特集:持続的な成長に向けたインオーガニック戦略

インオーガニック戦略 持続的な成長に向けたインオーガニック戦略 インオーガニック戦略 持続的な成長に向けたインオーガニック戦略

インオーガニック戦略の全体像

 SMBCグループは、グループビジネスのさらなる成長と次世代に向けた新たなビジネス創出を加速させるため、インオーガニック戦略を重要戦略のひとつに位置付けています。これまでも、出資や買収を通じて、企業価値向上とお客さまへのサービス強化に取り組んできましたが、世界を取り巻く経済動向やお客さまの抱えるニーズの変化、気候変動への対応、競争環境の激化等、VUCA時代においても、持続的な成長を実現していくため、出資や買収をより戦略的かつ有効に活用していくことを目指しています。専門性の高い知見集積を通じたM&Aプロセスの高度化と一貫性のある戦略実行を目的に、2020年にはSMBCグループ内で分散していたインオーガニック戦略の推進機能を集約した事業開発部を設置しました。

出資ターゲット

 出資検討にあたっては、「中長期的な成長に向けたビジネスプラットフォームを創るための投資」と「早期に利益貢献が期待可能な、資産・資本効率の高い投資」の2軸で検討しています。 2021年度には、アジアのリテールビジネスや米国証券ビジネス等、中長期的な成長に向けたビジネスプラットフォームの構築に資する案件を実行しています。また、2022年5月には2つ目のターゲットに合致する先としてGoshawk Management (Ireland)の買収をSMBC Aviation Capitalが発表しました。

投資規準・ディシプリン

 健全性の確保を前提に、株主還元と成長投資にバランスよく資本を配賦するという資本政策の基本方針の下、①SMBCグループの戦略に合致すること、②ROCET1が8.5%以上展望できること、③リスクマネジャブルであることの3つを投資規準として設定しています。また、社外取締役やCxO部署と十分に議論の上、ディシプリンを徹底しながら出資機会の発掘・検討に努めています。

出資以降の取組

 インオーガニック戦略の成否は、出資後、いかに早期に出資時の計画を実現できるかにかかっています。出資先の強みや独自性を最大限に活かしつつ、 SMBCグループとのシナジー創出によるさらなる企業価値向上に向けて取り組んでいます。

インオーガニック戦略の全体像 出資ターゲット 投資基準・ディシプリン 出資以降の取組

アジアにおけるマルチフランチャイズ戦略の拡大

 2013年以降、SMBCグループでは、「アジア・セントリック」をスローガンに、アジアでのビジネス強化を重点戦略に掲げています。リテールを含むフルバンキング業務への参入や地域経済に根差した経営により第2・第3のSMBCグループを創るというマルチフランチャイズ戦略に取り組んできました。

 本戦略の主要対象国であるインドネシアにおいては、2013年に地場商業銀行であるBank BTPNに出資し、2019年には連結子会社化の上、現地法人インドネシア三井住友銀行と合併しフルラインの商業銀行へと転換しました。Bank BTPNを核として、リテール向けサービスから中堅・中小企業、大企業向けサービスまで、幅広い金融サービスをワンストップで提供しています。

 また、インドネシアに続くアジア地域の事業展開として、潜在的に高い経済成長が見込まれるインドやベトナム、フィリピンもマルチフランチャイズ戦略の対象国と位置付けています。これらの国においても、昨年度、既存の大企業取引に加えて、中堅・中小企業取引やリテールビジネスの基盤となりうる現地金融機関への出資を実行しました。今回出資した信頼できる現地パートナーとともに、アジアのそれぞれのマーケットでのビジネスプラットフォームの拡大を通じて、SMBCグループとして地域経済への貢献を目指していきます。

経済成長を支える生産年齢人口 高い経済成長

India Fullerton India India Fullerton India

 インドでは、2021年11月に、主に中小企業・営業性個人、個人中間層を顧客基盤とする地場大手ノンバンクFullerton Indiaの株式を74.9%取得し、連結子会社化しました。

 約1万社が競合するインドのノンバンク事業で、中小企業・リテール向け事業のマーケットは、 規模 、収益性、成長性いずれをとっても高い水準にあります。その中で、Fullerton Indiaは、国内全域に650を超える拠点網を保持し、上位に入る資産規模を有しています。

 また、都市部、地方農村部、デジタル、住宅金融の4つのセグメントに対して、それぞれの特性に合わせたサービスを提供しており、特に地方農村部における顧客獲得力が大きな強みとなっています。

 今後はSMBCグループの顧客基盤を活かした貸出残高の増加や、資金調達力の強化、ノウハウの共有や業務効率化等、シナジー創出による企業価値向上を図るとともに、SMBCグループのインドビジネスのさらなる強化と利益成長を追求していきます。

India Fullerton India

Message from CEO
SMBCグループとともに歩む長期的な成長ストーリー

 足元、インド経済と当社の事業はパンデミックによる影響から力強く回復しているタイミングです。ビジョンと価値観を深く共有できるSMBCグループとのシナジーの創出により、インドにおける消費者・中小企業向け金融市場の長期的な成長ストーリーを力強く描いていきたいと考えています。

 ビジネスを開始して以来16年間、当社の事業は金融サービスが行き届いていない地域にまでリーチを広げ、地域社会の発展に貢献してきました。これからも、都市部・地方農村部・デジタル・住宅金融事業を通じて、お客さまへさらなる価値を提供していきます。

Shantanu Mitra Fullerton India CEO

Shantanu Mitra Fullerton India CEO

Vietnam FE Credit Vietnam FE Credit

 ベトナムでは、2021年10月にSMBCコンシューマーファイナンスがFE Creditの株式49.0%を取得し、持分法適用関連会社化しました。

 FE Creditは、ベトナム国内に2万ヵ所以上のネットワークを有し、無担保ローンやクレジットカード等を提供する業界最大手のコンシューマーファイナンス会社です。その市場シェアは約50%と、ベトナム国内で圧倒的な顧客基盤と知名度を有しています。

 加えて、2020年に立ち上げた「Uバンク」は、スマートフォン上で金融取引がワンストップで実行できるモバイルアプリです。コロナ禍により高まる非対面ニーズを取り込み、幅広い顧客層を獲得する等、デジタル分野でも強みを発揮しています。さらにサービス提携パートナーからの送客やクロスセルを行うことで、ビジネス領域拡大を加速しています。

 今後はFE Creditとの協働を通じて、ベトナムに進出中、あるいは進出を計画中の日系企業のお客さまと協働し、販売金融をはじめとする各種金融サービスの提供を検討していきます。

 また、日本とベトナムにおけるコンシューマーファイナンスのトッププレイヤーであるSMBCコンシューマーファイナンスとFE Creditが互いのノウハウを幅広く共有、活用していくことにより、双方のビジネスのより一層の強化を図っていきます。

Vietnam FE Credit

Message from CEO
SMBCグループと協働し、デジタル化で金融市場を改革

 ベトナムは、労働人口増加と購買意欲の高い「ミドルクラス」の成長を背景に個人金融サービスの拡大が見込まれる有望なマーケットです。

 当社は、個人・小売市場を中心に、デジタル技術を駆使し、安全・安価でユニバーサルな金融サービスを提供しています。今後はSMBCグループとの協働を通じ、ベトナムに進出する日系のお客さまに革新的なソリューションを提案していくとともに、マーケットリーダーとして金融教育にも力を注ぎ、持続的な事業成長と社会貢献を果たしていきたいと思います。

Kalidas Ghose FE Credit CEO

Kalidas Ghose FE Credit CEO

Philippines RCBC Philippines RCBC

 フィリピンでは、2021年6月に地場主要銀行のRCBCの株式4.9%を取得し、新たな提携関係をスタートさせています。

 RCBCは1960年に設立された地場商業銀行で、2021年現在、資産規模は国内民間行で第6位に位置します。日系企業取引にも積極的で、地場銀行で最大規模のジャパンデスクを展開する等、協業に適した土壌が整っています。

 近年、リテールビジネスでは銀行口座未保有者を対象としたデジタルバンキングサービスや支店のデジタル化、ホールセールビジネスではESG債の発行やフィリピン初の「グリーン預金」の導入等、先進的な分野への積極的な取組が外部評価機関等から高い評価を受けています。

 RCBCは商業銀行ビジネス以外にもグループとして証券、リース、クレジットカード等の機能・サービスを有しており、幅広い分野で協働していく予定です。日本で培った事業ノウハウの提供や、他のアジア出資先とのシナジー創出により、RCBCの成長を支援するとともに、SMBCグループとしての新たな成長領域を創出していきます。

Philippines RCBC

Message from CEO
SMBCグループとの提携による金融サービスの強化

 フィリピンの銀行業界は市場の拡大期を迎えています。RCBCとしても将来の成長に向けて非常に重要なタイミングで、SMBCグループと資本面・業務面で提携できることを非常に嬉しく思っています。

 SMBCグループとの提携は、RCBCが目指しているリテールバンキング、コンシューマーファイナンス、デジタルバンキング等における最高の顧客体験の提供を加速させるものだと確信しています。すでにビジネスプランやサービスに関する協働について両社間でさまざまな議論がスタートしています。

 また、サステナブルファイナンスへの取組による将来の世代への貢献について、両社が同じ方針を抱き、コミットしていることも重要なポイントだと考えています。

Eugene S. Acevedo RCBC CEO

Eugene S. Acevedo RCBC CEO

海外証券ビジネス強化の加速

USA Jefferies USA Jefferies

 中期経営計画では、「海外CIBビジネスの高度化による資産・資本効率の追求」を重点戦略に掲げています。中でも、海外証券ビジネスの強化は最優先事項のひとつであり、オーガニックなビジネスの強化を中心に取り組んできました。

 そのような中、SMBCグループは、2021年7月に米国の独立系証券会社の最大手Jefferiesと戦略的資本・業務提携契約を締結し、世界最大のキャピタルマーケットである米国での証券・投資銀行ビジネスの強化に取り組んでいます。

 Jefferiesは、証券・投資銀行サービスからウェルスマネジメント、アセットマネジメントに至るまで、幅広いサービスを提供している米国有数の証券会社です。特に、クロスボーダーM&Aや米国・欧州の株式引受、米国におけるレバレッジドローン等の分野において強固な実績を有するほか、グローバルなトレーディングフランチャイズや分散投資型のオルタナティブ資産運用プラットフォームも兼ね備えています。

 こうしたJefferiesの持つキャピタルマーケットでの高度なソリューションやアドバイザリー機能と、SMBCグループが長年にわたり築き上げた顧客ネットワークやファイナンス機能を組み合わせて、両社のお客さまが直面する高度な金融ニーズにタイムリーにお応えするために、まずは3つの分野において提携を開始しました。

 提携分野の1つ目は、「米国の非投資適格(Sub-IG)企業向けビジネス」です。Jefferiesが強みを持つSub-IG企業の顧客基盤を活かして、レバレッジドローンの共同引受やECM・DCM案件での協働を通じ、SMBCグループ単独ではアクセスできなかったお客さまの取引を拡大していきます。

 2つ目は「クロスボーダーM&Aビジネス」で、Jefferiesの持つグローバル投資銀行サービスと、SMBCグループの顧客基盤と日本市場に関する知見を合わせて、より付加価値の高いソリューションの提供を目指していきます。

 3つ目は「米国ヘルスケアセクター向けビジネス」で、Jefferiesが強みとする業界屈指のカバレッジとSMBCグループの顧客基盤・バランスシートを組み合わせることで、これまで捕捉できていなかった投資銀行案件の獲得を目指します。

 すでに、Sub-IG企業向けビジネスにおいて、レバレッジドローンの共同引受の実績が積み上がっており、クロスボーダーM&Aやヘルスケアにおいても、着実に協働を進めています。

 今後も、お互いの強みを活かせる分野での協働を広げ、グローバルソリューションプロバイダーとして、お客さまのグローバルビジネスの成長に貢献できる金融サービスを提供していきます。

航空機リース事業の拡大

 SMBCグループでは、グローバルな航空旅客輸送量の増加を背景に、資産・資本効率の高い航空機リース事業を成長分野と位置付けています。2012年には、英国の大手金融機関The Royal Bank of Scotlandより航空機リース事業を買収し、三井住友ファイナンス&リースの傘下にSMBC Aviation Capitalを設立しました。

 その後、三井住友ファイナンス&リースと住友商事の航空機リース事業合弁会社および住友商事の航空機リース事業子会社を統合し、SMBCグループおよび住友商事グループの強みを活かして、航空機リース事業において、マーケットリーダーとしての地位を確立してきました。

 2022年5月には、アイルランドに本社を置く航空機リース会社Goshawk Management (Ireland)の取得に関して同社の既存株主と合意しました。これにより、SMBC Aviation Capitalは発注機材を含めて1,000機規模の運営体制を確立し、業界第2位の規模へと躍進する予定です。

 足元では、新型コロナウイルス感染症の拡大も最悪期を脱し、欧米の国内線需要に加え、国際線の需要も回復基調にあります。長期的にも、各国GDPの成長に伴う可処分所得の増加により旅客需要は引き続き成長が予想されます。

 本件を通じ、幅広い航空会社や国内外の航空機投資家向けに、航空機リースやスケールメリットを活かした投資機会を従来以上に提供していき、航空機リース事業の持続的成長と資産・資本効率の向上を図っていきます。

航空機リース事業の拡大

アセットマネジメントビジネス強化

 中期経営計画における7つの重点戦略のひとつである「グローバルベースでのアセットライトビジネス推進」の中核事業がアセットマネジメントビジネスです。

 個人投資家の資産形成意識の高まりや機関投資家の運用難の状況を背景に、投資家の皆さまの運用ニーズは年々高度化しています。

 国内では、2019年にグループの運用会社2社を統合し、三井住友DSアセットマネジメントを発足させました。旧会社の持つ運用ノウハウを持ち合い、グループの運用機能を集約することで、お客さまのニーズにタイムリーにお応えできる体制を構築しています。2021年には、三井住友ファイナンス&リース傘下のSMFLみらいパートナーズが、不動産アセットマネジメント会社のケネディクスを子会社としました。

 また、海外進出の足掛かりとして、2020年に新興国株式運用に定評がある英国の資産運用会社TT Internationalを連結子会社としました。加えて、急速にマーケットが成長するオルタナティブ運用の知見獲得を狙いとして、2020年にプライベートデット運用のグローバルトッププレイヤーであるAres Management Corporation、2021年にはアジアの不動産アセットマネジメント領域のリーディングプレイヤーであるARA Asset Management (現ESR Group)に出資を行い、事業パートナーとして、グループの運用力、商品力の拡充を図っています。

 三井住友DSアセットマネジメントと出資先との協働を通じ、日々変化するお客さまの投資ニーズを敏感に感じ取り、最適かつプロフェッショナルな運用ソリューションを提供していきます。