• SMBC
  • SMBCグループ

三井住友フィナンシャルグループ

文字サイズ

SMBC GROUP REPORT 2020 DISCUSSION 社外取締役座談会

社外取締役座談会 社外取締役座談会

グループCFOの中島が、当社社外取締役の新保氏、桜井氏と、三井住友銀行社外取締役の門永氏から、2020年5月に発表した新中期経営計画(以下、新中計)についてお伺いしました。

中島 本日はお時間をいただき、ありがとうございます。早速ではありますが、この度策定した新中計に対するご意見を、皆さまにお伺いしたいと思います。はじめに桜井さん、いかがでしょうか。


桜井 私は前中期経営計画(以下、前中計)策定の際にも議論に参加させていただきましたので、その観点からお話しいたします。まず評価したいのが、その策定プロセスです。前中計よりもかなり早い段階から、私たち社外取締役も議論に参加させていただきました。また、その際の資料も、完璧に仕上がったものではなく、途中で白紙のページがある等、ドラフト段階のもので、それを基に議論ができたことも良かったと考えています。私たちが意見できる余地も多く、結果として議論が活発化しました。この点は、企業カルチャーが変化してきた表れでもあると感じています。


新保 同感です。また、この度の策定プロセスにおいて、株主をはじめ、お客さまや従業員といったステークホルダー間のバランスについての議論にかなりの時間を割いた印象があります。財務目標を例に挙げると、高すぎる目標を設定し、そこを追求するあまりに、従業員の負荷が過度に高まり、それがもとでお客さまに迷惑をかけることがあってはなりません。一方で、株主の目線を大切にし、その期待に応えることも重要です。このようなバランスを十分に議論し、経営陣の中で共通の理解を持った上で、妥当性のある適切な財務目標を設定できたのではないかと評価しています。


門永  私が提言したポイントとしては、大きく3つあります。1つ目は、先ほど財務目標の話が出ましたが、定量面の目標に加え、新中計期間が終了した時点でSMBCグループをどのような企業体にしたいのか、たとえば、お客さまにどのような価値を提供したいのか、国内やグローバルの競合の中でどのような立ち位置を目指すのか等、定性面での目標を示すべきであるということをお伝えしました。なぜなら、計画を遂行する主体は従業員であり、こういった定性的な目標を示すことが、従業員のモチベーションを高める上で不可欠であると考えるからです。


2つ目は、金融業界を取り巻く市場環境が一層厳しくなり、コスト構造の最適化をより進めていく必要がある中で、コスト削減の施策だけではなく、投資を含め、どこにコストをかけるのかも明確にすべきだということです。そして、3つ目が将来のビジネスモデルのあり方について。つまり、銀行業を中心とした従来のビジネスモデルが限界を迎えつつある中で、どのようなビジネスモデルを志向していくのかということです。その解を見つけるのは容易なことではありませんが、将来のビジネスモデルの構築に向けて、試行錯誤も重ねながら、資金や人材等の経営資源をどのように投入していくかという切り口で、議論させていただきました。


新保 門永さんがおっしゃったような新中計の先の将来に関して、特に活発な意見が交わされました。私自身は、弁護士の立場で証券業務に携わってきたこともあり、証券関連の成長戦略について、デジタル化や若年層の取り込み、また、海外展開の強化等、いくつか提言を行いました。それと直接関連するわけではありませんが、2020年4月に、SBIグループと戦略的資本・業務提携に関する基本合意を締結したことは、SMBCグループが新中計の先を見据え、確実に手を打っている証左であると捉えています。


桜井 前中計策定時の議論と比較し、量だけではなく、質についても進化したと思っています。新中計策定プロセスの早い段階から議論に参加したことで、お二人が話されたような将来の姿や、事業の根幹に関わる理念体系等、新中計の各施策の前提となる部分から関与することができ、その後の議論が深まりました。また、各施策に関する細かな部分の質問については事前説明等で解消し、取締役会では、グループCxO自身から説明や質疑応答を行っていただけたことで、視座の高い議論ができたと考えています。資本政策について勉強会を数回実施していただき、取締役全員のコンセンサスを取る機会を得られたことで、新中計における成長投資についても、セクションごとに中身の濃い議論ができたのではないでしょうか。


中島 新中計策定プロセスの中で、社外取締役の皆さまのご意見をなるべく早い段階から取り入れることについては、私たちとしても特に注力した点です。また、取締役会の場だけではなく、その事前説明や議案に関する勉強会の場等も活用し、より質の高い議論ができるように努めました。たとえば、資本政策に関する勉強会では、今回初めて社外取締役の皆さまと、投資家・アナリストとの会談を設けさせていただきました。新保さんがおっしゃったように、私たちとしましても株主の目線を大切にしており、そのような考えを皆さまにも共有していただくという面で、非常に良い機会になったと思っています。


最終的に仕上がった新中計は、皆さまのご意見が大きく反映された中身となりましたので、改めて感謝申し上げます。では、そのほかのご意見はありますでしょうか。


門永 先ほど桜井さんが理念体系について言及されましたが、新中計の策定に合わせて、SMBCグループの役職員一人ひとりが共有すべき価値観・行動規範として定めている「Five Values」の中に、Integrityの概念を取り入れたことは高く評価しています。「Five Values」は、グループ内にすでに定着しているものであり、それを変える難しさもあったと思います。しかし、私は、このIntegrityの概念を取り入れることによって、従業員がまとまり、外部の人材を惹き付け、さらにESG投資が声高に叫ばれる中で、株主・投資家を惹き付けることにもつながると考えており、議論の段階においても、このような主張を行っていました。


新保 私もIntegrityの概念を取り入れるべきであると考えていました。近い話として、ここ数年、フィデューシャリー・デューティー(受託者責任)に対する関心が高まり、SMBCグループとしても「お客さま本位の業務運営に関する基本方針」を定める等、その対応を進めてきました。しかし、これは金融商品の販売という限られた範囲のものであると、従業員の皆さんには受け止められていたように思います。それを、SMBCグループ内で浸透している「Five Values」の中にIntegrityの概念を取り入れることによって、あらゆる業務においてそのような方向に進んでいくのだということ、つまり、金融機関として高潔で高い倫理観を有する存在としてあるべきだということを、役職員に示すことができたのではないでしょうか。


桜井 SMBCグループとして目指す方向性についての議論ができたことは、新中計全体の戦略を描く上でも非常に有意義でした。環境が急激に変化している中で、各施策の詳細を詰めることに注力し、それを変えることなく、固定的に運用していくことは現実的ではありません。この度の新中計では、今世界を揺り動かしている新型コロナウイルスの感染拡大を含め、将来的に大きな変化が起こることを織り込み、各施策については機動性を持たせながら、SMBCグループが進むべき大きな道を示すことができたと評価しています。また、それによって、「すべて重要」ということではなく、各施策の優先順位が明確となりました。


門永 私がよく使う言葉として、“do more better”があります。これは、同じ枠組の中でも、「もう少しやることで、もっと良くなる」という意味ですが、新中計ではこれだけではなく、従来の枠組を超えたアプローチが重要です。特に、将来のビジネスモデルの構築については、アフター・コロナの世界における消費者行動や社会の変化を踏まえて、よりアイデアを広げて、踏み込んだ議論を続けていくべきではないでしょうか。


桜井 アフター・コロナの世界では、デジタライゼーションがより一層加速していくはずですが、そうした流れに先立って、「あらゆるバリューチェーンの中のデジタルポイントを押さえていく」という戦略を打ち出せたことは、キャッシュレス決済業界のリーディングカンパニーであるSMBCグループとして非常に良かったと思います。


中島 アフター・コロナにおけるビジネスのあり方ついては、取締役会を含めさまざまな場で、社外取締役の皆さまとも議論させていただきながら進めていきたいと考えています。


それでは最後に、皆さまが社外取締役としてSMBCグループの企業価値向上にどのように貢献したいとお考えかについて、ご自身の経験も踏まえてお聞かせください。


桜井 社外取締役というのは、ひとりではなく、異なるバックグラウンドや知識のある方々との多様な組み合わせによって、その役割を果たすことができるのではないかと常々感じています。そうした中で、私自身としては、現在も含め、長年にわたってグローバル企業で業務に携わってきた経験を、SMBC グループの企業価値向上にお役立てできればと考えています。欧米の企業と日本の企業とでは考え方が異なる点が多々あり、たとえば、アカウンタビリティとレスポンシビリティという言葉について、日本人の感覚では、いずれも「責任」という意味で捉えがちですが、欧米では明確に使い分けられています。前者には「説明責任」という意味があり、「誰にアカウンタビリティがあるのか」を非常に重視しますので、欧米で事業を展開していくのであれば、その点を明らかにする必要があります。CxO制度導入の際には、そのような観点からのアドバイスもさせていただきました。


また、社外取締役はステークホルダーを代表する立場でもありますので、取締役会の場では株主やお客さまといった視点からの発言や質問を投げかけるように心がけています。そのために、株価の動向を随時確認したり、株主・投資家向けのレポートを読んだりしているほか、一般の顧客として三井住友銀行の窓口を訪れたり、スマートフォンアプリを利用したりして、顧客目線も持つようにしています。


指名委員会の委員としては、リーダーを選出するという非常に重要なプロセスに携わらせていただいていると認識しています。そのプロセスが恣意的なものにならないように、他の委員の皆さまとともに一定の評価基準を設定する等、アカウンタブル(説明可能)にするような取組を進めています。私自身としましても、リーダー候補者との面談の際には、先ほど言及したIntegrityとInclusionを評価軸に据えて、SMBC グループを率いるにふさわしい人物を選出できるよう努めています。


門永 私自身は30年以上にわたり、経営コンサルタントの業務に従事してきました。加えて、2012年からは花王株式会社の社外取締役も務めていますが、これらの経験を踏まえると、私として果たすべき役割は3つあると考えています。


1つ目は、経営陣が従業員の置かれている状況を理解した上で進もうとしているのか、また、その進んでいる方向が独りよがりなものになっていないかをチェックすることです。適正性の監督ということになりますが、重要な役割であると思っています。そのために、従業員の本音に触れる機会を大切にしています。


2つ目は、取締役会の議論が短期的な視点に陥ってしまっていないか、また、視野が狭くなっていないかを指摘することです。たとえば、直接的な競合だけを見ているようであれば、他社の事例等も紹介しながら、視野を広げた議論へと誘導していくことも行っています。


3つ目は、ざっくばらんな議論や意見交換を促進するような「触媒」としての役割です。この点については、私が三井住友銀行の社外取締役に就任した3年前と比べると、かなり改善されてきているのではないかと感じていますが、引き続きこの役割を果たしていきたいと思っています。


新保 私は弁護士ですので、法的な側面での新保をある程度期待されていると理解しています。一方で、私自身としては、法的に細かいことを追及することのないようにしてきました。それは顧問弁護士の役割であって、社外取締役の役割ではないからです。一方で、SMBCグループにとって重大なリスクをはらむような問題については、決して妥協することなく、意見をぶつけるべきであると思っています。実は、弁護士はクライアントに寄り添う仕事ではありますが、第三者的な視点を失ってはいけない仕事でもあるのです。その中で培ってきた第三者的な見方を活かして、厳しい意見であってもお伝えすることが、私の果たすべき役割であると思っています。それは報酬委員会の委員としても同じで、既存の報酬制度について、第三者的な視点から違和感があることについては、是正するように提言しています。


また、組織が全体として間違った方向に進み始めた時には、それを止めようと経営陣に働きかけようとする人たちの側に立って経営陣と相対することが、社外取締役に求められる最後の役割であると考えており、それは覚悟しているつもりです。


本日は、大所高所から貴重なご意見をいただき、ありがとうございました。今後とも、忌憚のないご意見を賜りますようお願いいたします。