BOOKS 〜環境を考える本〜

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私のおすすめ Eco Book

新装版 寄生獣 1巻
岩明 均 著 講談社 ※全10巻

新装版 寄生獣 1巻

 アニメ化、そして実写映画化と、20年を超える時を経て希代の名作が今ふたたび脚光を浴びている。

 SFコミック『寄生獣』の冒頭は、以下のようなモノローグから始まる。

 「地球上の誰かがふと思った。『人間の数が半分になったらいくつの森が焼かれずにすむだろうか……』」

 「地球上の誰かがふと思った。『人間の数が100分の1になったらたれ流される毒も100分の1になるだろうか……』」

 「誰かがふと思った。『生物の未来を守らねば……』」

 いわゆる「環境危機」論は、この作品の連載開始当初(1988年)はまだそこまで声高なものではなかった。たとえば地球温暖化問題が人口に膾炙し始めたのは、まさにこの1980年代末であり、京都議定書が採択されたのは1997年になってのことである。

 そうした時代の動きを背景とし、環境問題、もっと言えば"地球上における人類という種の在り様"を問う大きな物語でもあったことが、作品世界に深みを与え、単なるエンターテインメントに終わらない強い印象を残した1つの要因と考えられる。

 その後カウンターとして叫ばれた温暖化・資源枯渇懐疑論を経て、人口爆発への懸念が「そこにある危機」として高まっている現在、この傑作があらためて注目されたのは、ある種の必然だったのかもしれない。

推薦人:ジュンク堂書店 難波店スタッフ 南端 宏尚さん

新刊紹介

信じられない現実の大図鑑
ドーリング・キンダースリー 編著 東京書籍

信じられない現実の大図鑑

地球上のすべての水の量を"見た"ことはあるだろうか。世界を可視化する一冊。

フードトラップ 食品に仕掛けられた至福の罠
マイケル・モス 著 日経BP社

フードトラップ 食品に仕掛けられた至福の罠

"我々は安い食品という鎖につながれている"。君が選ぶのは、家畜の安寧か、それとも餓狼の自由か。

人生が変わる! 特選 昆虫料理50
木谷 美咲 内山 昭一 著 山と渓谷社

人生が変わる! 特選 昆虫料理50

国連食糧農業機関(FAO)が世界の食糧問題の対策として注目する昆虫。未来の食糧源、昆虫を使った料理を紹介。

温故知新 〜今こそ、古典を〜

オリジナル版星の王子さま
サン=テグジュペリ 著 内藤 濯 訳 岩波書店

オリジナル版星の王子さま

 言わずと知れた童話の名作です。初めて出版されたのは、1943年のアメリカ。その翌年、著者のサン・テグジュペリは、飛行機に乗ったまま消息を絶っています。

 なぜ、本書が環境本の古典なのか。それは、本書が、この宇宙との〈結びつき〉の大切さを教えてくれるからです。

 王子さまは、1本の赤いバラの花を大切にしていました。王子さまの星に、バラは1本しかなかったからです。しかし、地球に来てみたら、バラはそこかしこにある。自分のバラが、特別な存在ではなかったことを知って、王子さまはショックを受けます。

 落ち込んでいた王子さまを、キツネが諭します。バラが特別な存在だったのは、それが1本だったからではなく、王子さまが、時間をかけてバラとの間に〈結びつき〉をつくってきたからだと。

 キツネの言う「目に見えない大切なもの」とは、この〈結びつき〉のことです。そして、「だれかが、なん百万もの星のどれかに咲いている、たった一輪の花がすきだったら、その人は、そのたくさんの星をながめるだけで、しあわせになれるんだ。そして、〈ぼくのすきな花が、どこかにある〉と思っているんだ」という言葉から、私たちは、たった1本の花との〈結びつき〉が、この宇宙全体への〈結びつき〉につながるのだということを教えられるのです。地球環境を守るのは、この〈結びつき〉の感覚ではないでしょうか。

推薦人:株式会社日本総合研究所 マネジャー 井上 岳一