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日本の再成長に繋がる、有望スタートアップが集結。『アクセラレーションプログラム 未来X(mirai cross)2024』最終審査会開催

SMBCグループが提供するスタートアップエコシステムプラットフォーム「未来X(mirai cross)」。取り組みの一つの柱であるシード・アーリー期のスタートアップ向け『アクセラレーションプログラム未来X(mirai cross)2024』の最終審査会が、2024年1月17日に三井住友銀行本店にて開催されました。

今回は最終審査会の様子とともに、なぜSMBCグループはスタートアップ支援および「未来X(mirai cross)」のプログラムに長年取り組み続けているのかについて話を伺います。

すべては、スタートアップの未来のために

まずは、プログラム主催者である株式会社三井住友銀行 成長事業開発部長の高橋潤氏に、プログラム全体の概要や開催の狙いについてお話を伺いました。

『アクセラレーションプログラム 未来X(mirai cross)2024』の概要について教えてください。

高橋シード・アーリー期のスタートアップの事業成長をサポートするプログラムです。プログラムは大きく研修と審査会にわかれており、参加したスタートアップの皆さまには約4カ月かけて事業をブラッシュアップ頂き、世界へ発信しています。

三井住友銀行 成長事業開発部長
高橋 潤氏

充実した研修を経て、本日実施したのが最終審査会です。日本全国から集まったシード・アーリー期の企業から、審査を通過した31社ならびに、日本を代表するベンチャーキャピタリストや、スタートアップとの協業機会を求める事業会社に会場に集結頂きました。

なぜ、SMBCグループが本プログラムに取り組むのでしょうか。

高橋我々の「社会的公器」としての役割を果たすためです。

当然、企業として利益追求の観点でもプログラムの意義を説明できるようにしていますが、あえてハッキリとした目的を定めないようにしています。目的を決めてしまうと、どれほど気をつけてもバイアスがかかってしまい、無意識にスタートアップへの価値提供の幅を狭めてしまうと考えているからです。

あくまでもスタートアップのために、あらゆる価値提供をしたいと考えており、世界に羽ばたいた企業が、さらに大きくなって当行を取引先として選んでくれる、という流れが生み出せるといいなと考えています。

投資家・事業会社との「X(cross)」を生み出す

投資家だけでなく、事業会社にも多く参加いただいたのはなぜなのでしょうか。

高橋参加スタートアップの皆さまへのサポートを手厚くするためです。誤解を恐れずに言えば、今回の取組の我々のサポート対象はあくまでもプログラムに参加をしてくださったスタートアップだと考えています。すべてのプログラムに参加したスタートアップの方々が納得のゆく成果を持って帰れるよう、プログラムの全体設計を心がけています。

本年の『アクセラレーションプログラム 未来X(mirai cross)2024』の特徴について教えてください。

高橋前年までと変えた点が大きく2つあります。まずひとつは「研修の量と質」です。

これまでは最終審査へ進む企業を選考するために、ピッチコンテスト(二次審査会)をおこなっていました。しかし今年は開催せず、その代わりエントリーシート・研修前半の内容をもとに一部の有識者の皆さまと運営事務局にて、最終審査会へ進む企業さまを選考しました。審査のためのイベントを減らしたことで、前年の約1.5倍である5週間の研修期間を設けることができました。

研修では、資金調達・チームビルディング・ブランディングなど様々なテーマでの講演・ディスカッションの機会を提供し、約5週間にわたり平日ほぼ毎日2時間集まっていただき、事業を成功に導くためのノウハウやマインドについてお伝えをしました。毎回ゲストスピーカーをお招きして、今年は、ディー・エヌ・エーの代表取締役会長の南場 智子さま、スマートラウンドの代表取締役社長の砂川 大さまなど、各界の第一線で活躍されているビジネスパーソンに講義をして頂きました。また、「グループメンタリング」、「個別メンタリング」、「プレゼン研修」を経て、事業内容をさらにブラッシュアップ頂きました。

さらに今回はプログラムへ申し込んだスタートアップの皆さまが出来るだけ多くオンラインも含めて参加できるようにしたため、最終審査会へ進めなかったスタートアップの皆さまも含めて多くの企業さまをサポートできました。

本年度より追加となった研修の一例

もうひとつは、「X Innovation Sheet」の導入です。

X Innovation Sheetとは、事務局が最終選考会に参加する企業さまと面談をして作成したシートで、各社の特徴や求める協業のあり方について一目でわかるようになっています。審査員含めイベントに参加をした会社さまは、X Innovation Sheetを手元に置いてプレゼンを聞くことで、これまでよりさらに投資や協業のイメージを持ちやすくなりました。これからも、双方が納得のいくつながりを、これまでより多く生み出していければと思っています。

最優秀先に送られる未来X(mirai cross)賞は、IssueHunt株式会社へ

最終審査会では、スタートアップは「サステナビリティ部門」「ウェルビーイング部門」「AI/IoT部門」「連携団体(DeepTech他)部門」の4つの部門にわかれてピッチを行い、どの企業も、思いがこもったプレゼンを行い、質疑応答の時間では毎回多くの審査員から手が上がりました。

すべての発表終了後には、特別セッションとして京都大学iPS 細胞研究所 山中 伸弥氏によるメッセージ動画が投影され、京都大学iPS細胞研究所長の髙橋 淳氏と、三井住友フィナンシャルグループ 執行役専務 グループCDIO 磯和 啓雄氏による対談がおこなわれました。

特別セッションが終わると、審査結果発表へ移ります。4つの部門ごとに贈られる「部門賞」、すべてのプレゼンのなかでもっとも評価の高かった企業に贈られる「未来X(mirai cross)賞」、審査会に参加した各社より贈られる「企業賞」など、その場で、合計20の賞が発表されました。

約4カ月にわたるプログラムを経て、すべての参加企業の頂点である「未来X(mirai cross)賞」ほか、計3つの賞を受賞したのは、サイバーセキュリティプラットフォームを提供するIssueHunt株式会社でした。

最終審査会当日に配られた、IssueHunt株式会社のX Innovation Sheet

スタートアップ支援は、日本の豊かさにつながる

終日スタートアップの審査員を務めた、三井住友フィナンシャルグループ 執行役専務 グループCDIO 磯和 啓雄氏に、発表を振り返っての感想を伺いました。

最終審査会の感想を教えてください。

磯和使用済み寝具の再生素材化、サブサハラ(サハラ砂漠以南のアフリカ)での中古車販売など、大企業では参入しづらい事業が多く、非常に興味深かったです。どのスタートアップも特定の限定された社会的課題に注目し、実現可能性の高いビジネスモデルをうまく構築されているなという印象でした。大企業の場合、大きな組織体制を維持しながら新しいビジネスを黒字化させることは大変で、ゆえに市場規模のわからないビジネスへの参入には慎重にならざるをえません。あらためてスタートアップにしか生み出せない価値の大きさを感じました。

未来X(mirai cross)賞を獲得したIssueHuntさまについて、心に残ったことや評価のポイントを教えてください。

磯和私は今、CDIO(Chief Digital Innovation Officer)として、SMBCグループの強みを活かした中小企業の困りごとを解決するサービスづくりに取り組んでいます。これまでに、電子契約サービス「SMBCクラウドサイン」、CO2排出量算定・削減支援クラウドサービス「Sustana」など数々のサービスづくりに携わってきました。

そのようななか、IssueHuntさまが取り組むサイバーセキュリティに関する課題は、中小企業の多くが非常に悩んでいる問題であり、我々も注視していた領域の一つで、具体的なサービスを検討したこともあります。ただ、IssueHuntさまの提供サービスは、我々が検討していたものよりも普遍的な社会課題に対して真正面からアプローチをしており、非常に際立って見えました。

普遍的な課題解決を軸としているので、日本国内に限らず、世界中の企業に需要のあるサービスです。IssueHuntさまは、今後創出される大きな市場のなかでリーディングカンパニーになると感じました。加えて、サイバーセキュリティの問題について、最近になって取り組み始めた多くの企業とは違い、非常に長い時間をかけて取り組んでいました。試行錯誤を繰り返し、ようやく生み出したビジネスモデルについてプレゼンをされており、その厚みも感じましたね。

『アクセラレーションプログラム未来X(mirai cross)2024』をはじめとしたスタートアップ支援について、今後の展望をお聞かせください。

磯和引き続き、力を入れて取り組む予定です。

我々が中期経営計画で掲げる「Fulfilled Grouth(幸せな成長)」の観点からすると「国民一人あたりのGDP」を高めることは非常に重要です。その伸び率がそのまま、国民一人ひとりの幸せな生活の実現につながると考えているからです。

ところが、日本の一人あたりのGDPは1999年から2022年にかけて、他の国と比べて低い成長率です。為替の問題もあるものの、日本より順位の低かった国にどんどん追い抜かれている状況でもあります。現状を変えるには大企業だけでなく、労働人口の多い中小企業のデジタル化、効率化が非常に重要です。

しかし、中小企業が抱える課題を含め、個別の課題を解決するソリューションは不足しています。だからこそ、SMBCグループとしてはスタートアップの支援に力を入れたいと考えているのです。

さらにスタートアップ支援は、日本の時価総額上位にスタートアップが次々に名を連ねる「新陳代謝」が活発な世界の実現にもつながると考えています。日本全体の再成長を目指し、これからも育成支援、事業づくり支援の双方に力を入れて取り組んでまいります。

PROFILE
※所属および肩書きは取材当時のものです。
  • 三井住友銀行 成長事業開発部長

    高橋 潤氏

    1994年三井住友銀行に入行。営業店に配属後、営業統括部(現ホールセール統括部)、総務部、SMBC日興証券、営業部(大企業取引)次長、法人営業部長を経て、2022年4月より現職。SMBCベンチャーキャピタル・マネジメントの代表取締役やSMBCベンチャーキャピタルの取締役も兼務し、デット・エクイティファイナンス体制整備をはじめとするスタートアップビジネス全般の企画・推進を指揮。

  • 三井住友フィナンシャルグループ 執行役専務 グループCDIO

    磯和 啓雄氏

    1990年三井住友銀行に入行。法人業務・法務・経営企画・人事などに従事した後リテールマーケティング部・IT戦略室(当時)を部長として立ち上げ、デビットカードの発行やインターネットバンキングアプリのUX向上などに従事。その後、トランザクション・ビジネス本部長としてBank Pay・ことらなどオンライン決済の商品・営業企画を指揮。2022年デジタルソリューション本部長、2023年より執行役専務 グループCDIOとしてSMBCグループのデジタル推進を牽引。

この記事でご紹介したサービス
サイバーセキュリティ
(cyber security)

類義語:

保有するデジタルデータやシステム類への不正アクセス、およびそれにより発生した盗難や破壊などといった「サイバー攻撃」から保護すること。

プラットフォーム
(Platform)

類義語:

サービスやシステム、ソフトウェアを提供・カスタマイズ・運営するために必要な「共通の土台(基盤)となる標準環境」を指す。

エコシステム
(Ecosystem)

類義語:

各社の製品の連携やつながりによって成り立つ全体の大きなシステムを形成するさまを「エコシステム」という。

IoT
(Internet of Things)

類義語:

  • ICT

従来インターネットに接続されていなかった様々なモノ(センサー機器、駆動装置(アクチュエーター)、住宅・建物、車、家電製品、電子機器など)が、ネットワークを通じてサーバーやクラウドサービスに接続され、相互に情報交換をし新たなビジネスモデルを創出する仕組み。