社会的価値の創造・経済的価値の追求


競争力の源泉は「人」
SMBCグループを取り巻く環境や個人の価値観・ライフスタイルは目まぐるしく変化し多様化していますが、いかなる時代においても、SMBCグループにとって「人」の大切さは変わりません。むしろ、このような変化の激しい時代だからこそ、グループの12万人を超える従業員が力を発揮し、一体感を持って同じ方向に向かっていくことが不可欠です。そのための旗印として「SMBCグループ人財ポリシー(以下、人財ポリシー)」を2023年度に定めました。
人材力の最大化を通じ、価値創造へ
人財ポリシーで定める、「従業員に求めるもの」(プロフェッショナル、チームワーク、挑戦)と「従業員に提供する価値」(自分らしさの実現、お客さま・社会への貢献、キャリア形成と自身の成長)には、SMBCグループが大切にしてきた価値観が込められています。これらは、三井・住友が長い歴史の中で、自己の能力を磨き、チームとして一体となり、社会の発展やお客さまと自社の事業に貢献するという事業精神・DNAを受け継いだものでもあります。私は、CHROとして人財ポリシーを人事施策の基本方針と位置付け、人材力を最大化し、経営戦略に掲げる「社会的価値の創造」と「経済的価値の追求」を実現していきます。
経営戦略の実現に向けて
経営戦略と連動した人事戦略の実現には、多様なキャリアと価値観を持つ従業員一人ひとりが活躍できる人事のプラットフォームと組織風土が何よりも不可欠であり、同時に、会社と個人の価値観が重なり合い互いに共感することも重要です。
そのために、これまでも進めてきた人事の評価・報酬・キャリアに関する仕組の変革を一気に加速させていくと同時に、人事戦略に込めた思いや背景が正しく伝わるように、タウンホールミーティングやセミナー、少人数セッション等の対話によるインナーコミュニケーションの機会を継続的に提供していきます。
多様な従業員の目指す姿の実現が、企業としての成長や競争力につながり、企業と従業員の共感を高め、それが従業員のさらなる挑戦や活躍を生み出すことになると考えています。この好循環そのものが、私が実現したい「人材マネジメント・人材力の最大化」です。
CHROとして、引き続き変革につながるさまざまな施策を通じて、多様な人材が自分らしく活躍できる魅力ある環境を作り上げていくことに全力で挑戦します。


近年、世界が直面する社会課題は多様化・深刻化の一途をたどり、ステークホルダーの意識も着実に変化してきています。企業に対しても、社会課題解決に向けた主体的かつ具体的な貢献への期待が高まる中、SMBCグループは、2023年4月に開始した中期経営計画において「社会的価値の創造」を経営の柱のひとつに据えた上で、「環境」「DE&I・人権」「貧困・格差」「少子高齢化」「日本の再成長」の5つを新たなマテリアリティと定め、社会課題の解決に向けてグループ一丸となって取り組み始めました。
中期経営計画の公表当初は、多くの従業員が社会的価値の創造の趣旨に賛同する一方、具体的に何をしたら良いか分からないという戸惑いの声も多く聞かれました。そこで、まずは従業員の腹にしっかり落としてもらうべく、国内外の各拠点でタウンホールミーティングを実施し、社会的価値の創造に取り組む背景の説明や具体的な行動についてディスカッションを繰り返し行ったほか、各部署や従業員の評価制度にも、社会的価値の創造への取組を反映させました。
2024年度からは、従業員の背中をさらに後押しすべく、グループ12万人の従業員の「全員参加」をスローガンに掲げ、100億円の経費枠や400億円の投資枠の設定、従業員がお客さまとさまざまな社会課題について議論するためのディスカッションマテリアルの作成、プロボノワークや表彰制度の拡充等、社会的価値の創造に向けた活動支援や参画機会拡大等の施策を鋭意進めています。その結果、直近のアンケートでは6割強の従業員が「自身の業務と紐付けて社会課題解決への行動に着手した」とのポジティブな反応を見せており、一定の手応えを感じています。
今後も従業員「全員参加」での取組に加え、幅広い顧客層や多岐にわたる社会との接点を持つ特長を活かしてさまざまなパートナーとも連携しつつ、より多くの社会課題の解決に取り組んでいきます。
一方、環境問題については、気候変動と自然資本の相関性や、気候変動による人権や健康等他の社会課題への影響が指摘され、気候変動問題の複雑さがより明白になってきています。この大きなチャレンジに向け、複合金融グループとして最大限の貢献をしていきます。具体的には、国内外のお客さまの脱炭素に向けた金融・非金融の両面からの支援、洋上風力や水素還元鉄等の新エネルギー・新技術に対するリスクテイクの高度化、トランジションファイナンスの提供等に注力しています。特にアジアのトランジションについては、Just Transition(公正な移行)の観点からも難易度が高いものの、アジアにおいてマルチフランチャイズ戦略を展開し、地域経済とともに持続的な成長を目指す金融機関として、しっかりと対応していく考えです。また、気候変動問題は私たちにとって、ビジネス機会だけでなくリスクにもなり得ることを踏まえ、ガバナンスの不断の高度化に努めていきます。
社会的価値の創造に向けた取組の可視化も進めており、その詳細を「インパクトレポート」として公表することとしました。社会的価値の創造が重要になるにつれて、財務的指標に加え、社会や環境に与える正負両面のインパクトが、企業価値を測る新たな「物差し」としての重要性を増すと考えています。こうしたインパクトを可視化することで、関連するソリューションの拡充や従業員の理解向上、ステークホルダーへの客観的かつ透明性ある開示に努めていきます。
今後も、SMBCグループの役職員が一丸となって社会課題の解決をリードし、社会的価値の創造、さらには企業価値の向上につなげるべく、グループCSuOとして全力で取り組んでいきます。

私はデジタルイノベーションを通じた社会的価値の創造に深くコミットしています。デジタルテクノロジーを活用し、既存金融事業のデジタルトランスフォーメーションを推進するとともに、金融機関の枠を超えた新たなビジネスモデルやソリューションの創出に、グループCDIOとして全力で取り組んでいます。
キーワードは「Beyond & Connect」と「Empower Innovation」です。
当社では、デジタルテクノロジーを活かして、業態を超えたパートナー企業との連携をベースに、地域を横断し金融・非金融を融合した事業開発に取り組んでいます(Beyond & Connect)。グローバルソリューションプロバイダーとして、お客さまに金融事業を超えた付加価値を提供していくとともに、将来のSMBCグループのビジネスモデルの変革につながる事業開発やビジネスの創出・育成を行っています。
また、新たなビジネスを生み出すためには、イノベーションを促進する仕組が不可欠です(Empower Innovation)。成長著しいアジア地域では、スタートアップと連携した事業開発の強化を加速するために、コーポレートベンチャーキャピタルを設立し、デジタルイノベーションを推進する機能を整えました。加えて、「社長製造業」として、ビジョンを持ち意欲ある従業員を、新規事業会社の社長に積極的に登用したり、社内SNS等のカルチャー変革のための取組を継続し、社内外から新規ビジネスの種が生まれる仕組づくりを加速しています。