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三井住友フィナンシャルグループ

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SMBC Group Report 2019 CFOメッセージ

株主還元強化と成長投資にフォーカスした資本政策を実行するとともに、双方向・建設的な対話を通じた積極的な情報開示に努めていきます。 取締役 執行役専務 グループCFO 中島 達 株主還元強化と成長投資にフォーカスした資本政策を実行するとともに、双方向・建設的な対話を通じた積極的な情報開示に努めていきます。 取締役 執行役専務 グループCFO 中島 達

2019年4月にグループCFO兼CSOに就任しました。
当社ではこれまでもCFOとCSOの兼任体制をとってきましたが、
これは、「企業経営において財務戦略と事業戦略は一体不可分であり、どちらの視点が欠けても経営は成り立たない」
という考えに基づくものです。ひとりの人間が統括することで、常に両方の視点から課題を認識して
戦略を立てることができるだけでなく、意思決定もスピーディーに行えると考えています。

経営効率の向上にこだわった業務運営

 SMBCグループは、「資本効率・資産効率・経費効率」の3つの効率性の向上にこだわった運営により、「強靭で質の高いグローバル金融グループ」を目指しています。その達成に向けて、中期経営計画では、ROE・経費率・普通株式等Tier1(CET1)比率の3つを財務目標として掲げています。
 2018年度を振り返ると、前半は4つの事業部門すべてで前年比増益を達成する等、好調に推移しました。年度後半には、年末からのマーケット環境の悪化によって、リテール事業部門の資産運用ビジネスが苦戦したものの、海外ビジネスの健闘やグループベースでのコストコントロールによって連結業務純益・親会社株主純利益ともに期初目標を上回りました。さらに、後述するグループ再編策を中心にリスクアセットコントロールに努めたことから、3つの指標はいずれも、目標対比順調に推移しています。

中期経営計画における財務目標の進捗
中期経営計画における財務目標の進捗 中期経営計画における財務目標の進捗

事業・アセットポートフォリオの転換

 資本・資産効率の向上のためには、事業の選択と集中を進め、限られた経営資源を最大限に有効活用する必要があります。SMBCグループでは、中期経営計画に基づき、事業・アセットポートフォリオを見直し、グループ事業の再編をスピーディーに進めてきました。
 SMBC日興証券・SMBCフレンド証券の合併や関西アーバン銀行およびみなと銀行の非連結化に加え、2018年度は、リース共同事業の再編による三井住友ファイナンス&リースの非連結化、現地法人インドネシア三井住友銀行との合併・追加出資を通じたBTPNの連結子会社化を完了しました。さらに2019年4月には、NTTドコモとの共同事業であった三井住友カードの完全子会社化、三井住友アセットマネジメントと大和住銀投信投資顧問の合併を実施する等、グループ内で重複する事業の統合や資本・資産効率の改善の余地がある事業の見直しを、矢継ぎ早に実施しました。いずれの再編策も、ボトムライン収益の増加やリスクアセットの減少を通じて、資本・資産効率の向上に寄与しています。
 効率性向上の観点に加え、事業戦略の面からも、これらの再編には様々なメリットがあります。たとえば、三井住友ファイナンス&リースでは新たな事業領域への業務拡大を進めているところですし、三井住友カードでは柔軟かつ迅速な戦略実行が可能になり、SMBCグループのキャッシュレス決済戦略の中核を担う体制が構築できました。
グループ再編について、くわしくはこちらをご参照ください。

コストコントロール

 中期経営計画では、「業務改革による効率性向上」「リテール店舗改革」「グループ内事業再編」の3つの主要施策により、3年間で年間500億円のコスト削減を目標としました。2018年度までに既に360億円の削減を実現しており、2019年度は、3ヵ年の目標である500億円の削減を上回る見込みです。
 たとえば、業務改革による効率性向上では、RPA(Robotic Process Automation)を積極的に活用しています。SMBCグループは、RPAの導入においてグローバルで見てもトップクラスの実績を誇っており、3年間で300万時間・1,500人分の作業を自動化する目標に対し、2018年度までに205万時間・1,025人分の自動化を完了しました。リテール店舗改革では、3ヵ年で430店舗をデジタル技術を活用した次世代店舗へ移行する計画に対して、2018年度までに259店舗の移行を完了し、また、278店舗の後方事務を集約しました。グループ内事業再編については、中期経営計画策定時には織り込んでいなかった三井住友カードとセディナの実質一体運営等を通じて、目標を上回るコスト削減額を実現できる見込みです。引き続き、着実に削減額を積み上げ、中期的には1,000億円の削減を目指していきます。
 なお、当初は3つの主要施策によって4,000人分の業務量削減を計画していましたが、RPAによる業務の自動化を三井住友銀行以外のグループ会社にも展開したこと等から、目標を上回る5,000人分弱の業務量削減を実現する見込みです。また、こうした業務量削減を踏まえ、採用抑制等の自然減を通じて、国内で4,000人程度の人員が減少すると見込んでいます。
 このように、経費率の目標達成に向けて引き続きコスト削減に注力していきますが、デジタライゼーションが急速に進展する中、必要なIT投資はしっかりと行うべきだと考えており、環境の変化を踏まえて、期中であっても機動的かつ柔軟に予算の見直しを実施しています。もちろん、投資にあたっては十分にディシプリンを利かせ、その効果を検証しています。

資本政策は新たなステージへ

資本政策の基本方針

 CEOメッセージにもある通り、我々の資本政策の基本方針は、健全性確保、株主還元強化、成長投資をバランス良く実現していくことですが、2019年3月末に、バーゼルV最終化時ベースのCET1比率が、中期経営計画で目標とする10%程度に1年前倒しで到達し、健全性確保に目処がついたことから、株主還元強化と成長投資にフォーカスできるステージへと移行しました。従来は、三角形でお示しした基本方針の上部に健全性確保を配置していましたが、ステージが移行したというメッセージを込めて、2019年度から三角形を上下反転し、株主還元強化と成長投資が上部に来る配置に変更しました。今後は蓄積される利益を、この2つにバランス良く配分していきます。

資本政策の基本方針
資本政策の基本方針 資本政策の基本方針

株主還元強化

 我々の株主還元の基本は配当であり、累進的配当、すなわち減配せず、配当維持もしくは増配を原則としています。配当性向は、2020年4月に始まる次期中期経営計画期間中を目処に、40%を目指します。また、自己株取得も機動的に実施していきます。
 この方針に基づき、2018年度は期初予想の1株当たり170円から180円に増配するとともに、2019年5月には1,000億円の自己株取得を発表しました。自己株取得については、前年度の700億円から300億円の増額となります。CET1比率が目標に到達して健全性確保に目処がついたこと、2019年度についても引き続き順調に利益計上が見込まれることに加え、足許の成長投資機会や株価水準、およびROE向上効果等も踏まえた上で、総合的に判断したものですが、特に、足許の割安な株価水準を踏まえて、増額を決定しました。
 また、2019年度の配当予想は、親会社株主純利益は減益を見込んでいるものの、株主・投資家の皆さまのご期待にお応えするため、2018年度と同額の180円としています。

普通株式1株当たり配当金の推移
普通株式1株当たり配当金の推移 普通株式1株当たり配当金の推移

成長投資

 成長投資に資本を活用することで、グループの持続的成長も追求していきます。CET1比率が目標に到達する以前は、資本の蓄積を優先し、リスクアセットは増やさない方針としていましたが、今後は海外を中心に、アセット拡大によるオーガニックな成長を実現していきます。また、M&Aについては、基本方針のチャートにお示しした3つの投資規準の下で、持続的なROE向上に資するか否かを軸に判断します。ターゲットとしては、「海外における資本・資産効率の高い投資」および「中長期的な成長に向けたビジネスプラットフォームを創るための投資」を考えています。
 前者は我々がグローバルに強みを有するプロダクトで、たとえばこれまでの投資案件では、航空機リース、貨車リース、ミドルLBOファイナンス等が該当します。これらは、我々のグローバルビジネスの更なる強化に加えて、即効性の高いROE向上効果も期待できます。後者は、アジアにおける商業銀行業務やアセットマネジメント、証券、信託等を想定しています。2019年2月、BTPNとインドネシア三井住友銀行との合併が完了し、貸出金残高でインドネシア第8位の商業銀行となりましたが、同国以外にも、アジアで第2、第3のSMBCグループを創っていくための買収機会を追求していきます。
 資本政策のステージが移行したことで、資本の活用方法に対する株主・投資家の皆さまからの注目度が高くなっています。資本配賦のイメージを分かりやすくお伝えするために、2019年度より下記のようなチャートを作成し、投資家説明会のプレゼンテーション等で活用しています。
 2019年度は、親会社株主純利益を7,000億円と予想しておりますが、配当に約2,500億円、自己株取得に1,000億円と、利益の約半分を株主の皆さまへの還元に充てる形となります。成長投資としては、2019年4月に実施した三井住友カードの完全子会社化、三井住友アセットマネジメントと大和住銀投信投資顧問の合併で、資本を800億円充当しています。残りは、海外でのアセット拡大を中心としたオーガニック成長に1,500億円程度を配分する予定であり、その他の成長投資機会への配分についても、今後検討を進めていきます。

2018年度・2019年度の資本配賦
2018年度・2019年度の資本配賦

健全性確保

 資本政策のステージは移行しましたが、株主還元強化と成長投資に資本を活用する際、健全性の確保が前提にあることには変わりありません。
 2017年12月にバーゼルV最終化が国際合意に至りましたが、我々のCET1比率目標10%程度とは、この影響を織り込んだベースで算出したもので、先述の通り、2019年3月時点で既に目標水準に到達しています。これは、10年に一度のストレスが生じた場合にも、規制所要水準の8%を確保できるレベルとして設定したものです。
 また、2019年3月末より、日本でも総損失吸収力(TLAC)規制が施行されました。SMBCグループでは、リスクアセットベースで16%、総エクスポージャーベースで6%が最低所要水準となりますが、2019年3月末時点ではいずれも水準を満たしています。TLAC比率の最低所要水準は、2022年以降、それぞれ18%と6.75%に引き上げられることが決定しており、これらをクリアするため、必要な各種規制資本の調達を実施していきます。レバレッジ比率についても最低所要水準が設定され、2019年から2021年までは3.0%、2022年以降3.5%が当社の所要水準となりますが、2019年3月末時点で既に4.88%を確保しています。

政策保有株式の削減

 「上場株式簿価残高のCET1に対する比率を、2020年を目処に、2015年9月末と比べて半減の14%まで削減する」との方針に基づき、政策保有株式を5年間で5,000億円(簿価残高ベース)削減する計画です。2018年度は1,300億円を削減し、2015年9月末からの累計で3,600億円となりました。加えて、売却応諾取得済の未売却残高が880億円あるため、2019年3月末時点で4,480億円の削減に目処がついたことになります。
 株価変動リスクの資本への影響を低減するため、また、コーポレートガバナンス・コード改訂の趣旨も踏まえ、2019年度中に計画達成に目処をつけるべく、引き続き削減を進めていきます。

政策保有株式の推移および削減計画
政策保有株式の推移および削減計画

株主・投資家の皆さまとの対話

 私がグループCFOに就任したのは2019年4月ですが、2018年度も財務の副担当役員として、機関投資家・個人投資家の皆さまとのコミュニケーションに携わってきました。4度の海外IRや各種カンファレンスへの参加を通して多くの投資家の皆さまとディスカッションを行いましたし、国内外の格付機関とも面談しました。これらの対話を通じて、我々の戦略の方向性については、皆さまのご理解が得られていると自信を持てた一方、更なる株主還元への期待が非常に高いということも痛感しました。これらを踏まえ、2019年度の株主還元策について、取締役会でも議論を重ねながら、増配と自己株取得の増額を決定した経緯にあります。また、ESGやSDGs等、持続可能な社会の構築に向けた経営に対する関心が高まっていると実感したことは、TCFD提言への対応の一環として、三井住友銀行における気候変動に伴う財務的影響の試算・開示につながっています。
 投資家やアナリストの皆さまと建設的な対話の場を持つことは、グループの財務を司る私にとって、最も重要なミッションのひとつだと考えています。今後も株主・投資家の皆さまにとって有用な情報を積極的に開示していくとともに、双方向の対話を通じて、持続的な成長と企業価値の向上を実現していきたいと考えています。

取締役 執行役専務
グループCFO
中島 達

取締役 執行役専務 グループCFO 中島 達 取締役 執行役専務 グループCFO 中島 達