• 多様な働き方支援 インタビュー 介護への「漠然とした不安」を取り除き、従業員を孤独にしない SMBCファイナンスサービス 人事部 部付部長 中島 清 多様な働き方支援 インタビュー 介護への「漠然とした不安」を取り除き、従業員を孤独にしない SMBCファイナンスサービス 人事部 部付部長 中島 清

  • 所属・役職は取材当時のものです。(2019年10月取材(旧セディナ))
  • セディナは、2020年7月にSMBCファイナンスサービスとの合併により「SMBCファイナンスサービス」に名称変更。

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会社にとって、経験豊かな従業員は代えがたい財産です。SMBCグループでは、家族の介護が必要となったときでも安心してキャリアを継続できるよう、各種制度を整備しています。今回は、介護と仕事の両立を推進する立場である人事部部長が、自身の介護経験を踏まえながら、両立制度やこれから整えていくべき職場環境への想いについて語ります。

施策整備とともに重要なのは、当事者への情報発信

「当社には男女共に40代~50代の従業員が多くおり、様々な職場で活躍しています。ただ40代~50代というと働きざかりである反面、ちょうど親世代の介護に直面しはじめる世代でもあり、そういった背景から、2017年に社内で全従業員向けに『介護に関するアンケート』を実施しました。その結果、回答した2,000名の内、半数以上の従業員が『将来自分が介護する可能性がある』と認識していることが分かり、また9割が仕事と介護の両立に不安を抱えているという実態が浮き彫りになりました。当社では、家族の介護状態の変化に合わせて利用できる介護休業や、時間単位で取得できる介護休暇など法定を上回る制度を整えて、従業員がいつでも閲覧できるポータルサイトに情報を掲載しています。しかしながら、不安を抱える従業員は想像以上に多く、会社からの情報発信や周知がまだまだ不十分で、従業員の不安を払拭するには至っていないのだということを痛感させられました。現に、介護をしていると回答した従業員のうち制度を利用しているのは13%程度でした。

現在は、介護休暇等の制度を利用するにあたり、社内システムで登録している家族情報のうち、介護対象となる家族には事前にチェックを入れて登録してもらっています。介護対象となる家族情報には早めにチェックを入れて登録してもらうことで、介護制度を利用する可能性のある従業員の把握を進めるとともに、将来的に介護の当事者となる登録者に向けて、会社側から適宜情報発信をしていくような仕組みづくりも今後検討したいと考えています。」

先送りにしたくても、いつかやってくるのが介護

「介護への思いは、私自身の実体験によるところもあります。2016年1月末に父が心不全で急遽入院。両親とは別居していましたので、父の入院生活をサポートするため実家に滞在しはじめたところ、母との会話がかみ合わないことに気付きました。後日わかったことですが、母はかなり前から認知症の症状が現れていたようです。父はそんな母の変化に気付き、デイサービスの情報を集め、地域の包括支援センターへ相談していたようでしたが、そんな父自身が病で倒れてしまった。私はその日から、父と母二人を同時に看る生活をスタートさせることになりました。

当時は介護に関する知識も十分ではなかったので、手探りで色々な情報を集め、施設等色々な関係者と調整を進めていて大変でしたね。ただ私の場合は幸運なことに、実家は自宅から2時間ほどの距離にあります。ですから、有給休暇を使って自分さえ頑張れば、会社や近所の人たちに知られることなく介護生活を軌道に乗せられると思っていました。しかし、仕事の進め方はもちろん、公私のスケジュールを一変させることは簡単ではありませんでした。介護計画が整って順調に回り始めるまでの一時期は、まとめて休みを取った方が良いのではないかとも感じましたね。ご実家が気軽に行き来できない遠方であったり、要介護度が高い方は尚更色々な苦労が多いのではないかと思います。

さらに介護生活は自治体職員の方、ケアマネジャー(介護支援専門員)など介護のプロの協力がなければ続けられません。特にケアマネジャーから「あなたが倒れたらダメですよ、頑張り過ぎないように」と言われたことは大きかったです。「自分の親だ」と思えば思うほど、息子である私が責任をもってひとりで何とかしなければと思いがちでしたが、確かに私が倒れたら誰も介護できなくなります。たとえ親子であっても適切な距離感をもって介護と向き合うためには、介護のプロのような第三者に入ってもらうことが、メンタル面でもとても重要だと感じましたね。また介護と適切な距離感を保つためには、仕事を続けることも重要です。ビジネスマンとしての自分があることが、いい意味で気分転換になっていると思います。」

会社は、介護に直面した従業員をひとりにしない

「介護は誰しもが直面し得るもので、しかもゴールが見えず長期戦になる場合も多いと思います。だからこそ私は、働きたいという意志がある従業員が、介護で退職に追い込まれる状況を出来るだけ無くしていきたいと心から思っています。制度も含めて、それぞれの介護の状況や心情に合わせた対応を今後ますます拡げていきたい。それぞれの業務への配慮や、働く時間や場所の柔軟化も必要ですよね。一人ひとりの介護の環境や状況に合わせて働き方を選択できるようになることで、制度もさらに利用しやすくなるのではと考えています。こういった働き方の選択肢の多様化は、介護だけに限ったものではありませんが、色々な事情をもつ従業員が働き続けるためにも、個人に仕事を紐付けせずに協働しながら働けるような環境整備等やテレワークを推進しているところです。

今、グループで整備されている両立支援制度は、介護を一人で背負い込まないでほしいという思いから生まれています。介護という話題はプライベートなことなので話し辛いかもしれません。しかし働き続けるためにこそ、上司にも自分の置かれている状況や思いを伝えてほしい。そして仕事や趣味など介護以外に集中できるものを持って、決して一人では無理しないでほしい。我々人事部も、介護に直面した従業員と、一緒に働き続けられる道を模索できる存在でありたいと思っています。」


SMBCグループでは、介護経験者の意見を取り入れた両立支援制度を整えると同時に、介護に関する情報の重要性を認識し、セミナーの開催やガイドブックの発行など、情報提供機会の充実にも取り組んでいます。SMBCグループは今後も、従業員の一人ひとりの事情に寄り添い、仕事と介護の両立支援に尽力していきます。


一日のスケジュール

思い出の写真

父の診察待ちの風景。朝から混み合うため、前日から実家に泊まることが多い。

介護をスタートしてから集め始めた資料や介護の計画書でいっぱいになったファイル。情報の重要性を体感した。