CFOメッセージ

MESSAGE FROM GROUP CFO 「質の伴った成長」の実現に向けてスピーディーに施策に取り組み、資本効率を高めていくことで、持続的な企業価値向上につなげていきます。 取締役 執行役専務 グループCFO兼グループCSO 伊藤 文彦 MESSAGE FROM GROUP CFO 「質の伴った成長」の実現に向けてスピーディーに施策に取り組み、資本効率を高めていくことで、持続的な企業価値向上につなげていきます。 取締役 執行役専務 グループCFO兼グループCSO 伊藤 文彦

2023年4月にグループCFO兼グループCSOに就任しました。グループCSOとして戦略の全体像を俯瞰して重点戦略領域の施策を進めると同時に、グループCFOとして経営資源を適切に配賦して健全な財務・資本運営を行い、両方の観点から投資家の皆さまに分かりやすく、SMBCグループの戦略や事業内容をお伝えしていきたいと考えています。

前中期経営計画の振り返り

 前中期経営計画(以下、前中計)は、コロナ禍やロシアによるウクライナ侵攻等の想定外の出来事があり、先行き不透明な難しい環境が続きましたが、そうした中においても、「Transformation & Growth」として掲げた7つの重点戦略領域の施策を着実に実行し、デジタルやグリーンといった大きなトレンドについても、その加速を踏まえてプロアクティブに対応してきました。足元のビジネスの状況を見ますと、国内では、コロナ禍からの回復により企業活動が活発化し、設備投資や事業再編等、ポストコロナを見据えたソリューションの提供が増加したほか、海外においても銀行に対する資金需要が増え、証券ビジネス等の付帯取引も拡大してきています。また、決済ビジネスにおいては、ナンバーレス/カードレスカード等の次世代カードの発行により、キャッシュレス市場の成長を大きく取り込んだことに加え、インオーガニック成長については、我々が従来掲げてきたアジアのマルチフランチャイズ戦略や海外証券ビジネス等の分野において投資を実行し、将来の成長に向けた布石を打つことができました。

 その結果、最終年度の2022年度の連結粗利益は、各事業部門の主要ビジネスがバランスよく増益となり、グループ発足以降、初めて3兆円を突破しました。そして、親会社株主純利益は、航空機リース事業の追加減損や、不透明な環境に備えるためのフォワードルッキング引当の計上、リテールビジネスにおける店舗の減損等、将来に対する予防的な手当も十分に行った上で、前年比992億円増益の8,058億円と、2013年度以来の8,000億円台を記録し、当初の目標を大きく上回ることができました。

前中期経営計画の振り返り

 財務目標についても、ROCET1、ベース経費、普通株式等Tier1(CET1)比率の3つすべてにおいて、当初の目標を達成することができました。特に、ROCET1は当初の目標を1%近く上回る水準を実現しています。

財務目標

財務目標

新中期経営計画 Plan for Fulfilled Growth Plan for Fulfilled Growth

財務目標

 新中期経営計画(以下、新中計)においても「質の伴った成長」を目指す方向性に変わりはありません。収益面では足元の3年間だけではなく、次の中期経営計画(以下、次期中計)でボトムライン利益1兆円以上を実現することを見据えて、その通過点として9,000億円の達成を目指します。前中計に続いてROCET1、ベース経費、CET1比率の3項目を財務目標として掲げ、収益性、効率性、健全性にこだわった運営を行っていきます。

 特に、ROCET1については、これまで以上に資本効率の向上に注力し、3年間で9.5%以上、可能な限り10%に近付けていくことを目指すとともに、投資家の皆さまから多くのご意見をいただいていた東証基準ROEについても、次期中計以降で早期に8%を達成できるよう取り組みます。

財務目標

 具体的には、既存の事業ポートフォリオを見直して、これまで以上に大胆に経営資源をシフトさせていきます。低成長・低採算のアセットや、環境変化により保有意義が低下したアセット等の削減を進め、新中計で定めた重点戦略領域にしっかりと経営資源を投入するつもりです。

 また、これまで本社管理としていた損益・資本を各事業部門に配賦して、事業部門別の経営管理の高度化も進めるとともに、事業ポートフォリオの入替や成長施策の効果検証にも活かしていくことで、従来以上に資本効率を意識した運営を浸透させていきます。

コストコントロールとレジリエントな業務運営

 前中計では、「国内のビジネスモデル改革」「リテール店舗改革」「グループベースの業務集約」の3つの主要施策を通じて、3年間で当初目標1,000億円を上回る1,450億円のベース経費削減を実現しました。

 新中計においても、ベース経費で1,300億円、業務量で7,000人分、と前中計と同水準の削減を目指します。特に、国内のビジネスモデル改革においては、前中計以上に店舗の軽量化を進めます。より少人数での運営が可能な「ストア」へ切替を行い、デジタルとリアル店舗を組み合わせたハイブリッドなチャネル戦略を推進し、効率性の高いビジネスモデルを構築していきます。

 こうして捻出した経営資源を、重点戦略領域だけでなく、経営基盤の強化にも積極的に投入し、レジリエントな業務運営の実現を目指します。具体的には、信頼性の高い基盤システムやガバナンス体制の構築に向けて、経営基盤への投資を中心にIT投資を前中計から1,000億円強増額します。

2023年度の業績目標

 連結業務純益は1兆3,400億円、親会社株主純利益は8,200億円という目標を発表しました。この目標は、足元の欧米の金融機関破綻を端緒とする不透明なマーケット環境や、グローバルな景気の減速懸念、地政学リスク等、ダウンサイドリスクが顕在化した場合でも達成を目指すべき最低限の水準と考えています。実際には新中計で掲げた重点戦略を着実に進めていき、証券ビジネスの回復や、国内消費回復を捉えたクレジットカードビジネス、コンシューマーファイナンスビジネスの成長等のアップサイドの実現を通じて、より高い水準を目指していきます。

資本政策

基本方針

 新中計においても、健全性確保を前提に、株主還元強化と成長投資をバランスよく実現していく方針は変わりません。健全性の指標であるCET1比率は、バーゼルⅢ最終化の影響を織り込み、その他有価証券評価差額金を除いたベースで10%程度を目標としています。これは規制上求められる所要水準8.0%をベースに、さまざまなストレスシナリオにおいても所要水準を維持できる2.0%のバッファーを加えた数字であり、±0.5%を運営目線としています。

 2023年3月末のCET1比率は10.1%であり、資本は十分な水準を維持しています。一方で、不透明なマーケットで環境の変化や、金融規制・監督のさらなる強化により健全性の前提が保守的になる可能性も否定できません。マクロ環境や各国当局関係者の議論等を注視し、健全性確保のために、資本蓄積も必要に応じて検討していきます。

基本方針

株主還元強化

 我々の株主還元の基本は配当であり、累進的配当、すなわち、減配せず、配当維持もしくは増配の実施を原則としています。前中計では、2019年度の190円から2022年度の240円へ3年間で合計50円の増配を実現し、株主還元目標である配当性向40%を達成することができました。新中計においても、配当性向40%を維持し、業績のボラティリティをできるだけ抑えながら、ボトムライン利益の成長を通じて増配の実現を目指していきます。これを基に、2023年度の配当予想は250円としました。

 自己株取得については、前中計の3年間で2,000億円の実施を発表しました。2023年度分については、金融機関を取り巻く環境の不透明感が足元で続いていることから、上期決算まで実施の判断を見送りましたが、引き続き状況を見極めつつ実施を検討し、新中計では、株主還元と成長投資のバランスをより重視した資本政策を実現していきます。

株主還元策

株主還元策

成長投資

 バーゼルⅢ最終化を見据えた資本蓄積を十分達成できたことから、前中計では株主還元と成長投資への資本活用を強化する方針に変更し、成長分野にはオーガニック・インオーガニックともにしっかりと資本を投入して、成長を追求してきました。

 特にインオーガニックについていえば、アジアでは、インドやベトナム、フィリピンの現地金融機関へ出資し、インドネシアと合わせたマルチフランチャイズ戦略の対象4ヵ国において、今後の成長に向けた礎を築きました。海外証券ビジネスでは、米国の大手総合証券会社Jefferiesと戦略的資本・業務提携を行い、2023年4月にはさらなる提携の深化を発表して、協働エリアを米国のECMやM&Aに広げていきます。航空機リース事業では、SMBC Aviation CapitalがGoshawk Management (Ireland)を買収し、業界第2位の規模に躍進しました。国内では、SBIホールディングスやCCCグループと資本・業務提携し、個人向けデジタル金融サービスの強化に取り組んでいます。

 前中計では、さまざまなインオーガニック案件も進めてきたことから、新中計では、まずはこうしたインオーガニック投資のPMI(経営統合作業)に注力し、収益貢献につなげていくことで、新たな成長ドライバーに育てていきます。そして、その成長の果実については、投資家の皆さまにもしっかりと還元していきたいと考えています。

政策保有株式の削減

 2020年度からの5年間で政策保有株式3,000億円(簿価ベース)を削減するという計画に対し、3年間で累計1,800億円を削減しました。計画通りの進捗で削減していますが、新中計に合わせて計画を加速する方向へ修正し、今後3年間で2,000億円、当初の計画と合わせて6年間で3,800億円の削減を目指します。また、連結純資産に対する政策保有株式の時価残高の割合については、2026~2028年度の次期中計期間中に、20%未満に引き下げる目処をつけます。

 政策保有株式の削減は、本邦のコーポレートガバナンス向上に資するという観点からも非常に重要な取組であると考えています。また、東証基準ROE(分母に政策保有株式の含み損益を勘案)8%の早期達成に向けても、引き続きお客さまとの十分な対話を重ねながら精一杯削減に努め、計画達成の前倒しにも挑戦していきます。

政策保有株式の削減計画

政策保有株式の削減計画

企業価値の向上

 企業価値の向上は我々の最も重要な経営課題です。新中計では、PBRの改善に向けて、事業ポートフォリオの入替と資産・資本効率の向上に取り組むことで、早期に東証基準ROE8%を目指していくことを打ち出しました。PERについても、今後成長が期待されるマルチフランチャイズ戦略や米国ビジネス等、成長戦略を実行し、将来の期待成長率を高めるとともに、ボラティリティを極力抑えるような事業ポートフォリオを構築して、収益の安定性を高めていきたいと考えています。また、足元の不透明な環境の中、ステークホルダーの皆さまの関心が高い分野について、積極的かつタイムリーに情報開示を行うとともに、成長投資や社会的価値の創造等の中長期的な取組についての開示内容を拡充し、投資家の皆さまとの情報格差を財務・非財務面ともに埋めることで予見可能性を高め、資本コストの低減につなげていきます。

PBR改善への取組

PBR改善への取組

投資家・アナリストの皆さまとの対話

 皆さまとの対話は、学びや気づきを得られる非常に貴重な機会です。新中計の策定においても、日々の面談やIRイベントを通じて、皆さまからいただいたご意見を取締役会やマネジメントで共有し、過去の成長投資の収益貢献見通しや、東証基準ROEの目標開示、事業部門別の経営管理の高度化、政策保有株式の削減計画の加速等、日々の業務運営や対外的な開示にも取り入れてきました。

 今後も、皆さまとの双方向の建設的なエンゲージメントを重ねて、我々の取組に活かし、コミュニケーションをさらに活性化させていくことで、「質の伴った成長」につなげ、持続的な企業価値の向上を目指していきます。