から詳細を説明しますが、私からは特徴的な4つの事例をご紹介します。

デジタルを軸にしたマスリテールビジネス展開

 マスリテールビジネスでは、徹底的にデジタル化を進めます。2023年3月に新たにリリースした「Olive」は、銀行口座、カード決済、ファイナンス、証券、保険等の機能をひとつのアプリでシームレスに組み合わせたもので、日常的な決済や給与の受取、借入、資産形成等をワンストップでご利用いただけるサービスです。「Olive」を家計のメイン口座としてご利用いただければ、お客さまにとっての利便性が飛躍的に高まりますし、我々にとっても預金やクレジットカード利用額の増加が期待できます。さらに、オンライン証券に強みを持つSBI証券とともにサービスを拡充していくほか、SMBCグループの共通ポイントであるVポイントと、7,000万人を超える会員を擁するカルチュア・コンビニエンス・クラブのTポイントとの統合を通じて顧客基盤を拡大し、圧倒的なプラットフォームを目指します。

グローバルCIBの強化

 グローバルCIBは、大企業向けホールセールビジネスの中核ですが、海外証券機能の強化が課題でした。この抜本的な強化策が、米国総合証券会社Jefferiesとの提携です。2023年4月、Jefferiesとの戦略的資本・業務提携の強化を発表しました。2021年7月に開始した既存の協働分野に加え、新たに世界最大のマーケットである米国を中心にキャピタルマーケッツ、M&A等に協働領域を広げていきます。両社で重複する機能を集約し、SMBCグループはレンディングとデットキャピタルマーケッツ業務を、JefferiesはM&Aアドバイザリーとエクイティキャピタルマーケッツ業務をそれぞれ担い、SMBCグループのお客さまにも両社で共同マーケティングを行っていきます。また、本提携の強化にあたり、Jefferiesに対する経済持分を最大15%まで引き上げます。互いの強みを掛け合わせることにより、新たなビジネスチャンスの創出やグローバルベースでの高度な金融サービスの提供を通じて、ともに成長していけると私は確信しています。同じゴールを目指して課題を共有しながら苦楽をともにする真のパートナーとして、今後着実に協働の成果を積み重ねていき、より一層提携を深化させていきます。

Jenius Bank

 米国でのデジタルバンク事業の立ち上げは、私がニューヨークに出張した際、現地の駐在員に直談判されたことから始まった企画ですが、夢の実現に向けて熱い思いを持ったメンバーが集まり、今では270名ものチームとなって、いよいよ2023年開業に至りました。

 決してブルーオーシャンだとは思っていませんが、我々は、短期間でトッププレイヤーを目指そうとしているわけではありません。店舗網や旧来型のシステムを持たないからこそ、柔軟な戦略によって参入し、最新の技術を駆使して、新しい金融体験を提供していくことが可能です。まずは、良質な顧客基盤を獲得してアセットの積み上げに注力し、事業基盤の拡大に伴って段階的に商品ラインアップを拡充していきます。10年のスパンでじっくりと育て、SMBCグループの持続的な成⾧を支える柱のひとつとなっていくことを楽しみにしています。

Jenius Bank PresidentのJohn Rosenfeldと

Jenius Bank PresidentのJohn Rosenfeldと

マルチフランチャイズ戦略

 2014年に発表した中期経営計画でマルチフランチャイズ戦略を掲げてから約10年、我々は高い経済成長が見込まれるアジアの4ヵ国において、第2・第3のSMBCグループを創ることを目指し、着実に取り組んできました。特に前中期経営計画では、一足先にBank BTPNを連結子会社としていたインドネシアに続いて、インド、ベトナム、フィリピンへの出資を実現し、すべての対象国に礎を築くことができました。出資先との幅広い事業領域での協働に関するディスカッションを通じて、各国の高い成⾧ポテンシャルを再確認しています。今後はSMBCグループとのシナジーに限らず、出資先間のノウハウ共有を通じて、グループ内でのシナジー創出も目指しています。新中期経営計画は、これまでの取組の成果を一層高めていくステージです。信頼できるパートナーとともに、協働の効果を最大化し、各国の経済成長を上回る事業の拡大を目指します。

Quality builds Trust

 「経営基盤の格段の強化」は、これまで以上に重い意味を持っています。2022年の行政処分によって損なわれたステークホルダーからの信頼を取り戻すべく、信頼される水準まで質を高めるという意味で、第3の柱のキーワードを「Quality builds Trust」としました。まずは、経営の大前提であるガバナンス・コンプライアンスの改善に、グループを挙げて取り組んでいきます。また、積極的な投資を通じてITインフラを整備し、不透明な環境下におけるリスクへのプロアクティブな対応力を向上させていくことで、レジリエントな事業運営を目指します。

 従業員が前向きに夢を追いかけられる職場を創ることも、経営基盤を強化していく上での重要なポイントのひとつです。我々を取り巻く環境がいかに変化しても、SMBCグループの競争力の源泉が「人」であり、「人」が最も大切な経営資源であることには変わりはありません。グループCEOに就任して以来、「カラを、破ろう。」というスローガンの下、固定観念に囚われずに自ら変化していく企業カルチャーを醸成することに力を入れてきました。従業員の前向きな挑戦を応援し、彼らの力を最大限に発揮できる最高の舞台を整えることは、経営者としての重要な責務であると認識しています。

 中堅・若手による現場起点のアイデアを活かし、社内ベンチャーを立ち上げる「社長製造業」プロジェクトでは、2022年にアプリを活用した家族間の見守りサービスである「ファミリーネットワークサービス」を開始し、新会社の社長には30代の女性従業員が就任しました。従業員一人ひとりが、自由な発想とチャレンジでカラを破って強くなり、社会にポジティブなインパクトを与えていくことが、将来の「幸せな成長」の時代につながっていくと確信しています。

 また、新たにマテリアリティと定めた「DE&I(Diversity, Equity & Inclusion)・人権」は、成長戦略そのものです。SMBCグループでは、日本および38の国と地域で、多様性に富む11万人以上の従業員が働いています。お互いを尊重しながら働くことが我々の競争力につながり、豊かな個性とさまざまな価値観のぶつかり合いから未来のイノベーションが生まれます。2023年4月には、多様でプロフェッショナルな従業員が、挑戦し続け、働きがいを感じる職場の実現を目指すための旗印として、「SMBCグループ人財ポリシー」を制定しました。従業員と企業が、ミッション、ビジョン、バリューを共有し、相互にコミットすることで、グループ・グローバルベースの人材力を高めていきます。

新中期経営計画策定に向けた社内セミナーの様子

新中期経営計画策定に向けた社内セミナーの様子

企業価値の持続的向上

 前中期経営計画の下では、3年間で計50円の増配を実現し、配当性向目標40%を達成しました。自己株取得については、3年間で計2,000億円の枠を設定しましたが、一方で、将来の成長に向けた種をまくためにインオーガニック投資に約5,100億円を投じました。この点について、投資家の皆さまから「成長投資偏重」というご意見があったことは承知しています。しかしながら、健全性を確保した上で、中長期的に株主還元と成長投資にバランスよく資本を配分していくという方針に変わりはありません。

 新中期経営計画でも、株主還元については配当を基本とし、累進的配当方針と配当性向40%目標を維持した上で、ボトムライン利益の成長を通じて増配の実現を目指します。加えて自己株取得については、2023年5月の判断を保留しましたが、外部環境を見極めながらこれまでよりも積極的に検討していきます。

 当社の株価は、依然としてPBR1倍を下回る状況が続いています。長年にわたり経済が停滞し、マイナス金利政策が続く我が国において金融の成長を悲観的に捉えられるのはやむを得ないかもしれません。しかし、そうした中においても、しっかりと成長戦略を示し、それを着実に実行していくことが重要です。新中期経営計画では、これまで以上に資本効率を重視し、重点戦略の実行による収益力向上と、事業ポートフォリオの見直しによる収益性改善を通じてROEを引き上げていきます。また、非財務面も含めて積極的に情報を開示し、ステークホルダーとも緊密に対話することで、情報の非対称性を極小化し、投資家にとっての資本コストを抑制します。こうした不断の努力を通じて、企業価値の持続的向上に努めていきたいと考えています。

夢が未来を創る

 「There is nothing like a dream to create the future.」。夢以外に、未来を創り出すものはない、というフランスの作家ヴィクトル・ユーゴーの言葉は、世界の先行き不透明感が高まっている今、強く心に響きます。

 冒頭に述べた通り、我々は、依然として激動の最中にあります。こうした状況下でも、従業員一人ひとりが、決して受け身にならず、自らが未来を創るのだという強い気概を持ち、自分自身が思い描いた未来や夢の実現に向けて精一杯挑戦してほしいということを、2023年の新年の挨拶として従業員に伝えました。描く夢が大きければ大きいほど、難しい課題や高い壁に直面することがあるかもしれません。そのような時でも、夢に向かう姿勢を崩さず、仲間と協力して粘り強く努力していくことが、SMBCグループをより強く、より大きく成長させるのであり、そしてその先に待っている未来こそ、「幸せな成長」すなわち「Fulfilled Growth」の時代だと私は信じています。

 SMBCグループをそのような組織にすることが、リーダーとしての私の夢であり、使命でもあります。私自身が先頭に立ち、グループ11万人の従業員とともに「Plan for Fulfilled Growth」を着実に遂行することで、この使命をしっかりと果たしてまいります。ステークホルダーの皆さまにおかれましては、今後ともより一層のご理解・ご支援を賜りますよう、何卒よろしくお願い申し上げます。

三井住友フィナンシャルグループ 取締役 執行役社長 グループCEO 太田 純

三井住友フィナンシャルグループ
取締役 執行役社長 グループCEO
※2023年11月25日に逝去いたしました

太田 純