※内容は、取材当時のものです。

Sustana・Asueneが示す
“社会課題解決のスケール戦略”

SMBC Group Day【B-1】
セッションレポート

  • 清水 倫
    (株)三井住友銀行 清水 倫
  • 萩原 康仁 氏
    アスエネ(株) 萩原 康仁 氏
  • 奥井 奈々 氏
    (株)WellNaviAI 奥井 奈々 氏

脱炭素

パートナーシップ

日常業務の中にある「社会的価値」に気づき、「仕事を通じて社会を変えられる」実感を深める。そして、未来に向けた行動を一歩踏み出すことを目的に、2025年12月14日に開催されたSMBCグループの社内イベント「SMBC Group Day 2025 ~私たちの仕事で社会的価値を創る~」。

プログラムの一環として、社会課題を起点にビジネスを推進する第一線の経営者やクリエイター、SMBCグループの実践者を招き、意見を交わし合う「社会的価値創造(シャカカチ)トーク」セッションも設けられた。

全部で5回あったトークセッションのうち、今回のテーマは「共創が拓く未来―Sustana・Asueneが示す“社会課題解決のスケール戦略”」。アスエネ株式会社(以下、アスエネ) サプライチェーン事業部 事業責任者 General Managerの萩原 康仁氏をお招きし、株式会社WellNaviAI 代表取締役/アナウンサーの奥井 奈々氏による進行の下、三井住友銀行 法人戦略部 サステナブルソリューション室の清水 倫を交えて語った。

「脱炭素の民主化」を目指し
「CO₂の見える化」市場創出に
挑戦したSMBC

「CO₂の見える化」という新市場創出にSMBCグループがゼロから挑み、立ち上げた、温室効果ガス排出量算定・削減支援クラウドサービス「Sustana」。当初は他社と似たソリューション構成で先行していたものの、市場の高度化・複雑化に伴い、技術と開発力を持つアスエネとの共創に至った。

Sustanaの立ち上げは「脱炭素を民主化したい」という思いから始まったと、清水は語る。遡ること約6年前、「2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする。カーボンニュートラルを目指す」という宣言が当時の日本政府から発信されたことを機に、脱炭素の機運が一気に高まりを見せた。

ところが、脱炭素に向けた最初の一歩である「CO₂の見える化」のノウハウが広まっておらず、一部のコンサルティング会社しか対応出来ない状態だったことから、取り組み方に悩むお客さまの声を多数耳にしたと、清水は当時を振り返る。CO₂排出量の算出をもっと手軽に安価で行えるクラウドサービスができれば、脱炭素が進みやすくなるのではないか。

清水は、行内のデジタル戦略部とともに、その構想を企画にまとめ、社内で議論を始めていった。しかし、当時はまだSDGsや脱炭素といった概念が浸透しておらず、既存市場がない状態だった。企画趣旨に対する理解がなかなか得られず、理解が進んだ後も「ビジネスとして本当に儲かるのか」「排出量の算定ミスが生じた際の損害賠償リスクはどうか」といった問いにぶつかることとなった。そこで大切だったのは、細やかな対話だったと清水は語る。

「とにかく想定される懸念点と対処を一つ一つ、丁寧に整理し、対話を続けていきました。論理以上に大切だったのは、いかに共感を得るか。新たな挑戦にはリスクがありつつも、そこに困っている顧客がいて、社会により良い変化を起こしていくためにも必要な取り組みなのだと伝えていくことで、社内に味方が増えていったように思います」

米国の動向から着想を得て、
数ヶ月でプロダクトリリースした
アスエネ

現場の声から始まったSustanaに対し、グローバル市場の動向から得た着想が起点となったのがアスエネのビジネスだ。温室効果ガス排出量の算定・分析・開示を包括的に管理できるSaaS型サービスを提供する米国スタートアップが巨額の資金調達に成功したニュースを受け、「CO₂の見える化」の市場に可能性を感じたと荻原氏は言う。

しかし、アスエネの社員は当時、萩原氏を含め数名のみ。人的リソースも顧客基盤もない状態から、顧客の声に耳を傾け、ビジネスモデルの構築とプロダクト開発を急ピッチで進めていったという。構想からプロダクトリリースまでの期間はわずか数ヶ月と、スタートアップならではのスピード感が伺える。

一方、Sustanaは構想からリリースまでに約2年の歳月を要し、結果的に、アスエネのプロダクトリリースから2ヶ月遅れての公開となった。Sustanaのリリース後、大手企業の参入が次々に続いたため、「大企業に圧倒されるのではないかと思った」と萩原氏は当時の戦々恐々とした思いを振り返る。

だが、結果的には、中堅企業向けに低コストでサービス提供をするSustanaと、上場企業や大手向けに展開するアスエネという形で棲み分けをしたことにより、事業成長の大きな妨げにはならなかったという。

トップダウンとボトムアップの
両面で発信し、共感を集める

清水は、Sustanaのベータ版をローンチした2021年前後の状況を振り返りながら、ゼロイチからの市場創出が最初の大きな壁だったと語る。銀行は、銀行法に明記されていない業務はできないため、金融庁ともローンチの1年半前から対話を重ね、実際に困っている顧客の声に応えたいという熱量を伝え続けた。そうして、銀行法改正のタイミングとあわせて、SMBCグループの日本総合研究所から開発面でのサポートを得ながら、サービスのローンチに至った。

「当時は『CO₂の見える化』にお金を払う市場がまだ存在していなかったため、お客さまを啓蒙し、お金を支払うだけの価値を認識いただく必要がありました。市場が立ち上がらなければ、何も始まりません。だからこそ、アスエネさんをはじめ市場に参入されていたスタートアップの方々に対し、私たちは当初『市場創出の同志』という感覚を抱いていました」

そうして市場が立ち上がり、2023年には競争が激化。市場のトップシェアを目指して、GX(グリーントランスフォーメーション)の企業が互いに切磋琢磨し合う戦国時代へと突入した。実装が進んでいけば、その分、関係者も増えるため、社内のより広範な理解と協力を得ることが必要となる。

その点、清水はチームメンバーやデジタル戦略部とともに、トップダウンとボトムアップの両軸で社内浸透を行い、「CO₂の見える化」に取り組む社会的意義と共感を浸透させていったという。毎月1回以上の頻度で現場向けに「Sustana勉強会」を開催する傍ら、役員のもとにも積極的に足を運んで説明を重ねる等、試行錯誤を繰り返しながら、草の根でムーブメントを生み出していったと、清水は語る。

「ボトムアップでは、いかに営業現場の方々に興味を持ってもらうかが課題でした。Sustanaをフックにした新規営業や役員クラスとの面談機会の獲得等、営業現場ですぐに実践できる成功事例をまとめ、彼らのモチベーションに繋がるように工夫をこらしました」

Sustanaの事業承継を決断。
新たな共創モデルで
世界の勝ち筋を目指す

「社会的価値創造」を柱に、地道な発信を重ね、関係性を作り上げていくことで、銀行法など様々な制約条件の中でも道を切り拓いてきた清水。反面、事業を進めていく中で、限界も感じていたという。

「変化の激しいGX市場で勝ち抜くためには、スピード感とアジャイル性が必須なのだとSustanaの事業を進めていて実感しました。複合金融グループの構造上、スタートアップのような柔軟かつスピーディーな対応は難しく、業界3番手には手が届いたものの、結局、トップは取れなかったのです」

「脱炭素の民主化」というSustana本来の目的を達成するために、どうするべきか。検討の結果、新たな共創モデルの実現に向け、開発力が高くスピード感のあるアスエネへの事業承継を決断することとなった。しかしこれは、事業を承継して終わりという話ではないと、清水は強調する。

「自前のソリューションにこだわらず、SMBCグループの顧客基盤とアスエネさんのプロダクトをかけ合わせ、共創体制を組むことで新たな勝ち筋が見出だせると考えています」

この言葉を受け、萩原氏はSMBCグループとの提携によるベネフィットを次のように述べた。スタートアップ単体では、どうしても顧客からの信頼が得にくく、苦戦していた部分もあったと語る萩原氏。ところが、SMBCグループとの提携により、従来は接点のなかった企業群にも導入されるようになったという。さらに排出量を算定した後の開示方法や削減に向けたサポートも広がったと萩原氏は語る。

「SMBCグループさんのファイナンス機能と連携できたことで、CO₂排出量の削減に向けた資金面の支援やリースの活用提案など、マネタイズポイントを新たに発掘できるようになりました。 顧客に対し、より実質的な価値を提供できるようになったと考えています」

また、SMBCグループのブランド力が信頼の裏付けとなり、アメリカや中国、東南アジア諸国からの紹介も増えているという。「世界で勝つための楔がようやく打てた」と、萩原氏は将来への展望を力強く語った。

日本の再成長の鍵はGX。
長期視点でリーダーシップを
世界に示す

社会情勢の変動を受けた揺り戻しはあるものの、気候変動という社会課題の解決が世界的に重要だという点は揺るぎない。AIデータセンターの消費電力問題等に鑑みると、エネルギー問題の重要性は今後も増していくだろう。

そういった背景を踏まえて、「揺り戻し感のある今こそ、日本がリーダーシップを発揮する好機」という清水。「日本の再成長の鍵はGXにある。だからこそ、SMBCグループとアスエネの連携によって、軸をぶらすことなく、世界に存在感を示したい」と意気込みを示した。

実際に、猛暑や台風といった気候変動の進行を体感している人は多い。保険会社の対応コストも増大しており、経済的な影響も出ている中で、「CO₂の見える化」や削減のニーズは今後も継続していくだろうと、荻原氏は市場の見通しを語った。また、すでに上昇してしまった気温に適応するためのビジネスも今後、必要になっていくだろうと荻原氏は予測している。

「排出量の緩和と変動した気候への適応の2軸において、5年10年というスパンでより良い世界を創っていきたいと考えています。『CO₂の見える化』はようやくスタートラインに立ったところで、ここからが本番です。SMBCグループの皆さんと、ぜひ長期視点で一緒に取り組んでいけたらと思います」

「SMBC Group Day 2025」にて行われたその他の「社会的価値創造(シャカカチ)トーク」セッションについては、別レポートにまとめています。合わせて、ご参照下さい。

プロフィール

萩原 康仁 氏

アスエネ(株)
サプライチェーン事業部 事業責任者 General Manager

清水 倫

(株)三井住友銀行
法人戦略部 サステナブルソリューション室

奥井 奈々 氏

(株)WellNaviAI
代表取締役