「グリーンファイナンス 」

「みどりの銀行」としてのプライド。金融サービスで、持続可能な社会を創る

2021.07.05

株式会社
三井住友銀行
ホールセール統括部
サステナブルビジネス推進室
清水倫
株式会社
三井住友銀行
ホールセール統括部
サステナブルビジネス推進室
南嶋美沙子
株式会社
三井住友銀行
新宿西口法人営業第二部 加藤陽介
株式会社
日本総合研究所
創発戦略センター 新美陽大
株式会社
エノモト
経営管理グループ
企画管理部長
武井勉

環境問題や社会課題に対して企業としてどのように向き合っていくのか、といったことが近年話題になっています。

SMBCグループでは「お客さまとともに、人と地球の未来を創る」をコンセプトに、2020年「SMBCグループ サステナビリティ宣言」を公表して2030年までの計画として「SMBC Group GREEN×GLOBE 2030」を策定。さらに、2021年5月には気候変動問題への対策を強化するため、具体的な行動計画を発表しました。グループ全体で「グリーンファイナンス」や「ソーシャルファイナンス」、それらの特性を併せ持った「サステナブルファイナンス」に注力しています。

今回はそのなかでも「グリーンファイナンス」をテーマにホールセール統括部サステナブルビジネス推進室から清水倫と南嶋美沙子、営業として法人のお客さまのビジネスを支援する新宿西口法人営業第二部の加藤陽介、実際に三井住友銀行の「SDGsグリーンローン」を活用した株式会社エノモトの武井勉氏、その外部評価を担当した日本総合研究所から新美陽大を迎え、取組の概要とこれからの展望を語ってもらいました。

INDEX

  1. 1. 気候変動は待ったなし。高まるグリーンファイナンスの重要性
  2. 2. 環境改善効果のあるプロジェクトに資金を提供し、サステナブルな社会の構築を推進
  3. 3. 使途をグリーンに絞ることで預金に意義を持たせる。「グリーン預金」の開発に込めた想い
  4. 4. 「SMBC Group GREEN×GLOBE 2030」の実現に向けて。グループが一体となって、グリーンファイナンスを推進

気候変動は待ったなし。高まるグリーンファイナンスの重要性

株式会社三井住友銀行
 ホールセール統括部サステナブルビジネス推進室 清水倫

グリーンファイナンスのニーズが高まっている社会的な背景を教えてください。

三井住友銀行_清水 : サステナブルな社会、SDGsなどのキーワードとともに、環境問題への社会的関心がかつてないほど高まってきています。これまで金融機関ではリスクとリターンという2軸が資金提供における主な判断基準でした。

しかし、環境問題などが深刻化するにつれ、その2軸だけではこれからの社会に金融機関として貢献できないことが明らかになり、3軸目として社会や環境の課題を解決する効果を生んでいるかという「インパクト」が重要視されるようになってきました。提供した資金が「世のため、人のため、地球のため」になるのか。そういう価値観を大切にする時代が到来したということです。

日本総研_新美 : 近年サステナブルに関する問題意識が高まっていますが、2020年は特にグリーンの分野で、潮目が変わったと感じた年でした。象徴的な言葉のひとつが「カーボンニュートラル(脱炭素)」※1。今起きている地球温暖化、気候変動の影響を抑え、将来にわたって同じ場所で同じ質の生活を送れるようにする、というのがその本質だと理解しています。

  • ※1 カーボンニュートラル(脱炭素):ライフサイクルにおいてカーボン(二酸化炭素)の排出量をゼロにするために、排出量をできるだけ抑えながら、排出したものと同じ量を吸収または除去することでニュートラル(中立)化すること。

株式会社三井住友銀行 新宿西口法人営業第二部 加藤陽介

三井住友銀行_加藤 : 私は営業なので、さまざまな企業さまとお取引があるのですが、やはり2020年の秋くらいから業種、規模を問わず、さまざまな企業さまが「自分の会社で社会に対して何ができるのだろう」と考える機運が高まっています。ただ言葉だけが先行する傾向があるので、実際に取組を推進していくことが大事。そのなかで企業さまへの情報提供やソリューションを提案するのが我々の役割だと感じています。

環境改善効果のあるプロジェクトに資金を提供し、サステナブルな社会の構築を推進

株式会社日本総合研究所 創発戦略センター 新美陽大

グリーンファイナンスの仕組みを教えてください。

三井住友銀行_清水 : 環境・社会課題の解決を通じて地球と人類の持続可能性を実現するサステナブルファイナンスのなかでも、グリーンファイナンスは地球環境の維持や改善に貢献するプロジェクトに特化して資金提供を行います。

ただ我々が「グリーン」と認識するだけではなく、ポイントになるのは国際基準やガイドライン。第三者から見ても「グリーン」だという説明が必要で、それにより信頼性が高まる仕組みです。

日本総研_新美 : 我々日本総研はSMBCグループの一員でもありますが、グリーンファイナンスにおいては独立した外部評価機関として、融資される資金の使途を客観的にレビューするという立場で参画します。

国際的な原則類に基づき、環境課題の改善に本当に効果があるのか、また一面で見ると良い影響を与えるけれど、別の視点で見たときに環境や社会への負荷が過大ではないか、などの視点から資金使途やインパクトを客観的に評価し、取りまとめたレポートを「セカンドパーティー・オピニオン」と呼んでいます。

三井住友銀行_清水 : 銀行としては、お客さまである企業が行おうとしている事業に「グリーン」というラベルをつけて応援するというイメージです。

SDGsグリーンローンとは?

サステナブルなプロジェクトや取組に注力している企業に資金提供するサステナブルファイナンス。そのなかでも、環境課題の解決に資するプロジェクトに特定して資金提供を行うのがグリーンファイナンスです。

三井住友銀行の「SDGsグリーンローン」は、融資(ローン)により資金提供を行うグリーンファイナンスです。対象となるプロジェクトについて、「グリーンローン原則※1」等に基づき、所定のファイナンス要件※2を充足していること、あるいはSDGsとの関連性について確認するとともに、お客さまと連携しながら外部評価機関から評価を取得しています。

  • ※1 グリーンローンに係る国際的な原則。Loan Market Association及びAsia Pacific Loan Market Associationが公表しています。
  • ※2 以下の要件を定めています。
    • (1) 以下4つの核となる要素に適合していること。
      ①調達資金の使途
      ②プロジェクトの評価と選定のプロセス
      ③調達資金の管理
      ④レポーティング
    • (2) 外部評価機関から評価を取得していること。

グリーン預金とは?

お客さまからお預かりする資金をESGのうち環境(Environment)分野、特に再生可能エネルギー分野向けファイナンスに充当することで、お客さまにESG/SDGs分野での取組機会をご提供させていただく預金です。

グリーン預金でお預かりした資金は、第三者評価機関の支援を得て策定した「SMBCグリーン預金フレームワーク」に基づき、再生可能エネルギーや省エネルギー事業等の環境に配慮したプロジェクトに充当します。

グリーンファイナンス ピンチで拡大

三井住友銀行の「SDGsグリーンローン」を活用された、エノモトさまのプロジェクトについて教えてください。

エノモト_武井 : 当社はリードフレームやコネクタ用部品などの精密部品の製造販売を行っている山梨県にある企業です。今回、グリーンローンを申請したのは、新規事業の一環として産官学が一体となって環境に配慮した水素燃料電池の研究開発における事業になります。

水素燃料電池の普及には低コスト化が必須です。その主要部品となる「ガス拡散層一体型セパレータ」の研究・開発及び製造ライン確立の費用を、2019年に「SDGsグリーンローン」で調達しました。

三井住友銀行_加藤 : 2019年2月に開催された「水素・燃料電池展」において、エノモトさまが産学連携でブースを出展されていたのを見かけて声をかけさせていただいたのが、エノモトさまとの本プロジェクトのきっかけです。

こういった事業こそが「グリーンファイナンスにふさわしい」とご提案させていただき、資金調達が決まったときは「エノモトさまや社会に寄り添うお手伝いができた」とうれしく思いました。

エノモトさまのプロジェクトにおける評価のポイントを教えてください。

日本総研_新美 : エノモトさまのプロジェクトでは、日本総研が外部評価機関として「セカンドパーティー・オピニオン」の発行を担当しました。エノモトさまの「ガス拡散層一体型セパレータ」は、軽量化と性能向上を同時に実現することで、水素燃料電池の普及に大きく貢献しうる製品であり、今後カーボンニュートラルの実現に向け大きな意義を持つプロジェクトだと思いました。

評価のポイントは「ガス拡散層一体型セパレータ」の研究開発により、水素燃料電池を通じて環境課題にどのようなインパクトを与えるのか。これを丁寧にレビューすることでした。水素関連のグリーンファイナンスは本邦初の取組だったので、評価手法を一から検討するなど前例がないことによる苦労もありましたが、プロジェクトの本質を捉え、公正かつ分かりやすく評価することに注力しました。

株式会社エノモト 経営管理グループ 企画管理部長 武井勉

グリーンファイナンス活用後の社内外の声と今後の展望をお聞かせください。

エノモト_武井 : グリーンローンの申請は加藤さんの熱意から始まっているのですが、「あのとき決断して良かった」としみじみ感じています。社内でも、グリーンローンを調達したことが評価されており、我々のプロジェクトを世の中に理解していただく際にもぜひ活用できればと考えています。

今後は、本プロジェクトの成果を水素燃料電池の発電効率改善につなげることで、再生可能エネルギーを最大限活用できる究極のインフラとして水素の普及を拡げ、新たな社会を動かしていくのが目標です。

使途をグリーンに絞ることで預金に意義を持たせる。「グリーン預金」の開発に込めた想い

2021年4月から取り扱いを開始した日本初※2の「グリーン預金」のコンセプトを教えてください。

  • ※2 預金を再生可能エネルギー等の「グリーン適格プロジェクト」に対する融資に充当し、運用状況について第三者機関より定期的に取得するスキーム。

三井住友銀行_南嶋 : グリーンファイナンスの原資の一部となるのが「グリーン預金」です。そのコンセプトは「お金に意義を持たせる」こと。国内外の金融機関や法人のお客さまからお預かりした預金を再生可能エネルギーや省エネ事業などの環境に配慮したプロジェクトに充当します。

企業にとって、サステナビリティへの意識が高いということはステークホルダーへのアピールになりますし、バランスシートにも意義を持たせることで企業価値の向上に繋がっていけば良いなと、そんな想いで開発しました。

使途となるグリーンプロジェクトの定義も厳しく決められています。三井住友銀行が作成し、オランダの第三者評価機関より認証を取得した「SMBCグリーン預金フレームワーク」に基づき、お預かりした預金を運用し、当行の運用状況は定期的に評価機関の評価を受けます。

株式会社三井住友銀行 ホールセール統括部
サステナブルビジネス推進室 南嶋美沙子

リリース後の反応やお客さまの声を教えてください。また今後、グリーン預金が浸透していくことで期待していることはありますか?

三井住友銀行_南嶋 : 2021年3月上旬に最初のプレスリリースを出した直後から、数日で100件以上のお問い合わせをいただき、改めて世の中のサステナビリティへの関心の高さを実感しました。これまでは預金を銀行がどのように運用しているかというところまで意識する機会は少なかったように思いますが、これからは預金の使い道にまで人々の関心が高まっていく時代が来ると感じています。

お客さまのサステナビリティ推進に貢献でき、必要な技術・プロジェクトに資金が回っていくことは銀行員としても非常にうれしいことです。お金の使い道を考え、商品を選択して、銀行を選ぶ。そんな時代になればいいなと期待しています。

「SMBC Group GREEN×GLOBE 2030」の実現に向けて。グループが一体となって、グリーンファイナンスを推進

SMBCグループのサステナビリティな取組「SMBC Group GREEN×GLOBE 2030」について教えてください。

三井住友銀行_清水 : 三井住友銀行では従来からサステナビリティに取り組んできましたが、改めてSMBCグループとしてサステナビリティに積極的に取り組む意思表示として2020年に「サステナビリティ宣言」を掲げ、同時に「SMBC Group GREEN×GLOBE 2030」を策定しました。これはサステナビリティ経営にかかわるKPIで、10年スパンで取り組んでいく目標設定です。さらに、今年5月には気候変動問題への対策を強化するため、具体的な行動目標を策定しました。

このなかで、2020年度から2029年度までのグリーンファイナンス及びサステナビリティに資するファイナンスにおいて実行額30兆円を目指しています。うちグリーンファイナンスの目標額は20兆円です。実際に2020年の「グリーンローン」の取組額は三井住友銀行がアジア全域でトップとなっており、すでに一定の実績を残しています※3

  • ※3 出所:Dealogic社(2020年)

サステナビリティの取組というのは、知識だけが先行しがちなケースがよくあります。経営・企画層だけでなく、営業の現場に落とし込んで、1人ひとりの従業員が語れることが重要だと思っています。それをKPIに反映しているのが、SMBCグループのこだわりです。また、全従業員がお客さまとサステナビリティについて対話ができることを目指して、実際にSDGsへの理解度やお客さまと対話できているかどうかを測るアンケートを毎年実施しています。

「SMBC Group GREEN×GLOBE 2030」の目標に向けて、SMBCグループの今後の展望は?

日本総研_新美 : サステナビリティは限られた世界の話ではなく、我々一人ひとりの行動に深く関係しています。2030年、またその先もあらゆる人たちが、より快適な暮らしを送ることができる社会とするために、SMBCグループの持つ多様な強みが、一層求められるものと確信しています。

三井住友銀行_清水 : SMBCグループが一丸となって、「SMBC Group GREEN×GLOBE 2030」への取組を進めています。中でも当行は、「みどりの銀行」として、お客さまの環境や社会への取組を、グリーンファイナンスやサステナブルファイナンスを通して後押ししたいと思っています。これからもグループ全体が有機的に連携して、ファイナンスの力でより良い社会や地球の未来を創るプロジェクトを応援していきます。

  • ※ 2021年6月取材時の情報です。今後、内容が変更されることもありますのでご留意ください。