DataLabsが提供する三次元モデルで未来と人々の生活はどう変わるのか【未来X(mirai cross)2022 部門別最優秀賞受賞企業】
DX Trend

2022/07/11

特集

DataLabsが提供する三次元モデルで未来と人々の生活はどう変わるのか【未来X(mirai cross)2022 部門別最優秀賞受賞企業】

三井住友銀行、SMBC日興証券、SMBCベンチャーキャピタルは2021年より、株式会社みらいワークスと協業し、産官学金による成長企業プラットフォーム「未来X(mirai cross)」を新設、次世代の中核を担う成長企業の皆様の成長フェーズを加速する取り組みを実施しています。

 

今回は未来Xが実施する、アクセラレーションプログラム未来X(mirai cross)2022最終審査会「Final Pitch」に参加されたスタートアップの中から、AI /IoT/DX部門で部門別最優秀賞を獲得したDataLabs株式会社の取り組みをご紹介いたします。

 

三次元レーザースキャナーなどによって得られる点群データ(※1)を活用して自動で、かつ、クラウド上で三次元モデルを作成し、災害シミュレーションや地下を含む複雑な社会インフラの作成・共有・維持管理に役立てるビジネスを展開するDataLabs株式会社 代表取締役社長の田尻大介氏に、日本における三次元モデルの活用の実情から、未来の可能性までを伺いました。

 

(※1) 3Dレーザースキャナーなどで計測した物体を、点の集合で表現したデータのこと。

災害シミュレーションとしての活用も視野。多岐にわたる三次元モデルの可能性


――まずは御社の事業についてお教えください。

点群データから自動であらゆる構造物の三次元モデルを作る環境をクラウドで開発・提供し、その三次元モデルを活用して今は建設業界の業務プロセス効率化の支援をメイン事業にしています。


――現時点では建設業界がメインとのことですが、将来的には他の業界にも三次元モデルを活用してもらうような展望なのでしょうか?

おっしゃるとおりです。弊社の中長期計画として2023年までは第一の矢として、「三次元モデルを誰でも簡単に作れるようにしていくフェーズ」として位置付けています。その後は「誰でも簡単に三次元モデルを使える」環境の構築を目指していきます。三次元モデルの上で気流シミュレーションを行うことで、空調設備等が最も効率的に作動する位置やパラメータを検討したり、その部屋に最も合う各種設備を割り出したりすることが可能です。クラウドで作動し、従来は流体に係る高度な専門知識が求められたシミュレーションを簡単な操作で行えるようにすることで、様々な製造業の営業ご担当者がクライアント先で自社製品を導入することでもたらされる具体的なメリット(空気循環や寒暖差改善等)を可視化し訴求できる、「営業ツール」として活用してもらうことを視野に入れています。

もう一つは災害シミュレーションとしての活用ですね。日本は非常に災害が多く、近年これまで定めていた災害計画では対応できないような台風も発生しています。例えば、強い風が吹いたときにどれだけの圧力が建物にかかるのかをシミュレーションすれば、被害を防ぐためにどこを補強すればいいのか事前にある程度予測し、防災減災に繋げることができます。紙のハザードマップを三次元化することで、河川の氾濫時にどこまで浸水するのかを定量的かつ視覚的に理解しやすい形で示せます。この三次元的なシミュレーションによって損害保険会社様と新たな保険商材を構築したり、各自治体様と防災計画の高度化、といった話を進めたりしています。三次元モデルやシミュレーションの力で業務を効率化して、新しい価値を生み出せるのであれば、規模の大小に関わらず多くの産業に対してサービスを展開していきたいと考えています。

DataLabs株式会社 代表取締役社長 田尻大介氏

DataLabs株式会社 代表取締役社長 田尻大介氏

――災害のない都道府県はありませんから、災害シミュレーションには大きな可能性がありそうですね。

そうですね。台風であれば風速や風向きを変えてシミュレーションをして、どの地域でどのくらいの風が吹くのか、それにより建物にどれだけの力が加わるのか、ということを可視化することができます。近年、千葉で台風の被害が連続で発生しましたが、まずはそのような過去の事例と重ね合わせて私たちのシミュレーションの信憑性を実証していきます。

DEM:地理院タイル (標高タイル)を加工して作成
都市モデル:Plateauモデルを加工して作成
場所:横浜市
モデルソース:https://www.mlit.go.jp/plateau/(国土交通省都市局都市政策課)

点群データで社会課題を解決できる、と起業を決意


――DataLabsはどのような経緯と課題意識を持って設立されたのでしょうか。

私は以前、ドローンサービスを提供するベンチャー企業に在籍していて、ドローンを活用した土木施工のための測量に携わっていました。当時は計測した三次元の点群データをわざわざ二次元の図面に変換していたのですが、私にはそれがとても勿体ないことに思えたのです。「この点群データそのものを使ってなにかビジネスを起こせるのでは?」と長い間思案していました。

社名が「DataLabs」なのも特定のハードウェアにとらわれず、データを活用するという点に重きを置いているためです。データさえあれば、技術で社会課題を解決する事業を作れるのではないかという思いが込められています。


――前職では見過ごされていたデータの価値に目をつけて、そこからビジネスを展開したわけですね。

点群データは小さな細かい点の集合体で、レーザ機器から放った光の反射を擬似的に可視化しているものです。その中にXYZの座標値やRGBの256階調の色データなどを格納することができます。また、法線ベクトルなどの各点群が持つ特徴量を紡ぎ出すことで点群が表現する物体の形状等を自動で識別することが可能です。非常に多くのデータセットを必要とするので少しずつ進めていますが、このような特徴量等をベースに機械学習モデルを構築することで、あらゆる点群データから、対象の物体を自動的に3次元モデル化する取り組みも進めています。単に建築物を施工するためのデータとしてではなく、多様な可能性を秘めたデータとして活用していきます。

今、国を挙げて三次元データ、三次元モデルを活用する取り組みが始まっています。2023年度から始まる「BIM/CIMの原則化」では、国交省が発注する案件において設計から施工、納品まですべてを三次元のデータで行っていくことが定められています。竣工後のインフラの維持管理、増改築や改修工事においてもすべて三次元のデータをベースにプロジェクトが進められていくことになります。この後押しもあって、点群データや三次元モデルを活用する動きが非常にホットになっていますね。

日本でもようやく始まった、三次元モデル化構想


――2023年から、建設分野におけるデータはすべて三次元でやり取りすることになるのですね。

国交省が発注する大規模な施工案件は原則的には全てそうなると理解しています。ただし、世界的に見ると日本は遅れていると言わざるを得ない状況です。ASEAN諸国、中でもシンガポールは進んでいますね。シンガポールの国土はすべてが三次元モデル化されていて、建設工事等の状況を省庁間や複数のステークホルダー間で共有することで効率化が図られています。社会に実装されているという点では日本よりも2段階、3段階先を進んでいます。

引用元:令和5年度以降のBIM/CIM活用に向けた進め方(国土交通省)(https://www.mlit.go.jp/tec/content/001389577.pdf


日本もそれに倣おうという動きがありまして、国レベルでは国交省が「Project PLATEAU」というものを立ち上げ、日本全土の都市三次元モデルを整備しようとしていますし、自治体レベルでは静岡県の「VIRTUAL SHIZUOKA」というプロジェクトが有名です。県が推進しているプロジェクトで、県内のすべての領域を点群化して公開しています。2021年に熱海で土石流が発生した際には、そのデータを活用して流れた土砂の量を把握し、想定作業工数やどこから復旧作業にあたるべきかの検討を迅速に行うことができました。三次元データの存在意義が発揮されたということで、業界では広く取り上げられました。

引用元:静岡どぼくらぶYouTubeChannel「VIRTUAL SHIZUOKA~3次元点群データでめぐる伊豆半島~」より掲載

引用元:静岡どぼくらぶYouTubeChannel「VIRTUAL SHIZUOKA~3次元点群データでめぐる伊豆半島~」より掲載

――首都である東京でも、なにか取り組みがあるのでしょうか?

はい、東京も同じようなことを推進しようとしています。令和四年度の東京都予算案には都全土を三次元点群化するプロジェクトの予算が組まれています。都がこういった先進的な取り組みを率先して行うことで全国的な波及効果が期待できるので、私たちとしては歓迎すべき動きだととらえています。


――日本では災害活用の視点から三次元データの重要性を広めていくのが効果的なのでしょうか。

政府が推進している5ヶ年の「国土強靭化計画」では全国の自治体に、防災・減災の観点から、三次元データが活用できる土砂崩れが発生しそうな場所の予測や流域治水対策など先進的な取り組みに対する予算を配分しているので、そういった流れは今後も大きくなっていくかと思います。

数GBにもなる重い三次元データが、クラウド上で快適に作動する環境を提供


――SMBCグループが行っている『アクセラレーションプログラム未来X(mirai cross)2022 最終審査会「Final Pitch」」では、御社がAI /IoT/DX部門で部門別最優秀賞を受賞されました。あらためて、御社が提供するサービスを利用する際のメリットについて教えてください。

点群データはすごくリッチな情報ですがものすごく容量が大きく、一般的なPC端末では開くのが難しいほどのデータになっています。また、三次元モデルを扱うにも専用のソフトウェアや技能が必要となり、それらの三次元データは存在しているのに開けない、扱えない、活用されていないという問題があります。しかし、私たちのプロダクトはすべてクラウドベースなので、新しくソフトをインストールしてもらう必要もなく、重たく扱いづらい三次元データも既存のPCでも快適に取り扱うことが可能です。

今後、三次元データでのやり取りが原則化されると、データを操作するためのソフトウェアやPC、扱える人材などに対する投資の必要性も高まり、中小企業の方などにはかなりのハードルになってしまいます。建設業は70%以上が中小企業で構成されているため、こういったコスト等で三次元データを扱った業務の展開に制限がかかれば建設業全体の生産性向上自体も遅れてしまうと思っています。このような問題を解消するために、私たちは誰でも簡単にインターネットさえ繋がっていれば三次元データを扱える・作れる環境を提供しています。


――点群データの重さというのは、具体的にどの程度なのでしょうか?

iPhoneに搭載されている「LiDARスキャナ」でも点群データを作成できますが、レーザ照射数が少ないのでそれほど重いデータにはなりません。ただ、数千万円するような機材ですと1秒間に数百万発点ものレーザを放てるので、相当な点群数になります。数分で数百MBとか数GBのデータ容量になるでしょうね。


――ちなみに、点群データ・三次元モデルは地下でも問題なく作成できるのでしょうか?

はい、地上と同じ感覚で問題なく点群を取得し、三次元モデル化することは可能です。地下にはガス管や水道管などの都市インフラが複雑に張り巡らされており、今は二次元図面での管理が主流ですが、それによる問題が多発していると聞いています。具体的には増築した範囲が分からなくなったり、過去に誰が施工したのかわからなくなったりと、横断図や縦断図、平面図等の複数の二次元図面が存在していて情報が分断・分散的になることでそういった問題が多発して、ガス会社様や水道局等のインフラオーナー様はもちろん、施工会社様も困っています。

図面を見て地下埋設物がないことを確認した上で掘削を始めたら、図面にない水道管があって破裂させてしまったという事故例もありますし、その復旧工事や損害金の支払い等で工期が延長したり、利益が低減したりするといった大きな問題も発生しています。これらの問題を解決するために地下インフラを三次元モデルで可視化して、地下工事に携わる人で共有をして合意形成を図っていけるようなシステムを提供していきます。


――未来X(mirai cross)に参加して、今後の取り組みとして検討されていることはあるでしょうか。

未来X(mirai cross)には事業会社パートナーとして参加されている事業者様がいらっしゃいまして、いくつかの事業者様とお話しさせていただいています。具体的にはこれからですが、何かご一緒させていただければと思っています。

――では今後の展望を教えてください。

2023年度から国交省が発注する案件において三次元データの原則適用が始まっていくと先ほどお話ししましたが、まずは三次元モデルを作ること自体にも時間がかかりすぎる等の課題が存在している事業者様に対して、自動的に三次元モデルを作ることができるサービスを提供していきます。そのほか、災害シミュレーションや空調シミュレーションはもちろんのこと、脱炭素に関する取り組みも進めていきたいと思っています。現在、ZEB(Net Zero Energy Building)とZEH(Net Zero Energy House)という、ビルや住宅での年間エネルギーの収支をゼロにする取xり組みが進んでいますが、三次元モデルを使うことで、どういった間取りにすれば風の流れが良くなりエネルギー消費量を抑えられるのかがシミュレーションできます。家電メーカー様や住宅メーカー様の営業ツール、また、損害保険会社様の災害リスクツールとしても提供していく予定です。

さらに、自動での三次元モデル化は世界的に求められている技術ですし、ASEAN地域では、建築物の件数が日本よりも多くなることが予想されています。ですから今後は、国内だけでなく海外市場にも積極的に展開をしていきたいと思っています。

未来X(mirai cross)詳細はこちら。
https://mirai-cross.ventures/

PROFILE

DataLabs株式会社 代表取締役社長 田尻大介
新卒で宇宙航空研究開発機構(JAXA)に入社後、リモートセンシング(衛星データ)の利用普及事業に従事。その後有人宇宙関連部署に異動したのち、ドローンベンチャーに転職。三次元計測事業責任者や新規技術導入を担当。その後衛星ベンチャーにて、BtoB SaaSの事業開発担当として技術提案からクロージングまでを牽引。2020年7月にDataLabs株式会社を創業。