企業の社会的責任(CSR)


2011年の1月に社長への就任が決まり、國部新頭取と中期経営計画を本格的につくりはじめました。その後、3月11日に東日本大震災が起き、震災や津波の影響により打撃を受けた日本経済の復興・復活をどうサポートするか、ということが、同計画の遂行にあたり大きな前提条件となりました。
金融業の一番の特徴は、自分ではモノを作れませんが、モノやサービスを提供している企業のお手伝いができることです。お客さまに対しては、私たちなりに工夫をしながら、本業を通したサポートを実行してきました。
また、金融サービスが滞ると、十分に企業活動のお手伝いが出来なくなるため、社会全体の元気がなくなります。したがって、私たちが健全な経営をして企業をサポートできる体力を持っていることが必要ですし、これが金融機関としての存在要件だと思っています。
新体制の初年度としては色々なことがありましたが、当初の計画を上回る成果がでましたので、金融機関としての責任を果たしながら、やるべきことを確りやった1年だったと思っています。

金融は世の中の黒子だと思います。例えば企業の設備投資に対してファイナンスを付け、個人の方のより良い生活実現に向けて、住宅ローンを提供する。世の中に必要なお金をきちんと提供し、より良い社会を実現していくことが私たちの使命です。こういった点から、SMFGのCSR(企業の社会的責任)は経営そのものといえます。
今、日本には円高や、震災で明らかになったエネルギーに関する問題など、様々な問題があります。このため、私たちのお客さまも否応なくアジアを中心とした海外に生産拠点を移しています。進出地域の一つである東南アジアは、高度成長期の真っただ中にあり、そこに住む人達は、テレビや自動車、オートバイなどを欲しがっています。そのようなニーズに対するファイナンスについて私たちは知見がありますし、SMBCに限らず、SMFGグループとして対応ができます。そういったことで、成長していくアジアの人たちをサポートすることができると思うのです。
インフラストラクチャーの話をしますと、高度成長期の日本は公害問題という大きな壁にぶつかりましたが、その結果日本企業は、水、大気汚染など環境に関するノウハウを蓄積し、強みに変えてきました。逆に、これから成長期を迎えるアジアの国々は高度な生活水準に向かいこそすれ、公害問題まで経験する必要はないわけです。当社はアジアに複数の拠点がありますので、例えば優れた環境技術を持つ企業とコンソーシアムを組成し、私たちがファイナンスでバックアップしたり、進出国で必要な手配を整えたりすることができます。こういったサポートをパッケージ化して、配線基板のような役割で社会に貢献していくことが、私たちのCSRのあり方として理想的だと思います。私たちは日本発の銀行であり、だからこそできることがあると思っています。
私はよく社内に向けて、お客さまの立場・視点で物事を考えるように言っています。それを国や社会の単位に置き換えると、今お話したことになります。本業を通じて社会に役立つことをすることで、お客さまのニーズに応えた価値あるサービスを提供でき、結果として事業が成長する。この順番で物事を考えていくことができれば良いと思います。

まず、東日本大震災により被害を受けられた方々に心よりお見舞い申し上げますとともに、一日も早い復興をお祈り申し上げます。
当社グループは、SMBCの仙台支店をはじめ、東北地方に複数の拠点を持っております。震災直後はまず、「土日も開店したい」と仙台支店からコンタクトがありました。キャッシュカードを失ってしまったけれど現金が必要な方々が店頭にいらっしゃるかもしれない。そこから私たちの震災復興への取り組みがスタートしました。お付き合いのある観光バス運営会社に協力を依頼し、バスをお借りして現地へ応援要員を派遣したり、救援物資などを運んだりもしました。
継続的な取り組みとしては、社内で募集する被災地支援ボランティアをこれまでに12回行っています。それに合わせ、ボランティアを希望する社員を会社として応援するために、SMBC等では震災復興特別休暇制度も新設しました。SMBC日興証券では2年続けて、新入社員ほぼ全員が被災地で復興支援活動をしました。また、宮城県、地元の七十七銀行とタイアップして、被災した地域の会社とそれ以外の日本の会社のビジネスマッチングを行いました。こういったことは、日本全国に支店展開しているメガバンクだからこそできる支援施策です。その他の支援としても、二重ローンの相談や優遇金利による融資など、でき得る限りの取り組みを行ってきました。
ボランティアの話から言いますと、現在当社では被災地で活動しているNPO等の団体と連携した活動を行っており、これを継続させていくことが大事だと思っています。何かが起きたときに初動が早いですし、現地のニーズに応える意味でも、活動が空振りになりません。
金融機関としては、現地で産業・生産が復旧するよう本気で支援していくことが必要だと思います。重要なことは、現地での雇用を生み出し、産業を活性化させることです。例えば、工場が被災したとある企業では、別の場所に工場を建て直す議論もあった中、現地で工場を復旧させることを、早い段階で社長が決断しました。それを社内に発表すると、先行きを心配していた現場の社員が、また同じ場所で働き続けることができると分かり、活気を取り戻し、一年かかるはずだった復旧が、予定より早く終わったそうです。
震災から1年以上が経過し、被災地の現状や復興に向けた動きが忘れられがちになっている懸念があります。風化させないためにも、私たちは支援を「続ける」ことが大事だと思っています。


人間は世の中の役に立っていることを確認しながら生きているのではないかと思うことがあります。ビジネスパーソンとして一番分かりやすいのは仕事を通して社会に貢献をしている、ということだと思いますが、それ以外にも、地域社会のボランティアに参加するなど、一個人として貢献したい欲求がどこかにあるのだと思います。こういった仕事以外の人生が充実することは、ビジネスパーソンとしての社員にとって重要な要素だと思いますし、仕事以外の部分が充実するようなサポートを、会社としてもしていきたいと考えています。
仕事以外の部分も含めて、という意味で言えば、ボランティア、育児、ダイバーシティなど色々な視点があると思います。当社は、日本の中でも、ワークライフバランスやダイバーシティの制度が進んでいる企業だと思っていますが、社内への周知徹底や利用のしやすさ、といった面ではまだ課題もあります。そうは言っても浸透は進んでいて、例えば育児休業制度は、2011年度は683人(うち、男性27人)の取得者がおり、2年前に比べてちょうど倍くらいの人数になっています。
私は、昭和60年代に日本の都市銀行で初めて外国籍の方を本社採用した経験があります。当時は人事部門に所属していましたが、国際的な業務に興味があったこともあり、職場に日本人しかいないことに違和感を覚えていました。同じような人が群れている組織は弱いと思ったのです。
グローバル化を進めるにあたっては、どれくらい海外でのオペレーションを現地のナショナルスタッフに任せられるか、という課題があり、ダイバーシティも以前から関心の高いテーマでした。現在では、SMBCには外国籍の常務執行役員が2名おり、海外での副支店長以上を管理職と定義した場合、ナショナルスタッフの管理職比率も30%を超えています。さらに、国内の本部にも外国籍の部長がいます。今後は、そういったことがもっと当たり前にならなければいけないと思います。
今年度、SMBCでは海外で採用したナショナルスタッフ15名が新入社員の研修に参加しました。研修の現場を直接見に行ったのですが、向上心があり、自身を主張できるナショナルスタッフが入ることで、日本人の新入社員も啓発され、勉強に力が入っているようでした。ナショナルスタッフの一人から感想を聞いたところ、「同期」がたくさんいて嬉しい、という言葉が返ってきました。国内外の社員同士に「同期」という一体感のある概念が生まれたことは、とても感動的な発見でした。 そういった国際交流を含め、グローバル対応を進めていくための条件としては、英語がやはり重要になります。現在、本店にはネイティブの英語教師が常駐しており、執務時間でも時間を作れるのであれば習いに行ってもいいことになっています。
今はバンコクに出張するのも鹿児島に出張するのも差がありません。メーカー各社も積極的にアジアで操業していますし、違いは「日本でモノを作るのとアジアでモノを作るのと、どちらがいいのか」という話だけになっているのです。そういう現実や、そういった中で出てくるさまざまなニーズに、柔軟に対応できる企業文化にしていきたいと思っています。
男女の違い、日本人と外国籍の人の違いを認め合い、受け容れることがダイバーシティだと思いますが、その点に関しては、当社はまだ発展途上です。ようやく総合職採用に占める女性社員の比率が3分の1くらいになりましたが、少なくともこれくらいのことは維持していかなければならないと思っています。しかし大事なことは男性だからとか女性だからということではなく、仕事ができるかできないか、ということです。少子高齢化が進む中で、社会的要請の観点から考えても、今後は色々な人が色々な役割を分担していかないといけません。そのような雇用を創出することも、私たちの社会的使命の一つだと考えています。
やろうとしているのは、男女、国籍、国内外に関わらず、SMFGらしさを共有できるかどうか、SMFGとしての一体感をその社員がもってくれているかどうか、ということに尽きます。世界各地、特にアジアでは、国によってビジネスも規制も文化も違う中で、どうやってSMFGらしさを発揮していくかが課題になります。私たちの原点は、お客さまや社会の要請に応えられることです。応えることができる限り、私たちのビジネスは尊重され、引き続きビジネスの材料を頂けると思います。日本の銀行として、アジアでどのようにエッジを立てて展開していくか、という話であれば、全方位で平均的なものを目指すというよりは、環境や公害対策といった、いわゆる得意分野で突出していければいいと思っています。
まず、社員がどういう環境でどういう苦労をしているのか、直接見ることが必要だと思っています。例えば縁の下の力持ちのような事務の仕事をしている会社や社員は、ノーミスが当たり前の中、日々集中して業務に取り組んでいます。そういう苦労を分かっているよと伝えるだけでもいいと思います。金融はいわば大きな社会インフラですから、トラブルを起こさないことも社会的責任です。例えばATMが何らかの障害により開かないという事態は避けなければいけませんし、送金は届くべき日に届かなければなりません。そういったことを支えている事務セクションの人達もクローズアップされなければならないと思っています。


ベースにあるのは独りよがりにならないことだと思います。社会は変化し、お客さまも変化します。その中でお客さまのニーズを適切に聞く、言い換えれば「ひょっとしてお客さまがほしいサービスはこういうサービスですか?」と問うことができると、少しプロアクティブになります。そして、これは需要を創出することにもつながります。
CSRに求められるスタンダードも多様化しています。ISO26000などもそうですが、こういったものを研究して、今の体制に安住するのではなく、社会の要請に対してより良く変えていけるかどうか、不断の努力ができるかどうかが私たちのCSRのポイントだと思います。つまり、定型的なことではなくて、世の中のニーズを先取りできるようなテーマを、鵜の目鷹の目で探し続けることが「プロアクティブ」だと思います。社内に対しては、「世の中は常に変化しているから、今日と同じ明日が来ると思っているのは間違いだ」と話しています。そのような姿勢でいれば、ステークホルダーも理解し評価してくださいますし、良い循環が作れるのではないかと思います。これは私の夢でもあるのですが、閉塞感、若者に覇気がないなど、色々な課題が叫ばれる中で、SMFGはそういったものとは無縁の会社でありたいと思っていますし、そういう集団にしたいと思っています。
取材時期:2012年7月
インタビュアー:株式会社クレイグコンサルティング 代表取締役 小河 光生 氏
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