※内容は、取材当時のものです。

社会変革を支える世界新
時代株式ファンド

〜投資信託×寄付が生む
「二重の価値創造」〜

  • 髙尾 香織
    三井住友DSアセットマネジメント(株) 髙尾 香織
  • 井上 武
    三井住友DSアセットマネジメント(株) 井上 武

日本の再成長

教育

大学で行われる研究や教育は、イノベーション創出の土台であり、社会の持続的な発展を支える重要な柱だ。特に基礎研究は、短期的な利益を追求する研究とは異なり、長期的な視点から未来を切り開く知見や技術を創出する。こうした大学の研究や教育を支えることは、日本が再び成長を遂げるための重要な鍵となる。

この基礎研究や教育環境を維持・発展させるためには、安定した財源の確保が欠かせない。そのなかで重要度が高まっているのが寄付金等を基に運営されている「大学基金」だ。大学自身は政府からの運営費交付金等を主要な財源としているが、期間内に使い切らなければならない等の制約があり、成果が出るまで数十年を要するような長期的な研究に財源を回していくことが難しいのが現状だ。また運営費交付金は年々減少傾向となっている。

こうした課題の解決に向けて、三井住友DSアセットマネジメントでは「世界新時代株式ファンド(愛称:World Change)」を通じた取組を行っている。世界新時代株式ファンドは、構造的な変化により成長が見込まれる分野に着目し、世界中の企業に投資する投資信託であり、ファンドを通じて得られた収益の一部を教育や医療といった社会課題の解決に取り組む団体に寄付するスキームを採用している。

投資と寄付の融合で
支援の範囲を拡大

2020年7月の「世界新時代株式ファンド」組成の背景には、社会が大きな変革を求められるきっかけとなったコロナ禍の環境があった。構造的な変化により成長が見込まれる分野として「ライフスタイル」「企業戦略」「医療・健康」「グリーンテック」の4つの有望テーマを選定して運用を行っている。

こうした社会変革につながる活動を行うのは株式市場に上場する企業だけではない。しかし、投資信託の運用だけでは、社会課題に取り組む団体を直接的に支援することができないという課題があった。そこで本ファンドでは、同社が受け取る運用管理費用(信託報酬)の一部を、本ファンドの運用コンセプトから医療や教育といった社会的価値の創造への寄与が期待される団体へ寄付する仕組みを導入した。

寄付スキームの導入にあたっては、寄付先の選定に多くの時間を割いた。同社の商品企画部商品管理チーム 髙尾は寄付先の選定プロセスについて「社会的価値の高い活動を行う団体は数多く存在します。ファンドのコンセプトにマッチする団体を探し、そのなかからどの団体を選ぶべきか、透明性や信頼性を重視し、一つひとつ丁寧に調査しました」と語る。

その選定プロセスを経て、寄付先として選ばれた団体の一つが「東京大学基金 UTokyo NEXT150(国立大学法人東京大学)」だ。この基金は、基礎研究や創造的な教育活動の充実を目指すために設立され、東京大学が生み出す新たな社会的価値創造の原資として重要な役割を担っている。

東京大学が抱える課題の一つは、基金の規模が小さく、研究や教育への迅速な資金投入が難しい体制だ。さらに、政府からの運営費交付金が減少するなかで、自前の資金をどのように運用するかも喫緊の課題となっている。

「東京大学基金の規模は約299億円ですが、アメリカのトップ大学は数兆円を超える規模の基金を持ち、その運用益を研究資金として活用しています。この圧倒的な規模の差やそれを支える運用ノウハウの不足は、日本の大学全体が直面する大きな課題です」と同社のサステナビリティ推進室 井上は指摘する。

これらの課題を解決するためには、まず基金の資金基盤を強化する必要がある。その一環として、同ファンドでは2024年9月、東京大学基金に約400万円の寄付を実施した。東京大学基金の担当者とは年に一度面談を行い、寄付金の使途や今後の活動について直接確認している。そのなかで、髙尾は「東京大学基金では、寄付を受け取るだけではなく、運用してその資金を増やし、必要なタイミングで研究や教育に迅速に資金を投入できる体制の構築を目指して、組織改善や基金運用の強化に積極的に取り組まれています」と語り、その姿勢と熱意に深く共感している。

また、世界新時代株式ファンドからの寄付を受けた東京大学基金事務局は、「今回の寄付は、基礎研究や教育活動の基盤強化に大きく貢献しており、そのなかでも奨学金や、想定外の緊急時の案件に対する支援など、多岐にわたる活動に活用されています」と感謝のコメントを寄せている。

東京大学からの感謝状

投資と寄付による
「二重の価値創造」

寄付スキームを組み込んだ同ファンドの組成後、多くの団体から寄付を希望する声が寄せられた。このような外部からの反響について、髙尾は「投資信託を運用していると、どうしても金融市場だけに目が向きがちですが、当ファンドの運用管理を通じて、社会的価値を高める取組を行う団体が非常に多いことに気づかされました」と振り返る。

今後は、ファンドのパフォーマンス向上を最優先に据えつつ、ファンドの成長に合わせて寄付先を増やすことも検討していく予定だ。また、社会全体からの理解と支持を得るために、寄付を通じた社会的価値に関する情報発信も視野に入れている。こうした取組や発信を通じて、投資信託の魅力を一層高めるとともに、投資信託の運用による経済的価値の創出と、寄付を通じた社会的価値の創出による「二重の価値創造」の拡大を目指す。

さらに、同社はこの世界新時代株式ファンドを通して、日本の再成長への道筋も描いている。井上は次のように語る。「ファンドの運用成績の向上と当社アクティブ運用の認知向上を通じて、ファンドの規模を拡大し、それに合わせて寄付金額も増やしていければお客さま、大学、当社がWin-Win-Winの関係になります。また、寄付を通じて大学との連携を深めていくなかで、寄付による研究開発の支援だけでなく、大学基金の運用高度化にも寄与し、基礎研究を継続的に推進できる環境をサポートしていくことが、大学の持続的な発展、ひいては日本の再成長にもつながると信じています」

※文中に記載しているファンドの概要等は下記をご覧ください。
①世界新時代株式ファンド(資産成長型)
ファンド概要 ▶ https://www.smd-am.co.jp/fund/183102/
投資リスクと費用等(交付目論見書) ▶ https://www.smd-am.co.jp/fund/pdf/183102k.pdf
②世界新時代株式ファンド(予想分配金提示型)
ファンド概要 ▶ https://www.smd-am.co.jp/fund/183002/
投資リスクと費用等(交付目論見書) ▶ https://www.smd-am.co.jp/fund/pdf/183002k.pdf

プロフィール

髙尾 香織

三井住友DSアセットマネジメント(株)
商品企画部

井上 武

三井住友DSアセットマネジメント(株)
サステナビリティ推進室