いわゆる「環境危機」論は、この作品の連載開始当初(1988年)はまだそこまで声高なものではなかった。たとえば地球温暖化問題が人口に膾炙し始めたのは、まさにこの1980年代末であり、京都議定書が採択されたのは1997年になってのことである。
そうした時代の動きを背景とし、環境問題、もっと言えば"地球上における人類という種の在り様"を問う大きな物語でもあったことが、作品世界に深みを与え、単なるエンターテインメントに終わらない強い印象を残した1つの要因と考えられる。
その後カウンターとして叫ばれた温暖化・資源枯渇懐疑論を経て、人口爆発への懸念が「そこにある危機」として高まっている現在、この傑作があらためて注目されたのは、ある種の必然だったのかもしれない。