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欧州の執拗さから学ぶもの

 EUの経済成長・雇用の基本指針となってきた「リスボン戦略」は2010年で終了。その後継となる2020年までの新たな中期成長戦略「欧州 2020」が2010年からスタートしている。新しい成長戦略は、「知識とイノベーション」「より持続可能な経済」「高雇用・社会的包括」という3つの優先事項の下に、「イノベーションの統合」「若者の移動促進」「欧州のデジタル化」などといった主要な政策課題を据えている。「欧州での資源の効率的な利用」というのも、そうした旗艦イニシアティブの1つに数えられているテーマである。

 2011年はじめ、「欧州での資源の効率的な利用」に関する戦略書が公表された。「気候変動への対応に向け、2050年までに欧州の温室効果ガス排出量を1990年比80〜95%削減するためのロードマップを作成する」「2020年までの20%の省エネ達成方法などを規定する」「2050年までに実現する低炭素、資源利用の効率化、競争力のある交通システムのビジョンを提示する」など、2011年中に発表を約束した政策の中身は、依然として意欲的なものばかりだ。

 注目されるのは、天然資源が確保できる場所、天然資源の効率的な利用法、廃棄物の発生とリサイクル率、環境と生物多様性へのインパクトなどについての指標を設けることを検討していると伝えられる点だ。2020年までに温室効果ガス排出量を1990年比で20%削減、エネルギー消費のうち再生可能エネルギーの比率を20%に引き上げ、エネルギー効率を20%改善、といったベンチマークはすでに規定されているものの、モニタリングをさらに強化するという。

 これに呼応する企業の動きもある。6月、フランスのカルフール、スウェーデンのイケアなどEU域内外72社が「2020年までの温室効果ガス削減目標を1990年比でさらに30%減まで引き上げよう」という宣言に署名した。厳しい経済状況に直面しながらも、環境政策を追求していく執拗さは、一体どこから生まれてくるのだろうか。「いつも計画倒れだ」という批判ももちろんあるが、彼らの世界観からヒントを得ることは決して無駄ではないと、今、あらためて心しておきたい。

(株式会社日本総合研究所 足達 英一郎)