
ストーリー


2025.03.07
出張所の跡地がこどもたちの
居場所に!
アトリエ・バンライ-ITABASHI-
ができるまで。
来たる2025年4月、板橋区に「アトリエ・バンライ-ITABASHI-」が誕生します。ここは、三井住友銀行が初めて運営を手がける、こどもたちのための施設。オープンを前に、プロジェクトの立ち上げから奔走してきた三井住友銀行の進藤と大萱、ともに企画検討を進めてきた放課後NPOアフタースクールの正村さん、電通の南木さんの4人が、「アトリエ・バンライ-ITABASHI-」に込めた想いを語り合いました。
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株式会社三井住友
フィナンシャルグループ大萱 亮子 氏
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株式会社三井住友銀行
進藤 晃 氏
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特定非営利活動法人
放課後NPOアフタースクール正村 絵理 氏
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株式会社電通
南木 隆助 氏
こどもたちの未来の選択肢や
可能性を広げるために。
教育や体験の機会を提供し、
格差を解消する支援を行いたい
南木 私が「アトリエ・バンライ-ITABASHI-」の構想をはじめてお伺いしたのは2024年の夏だったでしょうか、とても新鮮で共感したのを覚えています。ぜひ応援したい、すばらしい活動だな、と。
大萱 ありがとうございます。当社では、2023年5月から新中期計画が始まり、重点課題の一つに「貧困・格差」の解消が明記されました。解決方法はいろいろありますが、私たちは特にそのような状況に陥る前の予防の観点で当社が支援できることに着目しました。こどもたちの進学を支える教育、また想像力や好奇心を育む多様な体験の機会を増やし、こどもが自ら好きなことや得意なこと、また興味の対象を発見することで将来の可能性を広げ、生きていく力につながるはず、という想いからこのプロジェクトはスタートしています。
正村 こども自身が居場所だと感じる数と、自己肯定感は比例しているといわれています。学校にも家庭にも居場所がないと感じているこどもも含めて、多様な居場所の選択肢があることは、結果的にこどもたちの自己肯定感やウェルビーイングにつながるところだと私も思います。

進藤 近年、銀行の営業形態が変わり、店舗の遊休スペースが増えたことから、その活用策として企業主導型の保育所や学童保育、こども食堂などを検討していました。ただ、銀行の店舗は駅前など交通量が激しく、こどもが集まりにくい場所にあることが多いんですね。そんななか、旧板橋中台出張所は住宅街の中にあって、近くに公園もある。こどものスペースとして適しているのではないかというところで、こどもの居場所と体験の場を提供することを目指す「アトリエ・バンライ-ITABASHI-」の話が進んだ経緯もあります。
正村 板橋区はどこの小学校でも、全児童を対象にした放課後の居場所を提供しています。私たちはアトリエ・バンライから徒歩圏内にある小学校で、学童保育と放課後こども教室が一体になったアフタースクールを運営しているのですが、全児童対象となると、安全面からどうしても低学年のこども中心の居場所になりがちです。ただそれでは、もっと活動範囲の広い中高学年のこどもたちには物足りなくなってしまう場合があります。友だちと集まって自由に遊べるアトリエ・バンライのような場所は、このエリアのこどもたちにとって、とても価値のある居場所になるだろうと期待しています。

放課後NPOの正村さん。
板橋のこどもたちの
“自分たちで遊ぶ力”の強さを日々感じているそう
こどもたちに「体験」という名の財産を。
さまざまな体験を積み重ねて
蓄えられる、その場所づくりこそ、
SMBCだからできること。
南木 「アトリエ・バンライ-ITABASHI-」には、こども食堂もありますよね。それも、普段できないことを体験してもらうための場所に、というお話がとても印象に残っています。普段口にしない食べ物を食べたり、普段一緒には食べない人と一緒に食事したりするなど、そういう「体験のための食の場所」って、すごく面白いと思います。
進藤 もともと銀行店舗として利用していた建物なので、厨房や食堂もあるし、遊休スペースの活用策の一つとしてこども食堂はどうか、という話はあったんですよ。
大萱 ただ私たちは金融機関として場所を提供することはできても、自らがこども食堂の運営者にはなれないんですよね。もともと「アトリエ・バンライ-ITABASHI-」は、安心安全に過ごせるこどもの居場所と体験機会を絡めて提供したいという構想だったので、こども食堂も単純に食事を提供するだけの場所ではなく、体験と食をセットにしたかったんです。こども食堂やこどもの居場所のいずれかを提供している方はたくさんいらっしゃるのですが、両方を提供しているケースはそれほど多くありません。私たちにとっても初の試みなので、放課後NPOアフタースクールさんの知見をお借りし、アドバイスをいただきながら創ってきました。場貸しだけならば、SMBCでなくてもできる気がするんですよね。連携してくれる企業を集め体験プログラムを提供してくれる仲間を増やしたり、地域のこども食堂や自治体と連携したり、日頃のつながりがあるからこそ、仲間を慕れるのは、私たちならではの付加価値なのかなと思います。

困難や発見もあったと笑顔で話す
三井住友銀行 管理部の進藤(左)と、
社会的価値創造推進部の大萱(右)
特別なことではなく、いつもの延長に
あるちょっと楽しいこと。
目指すのは、こどもたちが
そんな楽しいものに出会える場所。
南木 プロジェクトへ関わるなかで、もともと銀行だった建物ならではの面白さも感じていました。金庫だった場所やロッカーだったところといった場所の記憶は、こどもたちがいろいろ体験するなかで、新しい気づきを得るきっかけにもなるのではないでしょうか。そういったものは活かしつつ、ロゴなどのデザインには、こどもたちが楽しくいられる場所、自分でやりたいことを選べる場所に、という思いを込めました。
大萱 「アトリエ・バンライ-ITABASHI-」のコンセプトは、とても特別な非日常な体験を提供、というより、放課後の延長で、少しだけ特別で楽しい時間を過ごせる場所なんです。しっかりと安全管理はしつつ、あらゆるこどもたちに開かれ、何をするかを「こどもたちが自分で選択できること」を大切にしています。その体験を通して、興味や好きなことを見つけたり、勉強するきっかけになったり、こどもたち自身の生きる力、育っていくうえでの糧を得られるきっかけづくりの場になればいいと思っています。普段読まない本を読んだり、聞いたことのない音楽に触れたりする機会も、こどもたちにとって将来、財産になる。そうやって蓄えられた体験という「財産」が、やがて社会の財産になっていく、未来につながる取り組みだと思いますし、地域にそういう場所を創る意義があるんじゃないかなと考えています。

コンセプト部分を担当。
銀行のブランディングの一環ではなく、
社会課題の解決に真摯に取り組む姿勢と
その思いに深く共感したと語る。
アトリエ・バンライという
居場所を通して描く
こどもたちの未来への思い。
正村 今の時代、こどもたちが安心して過ごせる居場所ってあまり多くないですよね。昔のように、こどもたちを気にかけてくれる地域の大人も減っています。その点、「アトリエ・バンライ-ITABASHI-」は、保護者にとってもこどもにとっても安心してすごせる居場所。大人になったときに、この場所で過ごした時間や出会った人たちの顔を思い出したり、ここで自分が受け入れられて育ってきたのだという感覚を持てたりすれば、自分にもみんなにも優しい大人になれるのではないでしょうか。
南木 そうですね。「アトリエ・バンライ-ITABASHI-」は、いろんな面で、本当に楽しい居場所になると思うんですよね。たくさんの人にこの取り組みを応援していただきたいし、たくさんのこどもたちがいろいろな経験をして、発見や出会いを積み重ねながら将来の選択肢を広げてくれるといいですね。
進藤 「アトリエ・バンライ-ITABASHI-」が、こどもたちのたまり場になったらいいな、と思いますが、まずは地域の児童館のような場所として気軽に使ってもらいたいですね。大人になったときに、「あれ、実は銀行の施設だったんだ」と思う程度でもいいと思うんです。いつか銀行に来たときに、昔アトリエ・バンライっていうのがあってよく通ってたとか、それでSMBCのファンになった、なんて言われたら嬉しいですよね。
大萱 現在足許で進行している社会課題の解決に取り組み、こどもたちの未来の選択肢を拡げたいという思いからアトリエ・バンライのプロジェクトはスタートしました。一企業にできることには限りがありますが、地域や企業などの枠を超えた活動をみなさんに見ていただき、追随する企業が出てくるようなインパクトを社会に与えられるよう、フロントランナーとして、まずは「アトリエ・バンライ-ITABASHI-」を無事にスタートさせて、軌道に乗せることが当面の目標です。結果としていつか課題が解決し、新しい価値が生まれたら幸せですね。

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大萱 亮子 氏(おおかや りょうこ)
株式会社三井住友フィナンシャルグループ
株式会社三井住友銀行
社会的価値創造推進部 上席推進役
シニアサステナビリティエキスパート1999年住友銀行(現三井住友銀行)西野田支店入行後、大企業法人営業、国際業務、海外大学院(MBA)派遣、投融資企画部を経て2017年より経営企画部CSR室で社会貢献に従事。公益財団法人三井住友銀行国際協力財団専務理事
〈本件に関わる主な役割/アトリエ・バンライの企画立案〉 -
進藤 晃 氏(しんどう こう)
株式会社三井住友銀行
管理部 開発グループ グループ長2008年三井住友銀行入行。大型PJのPMやワークスペース改革、脱炭素・自然資本関連の取組をグループ・グローバルベースで担当
〈本件に関わる主な役割/不動産や工事に関するプロジェクト全体の調整・取り纏め〉 -
正村 絵理 氏(まさむら えり)
特定非営利活動法人
放課後NPOアフタースクール
副代表理事新卒で株式会社リクルート就職。自身の子育てをきっかけに、小学生が放課後に「好き」や「得意」を見つけて没頭できる環境づくりに興味を持ち、放課後NPOに転職。直営拠点の立ち上げ及び運営、全国展開のための事業開発チーム立ち上げを経て現在は企業協働、私立アフタースクール、関西と幅広い事業領域を統括。
〈本件に関わる主な役割/居場所設計に関するアドバイザリー業務〉 -
南木 隆助 氏(なんき りゅうすけ)
株式会社電通/ FCC リード室
場と編集 チーフアーキテクト慶應義塾大学卒業。大学時代は坂茂ゼミに所属。空間設計(展覧会、オフィス、店舗、建築)、ブランディング(伝統文化、都市)、商品開発(企画、プロダクトデザイン)を手掛ける。
〈本件に関わる主な役割/アトリエ・バンライのブランディング/クリエイティブディレクション〉

こどもたちの創造力や好奇心が
交差する空間づくりとは?
アトリエ・バンライ-ITABASHI-に込めた思い。