Ecological Company Special 〜環境経営の現場から〜

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ITと産廃処理インフラを活用して静脈産業にイノベーションを起こす

1902年(明治35年)創業の廃棄物リサイクル会社、東港金属株式会社。4代目を継ぐ代表取締役CEOの福田隆氏は、ITを活用した「サーキュラー・エコノミー(循環型経済)」を取り入れて静脈産業にイノベーションをもたらそうとしています。その思いや戦略についてお話を伺いました。

創業の経緯を教えていただけますか。

東港金属は1902年(明治35年)、銅を中心としたスクラップの問屋として開業しました。以来120年近く金属の回収や分別に携わり、1994年からは産業廃棄物中間処理業の許可も取得して、不要になった家電やOA機器、自転車等も扱うようになりました。年間の受け入れ量は約13万トンで、廃棄物の中から鉄やアルミ、プラスチック等の資源を取り出し、そのリサイクル率はおよそ95%です。あらゆる廃棄物の3R(リデュース、リユース、リサイクル)に対応できることからお客さまとの取引も増え、近年では業界でも上位の企業として位置づけられるようになりました。

近年、新たな事業を始めたそうですね。

私たちを取り巻く資源リサイクルのマーケットは成熟していて、20年近く横ばい状態が続いています。東港金属も3R事業だけではさらなる発展が見込めず、新たなビジネスの立ち上げを模索する中、これまで無縁とされてきたITの導入がカギになると思いつきました。同時に私は、まだ十分に使用できる製品が廃棄され、資源を取り出すために粉砕されることが非常に残念で、日頃から「なんとかならないものか」とも考えていました。

そこで2018年、“捨てない”を前提としたサーキュラー・エコノミー(循環型経済)を体現しようと、東港金属グループに「トライシクル株式会社」を設立しました。東港金属がすでに廃棄された製品を3Rで有効活用するのに対し、トライシクルでは製品を捨てることなく、リユースやリメイク等で継続的に循環させることを目指します。そのためにITを活用したプラットフォームも構築し、現在は企業の中古品を循環させるBtoBのリユースビジネスに注力しています。

全体の大きな円がトライシクルによるサーキュラー・エコノミーのビジネスモデル。
左下の「製品利用」部分にある小さな円が東港金属による廃棄物の3R。
全体の大きな円がトライシクルによるサーキュラー・エコノミーのビジネスモデル。

企業の中古品ビジネスは、従来のBtoBリサイクルビジネスと何が違うのですか。

トライシクルではBtoBリユースのプラットフォームを構築するとともに、この分野で世界初のアプリ「ReSACO(リサコ)」を開発し、2019年にリリースしました。このアプリをベースに企業間で直接中古品をやり取りできることが、従来のビジネスモデルとの違いです。

「ReSACO」のサービスは、BtoB版の「メルカリ」のようなモデルになっていて、企業担当者は自社で不要になったデスクやパソコン、オフィス機器、生産設備等をスマホやタブレットで撮影し、値段を決めて出品できます。価格設定時には撮影画像をAIが分析し、市場にマッチした価格を提示するので、値付けに悩む心配はありません。出品後は買付を希望するほかの企業から連絡が入るほか、東港金属でも買取や無料回収に応じています。

デスク等はともかく生産設備のような中古品はメンテナンスが必要ですよね。

中古品は、まず私たちが回収して千葉県の富津地区工業団地内にある「ReSACOリサイクルセンター」で一時保管します。ここは企業が集中する都心から近い好立地で、約2万3,000坪という広大な土地を確保しているため大量の回収、保管、循環が可能です。

このリサイクルセンターでは、中古品を元の状態に戻す「リペア」だけではなく、洗練されたデザインを施して新たな価値を創造する「リメイク」、新たな機能やデザインを加えることでオリジナル品より高い価値を持つ商品につくり替える「アップサイクル」等ができる設備を整えています。そういった意味では、ここは中古品の保管場というより、中古品を生まれ変わらせるインフラ設備と、新たな機能やデザインを施すクリエイティブ機能を持つ生産拠点なのです。

つまり、私たちが目指しているのは中古品をベースにしたメーカー、いわゆる“リメーカー”なのです。

「ReSACO(リサコ)」の操作画面(イメージ)
「ReSACO(リサコ)」の操作画面(イメージ)

安価な新品があふれる市場で中古品ビジネスは売れ残りリスクが大きいのでは。

今の時代、本当に良質な中古品でないと消費者は見向きもしません。実際、回収品の3割から5割は売れ残る可能性があり、その処理で膨大な廃棄費用も発生するリスクがあるため、普通の企業はこのビジネスには参入が難しいと思います。

しかし、私たちには、本体の東港金属が持つ資源リサイクルインフラという強力な武器があります。そのため、トライシクルで販売できなかった中古品をリサイクルして資源に変えることができます。また、富津地区工業団地周辺にはリサイクル企業や製造業が集積していますから、資源の販売先にも事欠きません。だから思う存分、中古品回収に力を注ぐことができるのです。

なお、東港金属の千葉工場には、国内でも数台しかない最新鋭のシュレッダー設備が導入されており、従来の設備では回収しきれなかった微細な金属片まで資源化できます。回収できる金属片には金や銀、プラチナも含まれます。こうした設備を活用し、ほぼすべての回収品を無駄なく資源化できるからこそ、私たちはサーキュラー・エコノミーを循環させる主役になれるのです。

「ReSACO」の反応はいかがですか。

開発当初は大手企業との取引は想定していなかったのですが、リリース後、大手企業や大規模な病院、工場等から続々問い合わせがあり、かなりの手応えを感じています。

企業にとってこれまでは不用品が発生すると、産業廃棄物としてコストを払って処理しなければいけなかったわけですが、「ReSACO」を活用すれば収益を生み出す可能性があり、仮に買い手がいなくても私たちが無料で回収するので廃棄費用を削減できます。

しかも、SDGsの目標に設定された「つくる責任つかう責任」のゴールにも合致しますから、SDGs担当者は導入しやすいのだと思います。

ビジネスとしての将来性をどう見込んでいますか。

もちろん勝算はあります。たとえば、国内の自動車市場は新車が17兆円であるのに対し、中古車市場は2.7兆円、約16%の比率です。また、CtoCの分野でも「メルカリ」の台頭によって中古品市場は2兆円を超えており、今も成長を続けています。

BtoB中古品市場は、経済産業省の推定によると2,000億円から3,000億円とされています。これに対し、国内設備投資(電力を除く)は年間約18兆円もありますが、その中で中古品が占める比率は1、2%しかないとの試算になっています。ほかの中古品市場と比較すると、その比率には大きなギャップがあり、この領域は開拓の仕方次第で少なくとも10%以上に拡大する可能性があると見ています。

静脈産業の最大の課題は人材採用といわれています。

産業廃棄物業者というだけで、若い人には耳を傾けてもらえないのが現実です。そのような先入観を取り払うために、私たちはIT企業としてトライシクルを立ち上げたのです。トライシクルのオフィスは、従来の産業廃棄物に関わるビジネスのイメージとは一線を画す洗練された環境ですし、待遇面についても優秀な人材を獲得できるレベルにあります。

ただし、どれだけ環境を整えても知名度を高めなければ、誰も振り向いてくれません。そこで私たちは、大田区総合体育館をホームアリーナとする男子プロバスケットボールチーム「アースフレンズ東京Z」とパートナー契約を結びました。地元のチームですから社員全員が感情移入できますし、応援による一体感や高揚感は、事業活動だけでは得難いものです。こうした活動を通じて知名度を高めるとともに、社員のモチベーションも高め、社会に貢献できる事業を展開していきたいと思っています。

今後の展望を教えてください。

「ReSACO」を立ち上げた当初は、世界的なムーブメントとなっているサーキュラー・エコノミーの波に乗り遅れたくないという危機感がありましたが、そもそも社会に貢献する事業ですし、業界を変革する可能性も秘めているし、とてもイノベーティブな仕事なので、今は純粋にビジネスとして楽しみたいと思っています。

直近の目標としては、早期に「ReSACOリサイクルセンター」を本格稼働させ、2020年末までにBtoBリユースビジネスの黒字化を目指します。特に、2020年は東京オリンピック・パラリンピック大会で使用された資材や機材の廃棄品が出ると予想されるので、これを再資源化することで私たちの価値を示し、首都圏で存在感を高めて全国に拠点を広げ、いずれは世界へビジネスを拡大することを目指します。

会社概要

社名

東港金属株式会社

所在地

東京都大田区京浜島2-20-4

資本金

1億円

事業内容

金属スクラップ全般に関する業務(国内および輸出入)、プラスチックの各種リサイクル、産業廃棄物の収集、運搬および中間処理、再生ならびにリサイクル事業

TEL

03-3790-1751

URL

https://www.tokometal.co.jp