法人向けデジタルプラットフォーム「プラリタウン」

バンカーだからたどり着いた、日本のデジタル化構想

2020.10.30

株式会社プラリタウン 代表取締役 並木亮

新しい社会に向き合い、変化していくために。SMBCグループは「金融グループ」という枠を超えようとしています。そんな流れを受けて、2020年5月、(株)プラリタウンが誕生しました。

プラリタウンが提供するのは中堅・中小企業のお客さまのデジタル化を支援する「法人向けデジタルプラットフォーム」。金融の枠を超えて、企業競争力の強化に貢献するサービスです。

今回は、弱冠37歳で(株)プラリタウンを立ち上げ、社長に就任した並木亮にインタビュー。新会社設立の意義やこれまでの経緯、今後の展望などをお届けします。

INDEX

  1. 1. 誰でも気軽に「ぷらっと立ち寄れる」。そんな、デジタルプラットフォームを作りたかった
  2. 2. ファイナンスを超えていく。SMBCグループの変化に柔軟な気風が後押ししてくれた
  3. 3. 思い描く世界観に到達するために、挑戦は続いていく。その先にゴールはない

誰でも気軽に「ぷらっと立ち寄れる」。そんな、デジタルプラットフォームを作りたかった

「プラリタウン」は国内の中堅・中小企業のお客さまのデジタル化を支援するために設立しました。金融サービスに加えて、営業・人事・法務・企画など、さまざまな職務に携わる方が利用できるデジタルプラットフォームです。
「プラリタウン」上の、アプリやリンクを通して、SMBCグループ各社のサービス、さらに外部のパートナー企業のサービスもあわせて提供していきます。

社名の由来は、誰でも気軽に「ぷらっと立ち寄れる」というダジャレです(笑)。プラリタウンのプロジェクトに参画した若手中心の15人ほどのメンバーで、約30個の候補から選びました。みんながそれぞれ「デジタルプラットフォーム」をイメージするなかで、デジタルに対して「先進的」「まだちょっと先」というイメージを持つ人々にとってより「身近に感じられる」プラットフォームに育ってほしいという願いが込められています。

設立のきっかけは、私が三井住友銀行で法人営業をしていた7年前に遡ります。お客さまから経営課題をご相談いただくケースが多かったのですが、銀行として提供できるサービスには限りがあり、「もっと何かできることがあるのでは」と歯痒い思いをしていました。

お悩みで多かったのは「業務の効率化」。私は経理・財務の方とお話しさせていただくことが多かったのですが、いわゆる支払処理から決算書の作成までを少ない人数でこなされていて、「日々の業務をもっと効率化できれば、戦略的な話をする余裕が生まれるのに……」という話はよく耳にしました。

今では、デジタルやDXという言葉が出てきて当時のお客さまの課題を一気に自動化できるデジタルサービスがありますが、当時はまだ少なくて。個人向けのアプリなら、チャットができて、ニュースが読めて、出前も取れるし、株も買える。そういうマルチに使えるものがありますが、私の知る限り、法人向けではまだ存在していません。「プラリタウン」は、そういうアプリを、それぞれのお客さま向けにカスタマイズして、ご提供したいという思いから始まりました。

  • ※ DX:Digital Transformation。企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して顧客や社会のニーズに応え、製品やサービス、ビジネスモデルのほか業務や企業風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。

現在のデジタルソリューションサービスでも、採用や労務管理など人事関連のクラウドサービス、名刺管理や営業管理のデジタルサービスなど、単体では存在していますが、「プラリタウン」では、将来的にこれらのすべてを一気通貫でお届けしたいと考えています。日々の業務で使う複数のサービスを組み合わせ、カスタマイズして提供できることが「プラリタウン」の付加価値となり、お客さまにとっても大きなメリットになると考えています。

近年、AIやIOT、5Gという言葉を日々耳にしますが、この流れが日本全体に浸透していくのに、あと3~5年かかると言われ、メディアなどでデジタル化の遅れについて連日取り上げられています。

なかでも中堅・中小企業のお客さまに、デジタル化の波に乗っていただけるように「働き方改革」や「業務の効率化」などのお悩みをデジタルツールで解消し、企業としての成長をご支援していく。これもソリューションプロバイダーを目指すSMBCグループの役割の1つだと思っています。

「プラリタウン」の目指すサービス像とは?

「プラリタウン」の目指すサービス像とは? ピンチで拡大

1つのアプリ/Webサイトを起点として、財務・経理・営業・人事・法務・企画など、企業活動の全般をサポートする法人向けデジタルプラットフォームです。SMBCグループが提供するサービスに加え、協業パートナー企業のサービスも幅広く提供。さらにパーソナライズされた情報の配信など、お取引先各社の経営課題の解消やニーズにお応えしていく予定です。

ファイナンスを超えていく。SMBCグループの変化に柔軟な気風が後押ししてくれた

起案して3〜4カ月で構想を練って、そこから約1年で「プラリタウン」を立ち上げました。そのプロセスで行内外への説明などでは多くの方にサポートいただき、スムーズに進んだので、あまり苦労は感じませんでした。どちらかといえば、起案から構想をつくるまでが大変でしたね。

構想をつくるにあたって、プラリタウンのプロジェクトにかかわるメンバーでディスカッションをして、SMBCグループが江戸時代から金融業として積み上げてきた商品やサービスを1つ1つひもとき、銀行ならではの特徴や強みを理解しました。この金融商品はどういう仕組みで、どういう提供方法なのか。お客さまの日常の業務を1つ1つ想像し、プラットフォームとして何を提供したら、お客さまに喜んでもらえるのか。今の時代に合わせながら、ニーズに応えられるものにするには、どうすれば良いのか。仲間と議論を重ねるなかで、あるとき、もっと世界観を広げてサービスを提供するには、銀行という枠の中だけで考えていては実現できないと思い至りました。

銀行の外に目を向けてみると「こんなことも、あんなことも提供できる!」と一気に視野が広がったのです。SMBCグループに外部企業をプラスすることで、自分たちの思い描いている世界が実現できるのではないかと。行内でも、さまざまな部署とパートナーシップを組めば、理想の世界をより強固にお客さまに提供できる。そう気づいたことが自分のカラを破れた、私の「Beyondポイント」であり、「プラリタウン」の構想が生まれたきっかけです。

また、事業を実現化していくなかでSMBCグループの各部署に、スペシャリティの高い人材がいることに驚かされました。私の得意分野ではない、法務、税務、ITなどの知識を持った人たちが、「新しいことを始めよう」という思いに共感し、プロジェクトメンバーはみな非常に高いモチベーションで参画し、高い熱量でチームアップできたのはありがたかったですね。大きなダイナミズムを生み出すときに、そういう環境があることは心強いし、SMBCグループの大きな資産だと改めて感じました。

外部のパートナー企業にもこちらから直接、声をかけていきました。金融というのは少し置いておいて、「国内産業として必要なことは何か」というところからプラリタウンの構想をお話しさせていただきました。元々「中堅・中小企業のデジタル化が課題」という共通認識をお持ちだった企業が多く、非常にポジティブな反応をいただき、「一緒にやりましょう!」と前向きにスタートできました。

協業パートナー企業の声

プラリタウンとの協業は大きなチャンス

ベルフェイス株式会社 
取締役 西山直樹氏

ベルフェイス株式会社 取締役 西山直樹氏

良い意味で銀行員っぽくなく、 情熱的で明るく、非常にコミュニケーションの取りやすい方というのが並木社長の第一印象です。「プラリタウン」の構想をうかがって、いよいよメガバンクのSMBCが中堅・中小企業を集めて、どこにも真似のできないプラットフォーマーになっていくのだなと。ベルフェイスとしては、「プラリタウン」との協業で、これまでお取り引きのなかった中小企業のお客さまと接点ができたことは、大きなチャンスです。今後もSMBCグループと一緒に、まだITを駆使できていない日本中のお客さまをサポートしていきたいと思っています。

同じビジョンを持っていたことが協業の決め手でした

株式会社セールスフォース・ドットコム 
取締役副社長 古森茂幹氏

株式会社セールスフォース・ドットコム 取締役副社長 古森茂幹氏

「プラリタウン」は、フィンテックとITの融合という初の試みであり、お客さまの成功を支援するのが目的というユニークな事業です。元々セールスフォース・ドットコムには「中堅・中小企業にITを提供する」というビジョンがあり、「プラリタウン」の構想と合致したことが協業を決めたポイントでした。お客さまにとっては、テクノロジーの進化などを意識する必要がなく、自分のビジネスに集中できることがメリットだと感じています。「プラリタウン」とともに、単にテクノロジーを提供するのではなく、経営課題を解決するソリューションを提案してまいります。

実は今着ている「Out of the Box」と書かれたTシャツは私のトレードマークです。協業パートナー各社に出向いたときも、このスタイルだったので、いろいろと質問攻めにあいました(笑)。これは仲間で作ったオリジナルのTシャツ。「新しいことを始めよう」という意志がつまっています。

「プラリタウン」設立にいたる取り組みのなかで、内部・外部も含めてチームを組めたのは大きな収穫でしたね。今後も、内外のさまざまな部署と連携することによって、ビジネスがより早く、深くなっていくと確信しています。

思い描く世界観に到達するために、挑戦は続いていく。その先にゴールはない

「プラリタウン」は、すでにサービスリリースをしていますが、自己評価では、まだ100点満点中の10点です。思い描いている世界観に到達するために、新しいこんな機能を加えたいとか、こんなふうに見え方を変えたいとか。そういった課題の改善に日々、取り組んでいるところです。

SMBCグループでは「プラリタウン」をはじめ、いくつか社内企業が立ち上がっています。会社というかたちを取るかどうかは別にして、新事業の動きも加速しています。いろいろな部署で、デジタルサービスも企画されていますので、それらの新しいサービスも「プラリタウン」で提供し、グループ全体のデジタルサービスのプラットフォームになることを目指します。

お客さまには、もっと身近にデジタルを感じ、より手軽に使いこなしていただけるようなデジタルプラットフォームになれるように、完成度をあげていく。そうすることで、国内全体のデジタル化の底上げ、その先にあるDXに繋げていければいいなと思っています。

今後、日本の労働人口は減少していきますし、働き方改革も加速していくなかで、「デジタル化」は急務です。このままだと海外に遅れをとり、デジタルネイティブの若者が日本で働く魅力を感じられなくなって、海外に人材が流出するかもしれない……。そんな危機感もあります。若い人たちに、この国で働く魅力を感じてもらうためにも、「プラリタウン」を通して、国内産業の発展に貢献したいですね。

私自身の今後については、強い思いでこの「プラリタウン」を立ち上げたので、まずはしっかりと「プラリタウン」をデジタルプラットフォームとして育てていきたいです。思い描いている世界観は壮大なので、どこまでいったら到達できるのか、という気持ちはあります。たぶん、その先にもゴールはなくて、カラを破りながら挑戦はずっと続いていくのだと思います。

PROFILE

株式会社プラリタウン 
代表取締役 並木亮

平成20年、三井住友銀行に入行。法人営業、ホールセール統括部、法人デジタルソリューション部を経て、2020年5月、株式会社プラリタウンの代表取締役に就任。

プラリタウンについて詳しくはこちら
(株式会社プラリタウンのサイトを別ウィンドウで開きます)

※2020年9月取材時の情報です。今後、内容が変更されることもありますのでご留意ください。