こどもたちが楽しく学べる金融経済教育へ

 ※内容は、取材当時のものです。

こどもたちが楽しく学べる金融経済教育へ

〜金融×エデュテイメントが生み出す新たな価値〜

  • 幸田 慎吾
    SMBCコンシューマーファイナンス(株) 幸田 慎吾
  • 下村 麻衣
    SMBCコンシューマーファイナンス(株) 下村 麻衣

少子高齢化

キャッシュレス決済の普及により、スマホで手軽に支払いができるようになった一方、現金を使った実感が薄れやすいという課題が浮かび上がっている。特にこどもたちにとっては、「スマホがあれば何でも買える」という誤解を招く恐れがあり、お金に対する理解が浅いまま成長するリスクが懸念される。

また、2022年の成年年齢引き下げにより、高校生でも満18歳になるとクレジットカードやローンの契約が可能になった。計画的な利用が求められるが、その認識がないままに利用することで、不利益を被るリスクが考えられる。

このような状況から、金融リテラシーを早期に習得する重要性、こどもたちへの金融経済教育の必要性が増している。

こどもたちが楽しみながら金融について学べる教材の開発

前述の社会情勢を踏まえ、SMBCグループは金融経済教育の推進に取り組んでいる。なかでもSMBCコンシューマーファイナンスは、2011年から金融経済教育セミナーを実施し、金融経済教育の普及を通じて消費者が金融トラブルを回避し、自分らしいライフプランを設計することで、夢や目標の実現を目指すための金融リテラシー向上を支援する取組を進めている。同社ではこれまで、年齢や知識レベルに応じたセミナーの開催や教材整備、金融リテラシー検定の実施など、多角的に金融経済教育を推進してきた。2013年度に13万人だったセミナー受講者は、10年後には年間28万人と2倍以上に増加。これに伴い参加者層も広がり、近年は従来のターゲットであった高校生に加えて大学生や若手の社会人も多く参加している。

一方、金融経済教育は、特に小学生のこどもたちにとっては用語の理解が難しく、言葉の意味を伝えることが課題となる場面も多い。同社の東京お客様サービスプラザの幸田は、展示会や教育現場で金融リテラシーの重要性を伝える活動を行うなかで、「直接話をすれば興味を持ってもらえるものの、こどもたちはそもそも金融の知識やリスクなどに関心が薄い」という、教育の入り口における課題を実感している。

この課題を解決するため、同社は三井住友フィナンシャルグループ・三井住友銀行と共に、こどもたちが金融経済教育を楽しく身近に学べるよう、エデュテイメント(教育と娯楽を融合した手法)を導入し、ゲーム形式で学べる「クエスト・オブ・ファイナンス ~勇者の武器はお金の知識~」を開発、2024年3月から提供している。クエスト・オブ・ファイナンスはプレーヤーがさまざまなクエストをクリアしながら100コインを集め、大魔王を倒すための伝説の剣を引き抜くというストーリーで、お金を稼ぐ、貯める、使うといった基本的な行動を学べるゲーム教材だ。こどもたちに人気のあるマインクラフトを利用し、金銭感覚や金融の基礎知識を自然に身につけられるよう設計されている。

このゲーム教材は、「絶対に儲かる」といった話を持ちかけられるシーンなどを盛り込むことで、遊びながら実際の詐欺や金融トラブルなどを疑似体験できる。この教材を活用した授業について、幸田は「ゲーム内での失敗経験をきっかけに、『さっきのクエストでこんなトラブルがあったよね』と振り返りながら、現実世界のニュースや事例を交えることで、より現実味を持たせることができます」と語る。

クエスト・オブ・ファイナンスでは、楽しみながら学べるゲーム設計を追求するため、監修者とも相談しながら学びの要素とゲームとしてのバランスの調整にこだわっているという。同社の社会的価値創造推進部の下村は、「ゲームの成功率を簡単にはクリアできない難易度にすることで、再挑戦したいという意欲を持ち、繰り返し遊ぶなかで学びを深められるように工夫して設計しました」と語る。その狙い通り、実際にゲームを体験したこどもたちからは、「もう一回やりたい」といった声が多く寄せられている。

クエスト・オブ・ファイナンスは高校の授業にも導入されている。幸田は、高校で行われた家庭科教員の会合でセミナーを行った際、「家庭科の先生方は『金融経済教育を教える必要があるが、知識が足りず、どう教えればよいかわからない』という課題を抱えており、楽しみながら学習ができるクエスト・オブ・ファイナンスを提案したところ導入に至りました」と現場の課題感やニーズを語る。

一方、下村は、こどもを持つ親も金融経済教育に課題を抱えていると指摘する。「親になると『資産運用を教えなければならない』と難しく考えがちですが、こどもたちがまず学ぶべきなのは資産運用ではなく、お金の本質的な価値や役割です。お金は、将来やりたいことを実現するための手段であり、その目標に向けて工夫し、計画的に蓄える方法を教えていくことが重要です。クエスト・オブ・ファイナンスを活用して、こどもたちがお金について楽しく学べる機会を広げていきたいと考えています」

より多くのこどもたちへ金融経済教育を届けるために

今後は、さらに多くのこどもたちへ金融経済教育を届けるため、不登校のこどもたちや障がいのあるこどもたちなど、教育支援が届きにくい層への金融経済教育の提供を重要な課題として捉えている。学校現場で講師を務める幸田は、不登校のこどもたち向けに実施したセミナーで、「チャットで最後に『ありがとう』と言ってもらえたことがとても嬉しかったです」と印象を語る。また、聴力に障がいのある聾(ろう)学校のこどもたち向けセミナーでは、「非常に高い関心を持って聞いてくれていると感じました。耳が聞こえない、聞こえにくい方々にも金融について学んでもらうことは非常に大切だと実感しています」と活動の意義を強調した。

また、マインクラフトは英語圏のユーザーが多いことから、クエスト・オブ・ファイナンスにも英語をはじめとする多言語対応の要望が寄せられており、今後は同教材を起点としてグローバルに金融経済教育を推進することも視野に入れている。

取組全体を振り返り、下村は「これまで接点を持てなかった層とも繋がることで、私たちだけでは気づけなかったニーズをヒアリングできたり、新しい出会いがあったりと、クエスト・オブ・ファイナンスを通じて金融経済教育の必要性と展開の可能性を強く実感しました」と手応えを語る。さらに、「金融を学ぶことは、お金に関する不安解消に貢献するだけでなく、自分らしい人生を歩むために欠かせないものであり、人生を豊かにする力になることを伝えていきたいです。そして、金融機関が金融経済教育に取り組むことは、中長期的な観点で私たち自身の持続的成長や企業価値向上にもつながっていくと考えています」と熱意を込めて語った。

※MinecraftはMicrosoft社の商標です。また、本教材はMicrosoft社及びMinecraft開発社のMojang Studiosの承認を得ているものではなく、公式として提供するものではありません。

プロフィール

幸田 慎吾

SMBCコンシューマーファイナンス(株)
東京お客様サービスプラザ

下村 麻衣

SMBCコンシューマーファイナンス(株)
社会的価値創造推進部