「assetforce(アセットフォース)」

ファイナンス領域を超えて、資産活用を新たなステージへ。“モノ”の潜在力を引き出す革新的なプラットフォーム

2021.12.02

三井住友ファイナンス&リース株式会社 執行役員 営業推進開発部長 大村尚之
三井住友ファイナンス&リース株式会社 デジタル開発室 室長 兼 システム企画部 部付部長 藤原雄
三井住友ファイナンス&リース株式会社 企画部 クオリティ室 マスターブラックベルト 福間義行

SMBCグループの三井住友ファイナンス&リース(以下、SMFL)は、2020年に経営理念「SMFL Way」を制定。「デジタル先進企業」をOur Visionとして掲げ、デジタルイノベーションによって、顧客企業へ新たな価値を提供することに注力しています。最近では、“モノ”のライフサイクルを一元管理するクラウドサービス「assetforce(アセットフォース)」を開発し、2021年5月に提供を開始しました。

「assetforce」とはどのようなサービスなのか。そして、「assetforce」の登場で、企業の資産管理や経営がどう変わっていくのか。SMFLのデジタル開発力や社内共創の体制づくり、開発の背景などについて、営業推進開発部の大村尚之、デジタル開発室の藤原雄、企画部クオリティ室の福間義行のクロストークでお届けします。

INDEX

  1. 1. “モノ”のライフサイクルを管理し、潜在力を引き出すクラウドサービス「assetforce」
  2. 2. ビジネス現場とエンジニアが共創し、プロダクト開発を完全内製
  3. 3. “モノ”がデジタル化する未来へ。企業のDX推進とサステナブルな社会の実現に貢献

“モノ”のライフサイクルを管理し、潜在力を引き出すクラウドサービス「assetforce」

三井住友ファイナンス&リース株式会社
 執行役員 営業推進開発部長 大村尚之

assetforceとは、どのようなサービスですか?

大村 : assetforce は企業が保有するさまざまな資産の取得・調達から返却・廃棄まで、モノのライフサイクルをAIやIoTなどのデジタル技術を活用し、クラウド上で一元管理するサービスです。

当社はリースを中心とした事業を行っています。言うなれば日本有数の規模で“モノ”を所有し、お客さまに提供している企業です。そしてモノには、膨大な情報が付随しています。モノにまつわるさまざまな情報を収集・分析することで新たな価値を提供することを目指し、“モノ”と“ヒト”をデジタルで繋げるプラットフォーム、assetforce を開発しました。

福間 : assetforceにはお客さまがリースなどで調達した資産を上手に管理・活用していただけるように、ワークフロー、分析・レポート、帳票、AIやAR技術を活用したモバイルアプリなど、必要な機能がすべてオールインワンで詰まっています。

開発のきっかけと背景を教えてください。

藤原 : 私はSMFLキャピタルの前身である、GEキャピタルの頃からシステム開発に携わっています。GEキャピタルにおいてはGE流の業務改善の活動がベースあったことに加えて、当時からデジタルのビジネス活用に注力していたこともあり、現場の課題をデジタルの力で解決することに強みを持っていました。2019年にSMFLとSMFLキャピタルが経営統合されたあとも、その強みが受け継がれており、企業理念の1つとして「デジタル先進企業」を掲げ、全社を挙げてデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進しています。

そうしたなか、デジタル開発部門と営業・本社の社員が協働する「イノベーションプロジェクトチーム」(以下、イノベーションPT)が立ち上がり、まずは社内の業務プロセスのデジタル化に取り組みました。そして、そこで培った知見やノウハウをベースに、お客さまの資産管理のDXを実現するサービスの開発に着手したのがassetforceの始まりです。

大村 : SMFLキャピタルとの合併後、初めて藤原のデジタルチームの話を聞き、私が業務で感じていた課題を相談してみようと思いました。すると、藤原のチームが次々にアイデアを出してくれまして、なんと半年で、しかも当社での内製開発によって欲しいものがローンチされた。「これは、スゴイ人たちが仲間になったな……。」と思いました。当社でもデジタルの開発が主体的にできる、現場の課題に対するソリューションをすぐに形にできる、そのうえ改善もできるという、デジタル内製化の威力に我々も気がついたのです。

福間 : 開発に至るまでの背景を少し補足してお話ししますと、ビジョンを掲げたからといって、ある日突然、会社全体が「デジタル先進企業」になれるわけではなく、その実現に向けては3つのプロセスが必要でした。

始めに取り組んだのが①社内の業務効率化。次に②営業の生産性向上。ここまでのプロセスで、内製によるスピード感のあるデジタル開発が自社のビジネスに有用であるという認識が広がり、イノベーションPTに参画する社員も増えてきました。そのうえで、③デジタルのビジネス化に着手し、assetforceの事業アイデアが実行に移されました。①と②の下地があったからこそ、全社を挙げてのassetforceプロジェクトの推進が可能になっているのだと思います。

SMFLにおける「デジタル先進企業」への変革に向けた
「3つのプロセス」と、実際にローンチされたサービスの一例

  1. ①社内業務の効率化:RPAの業務への活用、ビジネスマッチングサービスなど
  2. ②営業の生産性向上:営業支援のスマートフォンアプリ「Gaia」の開発など
  3. ③デジタルのビジネス化:assetforce、AI決算書OCR(光学文字認識)など

大村 : 私たちが接しているお客さまは、機械の納品から、そのあとの点検・メンテナンスまで、ライフサイクル全体を管理していく必要があります。リース会社はモノを所有してお客さまにお貸しするビジネスなので、個々のモノが持つストーリー、いつ、どこで、誰によって使われたのかという情報を掴むことができます。その情報は大きな宝なのではないか、と気づいたのです。私はリースビジネスを通じて常々、「お客さまの固定資産を有効活用するために、一連の流れを見える化できたら」と考えていたので、藤原をはじめとするデジタル開発室のメンバーが出してきたassetforceのアイデアは、まさに我々が求めていた「モノにまつわる情報を見える化」するものでした。

藤原 : モノが持つストーリーにテクノロジーをかけ合わせることで、新たな価値提供ができる。まさに、SMFLとSMFLキャピタルのDNAが融合してassetforceをリリースできたのだと思います。そういった意味で、営業・事務・本社部門の社員が協働する「イノベーションPT」は、SMFLのユニークさであり、強みだと思います。

三井住友ファイナンス&リース株式会社
 デジタル開発室 室長 兼 システム企画部 部付部長
 藤原雄

どのような新しいデジタル技術が導入されていますか?

藤原 : assetforceには、AI-OCR(AIを搭載した光学文字認識)やAR(拡張現実)、などのデジタル技術を採用しています。これらの技術によって、レンタル商品に貼り付けてある伝票やラベルにスマートフォンをかざすだけで、その情報を読み取り、必要な情報やアラートを画面上に表示させることができます。また、当社が大きな知見をもっているRPA※1は、発電所を管理しているお客さまの場合において、発電量のデータを取り込む際のデータの整形や加工の自動化に活用しています。こうした技術や知見は、スピード感をもって取り入れることが大事だと思っています。時代とともにお客さまの課題も変化していく。我々もそのスピードに合わせて進化する必要があります。

  • ※1 RPA:ロボティック・プロセス・オートメーションの略。これまで人が対応してきた定型的な処理や作業を、処理手順をプログラミングされたロボットが、人に代わって自動的に実行する技術。SMFLでは100名弱の社員が「RPAアンバサダー」として活動し、RPAの活用によって年間20万時間以上の定型業務を削減している。

すでにご活用いただいているお客さまの反応や声は?

福間 : 導入いただいお客さまからは「倉庫から指定の品物を集めるピッキング作業のミスがゼロになった(レンタル業)」、「データ管理の業務が効率化されて、管理工数が削減できた(太陽光発電事業)」、「棚卸の準備や作業にかけていた時間を9割削減できた(中古機器販売業)」などの声が届いています。お客さまがお持ちの課題を、デジタル開発室やセールス担当と連携して、トライアルや実証の段階からスピーディに解消してきたことが、このようなお客さまの評価につながっていると思います。

大村 : 営業の現場では、多くのお客さまが固定資産や資産管理に経営的な課題を持たれているという声をお聞きします。その背景には、コンプライアンス的な側面からみた適正な会計処理、適切な産業廃棄物の処理、循環型社会への関心向上など、ここ数年で急激に高まった社会的な要請の高まりがあります。多くのお客さまが、こうした要請に応えていく必要に直面している。ここにassetforceが貢献できる役割があると感じています。

assetforceとは?

assetforceは総資産7兆円を誇る三井住友ファイナンス&リースと戦略子会社のSMFLみらいパートナーズから生まれた、“モノ”と“ヒト”をデジタルで繋げるクラウドサービスです。企業が保有する資産の潜在力を引き出し、資産活用を新たなステージへと導きます。

assetforce

assetforceが解決できること

資産管理に関する、現場のさまざまな課題を解決します。

  1. ・資産台帳と現物資産の一致
  2. ・現場でモノの情報をすぐに把握
  3. ・棚卸作業の負担を軽減
  4. ・履歴情報を可視化
  5. ・データを経営判断に活用
  6. ・資産や余剰な在庫を最大限に活用

assetforceの特長

assetforceの特長 ピンチで拡大

ビジネス現場とエンジニアが共創し、
プロダクト開発を完全内製

三井住友ファイナンス&リース株式会社
 企画部 クオリティ室 マスターブラックベルト 福間義行

開発・営業・本社部門が協働することで生まれたシナジーとは?

福間 : クオリティ室には、社内のさまざまなプロジェクトをマネジメントし、変革を進めていくという役割があります。私も藤原と同じくGEキャピタルの出身で、当時はお客さまの業務改善プロジェクトを支援する業務を担当していました。

その経験をもとに、2017年に立ち上がった「イノベーションPT」に参画し、全社を巻き込んだDXを推進してきました。イノベーションPTにおけるクオリティ室の役割の1つは、現場の課題とデジタル技術がうまくリンクするように、課題を紐解いて適切なソリューションを導き出し、業務に落とし込むことです。そのために社内やお客さまの現場の課題とデジタル技術(開発チーム)との橋渡しを担っています。

藤原 : 現在、SMFLにはエンジニアの社員が23名いますが、大事なのは「現場の課題を解決する」というオーナーシップを持つこと。そのためにもプロダクトの開発は内製で行うべきだと考えます。エンジニアもビジネスを理解し、お客さまと直接対面している営業と同じく課題感や価値観を全員で共有する。社内だからこそ意思決定も早くでき、スピーディにお客さまのニーズに応えることができます。新しい価値を創造する際のキーワードは「ビジネス現場と開発の共創」なのです。

大村 : 開発リソースが外部にしかないと「誰かに解決してもらう」という発想になりがちですが、開発を内製化できると「自ら解決する」という意識が生まれます。こういった体制を永続できるように、会社のビジョンもそうですし、エンジニアサイドもビジネスサイドも、同じベクトルを向いて、お客さまのための課題解決を最大化しようというカルチャーを作っていくことが、私たちの使命だと思っています。

“モノ”がデジタル化する未来へ。企業のDX推進とサステナブルな社会の実現に貢献

今後、assetforceはどのように進化することを目指していますか?

大村 : 社会に広く浸透して、誰でも使っているプラットフォームとして身近な存在になれたら、本当にうれしいですね。これまではモノの情報を見ていても、その価値に誰も気がついていなかった。その気づきをお客さまにも提供するきっかけになればと思います。

藤原 : assetforceは当初より将来の拡張性を考えたプラットフォームとして構築しています。つまり、今後もお客さまとともに進化していくものなのです。企業が成長するうえで、オーガニックに成長していくことはとても難しい。デジタルを使って効率化を図り、データ分析によって新しい価値を創出することで、新たな成長のための資源を生むことに繋がると考えています。モノを扱うプラットフォーマーとして、お客さまのDX推進に貢献していきたいですね。

福間 : 業務効率化だけではなく、経営にも役立つプラットフォームを目指していきたいです。assetforceには、分析やレポート機能があり、資産の状況をビジュアル化して見ることもできるので、担当者や経営陣が資産の状況を踏まえて、さまざまな判断を行うことができます。集計作業が楽になるだけでなく、経営をより成長させるために活用できることも大きなメリットです。

assetforceで、社会にどのような影響を与えていきたいですか?

大村 : モノの状況を把握することは、効率化、有効利用につながり、サステナブルな社会への一歩になると考えます。どこで誰が何を排出して、どの機械がどれくらいロスを出しているか、そういう発想を持つことが大切だと思います。サステナビリティ経営を目指す企業にとって、assetforceがその一助になることを願っています。

福間 : お客さまのDXはもちろん、サステナブルな経営の推進までをassetforceが支援し、気がつけば社会やマーケットに欠かせないプラットフォームになっている。そうなることを期待したいです。

  • ※ 2021年10月取材時の情報です。今後、内容が変更されることもありますのでご留意ください。