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米国の気候変動対抗計画に思う

 2013年6月、米国のオバマ大統領がジョージタウン大学で行った演説は、果たして後世に残るものとなるだろうか。再選を果たした先の選挙戦では、気候変動問題に関する公約はほとんど見られなかった。それが、一転して「米国はこの分野で世界のリーダーになる」と高らかに宣言した。今回の「気候変動対抗計画」発表の背景には何があるのだろうか。

 第一に想像できる背景は、米国では、シェールガス量産の見通しなどで石炭や石油からのエネルギー転換を果たしていけるという自信が着実に広がっていることだ。これまでは、「炭素汚染」を問題視するといっても、「では代替エネルギーは?」という反論に有力な答えはなかった。それが、発電所からの温室効果ガス排出上限を課すと同時に、再生可能エネルギー量をさらに倍増させると安心して言えるようになった。

 第二に想像できる背景は、気候変動の物理的影響が人々に実感される程度にまで広がっている事実だ。大統領演説でも、より深刻な暴風雨、干ばつ、山火事、海岸線の消失、海面上昇などが具体的に指摘された。それらの経済的な損害も具体的に算出されるようになっている。

 第三に想像できる背景は、オバマ大統領自身が長期的な地球の未来に関心を持っている人物だったということだ。米国経済の低迷、民主党と共和党の力の拮抗など、気候変動問題を封印せざるを得なかったという事情はあろう。しかし、再選を果たしたオバマ大統領が、残り3年半の任期をかけて、自らの信条に忠実であろうとしている変化が演説からは読み取れた。

 2期目の米国大統領は、とかく理想主義に走り、最後にはレームダック化するとよくいわれる。ただ、温室効果ガス排出抑制に限っていえば、米国民が大統領の呼びかけを支持して、その行動を変えられるか否か、その一点にかかっている。

(株式会社日本総合研究所 足達 英一郎)