#13 お客さまの大切な「医療データ」をお預かりする。
SMBCグループが描く、データで価値を生み出す社会

「医療データの情報銀行」

2022.02.28

株式会社三井住友フィナンシャルグループ デジタル戦略部 部長 宮内恒
株式会社三井住友フィナンシャルグループ デジタル戦略部 上席部長代理 坂田健太郎
株式会社プラスメディ 代表取締役社長 兼 CEO 永田幹広

内閣府が提唱するサイバー空間とフィジカル空間を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する人間中心の社会「Society5.0(ソサイエティ5.0)」。さらなるデータの利活用が求められる世の中において、SMBCグループではお客さまからお預かりするパーソナルデータを安全に管理し、個人の意思に基づいてさまざまなサービスを提供する「情報銀行」事業に着手。その第一弾として「医療データの情報銀行」の取組をスタートさせています。

2019年、三井住友銀行は総務省の情報銀行における概念を実証するためのプロジェクトに参加し、大阪大学医学部附属病院(以下「阪大病院」)の協力のもと、個人の医療データをスマートフォンで閲覧・管理できるアプリ「decile(デシル)」を開発。
その後も独自でこの事業を進化させ続けていましたが、2020年、患者サービスの向上と医療機関の業務効率化を支援するアプリ「MyHospital」を提供する、株式会社プラスメディを三井住友フィナンシャルグループの連結子会社として迎え入れ、SMBCグループとして「医療データの情報銀行」の普及に取り組んでいます。

本記事の前半は「decile」立ち上げメンバーであるデジタル戦略部の宮内恒、坂田健太郎に、プロジェクトにかける想いや開発の歩みを語ってもらいました。後半は、プラスメディ社長・永田幹広も加わり、「共創」の背景からサービスの未来まで、クロストークでお届けします。

INDEX

  1. 1. 「命の次に大事なものを守る」という使命を胸に。すべての人が豊かな時間を過ごせる社会を目指して、情報銀行をスタート
  2. 2. 同じ志の阪大病院と実証事業を開始。医療データを管理・共有できるアプリ「decile」を開発
  3. 3. 医療データの情報銀行のさらなる拡大、全国への普及に向けて「MyHospital」を提供する株式会社プラスメディと共創
  4. 4. 進化したアプリは患者体験と医療を変えていく。SMBCグループの情報銀行事業が描く、健康で豊かな社会

「命の次に大事なものを守る」という使命を胸に。すべての人が豊かな時間を過ごせる社会を目指して、情報銀行をスタート

株式会社三井住友フィナンシャルグループ
 デジタル戦略部 部長 宮内恒

SMBCグループが取り組む情報銀行の概要と背景を教えてください。

坂田 : 情報銀行とは、個人との契約に基づき、パーソナルデータの管理や運用を行う事業と捉えています。
この事業の普及・成功のカギは、個人がデータを預ける際の不安やコストを上回るメリットやサービスを提供できるかどうか。そういった観点では、お客さまの資産を安全にお預かりしてきた実績は銀行にとっては大きな武器で、SMBCグループが新しい仕組みの一翼を担う意義がきっとそこにあるはずだという気持ちで取り組んできました。

宮内 : 個人情報に関して、世界的にも個人がコントロールできる範囲が徐々に広がっている一方、個人情報の持ち主である個人が自分のデータに関与できない場面が多く見られますし、実際にデータを管理する具体的な方法もまだまだ提供されていません。個人が自分で自分のデータを管理する、その1つの手段となり得るのが情報銀行だと思います。

「情報」にも色々な分野があるなかで「医療」を選択した理由は?

坂田 : 個人情報のなかで、個人が「最も預ける価値のあるデータ」と思うのは何だろうと考えたときに、命や健康に関わるところ、つまり医療だろうと考えました。

宮内 : 人生100年時代と言われますが、元気に幸せに、自分らしく生きるというのが多くの人の目標だと思います。これまでSMBCグループはお金の面でそのお手伝いをしてきましたが、健康や医療の面でもサポートしていきたい。
個人にとっては、お金や資産に関することはもちろん、自分や家族の健康や病気に関わる情報も、やっぱり信用できる人に預けたいですよね。銀行としても、お金と同じく「命の次に大事なものを守りたい」と考え、「医療データの情報銀行」の取組として「decile(デシル)」というアプリを立ち上げました。

株式会社三井住友フィナンシャルグループ
 デジタル戦略部 上席部長代理 坂田健太郎

同じ志の阪大病院と実証事業を開始。医療データを管理・共有できるアプリ「decile」を開発

「decile(デシル)」とはどういったアプリなのでしょうか。

宮内 : 簡単に言うと医療機関で管理されている、アレルギー・検査結果・薬剤処方など、個人の医療データを自分のスマートフォンで閲覧・管理できるサービスです。阪大病院、日本総合研究所と一緒に、当初は妊婦の方を対象にしてアプリを開発しました。アプリ上では、体調・アレルギー情報・赤ちゃんのエコー画像などが管理できます。

坂田 : まず妊婦の方を対象にしようと思ったのは、「誰かのためという想いは人の行動を変える力がある」と思ったからです。お腹の子のため、と思うと些細な変化も気になりますし、3Dエコー画像などは人に見せるなど保管しておきたいと思いますし、何よりデータというと難しく感じてしまいがちですが、誰かのためであればそういった壁も簡単に乗り越えてしまいますよね。

数ある病院のなかで、阪大病院と共創するに至った背景や理由を教えてください。

宮内 : 阪大病院とは元々銀行としてのお取引があり、接点があったのですが、病院の方とお話をした際に「患者さんのために、ご本人の医療データをお返しして、健康の維持や病気の治療に役立てたい」というお考えをうかがい、私たちと同じく、患者さんのために、データをどのように利活用するのがいいかという課題をお持ちだったのが大きな理由で、その想いが一致したこともあり共創に至りました。

実際にアプリを使っていただく際に、ユーザーの方々からはどのような声がありましたか?

坂田 : 阪大病院の外来棟に「医療データの情報銀行」というブースを設け、仕組みを分かりやすく説明する動画を流して、妊婦の方や他の診療科の患者さんと直接コミュニケーションを取ってリサーチを重ねました。予想通り、最初の反応は「これ何だろう?」でしたね(笑)。

実証期間中に特設ブースを来訪された方は400組を超え、多くの方に賛同の声をいただきました。実証に参加いただいた方からは、使えるデータを増やしてほしい、こんなときに活用したいなど、具体的な改善のアイデアも頂戴し、その反響に自分たちがびっくりしてしまいました。病院側も産婦人科の皆さまが個々人でサポートしてくださり、我々とアプリを使うユーザーの方、阪大病院が同じ方向を向いて取り組めたことが一番のポイントだったと思います。

宮内 : 実際にユーザーの声を聴いてみて、想像以上に多くの方が「もっと自分のことを知りたい」というニーズをお持ちであることが分かったのは驚きでした。また、あるユーザーの方から、「同じ病気の人に自分の経験を伝えて、その人たちの助けになりたいと思っていたが、伝える手段がなかった。この取組がそのような手助けになればうれしい」という声をいただいたのですが、そのときには、自分たちのしていることが間違っていなかったんだと逆に勇気をいただきました。

医療データの情報銀行の取組@
「decile」の開発

  1. 2019年、3月より阪大病院、日本総研とともに妊婦の方を対象に、「医療データの情報銀行」の実証事業を展開。電子カルテに保存されている個人の医療データを預かり、安全に管理・共有・活用できるアプリの開発をスタートしました。
  2. 2021年7月から阪大病院の全患者さんを対象に「decile」としてサービス提供を開始。阪大病院監修のもとに医療倫理の4原則(自律尊重、与益、無加害、公正・正義)に則ったデータ管理・利活用を徹底しています。
  3. アプリでは自分で通院記録を入力できるほか、医療機関に対して医療データ取得の申請ができます。対象の医療データはアレルギー情報、検査結果、薬剤の処方データ、産科エコー画像、ペースメーカー情報などで、閲覧可能なデータは順次拡大しています。
  4. アプリ名は「データで自分を知ることで選択肢を増やし、自分のデータを誰かに知ってもらうことで選択肢を増やす」というコンセプトを具体化した造語で、データで知る=「decile(デシル)」と名付けました。

「decile」の仕組み

「decile」の仕組み ピンチで拡大

医療データの情報銀行のさらなる拡大、全国への普及に向けて「MyHospital」を提供する株式会社プラスメディと共創

株式会社プラスメディ
 代表取締役社長 兼 CEO 永田幹広

ここからはプラスメディの永田社長にも加わっていただきます。まずは「MyHospital(マイ ホスピタル)」開発のきっかけを教えてください。

永田 : きっかけは、私自身が病気を発症し、通院することになったのですが、その際に病院での順番待ちや会計の煩わしさなどに不満を感じたことでした。そこで、2017年に患者サービスの向上と医療機関の業務効率化を支援するアプリ「MyHospital」を開発しました。通院が「もっと楽になれば」というのがきっかけでしたが、診察順の案内や会計の後払いサービスのほかに、PHR(パーソナルヘルスレコード)と呼ばれる「健康や医療データ」を管理できるサービスも提供しています。

ちなみに、このアプリにデータ蓄積機能をつけたのは、自分の身体のデータを自分で管理し、理解したかったからです。例えば、定期検診で先生に「よくなったね」と言われても、どのくらいよくなったのか見えないですし、紙でデータをもらっても捨ててしまいがちです。「よくなったとき」に例えばどのような食事をして、何の薬を飲んでいたのかが分かれば、そこに合わせて生活リズムを作ることができます。「MyHospital」はそのプラットフォームとして、自分のデータを一括して、自分で管理したいという思いが出発点でした。

プラスメディが三井住友フィナンシャルグループの子会社になった経緯は?

永田 : 以前から三井住友銀行とは取引があったのですが、法人戦略部という部署から「社内に同じような取組をやっている部署がある」と紹介されたのが最初です。実証事業の内容を聞いたとき、コンセプトも将来的な構想も一緒なので、「競合だな」と思いました(笑)。

坂田 : 同様の事業を展開している会社はほかにもあったのですが、同じ志を持ち共感できると思えたのはプラスメディでした。「患者さんのために」という考え方が同じだったので、一緒にやることでもっといいものを創ることができると思いました。

SMBCグループとプラスメディが共創するメリットとは?

永田 : 1つはSMBCグループが金融機関として長年培ってきた「信頼」です。患者さんが「自分の医療データ」を預けるうえで、安心感があるというところが大きかったと思います。

坂田 : プラスメディにはベンチャーならではの力強さ、スピード感、アイデアがあると感じました。一緒にタッグを組むことで、双方にメリットがあると感じましたね。

宮内 : 銀行、プラスメディともに医療業界以外からのアプローチである、というのもポイントでした。イノベーションは常に業界の外からもたらされるものです。医療業界だけで解決できないことを、ほかの世界の人も巻き込みながら、患者さんを中心に医療を変えていくのが我々の存在意義だと思っています。この事業をきっかけに、さまざまな変化を起こしたいですね。

医療データの情報銀行の取組A
プラスメディとの共創

「MyHospital」は日常と病院を繋ぐコンシェルジュアプリ。患者さんの満足度の向上に加え、医療機関のコスト削減と業務の効率化を支援します。

「MyHospital」 3つの特徴

  1. @ 待ち順案内・後払い会計・処方箋データ送信機能により、院内・薬局での待ち時間の短縮、院内の混雑緩和。
  2. A 後払い会計機能で病院の会計処理の混雑緩和・決済コストの削減・ペーパレス化。
  3. B PHR(パーソナルヘルスレコード)の活用で病院、患者さんとのコミュニケーション向上。

「MyHospital」でできること

「MyHospital」でできること ピンチで拡大

進化したアプリは患者体験と医療を変えていく。SMBCグループの情報銀行事業が描く、健康で豊かな社会

2つのアプリはそれぞれどのように進化していくのでしょうか?

永田 : 基本的には患者さんが使いやすいようにしていくべきだと思います。そのうち「MyHospital」は通院時の効率化にシフトし、「健康や医療データ」を蓄積する方は「decile」に集約していくといった形で将来的には1つのアプリになるのが望ましいと思います。

宮内 : このアプリを持っていれば、患者体験が今までと全く違うものになり、それこそ人生100年時代を、健康に自分らしく生きられる。医療の周辺領域も含めて、それが当たり前になることがゴールですね。

永田 : 病院も以前に比べて、データに対しての意識などがだいぶ変わりました。最近では医療データを外に出すことに対して壁は無くなってきていると感じます。問い合わせも多いので、今後使える医療機関がもっと増えると思います。

坂田 : また患者さんの声が病院や世の中を変える原動力だと思います。医療業界だけで解決できないことも、患者さんやその周りの人も巻き込みながら、患者さんを中心に考えていくのが僕らの存在意義だと思っています。そういった動きのなかで、徐々に社会の仕組みなどいろいろなことが変わってくればいいなと思っています。

SMBCグループの「情報銀行」における展望を聞かせてください。

宮内 : 今後、医療分野で幅広く展開していくことで、ブラックボックスになりがちな医療データが開かれていけば、さらなる医療の発展に繋がっていくはずです。また蓄積されたデータが臨床研究機関などで分析・活用されることで新薬の開発などにも貢献できると考えています。

坂田 : 「情報銀行」の考え方も医療だけでなく、色々な分野に拡大していくことになるでしょう。アプリの機能も、今は病院のなかの話が中心なので、そこから日常へ。まだまだお手伝いできる可能性があるので、他の領域へと広げていけるといいですね。そこまでやって初めて患者体験や生活が抜本的に変わるし、豊かな社会・豊かな生活を実現できるのだと思います。

  • ※ 2022年1月取材時の情報です。今後、内容が変更されることもありますのでご留意ください。