#2 決済データを顧客分析へ。
SMBCグループが進める
データマーケティング事業の全容

次世代決済プラットフォーム「stera」、データ分析支援サービス「Custella」

2020.12.04

三井住友カード株式会社 アクワイアリング統括部 渡邊威王、データ戦略部 細谷友樹

企業の経営戦略立案や商品・サービスの企画開発において、データの活用がますます重要となるなかで、SMBCグループの三井住友カードがキャッシュレスデータを活用したデータマーケティング事業へ参入しました。
2019年10月、事業者向け次世代決済プラットフォームsteraをリリース。そして、同じく2019年10月から、データ分析支援サービスCustellaが動き始めています。

今回はsteraをリリースしたアクワイアリング統括部 渡邊威王、Custellaの立ち上げにかかわったデータ戦略部 細谷友樹に話を聞きました。それぞれの新事業戦略の立ち上げの経緯から今後の展望まで。さらに、steraとCustellaが連携することで見えてくる未来について、2人の対談でお届けします。

INDEX

  1. 1. stera立ち上げの背景には、営業現場での経験とSquareでの成功体験があった
  2. 2. ずっとマーケティング畑を歩いてきたからこそ、Custellaの需要に気づけた
  3. 3. steraとCustellaの連携がもたらす、その先の未来

stera立ち上げの背景には、営業現場での経験とSquareでの成功体験があった

アクワイアリング統括部 渡邊威王

stera立ち上げまでの経緯について教えてください。

渡邊 : 私は法人カードの営業を経験した後、2011年末にSquare導入のプロジェクトに参画しました。Squareはアメリカの企業が開発した、ポケットサイズのカードリーダーをスマートフォンのイヤフォンジャックに差し込むだけで決済端末になります。

Square以前の端末は価格が非常に高く、端末設定手続きも複雑で中小・零細企業のマーケットにキャッシュレス決済は浸透していませんでした。そこに、Squareが登場し、スマホに差し込むだけという手軽さから短期間で加盟店が増えていったのは感動しました。Squareは当時まだ珍しかったUI(User Interface)を意識して設計されており、この経験を通して、それまでなかったUIやUX(User experience)といった概念を学ぶことができ、steraの立ち上げに繋がったと考えています。

次世代決済プラットフォーム「stera」は、どのようなサービスですか。

渡邊 : steraは、三井住友カードがGMOグループ、Visaと協働して構築した事業者向けの次世代プラットフォームです。キャッシュレス決済のプロセスは、店舗の決済端末やECサイトから送られてくる決済データを処理する「決済センター」、処理されたデータを受け取り決済をする「金融機関・決済事業者」、両者を繋ぐ「ネットワーク」で成り立っています。
steraは、決済センターをGMOグループと、ネットワークをVisaと、それぞれの分野に強みを持つパートナーと協力して構築した決済プラットフォームです。

なかでも端末の「stera terminal」は、金融機関が自前で作ることは業界でもほとんど事例がないと思いますが、当社史上初の取り組みとして、国内メーカーとタッグを組み二人三脚で作り上げた決済端末です。

次世代決済プラットフォームsteraとは?

次世代決済プラットフォームsteraとは? ピンチで拡大

三井住友カードがGMOグループとVisaと協働で構築した事業者向けのプラットフォームです。店舗での決済や各種ECサイトの決済データ処理を行う「センター機能」、決済データを決済事業者に届ける「ネットワーク機能」まで、一気通貫で提供しています。今後、リアル店舗の事業者に向けて、さまざまな機能を持つオールインワン決済端末「stera terminal」を推進していきます。

stera 4つのコンセプト

  1. 1.ワンストップ対応
    リアル店舗とECの連携を実現し、オールインワン端末を導入
  2. 2.オムニチャンネル
    リアル店舗とECの決済データを1つのダッシュボードで閲覧・ダウンロード
  3. 3.グローバルレベルのネットワーク
    Visaのグローバルネットワークを活用し、毎秒65千件超の決済処理のパフォーマンス
  4. 4.新たなサービスの提供
    決済に関連したアプリをダウンロードできる「stera market」を提供

構想を実現するきっかけは?

渡邊 : もともとコスト面や機能面をアップしたいなど、さまざまな理由から、自社決済ネットワーク構築の可能性を何年も模索していましたが、特にここ2~3年は経済産業省が主導するキャッシュレス化の取り組みなどによって急激に環境が変化し、決済ネットワークの刷新が待ったなしとなっている状況でした。

決済ネットワークは通常加盟店さまの目には見えない部分なので、steraと聞くと端末の印象が強いと思いますが、steraはネットワークから端末までを含めた全体の総称です。
名前の由来はsteer-eraで、そこには「新しい時代に舵を切っていく」という意味が込められています。

steraの登場で、三井住友カードのサービスと加盟店さまの店舗経営が変わっていく

実際に使うお客さま(以下「お客さま」)や加盟店さまにとってのメリットは何だと考えていますか?

渡邊 : 「stera terminal」は、クレジットカード、デビットカード、電子マネー、コード決済とほぼすべての決済手段にこれ1台で対応できるのでさまざまな端末でレジまわりが煩雑になるという加盟店さまのお悩みも解消でき、スペースに余裕が生まれます。オールインワン型を採用したことで、かなりの省スペース化を実現できています。

また、お客さま側と加盟店さま側のそれぞれに画面があり、画面自体が大きいのも特徴です。タッチスクリーンにしたことで不要なボタンがなくなり、操作ミスを軽減できます。また画面の遷移数を減らしているので、より操作が簡単に。お客さま自身がカードをかざして決済する非接触スタイルなので今のコロナ禍の時代でも安心です。

以前の端末を使っていた加盟店さまからは、「ガラケーからスマホに変わった」印象だと。まずは感触が良かったので、ほっとしました。決済もワンストップで簡単になり、設定によりお客さま側の画面で外国語のガイダンスが流せたり、インバウンド向け決済にも対応したりと、多彩なアプリが使えてカスタマイズできる。これからの加盟店さまの店舗経営は確実に変わっていくと思います。

ずっとマーケティング畑を歩いてきたからこそ、Custellaの需要に気づけた

データ戦略部 細谷友樹

Custella立ち上げの経緯について教えてください。

細谷 : 入社当初は渡邊と同じ法人営業で、そのあとファイナンス事業部へ。商品マーケティングのミッションを担い、それまで実施していなかったA4サイズの大きなDMを作ったり、マスコットキャラクターを使った販促をしたり。マーケティングのいろはを学んでいきました。

2011年くらいに、ネットが伸びてくると、インターネットをビジネスに生かせないかと考え始めました。当社商品・サービス認知のためのWeb広告を打つなど、自分が主担当として、さまざまな施策を行いました。その後、広告だけでなく、ネットを活用したビジネスを行いたいと思い、ネットビジネス事業部に異動しました。

Vpassアプリの企画・立ち上げを経験した後、インバウンドの波がきて、訪日外国人に向けて何ができるか、というのがミッションに。できることを模索していたなかで、今度はデータマーケティングの需要に気づいたのです。

Custella立ち上げのきっかけになった気づきとは?

細谷 : ある県の観光課の方とお話しする機会があったのですが、ちょうどWi-Fiの整備をしているところで、Wi-Fiで外国人顧客の移動経路は把握できるけれど、どこでいくらお金を使っているのかは、分からないと。観光政策を決めるときに「消費行動が分かることの価値は大きいです」と言われたのです。

早速、大手通信会社と組んで、Wi-Fiがある場所と当社のキャッシュレスデータをエリア上で重ねて視覚化して、その方にレビューしたら、ものすごく評価していただきました。この体験がうれしかったのです。データにはニーズがある、「ビジネスになる」と感じたのがCustella立ち上げのきっかけですね。

Custellaの価値はキャッシュレスデータそのものと精度の高いターゲティング

Custellaは、どのようなサービスで強みは何ですか?

細谷 : 三井住友カードが保有するクレジットカード決済などによるキャッシュレスデータをもとに、個人や加盟店が特定できないように統計化された顧客属性や購買実績データを多彩な切り口で集計して、見える化するデータ分析サービスです。

Custellaというネーミングは、取引先企業さまの「顧客」を中心としたデータ分析支援サービスを提供したいという想いから「Customer Intelligence」という理念をもとに名付けられました。「カスタマーを照らす」という意味も込められています。

強みはデータを生かした精度の高いターゲティングですね。SMBCグループが抱える取引先企業さまの課題、ニーズに合わせて、フルカスタマイズできます。キャッシュレスデータに天候などの外部データを組み合わせ、AIなどのテクノロジーを駆使して、戦略から効果検証までを考察して、レポートとして提供します。また、毎月固定の分析切り口でデータを継続的に確認できるWebツールも提供しています。

競合は、さまざまな顧客データを保有しているマーケティング企業などです。決済・POSデータを取り扱う企業の多くが1,000万以上のデータを保有していますが、当社のようなキャッシュレスデータを保有している競合他社は少ないので、そこが独自性かなと思います。

Custellaを作り上げていったプロセスは?

細谷 : 当初は自治体向けでしたが、加盟店さまにも同じサービスを提供できるという仮説を立て、データをAIでさらにレベルアップさせようという発想からCustellaの構想が始まって。はじめは私を含め2、3人で構想していた事業ですが、今や正式な「部」という組織で数十人の従業員で取り組む事業に成長しました。

当社の資産であるデータをベースに、加盟店さまに対して、AIやBIツールを使って、どう活用していただくのか。社内メンバーとも議論を重ね、たくさん試作を作って、「蓄積したデータを使ってどのような価値を提供すれば良いか」と当社の営業担当者の生の声を聞きながら、みんなで作り上げていきました。

  • ※ BIツール:Business Intelligence Tool。日々蓄積されていく膨大なデータを一目で分かるように分析できるツールのこと。

今後の目標や事業展開について、教えてください。

細谷 : 今の資産であるファーストパーティデータ(自社で集めたデータ)をいかに磨いていくかが、当面の目標です。加盟店さまに価値を提供するには、どの軸で切るのか。AI、BIツールを駆使して、どういう集計をしていくのか。

2019年10月に立ち上げて、そこから約1年。何で勝負できるのか、未知な段階からスタートしているので、取引先企業さまから1つ1つニーズを聞きながらこういう切り口がある、こういうニーズがあるよ、と毎日が気づきの連続です。ソフトウェアサービスなのでいかようにも修正でき、どんどんアップデートしていっています。

データ分析支援サービスCustellaとは?

データ分析支援サービスCustellaとは? ピンチで拡大

三井住友カードが提供するキャッシュレスデータ分析支援サービスです。三井住友カードのsteraと連携し、Custellaを導入いただいた取引先企業さまとそのお客さまとのさらなるエンゲージメントの醸成、お客さまとの新たな接点構築に貢献していきます。

Custellaが提供する3つのサービス

  1. 1.カステラ インサイト
    マーケティングに活用できるさまざまな視点(性年代・年収・居住地・店舗・国籍など)から自社顧客の購買行動や業界動向を可視化するWebツールを提供します。
  2. 2.カステラ アナリティクス
    取引先企業さまの課題に合わせてフルカスタマイズで分析設計を行い、当社のビジネスプランナーやデータアナリストが調査分析から販売戦略のご提案まで行うサービスです。考察レポートやAI分析による精度の高い送客サービスを提供します。
  3. 3.カステラ プロモーション
    カステラ インサイト、カステラ アナリティクスにおける分析結果をもとに、取引先企業さまのプロモーションをサポートします。

steraとCustellaの連携がもたらす、その先の未来

steraとCustellaから、どのような可能性が生まれますか?

細谷 : 三井住友カードは加盟店さまとのお取り引きが根幹となるビジネスの一つです。強みであるその領域にも脅威があり、それを打ち破る基幹戦略がsteraなので、まずはそこを広げていきたい。広げることで、Custellaのデータも増えていきます。この事業の入り口はsteraで、当社の強み。これでまずマーケットを広げていき、データを増やしていく。

渡邊 : 決済が本業ですが、それだけで社会の役に立てているのか、当社の付加価値はどこにあるのかという根源的な問いが常にあります。決済環境を整えるだけでなく、消費体験をより豊かにしていく、というテーマは全社員が追求すべきテーマでないかと思います。決済データの活用は、社会の役に立つこと、当社の付加価値に結びついていくと期待しています。

強みを伸ばしている部署がいくつかあり、それぞれが繋がっているところが、三井住友カードの強みになっていると。

細谷 : 私からすると、渡邊さんは全く違うことをやっているけれど、steraみたいな強みがあることが、すごくうれしい。4〜5年前くらいに大きな波があって。業界的にもこの先、大丈夫かなという時期がありましたよね。

渡邊 : Fintechとかキャッシュレスとか、何らかの変化には、ここ10年くらいさらされていますね。

細谷 : ここ1〜2年で、みんな改めて自分たちの強みに気づき始めたと感じています。例えば、自前でネットワークを構築することは長年の課題で、渡邊さんはよくやったなと思っています。

渡邊 : 本当に居酒屋で話していたことがよく実現できたな、と(笑)。

細谷 : データ分析サービスなども、1つの部署の1つのグループでやっていたことがSMBCグループの重点施策になった。そこを判断して、やらせてもらえる環境があるというのはけっこう強み。若手にもチャレンジするチャンスがある企業だということを感じてほしいと思います。

SMBCグループにおける、stera、Custellaの今後の展望は?

細谷 : Custellaは、ファーストパーティデータ(自社で集めたデータ)を活用できるという意味で、SMBCグループが中期経営計画で掲げる「情報産業化」の中核を担っていると思っています。さまざまなデータがあるなかで、キャッシュレスの購買行動データは大きな強み。これを中核にすれば、グループ各社のお客さまに付加価値を提供できます。そこから先も単体ではなくて、グループベースで考えて、いろいろチャレンジしていけると思っています。

渡邊 : stera には、「stera market」という、当社が主催するマーケットプレイスがあります。(他社が開発したPOSレジのアプリや、免税処理のアプリもこのマーケットプレイスから加盟店さまに販売)今後、このマーケットプレイスを通じて、SMBCグループ各社のプロダクトも販売し、グループの力を最大限引き出せるような取り組みを加速させていきたいと考えています。

  • ※ 2020年11月取材時の情報です。今後、内容が変更されることもありますのでご留意ください。