Ecological Company Special 〜環境経営の現場から〜

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Ecological Company Special 銀座の真ん中から田植えや稲刈り体験を通して自然の大切さを伝えたい

1743年の創業以来、270年以上にわたり日本酒文化を継承し続けてきた白鶴酒造株式会社。同社が酒づくりに必要となる良質な水や酒米を育む自然環境を保全するために取り組んでいるさまざまな活動について、広報室長の西田正裕氏と環境統括室長の松田昌史氏にお話を伺いました。

貴社の自然環境に対する思いや環境方針についてお聞かせ願えますか。

西田氏
私どもは1743年(寛保3年)の創業以来、自然の恵みである米と水、そして麹菌や酵母菌等を用いて酒づくりに取り組んできましたので、自然環境の重要性は十分認識しています。その大切な自然環境を保全するために、環境に配慮した生産設備の導入や環境負荷の少ない商品開発、3R(リデュース・リユース・リサイクル)の促進、廃棄物の削減等、さまざまな活動を行っています。
松田氏
当社では、人類共通のかけがえのない財産である地球環境を守り次の世代へ引き継ぐために、よき社会の一員として、あらゆる事業活動において環境に配慮し、自主的、継続的に環境保全に取り組み、酒づくりを通じて地域社会、文化に貢献していく姿勢を継続することを環境方針に定めています。

環境に配慮した生産設備についてくわしく教えていただけますか。

松田氏
質のよい酒づくりには、酒の温度を70℃前後に上げて火落ち菌を死滅させる「火入れ」と、瓶やパックに充填してから40℃前後まで冷却する工程が非常に重要です。旧工場では、それぞれの工程をボイラーと冷凍機(アンモニアを使用した吸収式冷凍機)で行っていましたが、2012年に竣工した灘魚崎工場では、日本酒業界で初めて導入したヒートポンプにより、同工程の大半を1台で代替できるようになりました。エネルギー効率に優れるヒートポンプを導入したことで、灘魚崎工場は旧工場と比べて1年間の電気代を約1,000万円節約し、CO2排出量も約34%削減することができました。その成果が評価され、一般財団法人ヒートポンプ・蓄熱センターさまより、平成27年(2015年)度デマンドサイドマネジメント表彰における「経済産業省資源エネルギー庁長官賞」をいただきました。
灘魚崎工場のヒートポンプシステム
灘魚崎工場のヒートポンプシステム

容器のリサイクルにも積極的に取り組んでいらっしゃいますね。

松田氏
容器については、当社だけではなく業界全体で3Rに取り組んできた実績があります。また、本社工場がある灘・伏見地区では、これまで各社各様で処理していた工場損紙(紙パック容器の余剰部分)を収集し、製紙原料として有価で流通させる「酒パック循環型リサイクルシステム」を構築し、リサイクル率の向上に取り組んでいます。
西田氏
また、私どもでは社会福祉法人木の芽福祉会が運営する障がい者作業所「御影倶楽部」さまと連携し、手作業の紙すきで酒パックのリサイクル品を製品化する取組も行っています。実は、私の名刺も「御影倶楽部」さまと一緒につくった再生紙を使っています。

廃棄物を利用した取組としては「KOBE グリーン・スイーツプロジェクト」にも参加されていますね。

松田氏
東灘の下水処理場は、阪神・淡路大震災で壊滅的な被害を受けたことを機に、再生可能エネルギーを生産する処理場へ生まれ変わりました。さらに2012年1月から国土交通省下水道革新的技術実証事業として、未利用の地域バイオマス(生物資源)を活用して再生可能エネルギー生産を目指す「KOBE グリーン・スイーツプロジェクト」がスタートしました。これは地元の食品工場で発生する未利用資源(スイーツ)と木質系(グリーン)バイオマスを下水汚泥と混合処理し、バイオガスの増量や汚泥処理の効率化、温室効果ガスの削減を図る実証事業です。当社も同プロジェクトの趣旨に賛同し、事業開始当初から「廃棄酒」の提供を行ってきました。これにより、それまで産業廃棄物として処理していた「廃棄酒」が都市ガスという有効な資源に生まれ変わりました。

銀座のビル屋上で酒米を育てているそうですね。

西田氏

「白鶴銀座天空農園」のことですね。日本屈指の情報発信地「銀座」から、何か日本酒文化を発信できないかと考え、それならば「清酒の命」ともいえる酒米を栽培してはどうかということで、2007年にスタートしたプロジェクトです。夏は暑く、夜も明るい銀座で米づくりは無理との反対意見もありましたが、とりあえずプランター100基から栽培をスタートしました。米づくりを担当したのは、実家が農家という理由で選ばれた総務部の社員です。手探りで始めた天空農園ですが、初年度から予想以上によい米が育ち、翌2008年には屋上緑化向けの軽量土を敷き詰めて約110平方メートルの屋上田圃を完成させ、本格的な栽培を始めました。

この天空農園では、近隣の小学生を招いて田植え体験・稲刈り体験を行ったり、天空農園で育てた米を使い併設の試験醸造室で醸した“しぼりたての日本酒”が味わえる「白鶴 銀座スタイル」というセミナーを開催したり、海外の留学生に田植えや稲刈りを体験してもらったり等、さまざまな活動が行われています。

また、2013年から天空農園で収穫した酒米「白鶴錦(はくつるにしき)」で仕込んだ酒を商品化し、限定販売を始めました。

「白鶴銀座天空農園」がある白鶴東京支社ビル屋上(白鶴ビルディング)
「白鶴銀座天空農園」がある白鶴東京支社ビル屋上(白鶴ビルディング)
田植えや稲刈り等の体験イベントを開催
田植えや稲刈り等の体験イベントを開催

清酒の命は酒米という印象的な言葉がありましたが、貴社は「幻の酒米」を現代によみがえらせたそうですね。

西田氏

現在、最も優れた品種といわれる酒米が兵庫県産「山田錦」です。山田錦は母親品種「山田穂」と父親品種「短稈渡船(たんかんわたりぶね)」を人工交配して生まれた品種です。「山田穂」は栽培が難しいことから昭和初期以降生産されなくなり、「幻の米」となっていました。私どもは「山田錦をしのぐ酒米をつくるには原点に戻るしかない」と考え、母親品種である「山田穂」の復活に着手しました。全国の伝手を頼り、わずかばかりの種籾を何とか探し出し、4年かけて、ようやく日本酒が醸造できる量を収穫することに成功しました。

さらに、私どもは父親品種の「渡船」と「山田穂」を約70年ぶりに交配させました。兄弟米の中には山田錦をしのぐ米があるかもしれないと考えたからです。公的機関の協力のもと、交配による選抜固定を繰り返し、8年の月日をかけて山田錦に劣らない品質の米を選び、「白鶴酒造が育て上げた期待の米」という意味を込めて「白鶴錦」と名付けました。

この「山田穂」と「白鶴錦」を原料米としたお酒は、発売当初から品切れを起こすほどの人気となっており、今では当社以外の酒蔵でも原料米として利用されるようになりました。先ほど、お話しした天空農園で栽培しているのも、この「白鶴錦」です。

国内の日本酒出荷量が低迷していますが、何か対策を考えていらっしゃいますか。

西田氏

少子高齢化や健康志向によるアルコール離れ、低アルコール飲料の台頭等により、国内の日本酒出荷量は減少傾向にあります。一方で、料理や会話を楽しみながらお気に入りの日本酒を味わう女性や、若い世代の飲酒人口は増えているといわれています。私どもは、そのような世代にアプローチすることが市場拡大につながると考え、新たな商品の開発に取り組んでいます。

たとえば、2018年2月に「料理の味わいとバランスのいい日本酒」として「日本酒でマリアージュ」を発売し、2019年1月からの1ヵ月間は「バル等でカジュアルに楽しめる低アルコールの日本酒」をコンセプトに開発した「Hakutsuru Blanc(ハクツル ブラン)」を販売、さらに、若手メンバーが自主的に立ち上がり新たな酒づくりに取り組んだりしています。若手メンバーによるプロジェクトは、クラウドファンディングで多くの資金と支援者を集めて商品化され、2019年6月からインターネット限定販売が始まりました。このお酒は、「白鶴とは異なるタイプのお酒をつくる」「これまでにない別格のお酒をつくる」という想いを込め「別鶴(べっかく)」と名付けられました。

もちろん、従来の定番商品にも力を入れていきますが、一方で、こうした新たな市場、新たなユーザーを獲得するための商品開発を進めるとともに、輸出量が拡大している海外にも積極的に進出していきたいと考えています。

会社概要

社名

白鶴酒造株式会社

所在地

兵庫県神戸市東灘区住吉南町4-5-5

資本金

4億9,500万円

事業内容

清酒の製造、販売および媒介、焼酎・リキュール・味醂・その他酒類の製造、販売および媒介、ビール・醤油・清涼飲料水・その他食料品の販売、輸入ワインの販売、不動産の賃貸、化粧品の販売

TEL

078-822-8901

URL

http://www.hakutsuru.co.jp/