DX Trend

2022/04/22

特集

金融ビッグデータを活用した新たな広告の形【SMBCデジタルマーケティング×Forbes JAPAN Web編集長 谷本有香氏】

2021年7月に設立されたSMBCデジタルマーケティングは、2017年の改正銀行法で認められた「銀行業高度化等会社」として、金融ビッグデータを活用した広告・マーケティング事業を手がける電通グループとの合弁会社です。個人情報保護の厳格化が進む時代において、お客様に求められ、生活の質を高めるような広告とはどのようなものなのか?そしてこれからの時代に、金融サービス以外で銀行や、金融機関が提供できるものとは?
 
今回は特別に、3000人を超える世界のVIPにインタビューをした経験をもち、金融業界に関する知見も深いForbes JAPAN 執行役員Web編集長の谷本有香氏にご協力いただき、代表取締役社長の高野義孝氏との対談を通して、SMBCグループの新規事業である、SMBCデジタルマーケティングの全貌を紐解いていただきます。

バランスシートには計上されない価値ある資産「金融ビッグデータ」を広告に活用

谷本:2021年に設立されたSMBCデジタルマーケティングですが、その背景について教えてください。

Forbes JAPAN 執行役員Web編集長谷本有香氏

高野:SMBCグループは2020年度からの中期経営計画の中で、「最高の信頼を通じて、お客さま・社会とともに発展するグローバルソリューションプロバイダー」という中長期ビジョンを掲げています。このビジョンを実現するために「情報産業化」「プラットフォーマー」「ソリューションプロバイダー」という方向性を挙げており、弊社はこの中の「情報産業化」と密接な関係があります。
 
SMBCグループが保有している情報やデータはバランスシートには計上されませんが、とても価値のある資産と言えます。その資産を活用して新しいビジネスができないかということで、まずは広告・マーケティング事業への参入を決めたという経緯があります。広告・マーケティング事業は、SMBCグループにとっては異業種ですので、単独でやるよりも知見を持った企業とパートナーを組む方がいいという判断で、広告全般の知見やノウハウを豊富に蓄積されていて、かつ、他社との協業実績もある電通グループ様と合弁会社を設立しました。
 
私自身は2021年7月の会社立ち上げ時に、社長に就任しました。以前は広報部に在籍して、SMBCグループ全体のブランディングや企業広告を長く担当してきた経験があります。当時は広告主という立場でしたが、そこから180度変わりまして現在は広告をご利用いただくという立場で仕事をさせていただいています。

SMBCデジタルマーケティング代表取締役社長高野義孝氏

谷本:バランスシートに載らないようなさまざまな情報をうまく活用していくとのことですが、一般的なデジタルマーケティングの会社ではなくて、SMBCグループの中だからこそできること、金融機関がやる意義についてはどうお考えですか?

 
高野:やはり金融に関するデータがあるという点は大きいですね。個人のお客様の場合、口座を作っていただいてから長いお取引の中でライフイベントが発生しますと、それに応じて口座の使い方や金融機関との取引に変化が生じますし、そういった変化はデータとして蓄積されています。今までであればそのタイミングで金融サービスのみをご提供してきましたが、今後はSMBCデジタルマーケティングとして金融以外のサービスも広告という形でご提案できることが我々の強みです。

また、法人のお客様についても長くお取引いただいていると、企業における経営面の問題意識について我々と共有いただく機会が増えてきます。その課題の中には売上を伸ばしたい、マーケティングの精度を高めたいといったニーズがありますので、そこをこの事業でサポートできると考えています。

 
谷本:お客様に対しては、具体的にどういった提案の形があるのでしょうか?

 
高野:化粧品メーカー様のケースでは、高価格帯の化粧品に関する広告を配信いたしました。金融データを分析し、メーカー様がターゲットとしている良質なお客様に広告を配信することで、今後優良顧客となりうるお客様を送客することが可能です。
 
他には、おせち料理をECで販売されている企業様のケースですね。一般的にはおせち料理は一人で食べるものではないので、当然ご家族のいる方に広告を配信したいというご要望がありました。お子様が生まれたときに口座を作られる方は多くいらっしゃいますので、そういったデータを分析してお子さまのいるご家庭に広告を効果的に配信することもできます。
 
既存のWeb広告だとクリックした人について、おそらくこの商品に興味があるだろうということはわかったとしても、その人のパーソナルな面についてはまったくわかりません。その点、私たちは金融データを活用してより細部の情報まで分析できますので、広告主が求める人にクリックしてもらえる率が高まります。

不安感や不快感を与えないことを第一に、お客様に有益な情報を提供していく

谷本:個人のお客様に対しては、今まで以上にその人のニーズに合った商品をダイレクトに届けられるようになるのでしょうか?

 
高野:そうですね。まだ改善の余地はありますが、まさにライフイベントの発生したタイミングで本当に必要となる情報をお届けできるようにしたいと考えています。ただ、そういった広告は自分のプライバシーが見られているような気持ち悪さを与えてしまうリスクもあるので、慎重に進めていくつもりです。我々のサービスでは不安感や不快感を与えないことを第一に考えていますので。

 
谷本:データの活用において、例えば「赤ちゃんが生まれるから、赤ちゃんのグッズが欲しい」というある種、容易に想定できるものではなく、本人さえもわからなかった潜在意識に働きかけていくようなデータ分析も重要だと思うのですが、御社の中にデータ分析ができる方はどのくらいいらっしゃるのでしょうか。

高野:電通グループにはデータを分析する専門家がいらっしゃいますので、そういう方に来てもらっているとともに、以前から銀行自社のプロモーションのためにお客様のデータ分析をしている、リテール事業部門の方に兼務をしてもらっています。またSMBCグループ全体のデータ活用を推進しているデータマネジメント部からも参加してもらい、ノウハウを提供してもらっています。

 
谷本:現代は「データ至上主義」の側面がある一方で、セキュリティや管理の問題で躊躇している企業もいらっしゃいます。その辺りの御社のお考えをお聞かせください。

 
高野:日本でも今年、個人情報保護法が改正されましたが、世界的にも個人情報保護の機運は高まっています。金融機関の手がける広告事業として、先ほどの中長期ビジョンでも「最高の信頼を」とうたっていますので、従来のようにクッキーをお客様の知らないところで使うようなモデルとは違う手法があると考えています。勝手にデータを使われるという不安感、不快感を払拭するため、私たちは広告事業を始める際に、三井住友銀行のプライバシーポリシーを改訂し、個人情報の利用目的を明確化しています。我々の目指す広告事業はお客様に有益な情報をお届けすることです。単にクリックされればいいとか、購買されればいいとかではなくて、やはり私たちは個人のお客様とのお取引がございますので、お客様にとって有益な情報を提供していくことは忘れてはいけないと思っています。
 
一方で広告自体は悪いものではなく、お客様が気づかなかったニーズを引き出したり、新しい出会いを提供する側面もあります。それがちょっと行き過ぎてしまったばかりに、ネガティブな方向に流れてしまっていると個人的には見ています。行きすぎないこと、不快感を感じさせないこと。この二つが広告の意義を最大限に発揮する上で必要だと考えています。

「三井住友銀行に相談すれば、いろんな問題が解決できる」という世界観が究極の理想

谷本:SMBCデジタルマーケティングのような、グループ内子会社が立ち上がることによる、SMBCグループ全体への影響はどのようなものがありますか?

 
高野:SMBCグループCEOである太田は、就任当初から「社長製造業」という言葉を掲げていて、グループ内では私以外にも、若い社長が生まれています。「頑張れば誰かが見ている」という状況が、SMBCグループ全体の活性化にも繋がっていると思います。

 
谷本:これからの時代における金融機関の役割はどのように変わっていくとお考えですか?

 
高野:広告事業は非金融の事業ですが、決して従来の金融事業からかけ離れたことをやろうと思っているわけではありません。例えば同じく、SMBCグループ内の子会社である電子契約サービスのSMBCクラウドサインについてもまったくの異業種ではなく、金融事業と親和性のある領域です。グループ全体として、金融の事業をしていく中で必要となる領域を少しずつ拡大していると認識しています。その上で、SMBCグループが提供する事業が増えていくことによって、お客様が「三井住友銀行に相談をすればワンストップでいろいろな問題が解決できる」と感じられるような世界を作っていく。そうすることで改めてお客様から支持していただけると思いますし、それが理想ですね。

 
谷本:御社のデジタルマーケティングは、具体的に人々をどういう形で豊かにするお手伝いができそうでしょうか。

 
高野:一人ひとりのニーズに合わせたご提案を広告という形でお届けするのが、究極的には理想の世界だと思っています。そのためには銀行やSMBCグループのデータだけでは足りない部分も当然あると思います。もう少し幅広い情報を集めたり、さまざまなデータを組み合わせて分析をしていくこと、また分析力もさらに向上させていかないといけない。まだまだやるべきことはたくさんあると思っています。

 
谷本:なるほど。金融機関は今後ファイナンスだけではなく、さまざまな側面で多角的に人々を支えていく。その際に、デジタルマーケティングは有効に作用する一つの機能だということがとてもよくわかりました。最後に、今後の展開や、今後の野望についてお聞かせください。 

高野:可能性は多岐にわたっていると思っています。SMBCグループは、法人様との強いネットワークを持っていますので、私たちが培ったノウハウによって、企業様のマーケティングを支援していくという方向性もあるでしょう。また、金融には決済という強力な機能がありますので、例えば広告と決済をより近づけていくことによって利便性はさらにあがっていきます。
 
5年後、10年後に他社と違うビジネスを創っていくために、広告の世界でトップを走る電通グループ様の知見もお借りしながら、未来の可能性を探っていきたいと思います。

PROFILE

Forbes JAPAN 執行役員Web編集長 谷本有香
証券会社、Bloomberg TVで金融経済アンカーを務めた後、米国でMBAを取得。その後、日経CNBCキャスター、同社初の女性コメンテーターとして従事。これまでに、オードリー・タン台湾デジタル担当相、トニー・ブレア元英首相、アップル共同創業者のスティーブ・ウォズニアック、ハワード・シュルツスターバックス創業者はじめ、3,000人を超える世界のVIPにインタビューした実績有。2016年2月より『フォーブスジャパン』に参画。2022年1月1日より現職。

PROFILE

SMBCデジタルマーケティング代表取締役社長 高野義孝
1998年に現在の三井住友銀行に入行。営業店、システム開発業務、投資業務に従事した後、広報部にてSMBCグループのブランディングや企業広告に従事。2021年4月より本事業の立ち上げに従事し、7月より現職。