環境先進企業トップインタビュー

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トップインタビュー 三浦工業株式会社 代表取締役 社長執行役員 CEO 宮内 大介氏

1927年、愛媛県松山市で創業した三浦工業株式会社。日本の産業用ボイラ業界のリーディングカンパニーとなった同社は、現在、“熱・水・環境”をキーワードに工場全体のトータルソリューションの提案に取り組んでいます。「世界のお客さまに省エネルギーと環境保全でお役に立つ」ことを経営理念に掲げ、独自技術を進化させ、事業拡大を続けてきた同社のものづくりについて、代表取締役 社長執行役員 CEOの宮内大介氏に伺いました。

「ボイラのミウラ」の誕生

「ボイラのミウラ」として有名な貴社ですが、もともとは精麦機の製造から始まったそうですね。

弊社の歴史は1927年、精麦・精米機の製造から始まりました。麦を精製する方法には多段階の工程がありますが、押麦の場合、籾から実を取り出し、蒸気で加熱した後、圧扁(平たくつぶすこと)します。蒸気を使うためボイラが必要になるのですが、当時、愛媛県内には精麦に用いるボイラを供給するところが1社しかない状況でした。精麦機の注文をいただいても、ボイラがなかなか入手できないことがあり、それならばボイラもつくってお納めしようと考えたそうです。まずは精麦用蒸気圧扁機として販売したのがステップ1です。

日本機械学会により「機械遺産(2015年度)」に認定された「小型貫流ボイラZP型」

こうしてボイラの製造を手掛けるようになり、1959年、我々はさらに次のステップへと進むことになりました。この年、「ボイラー及び圧力容器安全規則」が制定され、圧力が10kgf/cm2以下、伝熱面積10m2以下の小型貫流式ボイラであれば、無免許で使用できるようになったのです。このカテゴリーにチャレンジしようと、創業者の三浦保は試行錯誤の末、新しいタイプのボイラを開発しました。これは弊社の歴史の1ページがめくられた瞬間でした。

このとき開発されたボイラは、従来なかった技術を使ったもので、当初、愛媛労働基準局から認可を得られませんでした。しかし、安全性の試験を重ね、三浦自身が東京の本省へ通い、粘り強く訴え続けたそうです。その結果、ようやく規格認可を果たし、「小型貫流ボイラZP型」として商品化されました。

ZP型は、従来のボイラに比べて小型で、無免許で簡単に取り扱えることが特長でした。それまでボイラというと産業の中でも特殊なカテゴリーにあるイメージでしたが、街のクリーニング店や商店でも使いやすい製品を出せたことが、「ボイラのミウラ」のスタートにつながりました。創業者の熱い思いの中でユニークな技術を生み出し、会社の礎を築いたのです。

そして、1977年に「MI(多缶設置)システム」の販売を開始したことで、我々はもうひとつ上のステップへ進みました。ボイラを複数台並べ、トータルの蒸気容量を大きくすることで、従来のお客さまに加え、大量の蒸気を必要とする工場等の需要にも対応できるようになりました。お客さまの層が大きく広がり、ボイラ界における我々の存在感を高めることができました。

「熱・水・環境のベストパートナー」への挑戦

今では「熱・水・環境のベストパートナー」と言っています。

「熱」をつくることがボイラの用途ですが、燃焼で煤煙が発生する。熱が欲しいゆえに公害の発生源になるという事実がある。しかし、経済が発展していく中で、熱は欠かせない。それならば、同じ熱を出すものでも、できるだけ環境負荷が低いものにしようと、天然ガスを燃料とするボイラの開発に取り組みました。これが、我々が環境を意識し始めた1980年代のことです。

松山の空は青い。でも、東京の空はそうではない。当時、東京や川崎の空はまだ光化学スモッグで覆われていました。この東京の空を何とかしようということで、「東京の空を青くしよう」「東京から富士山が見えるようにしよう」が、弊社のテーマとなりました。ただ、いくらガスがクリーンであるといっても、コストが上がるとなればなかなか産業界は動きません。そこで、コストに見合う形になるよう、省エネルギー、高効率化を図りながら、クリーンなエネルギーに対応するボイラにしていったのです。これが「環境」の部分です。

では、「水」は何かといえば、ボイラは「熱」のイメージが強いのですが、中は「水」なんです。ユニークで性能のよいボイラにしていこうとしたとき、ネックになったのは中を流れる水だったのです。水をしっかり管理しないとボイラの早期故障につながるため、中の水をいかにコントロールするか。そこから水処理機器が生まれてきたわけです。

我々はボイラ単品ではなく工場全体のトータルソリューションを提案しています。システム全体を内製化する自前主義でやってきた結果、熱を研究し、水に取り組むことになり、同時に環境対応も進めるようになって、「熱・水・環境のベストパートナー」の道へとつながっていったのです。

水の事業に取り組むきっかけも、ボイラにあったわけですね。

ボイラの水は人間の血液のようなものです。健康診断のように、弊社は全国1,000名以上のメンテナンス員がお客さまのもとへ伺い、毎日3,000本以上のサンプル水を採取しています。原水であったり、ボイラの中の缶水であったりするのですが、これを専門の部隊が分析しています。

その中で、いろいろな水のノウハウがついてきました。気づけば、今は水の技術陣のほうが燃焼や圧力容器の技術陣より多くなっている。それはなぜかといえば、ボイラに入る水の管理に加え井戸水のろ過をしたり、純水が必要ならRO水をつくったりと、お客さまの上流側へ進んでいくと、いろいろな水処理への要求が出てくるのです。そこからさまざまな水処理機器を手掛けるようになりました。

つながっているところを一つひとつ広げてこられたのですね。

今、我々が目指しているのは、工場全体のトータルソリューションで、お客さまが抱える問題を解決するためのご提案をすることです。やはり弊社の強みは何かと考えたとき、我々がお客さまから最もご信頼いただいているボイラが核になるというのはずっと変わりません。現在、我々のボイラのシェアは約55%です。この数字は今後上がっても数ポイントだと思うのですが、我々はボイラを核に、その周辺につながっているものへと領域をどんどん広げていこうとしています。ボイラから出てきた蒸気は、今は病院の滅菌にもつながっています。我々の滅菌機器の販売シェアは日本でナンバー2です。これはジグソーパズルのようなもので、自分たちの製品で、できるだけたくさんのピースを埋めていきたい。このチャレンジの根幹には、省エネルギーと環境保全というテーマがあります。単品で生まれるメリットに比べて、複合的なシステムであればさまざまな工夫ができ、よりエネルギーの効率化ができると考えています。

貴社の製品が普及すれば、国内だけでなく世界の環境保全への貢献が期待されます。

今、環境面で最大のインパクトがあるのが中国です。中国では、石炭を禁止する動きが出てきたり、NOxの排出規制が日本以上に厳格化されたりして、高効率のガスボイラに注目が集まっています。今後3〜5年はアジア中心になると思いますが、エネルギー単価が上がれば、省エネ機器はさらに競争力が出てきます。今は「中国の空を青くしよう」がテーマですが、「世界の空を青くしよう」をスローガンとして、まだ進出していない地域も今後、視野に入れていきたいと考えています。

「最も働きやすい職場」をつくる

グローバルな企業になった今も、松山に本社を置いています。成長の過程で本社を東京へ移す企業も多い中、松山に本社を置き続けるメリットを教えてください。

我々も東京に営業所を構えており、松山の営業所の10倍以上の人間がいます。それは東京を意識しているというより、お客さまがいるからです。東京の営業所はあくまで外との接点であり、本社機能とは違うものです。技術やものづくりという観点でいうと、地方は工場用地が豊富ですし、地方だからできないこと、というのは今はないと考えています。温暖な気候、比較的災害も少ない松山は、弊社の成長において離れることのできない本社の所在地であると考えています。

では本社機能とは何かというと、お客さまとの接点ではなく、財務、総務、人事等のバックオフィスですよね。弊社のバックオフィスでは、女性の活躍度がものすごく高いと思います。弊社で働く女性の中には、地元志向が高く、この地から動きたくないという人も多い。家から通えるところがいいという感覚で来てくれて、こういう方のポテンシャルはすごく高く、バックオフィス的な仕事でどんどん活躍してくれます。執行役員の中にも経営企画本部長を務めている女性がいます。

「ワク沸クミウラ」をはじめ、貴社のPR・広告には非常にユニークで“人間くさい”文化を感じます。人材育成はどのようにされているのでしょうか。

社員の研修制度にかなり力を入れています。年間約300講座を設け、全国にいるすべての社員ができるだけ年に一度は松山へ来て研修を受けるよう奨励しています。基本的に研修は、営業、メンテナンス、事務等、それぞれの専門分野の技量を向上するためのセミナーと、我々の企業理念に関するセミナーの2部構成になっています。「我々はわが社を最も働きがいのある、最も働きやすい職場にしよう」という弊社のモットーについてじっくり考える機会を大事にしていることが、今おっしゃったような人間くさい会社につながっているのかもしれません。

また、社員同士のコミュニケーションを深めようと「飲みニケーション」を支援するため、ひとり月3,000円まで会社が飲食代を負担する制度も設けています。新入社員も含め、社員の飲みニケーション参加率はよいです。

「ワク沸クミウラ」ブランドサイト

「ワク沸クミウラ」ブランドサイト

「最も働きやすい職場」はどういったものとお考えですか。

私が思うのは、自分の存在が認められる職場ですね。自分のできること、やりたいことが現実化していく。それが成果として感じられる。やはり自分の存在を肯定されると人間はうれしいわけで、「君がいるからできた」と言われたり、自分の存在が感じられたりすることが働きがいにつながるのではないかと思います。

仕事を単純に切り取って、「はい、みなさん、やりなさい」と割り振ると、「できる人」と「できない人」が出てくるかもしれません。しかし、我々はチームとして仕事をしています。チームの中にはいろいろなファクターがあり、自分の強みを出せるファクターが必ずあるはずです。逆にいえば、組織では、苦手なものは誰かに補完してもらってもよいのではないかと思います。強みを生かせるところはどこで、それを上司がいかに探していくか。それに今、トライしているところです。

私は、人間なんてそんなに能力の差はなくて、だからこそ、どういう仕事をしてもらうかという、アサインの仕方のほうが大切だと思っています。国語が得意で数学な苦手な人に「数学をしなさい」と言っても無理でしょう。その人には国語を担当してもらったほうがよい。無理やり数学をさせるのは、本人にも組織にも決してハッピーなものではないと私は思います。

組織において誰にどの仕事をアサインするかは上司の役割です。それぞれの社員をニュートラルに見て、強みを生かせる場所にアサインするのが重要ですが、常にニュートラルな見方をするのは難しい。それができる上司が50万石の城主から100万石の城主へと変わっていく人材なのでしょう。

人の可能性はわからない。どう化けるかわからないのだから、できるだけニュートラルに見ようということですね。

社員研修等でも、多元的な見方をしようとよく話しています。そのとき使うのが、私が考案した立体「マサシ君」です。「マサシ君」は丸と言うこともできますが、角度を変えれば、三角にも四角にも見えます。「まる」「さんかく」「しかく」から1文字ずつ取って「マサシ君」というわけです。「まさしく!」という意味にもかけています。

会社目線、マーケット目線等、さまざまな見方があります。特に忘れてはならないのがお客さま目線です。我々は流通に乗せて終わりということは絶対にしません。メンテナンスを通してお客さまと常にコミュニケーションを取っています。製品本来の性能をしっかり出すためにも、とにかくお客さまのそばにいる。いろいろな見方がある中でも、お客さまの見方が大事ということです。

マサシ君

マサシ君

100年企業になるためのチャレンジ

これからどのようなことが課題になっていくとお考えですか。

先駆者だったからこそガラパゴス化するというようなことがないようにしないといけません。我々は1989年からオンラインメンテナンスに取り組んでおり、すでに約5万6,000台の装置が回線につながっています。今から始めれば最新のIoTを入れられるかもしれないけれど、我々はすでにつながっている5万6,000台があるがゆえにここを守ろうと保守的になってしまいます。そうなるとガラパゴス化する。だから、「変える」と宣言しています。

多くの企業はやってきたことを守りたがります。

守っているだけでは、延命にしかならないですよね。弊社は2019年に設立60周年を迎えますが、すでにお話ししたように、1980年代の先輩方のチャレンジがあったおかげで今があるのです。つまり、今、我々がチャレンジすることが20年後、30年後をつくるということです。私の中では、今は過去の遺産の恩恵で事業を続けているという認識です。これを守りながら、我々は100年企業になるために、未来のミウラ人にギフトを遺していかないといけません。それは大切な仕事です。チャレンジして世の中に役に立つものを送り出し続ければ、未来は明るいと思っています。

【聞き手】三井住友銀行経営企画部CSR室長 末廣 孝信
日本総合研究所シニアマネジャー 井上 岳一

PROFILE

宮内 大介(みやうち だいすけ)

宮内 大介(みやうち だいすけ)
1962年愛媛県松山市生まれ。
1986年京都大学工学部資源工学科卒業。
1997年三浦工業株式会社入社。
首都圏事業本部長、米州事業本部長、アメリカ法人社長等を経て、2016年4月に代表取締役社長 社長執行役員に就任。
同年6月より現職。

会社概要

会社名
三浦工業株式会社
創立
1959年
本社
愛媛県松山市堀江町7番地
資本金
95億4,400万円(2017年3月31日現在)
代表者
代表取締役 社長執行役員 CEO 宮内 大介
事業内容
小型貫流ボイラ・舶用ボイラ・排ガスボイラ・水処理装置・食品機器・滅菌器・薬品等の製造販売、メンテナンス、環境計量証明業等
URL
http://www.miuraz.co.jp/