#10 国内外の連携でアセットマネジメントビジネスを強化。資産運用の裾野拡大を通じた市場の成長により、豊かな社会を目指す

「アセットマネジメントビジネス」

2021.10.25

<前編>国内編

株式会社三井住友フィナンシャルグループ企画部 アセットマネジメント事業室 副室長 吉田三郎

株式会社三井住友フィナンシャルグループ企画部 アセットマネジメント事業室 室長代理 宮岡慧

三井住友DSアセットマネジメント株式会社 経営企画部 企画チーム兼事業開発室 マネージャー 大住あかね

<後編>海外編

株式会社三井住友フィナンシャルグループ企画部 アセットマネジメント事業室 副室長 吉田三郎

株式会社三井住友フィナンシャルグループ企画部 アセットマネジメント事業室 上席推進役 佐藤昭宏

TTインターナショナル CIO Niall Paul

アセットマネジメント(資産運用)に対する世の中のニーズが高まるなか、SMBCグループも運用力やサービスの強化、資産運用に関する可能性を広げるためにアセットマネジメントビジネスに注力しています。2019年には、三井住友アセットマネジメントと大和住銀投信投資顧問が経営統合し、三井住友DSアセットマネジメントが誕生。2020年には、イギリスを本拠地とする運用会社TTインターナショナルを買収しました。そして2021年、販売会社と運用会社を繋ぐセクションとして、三井住友フィナンシャルグループにアセットマネジメント事業室を立ち上げました。

本記事の前編ではSMBCグループの国内でのアセットマネジメントビジネスの取組について、三井住友フィナンシャルグループの吉田三郎、宮岡慧、三井住友DSアセットマネジメントの大住あかねの鼎談をお届けします。さらに後編では、TTインターナショナルの Niall Paul、アセットマネジメント事業室吉田三郎、佐藤昭宏に海外連携による期待や今後の展開について語ってもらいました。

INDEX

<前編>

  1. 1. 日本の資産運用の実態は? 変わりつつある投資への意識
  2. 2. グループの価値を最大限に引き出し、お客さまへ還元。その先に見える社会とは

<後編>

  1. 3. 海外の運用会社との連携で、アセットマネジメントビジネスの視野を拡げる
  2. 4. アセットマネジメントビジネスの強化で投資市場を拡大。日本を本当の意味での豊かな国へ
<前編>

日本の資産運用の実態は?
変わりつつある投資への意識

まずアセットマネジメントとは、どのようなビジネスなのか教えてください。

三井住友フィナンシャルグループ_宮岡 : 資産運用を行う投資家に代わって、アセットマネジメント会社と呼ばれる運用会社がプロフェッショナルとして資産の管理・運用を行うビジネスです。投資家は販売会社(銀行、証券会社など)を通して投資信託(ファンド)を購入し、その資金は信託銀行の口座に保管・管理され、運用会社がその投資信託の運用方針を決定し、投資対象とする企業の株式や債券などに関する投資判断を行います。投資したい人と成長が見込まれる企業を繋いでいくのが運用会社の役割です。

アセットマネジメントの全体図

アセットマネジメントの全体図 ピンチで拡大

  1. 販売会社:銀行や証券会社など、投資信託の販売に関する業務などを行い、お客さまの窓口となります。
  2. アセットマネジメント事業室:SMBCグループ傘下の販売会社と運用会社の調整役となり、お客さまのニーズのためにグループ一体となって、運用サービスを提供する体制を推進する役割を担っています。
  3. 運用会社:投資信託の開発・運用を行う会社のことで、国内では委託会社、海外ではアセットマネジメント会社、などとも呼ばれます。

三井住友DSアセットマネジメント_大住 : 当社のビジネスを一言でいえば、お客さまの資産運用を代行するビジネスです。リスクを分散しつつ最適なポートフォリオ※1を組んで運用し、お客さまに最高の運用パフォーマンス※2を提供します。最近では、アナリスト※3が投資先企業に経営課題への取組やガバナンスの改善を促すための深い対話(エンゲージメント)を行い、企業価値向上に積極的にかかわっていく活動にも力を入れています。投資先の企業価値が上がれば、お客さまにリターンが生まれますし、その企業が成長して環境問題・社会課題の解決に貢献することで社会全体がよくなるという取組です。

  • ※1 ポートフォリオ:投資する銘柄や商品の組み合わせ。
  • ※2 パフォーマンス:運用するファンドの成績(運用成果)や過去の価格の動き。
  • ※3 アナリスト:国や企業の動向を分析する専門家。投資の分野では株式、債券、投資信託など金融商品や業種に特化したアナリストがいる。

日本の資産運用の市場はどのような状況なのでしょうか。

三井住友フィナンシャルグループ_吉田 : 日本の資産運用はアメリカやヨーロッパに比べると遅れていると言われています。銀行の窓口で投資信託の販売が解禁されて約20数年経ちますが、個人が保有する金融資産に占める運用商品の割合は当時とあまり変わっていません。もちろん裾野は広がっていますが、例えば家計における投資信託の比率は4〜5%とほぼ同じです。その一方で、老後資金2,000万円問題やコロナ禍での個人への給付金などを背景に、資産運用への意欲は拡大しています。特に若者を中心に投資への興味が高まってきていますので、今後の市場拡大に期待しています。

近年の資産運用ニーズの傾向はありますか?

三井住友DSアセットマネジメント_大住 : 最近ではSDGsという言葉も頻繁に聞くようになり、サステナブル投資も注目されています。ネガティブインパクト※4の抑制に重きを置いたESG投資※5の観点に加えて、より長期的な視点で事業を通して積極的に環境問題・社会課題の解決に取り組む企業に投資するものです。例えば、CO2削減やプラスチック対策の取り組みを積極的に行っている企業などです。
実際に投資家の間でも「環境への配慮がきちんとなされている企業に投資することは世の中全体をよくする活動である」という意識が生まれてきています。

  • ※4 ネガティブインパクト:気候変動に悪影響を与える企業を投資対象外とすること。
  • ※5 ESG投資:従来の財務情報だけでなく環境(Environment)・社会(Social)・ガバナンス(Governance)に配慮している企業を重視・選別して行う投資。

グループの価値を最大限に引き出し、お客さまへ還元。
その先に見える社会とは

三井住友DSアセットマネジメント株式会社 経営企画部
 企画チーム兼事業開発室 マネージャー 大住あかね

三井住友DSアセットマネジメントの強みとミッションは?

三井住友DSアセットマネジメント_大住 : 当社の強みは、日本を含むアジアを中心とするアクティブ運用のケイパビリティ(運用戦略)です。企業リサーチに関しては、国内トップレベルの充実した体制を擁し、ESG評価や四半期での精密な業績予想などで高い評価を得ており、中小型株やバリュー株運用やREITなどさまざまなプロダクトで、アワードを受賞しています。最近では、外国株式・債券のアクティブ運用も強化しており、お客さまの多様な資産運用ニーズに応えられるように運用部門が一丸となっております。

私たちは、「Quality of Lifeに貢献する最高の資産運用会社へ」を経営理念に掲げ、お客さまのQuality of Life向上とサステナブルな社会の実現に貢献することを目指しています。先ほどお話した通り、お客さまに最高品質の運用パフォーマンスを提供することに加えて、サステナブル投資や金融教育を通して、多様性に富み、活力あふれる社会の実現に尽くしています。また、一企業として、当社自身もダイバーシティ推進や社会貢献活動に取り組み、すべてのステークホルダーを尊重し、ともに成長すること、そのためにも社員1人ひとりが能力を最大限発揮し、自分らしく生き生きと働けるよう環境づくりに努めています。

SMBCグループがアセットマネジメント事業室を立ち上げた背景は?

三井住友フィナンシャルグループ_吉田 : 私たちアセットマネジメント事業室はSMBCグループにおいて商品の開発・運用を行う三井住友DSアセットマネジメントなどの運用会社と投資信託を販売する銀行や証券会社とを繋ぐセクションとして発足しました。

三井住友フィナンシャルグループ_宮岡 : 今まで、同じSMBCグループといっても運用会社と販売会社の間では、それぞれの役割が分離されていることからも、直接会話する機会が少ないのが実情でした。しかし、お客さまの声を直接聞いている販売会社と、投資先の企業と向き合っている運用会社がつながることは大いに意義があります。三井住友銀行、SMBC日興証券、SMBC信託銀行という、SMBCグループ傘下の販売会社からお客さまの声や投資家ニーズを吸い上げて、その結果を三井住友DSアセットマネジメントに届けることで、より良い商品づくりに活かしていけると思います。私たちが間を取り持つことで、SMBCグループならではのサービスや価値をお客さまにお届けする、それこそが当事業室の目指す形です。

アセットマネジメント事業室の役割とメンバーを紹介してください。

三井住友フィナンシャルグループ_吉田 : アセットマネジメント事業室はSMBC日興証券出身者や三井住友DSアセットマネジメント出身者、また三井住友銀行の社員といった形で多様性に富んだメンバーで構成されています。それぞれの経験や知見をもとに、事業としても良いシナジーを生み出していきたいですね。

株式会社三井住友フィナンシャルグループ企画部
 アセットマネジメント事業室 室長代理 宮岡慧

アセットマネジメント事業室が三井住友DSアセットマネジメントに期待することは?

三井住友フィナンシャルグループ_宮岡 : 実際にお客さまの資金を運用するのは、三井住友DSアセットマネジメントなので、受託者責任※6を全うする運用会社としてのプロフェッショナルな振る舞いに期待し、その独立性を尊重しています。一方で、お客さまにきちんとリターンを提供できる態勢が維持できているのか、我々も注視していく。「皆さまに選ばれる会社になるには、どうすれば良いのか」を互いに議論しながら、SMBCグループとして価値を高めていければと考えます。

  • ※6 受託者責任:フィデューシャリー・デューティー(Fiduciary duty)の和訳。他者の信認に応えるべく一定の任務を遂行する者が負うべき幅広いさまざまな役割・責任の総称として用いられる。顧客本位の業務運営の推進を指す。

アセットマネジメントビジネスの今後の展開と目標は?

三井住友DSアセットマネジメント_大住 : iDeCoやNISAなどの制度の活用により個人投資家の裾野が拡大しています。投資対象としては、国内のみならず海外資産への投資が増えています。また、年金などのお客さまでは、今後、低流動性資産※7への投資拡大が予想されています。株や債券という伝統的な枠を超えて、さらに知見を広げていく必要があります。お客さまに新たな投資機会を提供するためにも、新しく魅力的な商品を開発していくことが当社の役割です。

また、私自身も資産運用の必要性を実感していますので、投資のニーズやメリットをお客さまに知ってもらいたいですね。日本では投資に対してリスクが高いというイメージを持っている方がまだまだ多いように感じます。そのため当社自身も投資の必要性を語っていき、今後も「なぜ投資が必要か」を理解していただけるように努めていきたいです。

  • ※7 低流動性資産:不動産や非上場株式、実物資産などの流動性の低い資産を指す。

三井住友フィナンシャルグループ_宮岡 : 2019年に三井住友DSアセットマネジメントが生まれ、国内では一定の規模を誇る運用会社となりました。今後、より高いポジションを目指すためには、アセットマネジメント事業をグローバルに取り組むことも重要です。運用会社のネットワークを強化しながら、投資家が求める投資対象を拡大していくことが必要だと考えています。

<後編>

海外の運用会社との連携で、
アセットマネジメントビジネスの視野を拡げる

TTインターナショナルの強みを教えてください。

TTインターナショナル_Niall : TTインターナショナルは80年代に創業し、運用資産残高は約84億米ドルで、英国のロンドンと香港に運用の拠点を持っています。中国をはじめとする新興国の株式運用に強く、欧米・アジア各地域の年金投資家層を幅広くカバーしています。さらに当社の強みとしては、マクロ経済※8に重点を置いた分析により市場を読み、運用に活かしているところです。私は現在、海外および新興国株式運用チームのトップを務めており、新興国市場で投資を始めて25年になります。

  • ※8 マクロ経済:政府、企業、家計を一括りにした経済全体の動き。
株式会社三井住友フィナンシャルグループ企画部
 アセットマネジメント事業室 上席推進役 佐藤昭宏

SMBCグループから見たTTインターナショナルの魅力とは?

三井住友フィナンシャルグループ_佐藤 : 先程Niallさんがおっしゃった点に加えて、TTインターナショナルの運用のプロセスが他と比べてユニークなところですね。TTインターナショナルの運用においては、アナリストは特定の業種にこだわらず市場環境に応じて柔軟に投資の機会を発掘します。また、アナリストやファンドマネージャーといった運用のプロフェッショナルたちが個別企業だけでなくマクロ経済に関するディスカッションを密に行っていることも特徴的です。このようなプロセスにより、TTインターナショナルの運用戦略はマクロ経済の環境や個別企業の好機など時々の状況を踏まえた柔軟なポートフォリオを構築し、安定したパフォーマンスを達成しています。グローバルで実績と信頼のある会社なので、我々も安心して運用を任せています。

SMBCグループがTTインターナショナルに期待することは?

三井住友フィナンシャルグループ_吉田 : 一番期待しているのは、やはり世界的な視点における運用戦略ですね。TTインターナショナルは三井住友DSアセットマネジメントとは違うものを持っています。特に新興国への投資については、情報力が物を言いますが、TTインターナショナルには「今、投資すべきなのはどの企業か」といったリサーチに基づいた情報に加え、これまでの経験による投資戦略があります。海外の運用会社との連携は、お客さまに大いにメリットがあると思っています。

三井住友フィナンシャルグループ_佐藤 : TTインターナショナルが保有する戦略と三井住友DSアセットマネジメントが有機的にコラボレーションすることで、さらなる成長に発展していくはずです。今後グループ全体でアセットマネジメントビジネスを盛り上げていくなかで、この連携が次のフェーズに繋がっていくと期待しています。

アセットマネジメントビジネスの強化で投資市場を拡大。
日本を本当の意味での豊かな国へ

株式会社三井住友フィナンシャルグループ企画部
 アセットマネジメント事業室 副室長 吉田三郎

海外の市場ではどのような投資の傾向がありますか?

TTインターナショナル_Niall : ここ5年くらいで投資家が環境に配慮した企業に投資し、企業自体が変わっていくという流れが起きており、企業側も意識して、アジェンダの上位に環境を挙げるところが増えています。ESG投資やSDGsは間違いなく今後のキーワードですが、TTインターナショナルは環境に配慮したファンドのパイオニアと言えます。立ち上げたファンドの運用報酬の一部を生物の多様性を保全する活動に寄付していますし、そういう形も含めて、企業・社会を応援していくのも当社の役割の1つです。アセットマネジメントビジネスを通して、今後も環境課題に良い影響を与えていきたいと考えています。

三井住友フィナンシャルグループ_佐藤 : 境問題・社会課題の解決に対応するファンドへの投資によって、投資されたお金が課題解決の資金に使われ、社会全体により良い影響を与えていくと考えています。このようなファンドが日本の市場でももっと伸びていけば、今後日本だけでなく、グローバルなSDGsの課題解決に繋がっていくでしょう。

国内外のネットワークを強化するSMBCグループがアセットマネジメントビジネスで目指すものは?

三井住友フィナンシャルグループ_吉田 : 資産運用はもう当たり前の時代。投資の必要性をより多くの人に伝え、行動に移してもらえるように、SMBCグループ全体で取り組んでいきたいと考えています。資産運用の意味・意義を多くの皆さまにご理解いただくことで、市場が拡大し、日本全体の成長に繋げていければと思います。

1人ひとりのお客さまが資産運用を通じて、豊かな生活を送れることが私にとっての喜びです。「豊かさ」というのは、お金だけでなく、経済や社会が豊かになるという意味合いもあります。お金の多寡ではなく、例えば、老後の資金を準備する投資で社会も応援できる仕組みがあるということが心の安心に繋がったりするのではないでしょうか。資産運用を通じ、自身でそういう仕組みを作ることもできますので、知識を持つことも今後の豊かさに繋がっていくのだと思います。こういったことも金融機関として伝えていきたいですね。

  • ※ 2021年9月取材時の情報です。今後、内容が変更されることもありますのでご留意ください。