事業戦略
グローバルなお客さまのニーズに着実に対応しながら、
ボラティリティをチャンスに変える
新中期経営計画で掲げる「グローバルS&T事業のプレゼンス向上」。その中で重要な役割を担うグローバル・マーケッツ共同統括として、SMBCグループのS&Tビジネスの成長に向けた取組と、その先に描く成長戦略を語ります。
世界の関心が集まる日本市場
金利の上昇や株式市場の活況等、ここ数年で、日本の資本市場を取り巻く環境は大きく変わりつつあります。私自身、海外で投資家の方々とお会いすると、その変化を強く実感します。その中で、「1990年代後半の米国に似ている」というお声を頂くことがあります。当時の米国では、金利上昇をきっかけに多様な金融商品が生まれ、その後の米銀の繁栄の土台が作られたといわれます。その過程を経験してきた投資家の方々が、今の日本に同じような可能性を見ている。日本にいる私たちよりも、外から見ている方のほうがその変化に敏感かもしれません。
SMBCグループの名刺で海外のお客さまを訪問すると、以前と比べて明らかに反応が変わってきたと感じる場面も増えました。それは、日本市場そのものへの期待が高まっていることの表れだと受け止めています。この変化を確かなビジネスの機会につなげることが、今の私たちに求められていることだと考えています。
グローバルで「ワンチーム」として動く
こうした環境の変化を受け、私たちが今最も力を入れているのが、グローバルの各拠点が有機的につながる「ワンチーム」としての体制作りです。各地域にバーティカルヘッドを配置するなど、日本・アジアと欧米の拠点が連携して顧客に向き合える仕組の整備に取り組んでいます。
以前は、各拠点がそれぞれの地域の中で完結する形で動いていました。地域内でビジネスが完結するお客さまであれば、それでも問題はありません。しかし、世界をまたいで活動するグローバルな機関投資家に対しては、拠点をまたいだ連携なしに十分なサービスは提供できません。競合する欧米の大手銀行は、そうした体制を長い時間をかけて整えてきています。その差を着実に縮めていくことが、今の私たちの課題です。
同時に、注力すべきお客さまを明確にしたうえでリソースを適切に配分することも重要です。機関投資家の数は膨大で、すべてのお客さまに同じ深さでアプローチすることは現実的ではありません。SMBCグループの強みや商品特性を踏まえ、真に価値を提供できるお客さまとの関係を深めていく。そのためにまず必要なのは、お客さまとの信頼関係をしっかりと築くことです。信頼がなければ、お客さまは本当のニーズを話してくれません。
答えは、お客さまとの対話の中にある
プロダクトの提供において私が大切にしているのは、お客さまのニーズを起点に考えるということです。当たり前のことのように聞こえるかもしれませんが、実際には難しい。気づかないうちに、自分たちが提供できるものを前提にした提案になってしまいがちです。しかし、本当に必要なことはお客さまの側にしかありません。あくまでも私たちの事業はお客さまサービスです。
そのために私自身もお客さまとの対話を最も重要視し、直接対話を重ねています。グローバル市場、さらには本邦市場で今何が起きているかをお伝えしながら、お客さまが何を求め、何を懸念しているかを丁寧に聞く。データや資料では見えてこない本音が、対話の中に表れることも少なくありません。
こうして現場で得た情報を、AIを活用した情報共有ツールを通じて各拠点とリアルタイムで共有することにも取り組んでいます。たとえば、東京の担当者が日本語で入力したお客さまとの対話の内容を、AIが整理して英語に翻訳し、ロンドンやニューヨークの担当者がすぐに把握できる仕組を導入しており、お客さまへの理解を組織全体の資産として積み上げていくことを目指しています。
事業の土台を整える
S&T事業のグローバルな強化に向けては、インフラ整備への継続的な投資が欠かせません。世界の取引の多くは今や電子化されており、大量の取引が瞬時に処理される環境の中で、電子執行能力を含むシステム基盤をしっかりと整えることは前提条件です。中長期的な視点でIT投資を進めていく必要があります。
そして、事業の根幹を支えるのは人材です。S&T事業は、お客さまへの価値提供を軸としたビジネスであり、突き詰めれば、人が最大の経営資源です。世界各地で競争力ある人材を採用し、SMBCグループの文化をチームの中に根付かせていく。時間のかかることですが、事業の土台を作るという意味で最も大切な投資だと思っています。
S&T事業の拡大が、グループ全体を強くする
S&T事業の強化は、SMBCグループのポートフォリオ全体のバランスという観点からも重要な意味を持ちます。米国の大手銀行では、S&T事業が粗利益の3〜4割程度を占めています。SMBCグループはまだ1割強で、伸びしろは大きいといえます。それだけではなく、このビジネスは伝統的銀行業務とは異なるビジネス特性を有しています。地政学リスクの高まりや市場の混乱は、貸倒リスクが高まるため銀行業務には一般的に逆風となりますが、S&Tビジネスにとっては投資家の取引が活発になる絶好のビジネスチャンスとなります。S&T事業を育てることは、グループ全体のリスク分散にもつながります。さらに、事業の特性上、S&T事業は資本効率が良いため、SMBCグループ全体のROE向上にも寄与することが期待できます。
一つひとつの積み重ねを大切にし、世界で戦えるS&T事業へ
冒頭で申し上げた通り、日本市場の変化という追い風があるからこそ、今がS&T事業の体制を整え、成長を加速させる好機です。この変革を主体的に推進できることに、大きなやりがいを感じています。ただ、焦って大きな成果を出そうとするより、グローバルでの連携体制の整備、お客さまとの信頼関係の構築、人材とインフラへの投資といった地道な取組を一つひとつ丁寧に積み重ねていくことが、中長期的な成長の土台になると考えています。お客さまから信頼していただける存在になること、その積み重ねの先に、SMBCグループのS&T事業のあるべき姿があります。世界で戦えるS&T事業を目指して、私自身も全力で挑戦し続けていきます。