※内容は、取材当時のものです。

意志ある資金を社会へ
つなぎ、
こどもたちの
自立を多角的に支援

~SMBCグループ財団初の基金設立
を通じ、
貧困の連鎖を断ち切る新
たな支援モデルを形成~

  • シェーファー・平ダーヴィッド
    (株)三井住友銀行 シェーファー・平ダーヴィッド
  • 細野 義幸
    (株)三井住友銀行 細野 義幸
  • 髙主 浩太郎
    (株)三井住友銀行 髙主 浩太郎

貧困・格差

日本には、さまざまな事情から親元で暮らすことができず、児童養護施設で生活するこどもたちが約23,000人存在する。その多くは18歳での退所後に就職するものの、定着支援などが不十分なこともあり、約半数が早期離職に至る。最初の就職に失敗した若者は非正規雇用に移行しやすく、経済的困窮に陥るケースは少なくない。この貧困の連鎖ともいえる構造的な課題の解決には、退所前後の専門的な支援が不可欠である。

こうした状況に対し、ある寄付者の「自ら選ぶことのできない家庭環境によって将来が左右されるこどもたちがいる。その人たちが、少しでも希望を持てるような支援をしたい」という想いが、新たな取組のきっかけとなった。この想いを受け、フィランソロピーアドバイザリーを推進する三井住友銀行(以下、SMBC) プライベートバンキング企画部 シェーファー・平ダーヴィッドが、SMBCグループの知見を活用し、寄付者の想いを社会課題解決へとつなげるべく、支援基金の設立を構想。その実現に向けた取組を開始した。

SMBCグループ財団初の
基金を設立し、
退所児童の自立支援
スキームを構築

ある寄付者の「法人売却で得た資金の一部を、恵まれないこどもたちのために活用したい」というご希望を受け、SMBCグループは新たに設立されたSMBCグループ財団を活用した基金の設立を提案した。こうして、この寄付を原資とするSMBCグループ財団初の基金「子どもの未来助成事業」が誕生。この基金は、単に資金を提供するだけでなく、児童養護施設を退所したこどもたちの自立を多角的に支える戦略的なスキームを構築している。
具体的には、生活技能などを習得する「リービングケア」、児童の特性や希望に合った安定した就労を促す「就労マッチング」、退所後の孤立を防ぐ「アフターケア」、そして制度改善を目指す「政策提言」という4つの領域で活動するNPO法人に対し、複数年にわたる安定的な資金供給を行う。これにより、NPOは長期的な視点に立った支援プログラムの展開が可能となる。

さらにこの取組は、既存の活動を後押しするだけではない。プロジェクトの全体設計を担ったシェーファーは、その意図を次のように説明する。
「既存の団体が素晴らしい活動をしているからといって、ただ資金を提供するだけでは不十分なケースがあります。私たちは、支援先の団体と共に、より良い解決策を共創していくプロセスを重視しました」

その具体的な手法として、助成財団としては先進的な試みとなる助成団体間の「連携モデル」を導入。生活支援、就労支援といった異なる専門性を持つ複数のNPOが、同一地域・同一施設のこどもたちに対して、協力して支援を行う。それぞれのNPOの強みを生かし、一つのチームとして機能することで、一人ひとりのこどもに合わせた多角的なサポートが可能になる。この連携を通じて既存の活動の延長線上にはない新たなソリューションを創出し、最終的にはNPOに依存することなく、地域社会が主体となってこどもたちを支える「自走する支援体制」を構築することを目指している。

財団にとって第一号案件の
実現に向けた、
組織横断での連携体制

SMBCグループ財団にとって第一号となる本案件の実現にあたり、財団業務を兼務し、今回実務を担当した同行 プライベートバンキング企画部 細野 義幸は、監督官庁である内閣府との調整を重ねた。

細野は「財団の設立から公益認定の取得、そして基金設立に至るまで、そのすべてが初めて携わる業務でした。その過程において内閣府とのやり取りを幾度となく重ね、助言をいただいてはその都度修正して次のステップに進むという、まさに一つひとつ課題を乗り越えていくプロセスでした」と当時を振り返る。

こうした課題の解決において重要だったのが、寄付者の想いを基点とした、組織横断での緻密な連携だ。

このプロジェクトを主導したシェーファーは、長年にわたり本テーマに関心を寄せ、個人でのボランティア活動などを行ってきた。また、SMBCグループの「プロボノプロジェクト」においても、児童養護施設のこどもたちを支援する団体のプロジェクトを企画した経験があり、支援団体との接点や深い知見を培ってきた。この知見とネットワークが、寄付者の想いを具体的な形にするうえで大きな推進力となった。

プロジェクトの構想段階では、寄付者が抱いていた支援イメージに対し、シェーファーは現場NPOの声や各種データを提示。寄付者との丁寧な対話を重ねるなかで、課題の構造と本質的なニーズを論理的に説明し、より実効性の高い支援の形を共に模索した。このプロセスについて、寄付者は次のように述べる。

「提案には、児童養護施設や支援団体の担当者の方々から直接ヒアリングした『生の声』が反映されていました。データによる裏付けもあり、非常に説得力がありました」

また、プロジェクト途中で担当者の交代があったが、後任の同行 プライベートウェルス営業部 髙主 浩太郎は、お客さま窓口として寄付者の負担軽減を第一に考え、本部との円滑な連携を担うことでプロジェクトの推進を支えた。

企画を担うシェーファー、お客さまの窓口を担う髙主、そして財団の実務を担当する細野。それぞれが専門性を活かして連携することで、本案件の実現に至った。

支援のエコシステムの
構築を通じ、
意志ある資金が循環する
社会を目指す

「子どもの未来助成事業」は、まずは東京・神奈川・千葉・埼玉の1都3県で試験的にスタートし、来年度以降からは関西・中部地方へ展開、そして将来的には全国約600の児童養護施設で暮らすこどもたちへと支援を届けることを目指す。本基金は、単独の寄付にとどまらず、賛同する他の寄付者も受け入れる開かれた仕組みとなっている。これは、意志ある資金が社会課題解決へ向かう「新たなお金の流れ」と、それを支える「エコシステム」を創りたいというシェーファーのビジョンにも重なる。

この第一号案件の実績は、SMBCグループにとっても意義深い。髙主は「法人オーナーのお客さまの寄付ニーズに対し、より説得力ある提案が可能になった」とその波及効果を語る。

また、財団の立場から細野も「この案件を、他の寄付者の方にもご賛同いただけるようなモデル基金として育てたい」と意気込む。

本取組は、こどもたちの自立支援に貢献するとともに、社会課題解決における金融の新たな役割を示すモデルケースとなる。本基金を設立した寄付者は、支援の輪が広がる未来への期待を次のように語った。

「今回の私の行動が一つのきっかけとなり、この趣旨に賛同してくださる方々が加わって、将来的にはより大きな基金へと成長してほしいと願っています。そして、その力でさらに広く、多岐にわたる課題に対応できるようになることを期待しています」

プロフィール

シェーファー・平ダーヴィッド

(株)三井住友銀行
プライベートバンキング企画部

細野 義幸

(株)三井住友銀行
プライベートバンキング企画部
((公財)SMBCグループ財団兼務)

髙主 浩太郎

(株)三井住友銀行
プライベートウェルス営業部