三井住友フィナンシャルグループ

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様々なリスクが絡む海外業務では、正確な判断のためにいち早い情報収集が欠かせない。

三井住友銀行 国際与信管理部 矢田 麻衣子

国際与信管理部では、銀行の海外業務のリスクを多面的に分析し、与信ポートフォリオの運営方針策定を行っている。国内に比べて多様なリスクが絡む海外業務を管理するため、国際与信管理部では、国・地域別や産業セクター別など、様々な角度からリスク分析を行っている。
矢田はこの部で、地域別のリスク分析を担当した後、実地経験を積むため英国の金融機関へ出向。帰国した現在は、産業セクター別にポートフォリオ管理を行うグループに所属し、資源・エネルギー分野を担当している。銀行が世界各国で融資や投資を行っている資源関係のプロジェクトに内在するリスクを国毎に分析し、今後の運営方針を企画している。エネルギー価格は技術革新や各国の政治情勢等、様々な要因が絡む複雑な指標で、先を読むことが難しい。常にアンテナを高く張り、資源価格に影響を及ぼす可能性のある情報を集め、それをしっかり分析することが欠かせない。
彼女が情報収集力と分析力の大切さを認識したのは、彼女が現在の部に着任してすぐ担当した、金融機関向けの債権処理案件だという。リーマンショックで金融機関の経営が悪化する中、当時、欧州の金融機関のリスク管理を担当していた矢田は、債権の回収業務に携わることになった。その際に学んだのは、いち早く情報を収集し、集めた情報を正確に分析して素早く方針を立てることの重要性だった。
海外業務を拡大する三井住友銀行では、彼女が所属する部署の担う役割がますます大きくなっている。限られた情報から世界経済の動きを予測し、与信方針を策定することはリスクも伴うが、矢田はその緊張感と責任の大きさにやりがいを感じているという。

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業務インタビュー

グローバルな規模で「与信」を管理していく。
現在私が所属している国際与信管理部は、三井住友銀行の国際部門における審査を担当しています。審査の中でも、海外の非日系企業の個別審査は、米州・欧州・アジアの各地域で担当しており、当部は世界の全地域の与信を一元的に管理する役割を担っています。主な業務内容としては、非日系企業の与信方針などについての企画業務、全世界の与信ポートフォリオの把握、カントリーリスクの管理、各国のカントリーリスクと密接な関係がある非日系金融機関の審査などです。私は入社6年目の2008年より当部に在籍し、しばらくは欧州を中心にカントリーリスクの管理を担当していました。カントリーリスクとは、特に新興国で債務者自身の信用力とは別に、その債務者が所在する国の政治面や経済面などの問題によって与信が回収できなくなるリスクのこと。自ら出張し、その国の政府機関や大企業と面談を行い、直接情報を収集することもあります。

リーマンショック後、海外の債権回収に尽力。
今までのキャリアの中で、特に印象に残っているのは、2008年のリーマンショック後に経営が悪化した海外金融機関宛の債権回収と債権売却の案件です。通常、こうした個別案件はそれぞれの地域で担当するのですが、今回はカントリーリスクと密接な関係がある海外金融機関が対象となる案件であったため、当部が担当することに。その時、欧州のカントリーリスクを担当していた私が主担当に任命されました。こうした問題債権を扱うのは、私自身はもちろん、当部署にとっても前例のないこと。債権回収の交渉は難航し、欧州の営業担当者や取引先である金融機関のローカルスタッフたちとも、対応方針について電話会議などで頻繁に議論しました。先方が交渉の席についてくれず、日本政府に働きかけてもらうよう折衝したこともあります。さまざま関係者とコミュニケーションを取り、徐々に処理を進め、約4年かけて2012年に処理を完了しました。

難しい案件を担当し、貴重なキャリアを得た。
この海外の問題債権の処理に携わっていた時は、何度も心が折れそうになりました。しかし、当行の財務の健全化に寄与する任務であり、また100年に1度と言われるリーマンショックの処理を担うのは、そうは経験できないことだと前向きにとらえて努力しました。苦労は多かったものの、行内の各部署、欧州のローカルスタッフ、そして公認会計士や官公庁などの社外の方々とひとつのチームになり、様々な壁を乗り超えて債権処理を完結した時は、本当に大きな達成感がありました。その過程で得た知識、人脈などは、とても大切な財産です。その後、私は2012年6月より1年間、トレーニーとして英国の金融機関に出向し、現地での業務を経験。そして現在は、再び当部にて、産業セクター別の与信方針を決定する業務を担当しています。たとえば資源価格の変動が与信にどう影響するかなど、他部署とも連携しながら調査し、方針を立てています。

世界情勢と密接に関わり、銀行業務の健全化に貢献。
国際与信管理部の仕事の面白さは、世界情勢と密接に関わっていること。そして自分の考えがもとになって 与信に対する銀行の姿勢が決まること。カントリーリスクの管理を担当していた頃は、リーマンショックや、その後の世界的な金融危機、欧州債務問題などで激動の時期でしたが、早め早めに情報を収集し、素早く対策をたてることを意識していました。債務問題が深刻化した南欧のいわゆる「GIIPS」諸国については、日本国内で大々的に報道される前から注目し、経営陣に情報を上げ、与信方針の厳格化などで素早く対応しました。常にアンテナを高くしてあらゆるソースから情報収集し、業務に活かしていくことは楽な作業ではありませんが、当行が業務推進とリスク管理の両方の面から世界情勢の波にうまく乗るための一助となることに、たいへんやりがいを感じています。今後は、この世界各国のリスク管理の経験を踏まえて国際部門の企画業務を担ってみたいと考えています。

私の1日レポート

  • 通勤中は情報収集
    通勤中は、日経新聞を読んで情報収集。特に国際面を中心に読み、スマートフォンで英国のFinancial Timesの記事もチェックしています。

  •  案件の打ち合わせ
    現在抱えている案件について上司に報告。社内でミーティングを行う機会は多く、国際与信管理部内だけでは完結しない案件も多いため、他部とも頻繁に綿密な打ち合わせを行っています。

  • ランチは情報交換の場
    昼食。たいていはオフィス内の食堂を利用しています。同じチームのメンバーだけでなく、部内の他のチームの同僚とテーブルを囲むことも多く、大切な情報交換の時間となっています。

  • 資料の作成に集中
    PCで資料作り。疑問点などがあれば随時上司に相談しつつ進めています。ささいなことでも相談に乗ってくれ、また、若手の意見も上に通る風通しのいい環境です。

  • 欧州拠点とTV会議
    海外拠点のメンバーとTV会議。欧州の拠点は東京の夕方に始業するので、会議はだいたいこの時間になります。海外とのコミュニケーションは日常茶飯事。英語力はこの仕事に必須のスキルです。

  • 帰宅後もニュースをチェック
    退社。日によってはもっと早いこともあります。同僚や友人との予定がなければ、喫茶店やレストランで夕食を取りながら本や雑誌を読んだりします。帰宅後はネットニュースなどをチェックし、常に新たな情報の収集に努めています。

休日の過ごし方

家でのんびりしていることが多いです。もし時間があれば旅行に出かけます。長期の休暇は海外へ。地中海周辺諸国の遺跡が好きで、ロンドンに滞在していた時は欧州・中東・北アフリカの各国を巡りました。なかでも様々な民族に支配された歴史を持ち、現在でもトルコ系・ギリシャ系住民によって南北に分断されている地中海の島国、キプロスは特に印象的でした。また、私は学生時代、合気道をやっていたのですが、社会人になってからは体を動かす機会もめっきり減っており、健康のためにも何かスポーツを始めたいと最近思っています。

私の「チカラ」分析

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  • 体力【5】
    仕事に体力は不可欠。会社を休んだのはこの10年で1回だけです。
  • 情報収集力【4】
    アンテナの高さが問われます。専門家のレポートや海外メディアの記事はまめにチェックします。最近はなかなか行けませんが、外部のセミナーにも参加するようにしています。
  • 楽しむ力【3】
    忙しい時や大変な時も、逆にその状況を楽しんでしまう人が目標です。周囲の「仕事のできる人」の共通点でもあります。
  • やり抜く力【4】
    長期的なスパンでの仕事も少なくなく、さまざまなハードルを乗り越えて根気強くやり通していく力が求められます。
  • 受け入れ力【5】
    国際部門には、さまざまな国や地域出身の職員が働いており、海外とのやり取りも多いです。価値観の違いや多様性を受け容れる力が試されます。

3年後の「なりたい」自分