※内容は、取材当時のものです。

パートナー企業との
協働で目指す、
電力消費由来のGHG
排出量ゼロへの取組

~ ヤンマーグループと共同で、
電力購入契約として
国内最大規模
150MWの再エネ供給へ ~

  • 真﨑 裕子 氏
    ヤンマーホールディングス(株) 真﨑 裕子 氏
  • 森朝 昭典 氏
    ヤンマーエネルギーシステム(株) 森朝 昭典 氏
  • 井口 拓也
    三井住友ファイナンス&リース(株) 井口 拓也
  • 白石 雄暉
    SMFLみらいパートナーズ(株) 白石 雄暉

環境

脱炭素

2050年のカーボンニュートラル実現に向け、さまざまな企業がGHG(温室効果ガス)排出量削減の取組を進めている。ヤンマーグループも、積極的なサステナビリティ経営を実践する企業の一社だ。同社は「YANMAR GREEN CHALLENGE 2050」を掲げ、「2030年までに自社活動のカーボンニュートラル達成」という高い目標を追求していた。その目標達成に向けて特に大きな比重を占めるのが、事業活動での電力消費に由来する間接的な排出(Scope2)の削減だ。しかし、国内工場など自社敷地内だけでは必要な再エネ発電量を確保できず、敷地外での電力調達が不可欠だった。

この課題に対し、三井住友ファイナンス&リース(以下、SMFL)大阪営業第一部 井口 拓也は、長年の協業でヤンマーグループと築いた信頼関係を基にヒアリングを実施。そこでグループ会社のSMFLみらいパートナーズ(以下、SMFLMP)が持つ再エネ分野の専門知識が解決策になると考え、SMFLMPとヤンマーグループをつないだことから、取組が開始した。

ヤンマーエネルギーシステ
ムと共同で発電事業会社を
設立、
短期間で追加性の
ある環境価値を提供

今回の取組で採用されたのが、国内では事例が少ない「バーチャルPPA」という契約形態だ。PPA(電力購入契約)とは発電事業者から再エネを長期的に購入する契約を指すが、バーチャルPPAでは、再エネが持つ「CO2を排出しない」という環境的な価値のみを、証明書のような形で切り出して取引する。

このスキームの利点について、本案件の実務を担うSMFLMP 環境エネルギー開発部 白石 雄暉は「物理的な送電を伴わないため、地理的な制約を受けずに各地の発電所から柔軟に環境価値を供給できます。需要家(環境価値を購入する企業)は、自社で消費する電力にこの価値を組み合わせることで、消費電力の再エネ化が可能です」と説明する。

本案件の特徴は、その仕組みだけではない。ヤンマーグループは、社会全体の再エネ供給量を増やす「追加性」のある調達を重視し、単なる環境価値の購入者ではなく、発電事業の当事者となることを強く求めていた。ヤンマーエネルギーシステム株式会社 カーボンニュートラル推進部 営業企画部 森朝 昭典氏は、その想いを次のように振り返る。「電力会社からグリーン電力を購入するという選択肢もありましたが、当社としても主体的に再エネの導入や脱炭素化を推進すべきであるという強い使命感がありました」

このニーズに応えるため、SMFLMPはヤンマーエネルギーシステムと共同で発電事業会社を2024年11月に設立し、同年12月からヤンマーグループへ環境価値の供給を開始した。協議が本格化した同年4月頃からわずか8か月程度で供給開始に至ったこのスピード感は、SMFLMPの開発先行型の戦略によって実現された。通常、発電所の開発は需要家が決まってから着手されるが、それでは時間がかかる。この「需要家が先か、発電所が先か」という課題に対し、SMFLMPは再エネ需要の高まりを察知し、先行開発に踏み切っていた。これにより、短期間での価値提供が可能となった。

<バーチャルPPAにおけるスキーム図>

市場価格変動リスクや
自然災害リスクと向き合う
なかで、
透明性の高い
パートナーシップを構築

この先進的な取組の実現には、いくつかの課題が存在した。なかでも大きな課題の一つは、バーチャルPPA特有の「市場価格変動リスク」だった。この契約では、需要家が支払う環境価値の価格が、電力市場価格の変動と逆の動きをするように設計されていた。そのため、電力市場価格が下落すると需要家の支払額が増加し、逆に上昇すると支払額が減少するという複雑な価格連動の仕組みになっていたため、将来の支払額が確定しないという課題があった。

この課題に対し白石は、全国の電力市場の価格推移を徹底的に分析し、価格変動の影響をシミュレーションした。電力市場価格が下落した際に安くなる別の電力契約プランと組み合わせ、全体のコストを平準化する対策を提案した。

また、発電所の安定稼働はヤンマーグループの目標達成に直結するため、用地が抱えるリスクについても透明性を徹底した。例えば、洪水の可能性がある河川沿いの用地や、積雪量の多い北海道・東北地方の用地については、そのリスクを明示。そのうえで、対象河川の治水対策状況や積雪に耐えうる設計などリスクへの具体的な対策を丁寧に説明し、事業の安定性に対する理解を深めていった。さらに、本来の再エネ導入の意義に立ち戻り、大規模な造成や木々の伐採を行わない発電所の開発を推進した。

このプロセスを後押ししたのが、SMFLグループの組織的なサポート体制だ。白石は「審査部門も、本件を単に前例がないとして退けるのではなく、伴走型の姿勢で内在するリスクを精査し、具体的な対策を共に検討して取組を推進しました」と説明する。

こうした対話や協働の末、PPAとしては国内最大規模となる150MWの供給に関する基本合意契約が締結された。この成果は年間約72,500tのCO2排出削減に相当(東京ドーム55個分の森林の吸収量に相当)し、新聞などでも大きく報じられたことで、同様の課題を抱える他の企業からSMFLグループやヤンマーエネルギーシステムへ問い合わせが入るなど、新たな協業に向けた動きも生まれている。

パートナーシップを深化
させ、より大きな社会課題
の解決へ

SMFLMPでは従来の太陽光発電にとどまらず、農業と発電を両立させる「営農型太陽光」など、限られた国土を有効活用する付加価値の高い発電手法も視野に入れ、ソリューションの多様化を目指す。

この新たな取組への推進を支えるのは、ヤンマーホールディングスとSMFLが築き上げた強固なパートナーシップだ。

ヤンマーホールディングス株式会社 サステナビリティ推進部 ヤンマーグリーンチャレンジ部 真﨑 裕子氏は、今回の協業を「目的を共有し、円滑なコミュニケーションのもとで一つのチームとして取り組むことができました」と評価し、今後の展開についても「各社の強みを活かした協業は、一社単独では解決が困難な、より大きな社会課題への取組を可能にすると考えています」と期待を寄せる。

井口もまた、パートナー企業との協働を重視する。今回の取組を振り返り、その社会的意義について次のように語った。

「私は、パートナー企業の直面する課題が、すなわち社会課題だと捉えています。環境規制が厳しい欧州を含めグローバルに事業を展開するヤンマーグループにとって、今回の案件のような脱炭素化は喫緊の経営課題でした。本件でその解決を支援できたことは、同様のニーズを抱える他の企業との協働にも活かされ、我々自身の成長にもつながります。こうした協働の深化こそが、社会的価値の創造につながると考えています」

プロフィール

真﨑 裕子 氏

ヤンマーホールディングス(株)
サステナビリティ推進部
ヤンマーグリーンチャレンジ部

森朝 昭典 氏

ヤンマーエネルギーシステム(株)
カーボンニュートラル推進部 営業企画部

井口 拓也

三井住友ファイナンス&リース(株)
大阪営業第一部

白石 雄暉

SMFLみらいパートナーズ(株)
環境エネルギー開発部