Ecological Company Special 〜環境経営の現場から〜

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Ecological Company Special 株式会社サカタのタネ 代表取締役社長 坂田 宏氏

「花は心の栄養、野菜は体の栄養」の理念のもと、種苗業を通じて自然環境に貢献する株式会社サカタのタネ。同社代表取締役社長の坂田宏氏に自然環境に貢献する取組についてお話を伺いました。

事業概要の紹介をお願いします。

当社は、花と野菜の種苗に特化した研究開発型企業です。1913年の創業から105年目を迎えた現在に至るまで「タネにかける情熱」を持ち続け、優れた花と野菜品種の開発に取り組んできました。現在、国内に4支店・1事業所・2営業所、世界19ヵ国に25拠点、農場を国内5ヵ所・海外10ヵ所設け、世界170ヵ国以上にSAKATAブランドのタネをお届けしています。

私たちはタネという生き物を扱い、自然を相手に事業を行っているという意味で、自然と共生している企業だと考えています。

環境問題への取組について教えていただけますか。

鮮やかな色合いを持ち、真夏の暑さや強い日射しに耐える環境浄化植物「サンパチェンス」

自然環境に貢献する取組は、直接的なものと間接的なものがあります。直接的な取組として挙げられるのは「環境浄化植物」の開発です。当社が開発した「サンパチェンス®」は、従来の花き園芸植物と比べて、大気汚染物質の二酸化窒素やシックハウス症候群の原因物質であるホルムアルデヒド等を、すばやく葉内に吸収し、無害化する効果があります。また、「打ち水」効果による温度降下能力も備えており、水中に溶けた窒素やリンといった栄養塩類の高い浄化能力も実証されています。

間接的な取組としては、育種を通じた環境貢献があります。たとえば、耐寒性に優れた品種を開発しハウス栽培時の暖房温度を下げることで、間接的にCO2を減らす効果が期待できます。また、近年、生産地の気温が変わったり、寒暖差が激しくなったり、突然の豪雨や突風が起きる等の事象が頻発していますが、こうした気候変動に対応する耐候性品種を開発することも環境への貢献につながると考えています。

また、当社が開発した「ALA-FeSTA(アラフェスタ)」や「サカタ液肥GB」等の高機能液肥も、間接的な環境への貢献になると考えています。これらの液肥は、根からの水分や養分の吸収を促進して植物自体を健康にし、高温・低温・乾燥等の各種ストレス耐性を向上させます。これにより気候変動の影響があっても、植物を健康に育てることが可能になるのです。

屋上・壁面緑化による環境貢献についても紹介をお願いします。

ヒートアイランド現象に象徴される都市の環境問題が顕在化する中、緑が持つ気象緩和機能や生態系維持機能を活用して、省エネやCO2吸収に貢献するのが、屋上・壁面緑化です。

当社では造園緑化事業も行っており、屋上緑化に使う植物の育成土壌に、無機質軽量人工土壌「アクアソイル」を採用しています。アクアソイルは、高い保水性と通気性・排水性を併せ持っているので、雨の当たる屋外であればほぼ灌水の必要がありません。さらに、植物をゆっくりと成長させるので、剪定等の維持管理の大幅な低減を図れます。実際、本社ビルではアクアソイルを使って屋上緑化をしていますが、過去22年間で灌水したのは、真夏で30日以上雨が降らなかったときだけです。アクアソイルを使えば、自動灌水システムに使うエネルギーや水も節約できます。

また、当社では、屋内外の空きスペースに設置できる坪庭サイズの緑化ユニットシステム「どこでもガーデン。」も提供しています。このシステムにもアクアソイルが使われており、屋内においても灌水回数を大幅に低減できるため、維持管理コストを非常に低く抑えられます。

ほかにも、壁面緑化や緑のカーテン等の緑化商品を提供していますが、当社の最大の特徴は、緑の植物だけではなく色彩豊かな花を組み合わせることで、景観を美しく飾り、心の癒やしや安らぎを生む効果をもたらすことです。心安らぐ景観を提供することも、ある意味で環境への貢献になると考えています。

園芸愛好家向けのサービスについて教えていただけますか。

園芸愛好家さまに向けた商品は、直営店舗「ガーデンセンター横浜」および全国の種苗店、量販店、そして自社通信販売カタログやオンラインショップで販売しています。通信販売は1927年から行っており、1951年には有料の会員組織「サカタ友の会」を立ち上げ、会報誌「月刊園芸通信」を発行し、最新の園芸情報をお届けしてきました。今は通販サイト「園芸通信オンラインショップ」からの注文で送料が無料になったり、野菜・草花のタネや苗が10%割引になったり、全国57ヵ所の提携植物園・ガーデン施設で割引優待されたり、さまざまな特典を受けられます。

園芸愛好家さまに向けたサービスとして、もうひとつご紹介したいのが「サカタコンシェル」です。これは、「おうち野菜」シリーズやメロン「ころたん」、「サンパチェンス」に付帯したサービスで、スマートフォンアプリ・Eメール・電話を利用して、当社のお客様相談室に直接、これらの品種の育て方の相談ができるというものです。当社は10年以上前からお客様相談室を持っており、蓄積されたノウハウは業界でも屈指と自負しております。このノウハウをお客さまとの直接的な対話の中で提供する「サカタコンシェル」は、気象や土壌といったさまざまな条件に左右される園芸の課題を解決する方法として、お客さまからもご好評をいただいております。

「ALA- FeSTA」と「サカタ液肥GB」

坪庭サイズの緑化ユニットシステム「どこでもガーデン。」

坪庭サイズの緑化ユニットシステム「どこでもガーデン。」

通販サイト「園芸通信オンラインショップ」

通販サイト「園芸通信オンラインショップ」

「サカタ友の会」や「お客様園芸相談窓口」を通じて園芸愛好家の声をお聞きになっているとのことですが、近年、園芸市場が変化してきたと感じることはありますか。

お客さまのニーズが多様化していることを感じますね。たとえば、以前「緑のカーテン」がはやりましたが、当初はつる性植物で育てやすいゴーヤが人気でした。しかし、ゴーヤが採れ過ぎて困るといった声もあり、他の植物で緑のカーテンをつくりたいという声が増えてきました。そうした声に応え、私どもではキュウリやフウセンカズラ、西洋アサガオ、さらには小型のメロン「ころたん」等をお薦めしてきました。ころたんは、糖度が約15度のさわやかな味で果重300〜500g、家庭でも栽培できるミニネットメロンです。

また、ファミリーマートさま、住友化学園芸さまと共同開発した「ファミマガーデン」も、多様化したニーズに応えた事例といえます。この商品は、家庭で手軽にミニトマトやバジル、パクチー等の野菜を自分で育て、収穫し、お召し上がりいただける家庭栽培キットです。生育の様子を写真に撮ってSNSに投稿したり、お子さまの自由研究に活用していただいたり、毎日に潤いをお届けする商品として、女性やシニアのお客さまを中心に好評をいただいています。

こうした多様なニーズにお応えできるのは、当社が長年にわたり多様な品種を開発してきたことと、栽培に関する豊富な知識とノウハウを持っているからだと考えています。

海外事業が堅調ですが、世界に通用する貴社の強みを教えていただけますか。

当社は、海外の売上高が57%を占めるまでになっています。国内はもとより、海外事業でも当社の強みは、やはり研究開発力です。当社では、ふたつのパターンで研究開発した品種を世界へ展開しています。ひとつは、国内で世界に通用する品種を開発するパターン。日本は気候的に植物へのストレスが高い環境なので、ここで育成した品種は、世界のどこへ持って行ってもよく育つという特徴があります。もうひとつは、現地の気候や土壌、栽培条件に合わせて品種を選抜するパターンです。これはナスやトマト、キュウリ、ピーマン等、ウォームシーズンクロップと呼ばれる品目がメインです。近年、海外では日本産の野菜や果物のブランド価値が高まっているので、その追い風に乗り、今後も引き続き海外事業を伸ばしていきたいと考えています。

今後の事業成長に向けたお考えを聞かせていただけますか。

現代ほど、心と体の栄養が求められる時代はありません。世界中の人々が心に豊かさをもたらす美しい花や環境を求め、また日々の糧となる栄養を必要としています。私は「花は心の栄養、野菜は体の栄養」という言葉をよく使いますが、いつまでも世界に栄養とそして笑顔を供給できる企業でありたいと考えています。

一方で当社は、ものづくりを主軸としたグローバルな活動を通じて、日本の素晴らしさを世界に広める役割を担いたいと思っています。その実現に向けて、今「GENBA(現場)」と「KODAWARI(こだわり)」という日本語をグループ内で広めようとしています。現場とこだわりは、日本のものづくりの根幹であり、そのマインドを世界中のグループ社員に理解・実践してもらいたいと考えているのです。

全社員が当社のスローガン「PASSION in Seed」を胸に、種苗に関わる自分の役割、仕事、そして意見を、情熱を持って語れる企業になりたいと思っています。

代表取締役社長
坂田 宏氏

会社概要

社名
株式会社サカタのタネ
所在地
神奈川県横浜市都筑区仲町台2-7-1
資本金
135億円
事業内容
種子・苗木・球根・農園芸用品の生産および販売、書籍の出版および販売、育種・研究・委託採種技術指導、造園緑化工事・温室工事・農業施設工事の設計・監理・請負
TEL
045-945-8800(代表)
URL
http://www.sakataseed.co.jp/