社会的価値の創造・経済的価値の追求

資産運用ビジネス、決済・コンシューマーファイナンスビジネス等の主要分野において、「グループの総合力」「サービスの先進性」「高品質なコンサルティング」を強みに、お客さまの利便性向上によるビジネス拡大とビジネスプロセス改革等による効率化を通じて、持続可能な事業ポートフォリオを構築していきます。


2024年度は、良好な業務環境が継続する中、資産運用、決済・コンシューマーファイナンス、預金等主要ビジネスにおいてトップライン収益が拡大し、業務純益で前年を上回る成果を実現しました。
資産運用ビジネスは、AM・外貨預金残高が前年比+1.6兆円の増加、決済・コンシューマーファイナンスビジネスは、買物取扱高がマーケット全体の成長を上回る+4.2兆円の増加、カードローン残高は+8%、預金残高は+1.3兆円の増加となり、着実に業容を拡大しました。中期経営計画の主要施策の進捗も順調です。
Oliveのアカウント数が着実に伸長するとともにストア・Olive LOUNGEの展開にも取り組み、デジタルとリアルが融合したハイブリッドモデルの構築が着実に進んでいます。また、資産運用ビジネスにおける銀行・証券・信託によるグループ一体戦略や三井住友カードとSMBCファイナンスサービスの合併、同社によるSMBCコンシューマーファイナンスの子会社化等、主要施策を支えるグループの事業体制の高度化・効率化にも取り組みました。
現中期経営計画の最終年度である2025年度は、海外を中心に業務環境の先行きに不透明感が増していますが、国内においては、日本経済の再成長、金利の正常化等、総じて良好なビジネス環境が継続する見込みです。引き続き、キャッシュレスや富裕層ビジネス等成長領域への取組を積極的に進めると同時に、Oliveによる顧客基盤の拡大を通じた収益力増強や、デジタル化・AIの活用の加速による生産性向上等にも取り組み、ROEのさらなる向上を目指していきます。
リテールビジネスには、資産運用立国の実現に向けた資産形成の促進、キャッシュレス化の進展、人生100年時代への備え等、社会課題に起因する貴重な成長機会が点在しています。世の中の変化を捉え、我々のビジネスモデルを高度化させていくことで、社会的価値と経済的価値の両立を目指していきます。

お客さまの高度な経営課題に対し、SMBCグループ一体で、資金調達、運用、決済等に関連したソリューションを幅広く提供します。経営課題の解決を通じて日本の再成長に貢献し、お客さまとともに持続的な成長を目指します。


国内法人のお客さまの経営課題はますます複雑化しています。ホールセール事業部門は、そうしたさまざまなお客さまの課題・ニーズに対して、グループ総合力を活かした高品質なサービスを提供しています。
2024年度は、金利環境の変化を捉え、預金・貸出金は残高・収益ともに伸長しました。活発なコーポレートアクションにも的確にお応えし、PEファンドや不動産といったビジネスラインでも実績を重ね、当初計画を上回る増益となりました。
足元では、米国における相互関税の発動をはじめとし、種々の変化が顕在化しています。国内法人の商流への影響も見込まれることから、より一層、お客さまに丁寧な対応を行っていきます。
また、金融機関としての持続的な成長に向けて、既存ビジネスの強化、新たな成長ドライバーの確立を目指します。これに関する取組をご紹介します。
1つ目は、大企業・中堅企業へのソリューション提供体制の強化です。直接金融やM&A等のニーズが多い大企業へは、銀行・証券で連携したスピーディなソリューション提供が求められます。こうしたニーズに迅速に対応できるよう、三井住友銀行のフロントにおけるSMBC日興証券との兼職体制を大幅に拡大し、対応力を強化しました。引き続きJefferiesとも連携し、グローバルなニーズへ国内外で一貫して対応していきます。また、東京証券取引所の経過措置終了・新TOPIX運営等を背景に、さらなる成長戦略を追求する中堅企業のお客さまに対しては、三井住友銀行・SMBC日興証券の専門部署を中心に適切なソリューションを提供します。
2つ目は、中小企業向け新ビジネスモデルの創出です。デジタル技術の進展や異業種プレイヤーの参入等、法人分野における金融サービスについても環境の変化が続いています。このような中、中小企業の皆さまが抱える経営課題を解決し、事業成長を支援しながら、粘着性の高い決済性預金の獲得を目指す中核サービスとして、デジタル総合金融サービス「Trunk」を2025年5月にリリースしました。幅広い事業者に本サービスを提供し、日本の再成長を後押ししていきます。

グローバルCIB・Sales&Trading(S&T)ビジネスからマルチフランチャイズ戦略に至る幅広い事業基盤を最大限に活用し、国内外のお客さまの国際的な事業展開をグループ一体でサポートしていきます。


2024年度はファンド関連ビジネスの強化等により業務粗利益は増加したものの、規制対応やIT基盤等への先行投資に伴い、経費も増加しました。さらに、ポートフォリオの質を改善するため、低採算アセットの削減を行った結果、一時的に損失を計上し業務純益は前年を下回りましたが、ROCET1の改善につながりました。施策面でも、収益性と成長性を兼ね備えた事業ポートフォリオの構築を目指し、マルチフランチャイズ戦略では各国における出資プラットフォームの構築を完了する等、取組は着実に進展しています。
2025年度は、中長期的な成長ドライバーとしてグループを牽引する事業基盤の構築に注力し、不確実性の高い業務環境にも十分に留意した上で、以下4つの重点領域に腰を据えて取り組みます。
①資源シフトの加速:収益性と成長性のさらなる向上のため、より踏み込んだ対応を実施の上、低採算ビジネスから高採算・高成長ビジネスに経営資源をシフトし、リスクアセットをコントロールしながら、質の高い事業ポートフォリオを構築していきます。
②グローバルCIBのビジネスモデル高度化:Jefferiesとの協働拡大を通じてフィービジネスを強化し、グローバル・市場事業部門一体でのプライマリ・セカンダリ連携を推進します。さらに、ファンド関連ビジネス等の高収益が見込まれる領域でのリスクテイクを高度化することで、収益力向上を図ります。
③高成長領域における取組強化:高い成長を見込むマルチフランチャイズ戦略の対象国(インド・インドネシア・ベトナム・フィリピン)において、グループ一体で取組を進めていきます。特にインドではインド本部を設置し、ホールセール・リテール一体で高成長の取り込みを目指します。
④経営基盤の拡充:事業の多角化・複雑化に伴うリスク管理を強化すると同時に、IT基盤やオペレーション等への投資も行い、さらなる成長機会の獲得やビジネスモデルの最適化を支えるためのガバナンス体制・経営基盤の強化に注力します。
こうした取組を通じて、安定した収益を創出するグローバルCIB事業を軸に据えつつ、高い成長が期待されるアジアリテール等の高成長領域を拡充し、質の伴った持続的な成長を目指します。

マーケットリスクのプロフェッショナルとして、自らのリスクテイクを深化させるとともに、お客さまに対して高い付加価値を持続的に提供していくことを目指しています。


市場事業部門は、外国為替・デリバティブ・債券・株式等のトレーディングや、これら市場性商品を通じたソリューション提供をはじめ、バランスシートの流動性リスクや市場リスクを総合的に管理するALM業務を行っています。
2018年頃の米中関係悪化に加え、2020年からのコロナ禍で拍車がかかり、世界は分断の時代へと移行しました。長年デフレに苦しんできた日本でさえ、インフレが社会問題化する等、経済・金融市場は高インフレ・高ボラティリティの局面に入っており、グローバリゼーションの時代には経験したことのない新たなマーケット環境に置かれていると言えます。
このようなパラダイム・シフトによって引き起こされたマーケット環境では、従来の考え方が通用しなくなることも想定されますが、我々は柔軟かつダイナミックにポートフォリオを入れ替え、収益を積み上げてきました。
これは、強みであるトレーディング力、すなわち世の中の本質を見抜く力を絶えず磨き続けてきた成果だと考えています。事業部門の一人ひとりが日々起こるさまざまな事象を「3つのI」-Insight(洞察力)、Imagination(想像力)、Intelligence(情報力)で情報収集・分析し、徹底的に議論を重ね、そうして描いたシナリオをポジションとして表現し、その効果を検証する。こうした不断のサイクルによって、世の中の本質を見抜く力は養われます。
今後もこの強みを最大限に活かし、ポートフォリオ運営において収益機会を的確に捕捉していくとともに、S&Tや資金繰りの分野においても、お客さまへ最適なソリューションを提供していきます。
2025年度は中期経営計画の総仕上げの1年です。米国の関税措置を端緒とする不確実性の高い状況が続いていますが、このような時こそ我々の強みを発揮し、着実に計画を完遂させていきます。また、次期中期経営計画でのさらなる成長と飛躍に向けた施策も強力に推進し、お客さまとSMBCグループの成長に貢献することにこだわっていきます。