※内容は、取材当時のものです。

アビスパ福岡と実現する、
Web3を
活用した
スポーツコミュニティ
活性化

~ U-15選手をファンと共に育む
「共育」プログラムで、
新たな
コミュニティモデル構築へ~

  • 川森 敬史 氏
    アビスパ福岡(株) 川森 敬史 氏
  • 神野 嘉一 氏
    アビスパ福岡(株) 神野 嘉一 氏
  • 星野 央継
    (株)三井住友銀行 星野 央継
  • 平田 彩乃
    (株)三井住友銀行 平田 彩乃

日本の再成長

パートナーシップ

近年、スポーツは競技としての価値に加え地域活性化や社会課題解決への貢献が期待されている。三井住友銀行(以下、SMBC)は、プロ野球日本シリーズへの協賛や女子バスケットボールリーグ参戦を通じ、スポーツの多面的な価値を再認識。スポーツへの支援・参画にとどまらず、スポーツを活かした社会課題解決を模索していた。

一方、「日本で一番社会課題が集まってくるサッカークラブ」を目指すアビスパ福岡株式会社(以下、アビスパ福岡)は企業や自治体と連携して課題解決に取り組むほか、Web3(ブロックチェーン基盤の分散型インターネット)を用いたDAO(自律分散型組織)によるファンやサポーターの新たなコミュニティ「アビスパDAO」の拡大にも注力。地域社会やクラブを取り巻くコミュニティをより活性化させる先進的な取組を推進していた。

両社はスタートアップイベントで出会い、対話を開始。社会課題解決へ向かう理念とコミュニティを変えていこうとする野心、Web3をその実現手段と捉える方向性の一致から、スポーツを通じたコミュニティ活性化を目指す協業へと至った。

DAOメンバーと共に
取り組む若手選手育成
「アビスパ DAO
アカデミー共育プログラム」

2025年3月、SMBCとアビスパ福岡は「Web3 コミュニティ共創パートナー」契約を締結。クラブがリソースを投じて活動し、ファンはグッズやチケット購入で応援するという一方向の関係性だけでは、スポーツ産業の拡大に限界があるとの問題意識から、クラブとファンがビジョンを共有し、一体で成長や社会課題解決に取り組む新たなコミュニティ創出を目指す。

その実現に向けた第一弾として同年6月に「アビスパ DAO アカデミー共育プログラム supported by SMBC」を開始した。本プログラムは、従来クラブが主体であったアカデミーの選手育成プロセスに、DAOメンバーのファンやサポーターが中長期的に後押しする仕組みを導入した点が特徴だ。DAOという言葉には専門的なイメージが伴うが、アビスパ福岡 取締役会長 川森 敬史氏は、その本質をより身近なものとして捉えてほしいと語る。
「私たちは、アビスパDAOを『テーマパーク』に、そしてアビスパDAOへの参加権であるトークンを『入場券』に例えて説明しています。パークのなかには、グッズデザインの投票や限定イベントといったさまざまな『アトラクション』が用意されており、参加者の皆さまはそれらを自由に体験できます」

そして、このテーマパークに加わった、新たな「アトラクション」が本プログラムだ。具体的には、DAOメンバーにアカデミーの現状や課題を共有し、DAOメンバーが選手選考段階からU-15アカデミーの候補選手に関心を持つことができる取組を実施。アカデミー加入後は、DAOメンバーとSMBCが一体となり、奨学金を通じて選手たちを支援する。

この奨学金制度は、クラウドファンディングで集めた資金をもとにDAOメンバーの投票で支援内容が決まる仕組みに加え、経済的な理由で選手選考への応募自体を断念していたこどもたちを対象とした、特別な支援枠も設けられている。背景にある想いを、川森氏は次のように語る。
「優れた才能を持ちながらも、経済的な理由で挑戦を断念するこどもたちがいます。その一人ひとりに手を差し伸べたいという想いが本プログラムの原点ですが、現実的にアビスパ福岡だけでは支援しきれないことに課題感もありました。DAOメンバーやSMBCと共に取り組むことで、こうした課題を解決できるのではないかと考えています」

また、自身もアスリートであるSMBC 社会的価値創造推進部 平田 彩乃は、選手視点からその重要性を強調する。

「プロの世界へつながるような挑戦の機会は、非常に限られています。その貴重な機会を、経済的な理由で諦めることなく、こどもたちが自身の可能性を発揮できるようになることに大きな価値があると考えています」

互いの優先事項を事前に
すり合わせ、
現場と丁寧に
対話することにより
3ヵ月でプログラムを実現

本プログラムは、夏から始まるアカデミーの選手選考を見据え、提携後から約3ヵ月で開始された。しかし、実現には課題もあった。選手の将来やチームの競争力に直結する「競技領域」へのコミュニティの関与と、クラブが堅持する育成方針との両立だ。この課題に対し、両者はまず、互いの優先事項を明確化。アビスパ福岡は「競技力の向上と育成方針の維持」を、SMBCは「コミュニティの活性化の加速」を事前に定め、それを互いに尊重しつつ両立を目指した。

さらに、企画初期からアカデミーの現場責任者が議論に参加し、現場の声を制度設計に反映させた。例えば、保護者が悩みを抱える海外遠征費などの負担もカバーできるような奨学金制度を設計。また、支援者の選考方法への関与についてはセレクションのサポートを行う「選考補助」に限定し、あくまで選考の合否はクラブが育成方針に沿って最終決定を行うとすることで、育成方針を堅持した。

こうした制度設計に関するクラブ側の想いや議論をSMBCが論理的に整理する形で支え、川森氏とアビスパ福岡 リージョナルイノベーション戦略部 Web3事業開発責任者 神野 嘉一氏が各部署間の連携・調整を担い、取組を推進。現場と経営、双方の連携により円滑な意思決定を促し、短期間でのプログラム実現に至った。

プログラム開始後、選手選考の応募者116名のうち50名が本プログラムにエントリーし、こどもたちの挑戦機会の創出へと着実につながっている。

持続可能なコミュニティ
モデルやインパクトKPIを
確立し、
日本のスポーツ
産業の変革へ

今後、本プログラムで支援した選手がトップチームに昇格、さらには将来海外クラブへ移籍する際、その利益の一部を支援者にトークンの形で還元する仕組みの導入も検討している。この長期的な関係性がもたらす価値を、神野氏は次のように語る。

「中学生選手が世界的なスターになるには、10年前後の歳月がかかります。NFT(非代替性トークン)を活用すれば、その長期間にわたる支援の事実を証明し、つながりを維持することを可能にします。この一過性で終わらない関係性が、コミュニティ自体の継続性も高めると考えています」

また、協業の第二弾として、スポーツのデータ活用によるスポーツ関連産業の発展に取り組む。将来的にはスポーツが社会に与えるインパクトを可視化し、新たな支援や投資を呼び込む取組も視野に入れる。

SMBCグループは、この取組で得られた知見を、自社が運営する女子バスケットボールチーム「SMBC TOKYO SOLUA」をはじめ、全国のスポーツチームへ展開できるフレームワークとして構築することを目指している。この挑戦の価値について、取組を推進するSMBC 社会的価値創造推進部 星野 央継は、展望を次のように語った。

「日本のスポーツ界は、個々のクラブでの最適化は進む一方、業界全体で共有できるフレームワークの構築が長年の課題でした。今回の取組を通じてファンが育成に関与し、その成果が還元されるコミュニティモデルや、スポーツの社会的価値を測る新たなインパクトKPIなどを確立し、それを他の競技や日本全国へ展開することで、スポーツ産業全体のあり方を変革していきたいと考えています」

プロフィール

川森 敬史 氏

アビスパ福岡(株)
取締役会長

神野 嘉一 氏

アビスパ福岡(株)
リージョナルイノベーション戦略部 
Web3事業開発責任者

星野 央継

(株)三井住友銀行
社会的価値創造推進部

平田 彩乃

(株)三井住友銀行
社会的価値創造推進部