「SMBCクラウドサイン」

電子契約を日本社会のスタンダードへ。
デジタルで変革をもたらす

2021.02.26

SMBCクラウドサイン株式会社 代表取締役社長 三嶋英城
弁護士ドットコム株式会社 代表取締役社長 内田陽介
SBIホールディングス株式会社 取締役/法務コンプライアンス部長 山田真幸

新型コロナウイルス感染症を契機に「脱ハンコ」の流れが加速しています。電子契約が普及する兆しが見え始めた2019年10月、三井住友フィナンシャルグループと弁護士ドットコムの合弁会社として設立された「SMBCクラウドサイン」。「契約のデジタル化」を目指し、クラウド型の電子契約サービスを提供しています。

「SMBCクラウドサイン」の登場によって、日本の契約業務が今後どのように変化していくのか。自身のアイデアから事業を創出し、SMBCグループにおいて最年少で社長に就任した三嶋英城と、パートナーとしてタッグを組む弁護士ドットコムの内田陽介社長、そして「SMBCクラウドサイン」を導入したSBIホールディングスの山田真幸取締役を迎え、3人のクロストークでお届けします。

INDEX

  1. 1. SMBCクラウドサインができるまで。立ち上げの背景と苦難の道のり
  2. 2. SMBCクラウドサイン本格始動。電子契約が一変させる社会と恩恵
  3. 3. SMBCクラウドサインのネクストステージ。ファイナンスの先に広がる景色

SMBCクラウドサインができるまで。立ち上げの背景と苦難の道のり

SMBCクラウドサイン株式会社 代表取締役社長 三嶋英城

SMBCクラウドサインのサービス概要と事業ビジョンを教えてください。

三嶋社長 : SMBCクラウドサインは三井住友フィナンシャルグループと弁護士ドットコムの合弁会社として2019年10月に設立された新会社です。「契約プロセスを中心とした日本のレガシーな風習・業務プロセスの変革」を事業ビジョンに掲げ、SMBCグループが培ってきた社会的信用力とリーガルテックサービスをリードする弁護士ドットコムのノウハウを融合させて、電子契約サービスの開発と推進に取り組んでいます。

SMBCクラウドサインの仕組み

SMBCクラウドサインの仕組み ピンチで拡大

「紙と印鑑」で行なっていた契約業務のプロセスをデジタル化し、オンラインで締結から保管まで完結。締結契約のスピード化、コスト削減、検索性の向上を実現しました。

契約交渉が完了した契約書をアップロードし、相手方がオンラインで承認するだけで契約を結ぶことができます。書類の受信者はSMBCクラウドサインへの登録や費用の負担なく、ご利用いただけます。

立ち上げのきっかけとなった、三嶋社長と内田社長の出会いとは?

弁護士ドットコム_内田社長 : SMBCグループが運営するオープンイノベーション※1拠点「hoops link tokyo※2」が2018年に開催したイベントに、弊社の営業責任者が参加しており、懇親会で三嶋社長と会ったのがきっかけです。まさに現場発で生まれた会社であり事業といえます。

  • ※1 オープンイノベーション:企業内部と外部のアイデアを有機的に結合させて、価値を創造すること。社外から新たな技術やアイデアを募集・集約し、革新的な新製品やビジネスモデルを開発する。
  • ※2 hoops link tokyo:SMBCグループのオープンイノベーション拠点。渋谷にあり、産官学の異なる世界の人々が出会い、語らい、ともに挑戦するための交差点。

三嶋社長 : 新規事業を起こすにあたり、SMBCグループの強みを活かして勝負したいと思っていたので、リーガルテック※3の領域は大きな候補でした。弁護士ドットコムはすでに「クラウドサイン」で十分に知名度もあり成功していましたが、その反面、全国的に電子契約が普及するのはこれからという思いもありました。Win-Winの関係になれそうだなと強く感じたので、前向きに企画を進めていきました。

  • ※3 リーガルテック:法律もしくは法務(=Legal)と技術(=Tech)を組み合わせた造語。

弁護士ドットコム株式会社 代表取締役社長 内田陽介

すでに「クラウドサイン」を運営していた弁護士ドットコムがSMBCグループとの協業を決めたポイントやメリットは?

弁護士ドットコム_内田社長 : 最初は驚きました。日本を代表する金融グループであるSMBCグループが我々のようなベンチャー企業と同じ目線でタッグを組めるのかと。しかし、三嶋社長はじめ、担当者の方々とお話しするなかで、従来の金融のイメージとは違う、ベンチャーマインドと大きな熱量を肌で感じました。

こういう方々となら実現できるし、我々も真剣にコミットして取り組むべきだと。また、SMBCグループには大きな信用力があり、日本中に法人の顧客基盤を持っています。一緒に組めば、自社だけでは難しいリレーションやネットワークの壁という課題を解決できるというのも大きな魅力でした。

事業化を進めて行くなかで、どのような困難があり、どう乗り越えたのでしょうか。

弁護士ドットコム_内田社長 : 法律の壁が大きく、一番の課題は「電子署名法」でした。これは2001年にできた法律で、当時はまだクラウドの概念がなかったために、クラウドを活用した事業者署名型の電子契約は解釈が曖昧な状態でした。政府が「電子署名法」の新たな解釈を進めるにあたって、内閣府の規制改革推進室からヒアリングを受ける機会もありました。企業におけるリモートワークの普及や、行政手続の押印手続の見直しが発表された同時期にあたる2020年9月に「電子署名法」の解釈が見直され、一定の要件を満たす事業者署名型の電子契約は「電子署名法」に準拠していると公式表明がありました。

三嶋社長 : コロナ禍で劇的に流れが変わったのは間違いないですね。「電子署名法」の解釈の明確化が電子契約を一気に加速させました。まさに100年以上続いた「紙と印鑑」の文化を変革した最大のターニングポイントだと思っています。

SMBCクラウドサイン本格始動。電子契約が一変させる社会と恩恵

SMBCクラウドサイン設立後の変化や実績は?

三嶋社長 : 図らずもコロナ禍で「脱ハンコ」の意識が高まり、事業の伸びが加速しました。2020年の2月と12月との比較で、契約社数は17倍、契約書送信数は130倍の伸長です。設立1年以内の2020年9月は単月で黒字、通期でも黒字と会社としても順調で、電子契約の普及の一翼を担っていると自負しています。

すでにSBIグループはSMBCクラウドサインを導入されていますが、きっかけと導入の理由、決め手になったポイントを教えてください。

SBIホールディングス_山田取締役 : 元々、SBIグループ全体で積極的にDX※4を推進していましたが、コロナ禍によるテレワークが増えてきたことで、社長の北尾からも「脱ハンコ」の大号令がかかりました。そのような中、これを実現するためのソリューションを探していたところ、2020年4月に包括業務提携をしている三井住友フィナンシャルグループ様から、SMBCクラウドサインをご紹介いただいたのがきっかけです。三嶋社長のプレゼンテーションから「熱意」と「サービスの革新性」を強く感じ、契約させていただきました。

  • ※4 DX:Digital Transformation。企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して顧客や社会のニーズに応え、製品やサービス、ビジネスモデルのほか業務や企業風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。

三嶋社長 : ありがとうございます(笑)。

SBIホールディングス_山田取締役 : また、当社グループと同じ金融機関であるSMBCグループがSMBCクラウドサインをフル活用している実績がある事や、クラウドサインの電子契約の国内シェアが80%を超えていることもあり、外部の取引先にも展開がしやすいと考えたことも決め手の一つです。

SBIホールディングス株式会社 取締役/法務コンプライアンス部長 山田真幸

導入にあたって、障壁はありましたか?

SBIホールディングス_山田取締役 : 特に大きかったのは前述の業務フローの整理です。グループ各社で電子化可否の整理をする必要があり、その中でSMBCクラウドサインを導入することによって逆に業務フローが複雑にならないように考慮しなければいけないことも、導入を行う上で、大きな障壁と感じました。しかしながら、我々が躓いていたところは、すでにSMBCグループが検討済みであったものも多く、検討にあたり大変参考になりました。
導入時には、各会社、各部署から、利用方法などの照会が数多くありましたが、上がってきた課題や疑問点は随時、SMBCクラウドサインに質問し、素早くご対応いただいたので、大きなトラブルもなく導入を進めることができました。

電子契約を利用した社内の反応や効果を教えてください。

SBIホールディングス_山田取締役 : 想像していた以上の効果がありました。契約締結までのスピードが早くなり、操作も大変分かりやすいという声が多いですね。さらに印紙が不要になるのも大きなメリットです。
世の中的にも国が「電子署名法」の解釈を明確化したことで、1年前よりも取引先のご理解が飛躍的に進んでいるため、外部への展開もスムーズに行えています。

SMBCクラウドサインのネクストステージ。ファイナンスの先に広がる景色

今後、SMBCクラウドサインに期待することはありますか?

SBIホールディングス_山田取締役 : 今後、さまざまな業界・業種の企業で広く導入されれば、弊社としても取引先との契約締結がより円滑に進むのではと大いに期待しています。我々もイノベーションを起こそうとしている会社なので、志を高く持つSMBCクラウドサインの取り組みを後押ししたいと思っています。

SMBCクラウドサインの今後の展望は?

弁護士ドットコム_内田社長 : 電子契約をより広く浸透させるために、乗り越えないといけない課題が多いと感じています。そのためにSMBCグループという頼りがいのあるパートナーと手を携え、SBIホールディングスのような先進的な企業にもどんどん加わっていただいて、ネットワークを広げていく。まずはこの新しい契約のスタイルを日本中に広めていくことが第一歩です。

三嶋社長 : 2021年度は、電子契約の本格活用が始まる年。今後は契約書の作成から保管、契約を履行して資金決済という、一連の流れのデジタル化にトライしていきたいですね。

次の展開としては、契約書に蓄積された重要なデータを解析して、お客さまに還元していくことを考えています。紙の契約書は倉庫に保管されたら、見返すこともないと思いますが、デジタルなら検索や解析も容易ですし、ビッグデータとしていろいろ活用できる。事業の第二の柱として可能性があると感じています。

SMBCグループとして、SMBCクラウドサインに取り組む意義とミッションとは?

三嶋社長 : 日本の“堅い企業”の代表格ともいえる金融業が電子契約を導入して、自己変革した。銀行が変わったのだから「日本全体が変われるはず!」とメッセージを送りたいですね。

かつては日本企業が世界の時価総額でランキング上位に並んでいましたが、残念ながら現在は停滞しています。この状況を打開するのはSMBCクラウドサインのようなオープンイノベーションにおける「大企業×ベンチャー」がキーワードになると思います。そんなロールモデルを量産していけば、日本の活性化に繋がるはずです。先を見据えて、私たちがロールモデルの1つになっていきたいと強く思っています。

  • ※ 2021年2月取材時の情報です。今後、内容が変更されることもありますのでご留意ください。