SMBCグループは「全員参加」での社会的価値創造を目指し、従業員に多様な社会貢献の機会を提供している。寄付やボランティア活動といった機会に加え、従業員が自身の専門スキルや業務時間の一部を活かしてNPO等と協働し、社会課題の解決に取り組む「プロボノ」もその一つである。プロボノは、SMBCが邦銀初の取組として2011年度に開始し、2014年度からはグループベースでの取組へと拡大している。この「SMBCグループプロボノプロジェクト」は、広報やデータ管理、営業ツールの整備といった多様な課題を抱える団体に対し、社会人としてのスキルを活かして3~6ヵ月間のサポートを行う長期的なプログラムである。
数ヵ月間の社員による支援は深く課題に関与できる利点がある一方、とりあえずプロボノをライトに体験してみたい社員や受け入れ側の団体にとって参加のハードルとなっていた。こうした背景から、プロボノへの参加機会をさらに広げることを目指し、2023年度、約半日で完結する「1Dayプロボノワークショップ」が新たに開始された。
半日に凝縮した共創体験。
異業種交流による多様な
視点とスキルで
NPO等の
課題に向き合う
「1Dayプロボノワークショップ」は、複数企業の参加者による混成チームを結成。参加する団体が実際に抱える課題に対し、日頃の業務で培ったスキルや専門性を活かしながら解決策の企画・提案を行う。SMBCグループに加え、メーカーやコンサルティングなど多様な業種の企業の社員が参加する、異業種連携型のプログラムだ。約半日で完結するこのワークショップは、気軽にプロボノに参加できる機会を提供するとともに、多様な知見や専門性を有する参加者が混成チームを組むことで、一社だけでは生まれにくいソリューションの提供にもつながっている。
こうしたプログラムが特に価値を発揮する領域の一つが、NPO等が抱える組織運営上の課題だ。日々の現場活動に注力する団体にとって、経営戦略や法人営業といった組織基盤の強化は、リソースやノウハウの面で課題となりやすい。企業の実務で培ったスキルを活かすプロボノは、まさにその部分を補完する価値を持つ。実際に、この短期集中型のプログラムを通じて、 NPO等の組織基盤の課題に対する実践的な解決策が生まれている。こどもの貧困問題に取り組む一般社団法人チョイふるも、その効果を実感している団体の一つだ。同団体は2024年度から本ワークショップに参加しており、代表理事 栗野 泰成氏は、次のように語る。
「当日は『企業営業』というテーマで、プロボノの方々から営業メールの文章や営業先リストの優先順位付けなどについて、具体的で有益な助言がありました。実際に、その助言をもとに営業活動を実践した結果、協賛を獲得できた成果も生まれています」
多様な知見を集める企業
連携の呼びかけと、
ワークショップの成果を
最大化するための運営設計
この共創の場を実現するためには、まず多様な企業を巻き込むための丁寧な連携が不可欠だった。取組を推進した三井住友フィナンシャルグループ 社会的価値創造推進部 大萱 亮子は、パートナーとなりうる企業に対し、本ワークショップが持つ独自の意義を丁寧に説明していった。
具体的には、各社のネットワークを活かして社員や関心領域に関わるNPO等の参加を募ることができる点や、金融、メーカー、コンサルティングといった異業種のメンバーが集まることで、単独では得られない多様な視点や知見に触れられるという点だ。この環境は、新たなソリューション創出の契機になるだけでなく、社員自身の成長や参加者同士の自発的なネットワーキングの機会にもつながる。こうした参加企業側の効果も提示することで、参画への理解を広げていった。
また、約半日という短時間で成果を最大化するための運営設計も重要な課題だった。2024年度から担当する同社 社会的価値創造推進部 森田 萌は、中間支援団体と連携し、プロボノの支援スコープとするべき団体の課題を事前に絞り込んだ。テーマが広すぎると議論が発散し、半日では解決できないため当日の議論の質を高めるうえで不可欠なプロセスだ。
さらに森田は、中長期のプロボノと異なり、現場視察や時間をかけて団体理解が難しい1Dayプログラムにおいて、事前に理解を深めて当日できるだけ課題解決の議論に時間を割けるよう、参加者への事前の情報インプット等を工夫し準備の質を高めた。こうした地道な仕組みづくりが、当日のスムーズな議論開始を可能にしている。
このワークショップは、プロボノ未経験者や初めてプロボノを受け入れるNPO等にとって、新たな挑戦の機会となっている。2024年度には43社から約130名が参加し、20の団体にソリューションを提案する規模にまで拡大した。
プログラム後も続く、
多様な関係性。
プロボノ参加を、社会課題
解決へ踏み出すきっかけに
プロボノ活動に参加した社員からは「社会課題やNPO等の活動について理解が深まった」「普段接することができない他業種の方の視点や考え方が新鮮だった。複数の力が合わさると短時間でも成果が出ると分かった」という声に加え、「自分の当たり前のスキルが社会の役に立つと知った」という気づきも多く聞かれる。この「当たり前のスキル」が価値を生む点について、森田は「例えば業務フローの整理やメールの作成といった、参加者自身がスキルだと認識していないような業務にも、団体側が価値を見出すケースが多くあります」と説明する。
一方、支援を受けた団体側にも、組織の成長につながる具体的な変化が生まれている。例えばチョイふるは、SMBCグループプロボノプロジェクトを通じて事業計画や広報ページの改善案を得て、応募を検討していた基金への申込を後押しされた。最終的に寄付先として採択されたことで、活動の拡大につながっている。加えて2025年度は、金融業界としての強みを活かし「セキュリティ基盤の強化」をテーマとした長期のプロボノ支援を受け、さらなる組織基盤の向上を図っている。
こうした取組の手応えを踏まえ、今後について大萱は次のように期待を寄せる。
「プロボノへの参加を一つのきっかけとして、一人ひとりが社会課題に関心を持ち、社外でも積極的に自分にできる方法で課題解決に取り組んでもらえたらと考えています」
最後に、森田はこれから社会貢献の一歩を踏み出そうと考えている人々へ、次のようにエールを送った。
「自分自身では気づいていないだけで、一人ひとりがさまざまな貢献をできる可能性を秘めています。今いる環境から一歩飛び出して挑戦することが、新しい自分と、自分なりの社会への関わり方を見つけるきっかけになるのではないでしょうか」