STORY

ストーリー

三井住友銀行の大萱と呉藤、カゴメ株式会社の吉田さん、ソニーグループ株式会社の森さん
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2025.05.16

こどもたちの夢を育み、
未来の可能性を広げるために。
アトリエ・バンライ-ITABASHI-だからできること

2025年4月1日、三井住友銀行の板橋中台出張所跡地に、こどもたちのための施設がオープン。今回は、三井住友銀行の大萱と呉藤、ソニーグループの森さん、カゴメの吉田さんの4人が「アトリエ・バンライ-ITABASHI-」に集合し、組織を超えた協業の背景やそこにかける思いについて語り合いました。

  • 河村 優里

    株式会社三井住友
    フィナンシャルグループ

    大萱 亮子 氏

  • 吉沢 聡美

    株式会社三井住友
    フィナンシャルグループ

    呉藤 舞 氏

  • 山﨑 揚子

    カゴメ株式会社

    吉田 知史 氏

  • 松田 広太

    ソニーグループ株式会社

    森 悠介 氏

教育や体験の機会をつくり、未来の
可能性を広げたい。
こどもたちの創造性、
好奇心を育むために

大萱 大萱 昨年の6月ごろから始まった「アトリエ・バンライ-ITABASHI-」のプロジェクトがとうとう実現しました。森さんに来ていただいたのは今回が初めてですが、施設をご覧になった感想をぜひ聞かせてください。

森 森 ATMコーナーの先に全然違う世界が広がっているというギャップもあって、入ってくるときにすごく不思議なワクワク感を覚えました。こどもたちも来るのが楽しみになりそうな空間ですね。

吉田 吉田 室内がすごく明るいんですよね。空間デザインも楽しいし、思わず手に取りたくなるような本もたくさん並んでいます。

大萱 大萱 ありがとうございます。こどもたちがさまざまな体験や経験ができる放課後の居場所となることが「アトリエ・バンライ-ITABASHI-」の目的ですが、そのためには継続して通ってもらう必要があります。そこで箱(施設)だけでなく中身のコンテンツも充実させたいと考えました。私たちと同様にこどもたちのための取り組みを行っている企業さんと連携できればと、ソニーさんやカゴメさんにもアプローチさせていただきました。

呉藤 呉藤 コンテンツを充実させるために当初から意識していたのは、食、アート、プログラミングなど、ここに来るこどもたちが幅広い分野の内容に触れられるようにすることです。本年度は約20社ほどの企業や団体さまにご協力いただくことが決まっていますが、なかでも早い時期にお声がけしたのがカゴメさんでした。「アトリエ・バンライ-ITABASHI-」プロジェクトのアドバイザリーとして早期から関わってくださっている放課後NPOアフタースクールさんと協働していらっしゃって、こども向けの食育プログラム「おいしい!野菜チャレンジ」のお話を聞き、オンライン授業を視聴したらとても面白くて、2024年の夏に授業を見学させていただきました。

施設のプログラムを担当する三井住友銀行の呉藤。さまざまな企業や組織によるこども向けの取り組みを調査し、アプローチを行った
施設のプログラムを担当する三井住友銀行の呉藤。
さまざまな企業や組織によるこども向けの取り組みを調査し、アプローチを行った

吉田 吉田 初めてお会いしたのは、確か宇都宮での授業でしたね。

呉藤 呉藤 ええ、カゴメの研究所の社員さんによる「最強のジュースを作ろう」という実験プログラムです。こどもたち自身がコンセプトや配合を考えて、栄養のある野菜ジュースを作るという課題に主体的にいきいきと取り組んでいる姿に感銘を受けて、授業後すぐに「ぜひバンライでもやってください」と口説きました(笑)。

吉田 吉田 生活に根ざした銀行の跡地に「創造性と好奇心を育み、安心して過ごせる居場所」をつくるという発想は、こどもの目線に立った素敵な取り組みだと感じました。

野菜の魅力と楽しさを伝える活動を行うカゴメの吉田さん。今回「アトリエ・バンライ-ITABASHI-」のために特別なプログラムを開発
野菜の魅力と楽しさを伝える活動を行うカゴメの吉田さん。
今回「アトリエ・バンライ-ITABASHI-」のために
特別なプログラムを開発

大萱 大萱 ソニーさんとご一緒するようになったのは、2024年1月にソニーさんと放課後NPOアフタースクールさんが共催した「子どもの格差解消のためのフォーラム」にお招きいただいたことがきっかけでした。

森 森 そうでしたね。その後プログラム提供についてお声がけをいただいて。こどもたちの興味・関心は多様で、一度の体験で終わるものではありません。
“たくさんの体験に継続して取り組める場をつくる”という構想に共感し、ぜひ参加したいと思いました。

「アトリエ・バンライ-ITABASHI-」
だからこそ実現した
領域を超えた協働で挑む 
大きな社会課題解決への取り組み

吉田 吉田 カゴメは長年、日本人の野菜不足という課題解決を目標に、野菜摂取量を増やすための取り組みを続けています。その一環として2018年からは放課後NPOアフタースクールさんと一緒に、全国の放課後児童クラブで野菜の魅力を伝える体験型授業「おいしい!野菜チャレンジ」を始めました。呉藤さんに見学いただいた、クイズや実験などを通してこどもたちに野菜のおいしさや楽しさ、大切さを伝えていくプログラムです。背景には「野菜が好きな気持ちや食べる意識を持ってもらい、将来の野菜不足の解消につなげたい」という思いがあります。ほかにも複数の企業と連携したプロジェクトを続けてきましたが、課題の解決には一企業の力だけでは限界も感じていました。それぞれのリソースを掛け合わせることで別の側面からもアプローチができるのでは…そう考えていたことも「アトリエ・バンライ-ITABASHI-」に参加させていただいた理由の一つです。

森 森 ソニーグループは「クリエイティビティとテクノロジーの力で、世界を感動で満たす」というPurpose(存在意義)のもと、創業当時からの思いを引き継ぎ、教育支援活動を実施しています。国内におけるこどもの「教育格差」という社会課題の解決に向けた取り組みとして、2018年からソニーグループのコンテンツやテクノロジーを活用した「感動体験プログラム」を実施しており、放課後NPOアフタースクールさんと連携しています。社会問題は複雑な要因が絡み合っていますから、吉田さんがおっしゃったように一企業の活動で解決できる問題ではないことを、私たちも実感しつつありました。そこで企業、NPO、行政などそれぞれの強みを生かしながら同じゴールを目指すことで、より大きな社会課題の解決に向けて活動しています。

大萱 大萱 あらゆるこどもたちに向けて、同じ思いをもつみなさんと協業することで、「アトリエ・バンライ-ITABASHI-」のような活動も盛り上がっていくのではと期待しています。ソニーさんは「感動体験プログラム」に対して“こどもたちがどのように変化したのか、どれだけ社会的にインパクトを与えられるか”の検証も行われていますよね。取り組みの効果を可視化し、より良い体験機会づくりに生かすために、ぜひ「アトリエ・バンライ-ITABASHI-」でも取り入れたいと考えています。

ソニーグループでサステナビリティ分野の活動を担う森さん。教育支援やグローバル課題の取り組みなど社会貢献活動を統括する
ソニーグループでサステナビリティ分野の活動を担う森さん。
教育支援やグローバル課題の取り組みなど
社会貢献活動を統括する

森 森 いわゆる社会的インパクト評価(活動が社会にどれだけ良い影響を与えたかを“見える化”する手法)なのですが、こどもたちにとって新しいことへのチャレンジや経験がどれほど大切かを多くの方々に知ってもらい、世間に周知していくための一つの材料として始めました。また、こどもたちが喜ぶ姿を見ることは社員にとっても大きなモチベーションになります。社会課題解決への貢献だけでなく、社員にとってプラスになるという点も、こういった活動に参加することの大きな意義だと感じています。

吉田 吉田 私たちにとっては「アトリエ・バンライ-ITABASHI-」での協働のメリットとしてもう一つ、通年で計画し、継続的に展開できることがあります。今の私たちの活動は単発の出張授業が多いのですが、ここでは野菜を育てる・収穫する・食べるまでの「植育・食育」が一貫して学べる3カ月間のプログラムを作ることができました。食堂や調理施設もあり、食べるところまで通しで取り組めるのも魅力ですね。

呉藤 呉藤 「アトリエ・バンライ-ITABASHI-」は安全管理の観点から事前に利用者登録をしたこどもたちが利用できるようにしています。今は近隣の小学校に限定して開放しているので、1人のこどもが継続して参加しやすく、じっくり取り組めるプログラムが作りやすいという強みがあります。例えば、野菜を育てる〜食べるまで、時間をかけて向き合うなかで、野菜への愛着を育んでもらえるのではと、ワクワクしています。また、プログラムのなかでこどもたちの成長や変化が見えてくることもバンライの大きな魅力の一つだと感じています。

「アトリエ・バンライ-ITABASHI-」のプロジェクト立ち上げから奔走してきた三井住友フィナンシャルグループの大萱
「アトリエ・バンライ-ITABASHI-」のプロジェクト立ち上げから奔走してきた三井住友フィナンシャルグループの大萱

いつかきっと、大きな夢に
育つことを信じて。
たくさんのワクワクで未来を切り開く
力を身につける

大萱 大萱 今後は、カゴメさんのプログラムなどをはじめとして、施設に携わる組織や地域の大人に向けたプログラムの開催も検討していきたいと思っています。周りの大人の連携は、こどもたちにとってもよい影響になりますし、この場の出会いをきっかけにさらなる協業が生まれたら素敵だなと、今からとても楽しみにしています。

吉田 吉田 そうですね! 大人の方にも野菜を楽しんでいただくプログラムを提案させていただきました。家庭での野菜の摂取量を増やすために、こどもたちが体験を持ち帰るだけでなく、周りの意識も変えていきたいという思いからです。私は、こども時代の楽しい体験や記憶は人の成長する糧になると考えています。いずれ「アトリエ・バンライ-ITABASHI-」での経験が“種”になり、農業やさまざまな物事への興味につながるきっかけになれば嬉しいですね。

森 森 こどもたちが豊かに育つ、感動に満ちた世界を作っていくために欠かせないと考えているのが、“ワクワク”する気持ちそのものです。こどもたちには体験を通して好奇心をもち、仲間と協力しながら、今後正解がない未来を切り開く力をつけてほしい。私たちと一緒にワクワクしてもらうことが、その助けになればとても幸せです。

約4000冊の本やステージ、上映用スクリーンなど、好奇心や創造性を引き出すしかけがたくさん。窓の外に地域の人々が行き交う様子が見える
約4000冊の本やステージ、上映用スクリーンなど、
好奇心や創造性を引き出すしかけがたくさん。
窓の外に地域の人々が行き交う様子が見える

呉藤 呉藤 ソニーさんとカゴメさんのプログラムに共通しているのは、こどもたちがワクワクしている、目を輝かせている姿です。日本財団による「18歳意識調査」では、日本の若者は将来への希望が諸外国と比べて低く、「自分の行動で国や社会を変えられると思う」と答えた人が顕著に少ないという報告があります。体験や経験を通して好きなことや興味を見つけることは、こどもたちが明るい未来を描き、アクティブに社会を変えようという姿勢につながるのではないでしょうか。「アトリエ・バンライ-ITABASHI-」で過ごす時間が、将来の前向きな選択を後押しする、そんな存在になれたら素敵ですね。

大萱 大萱 体験は人生の財産だと思います。自身の好きや得意なことを見つけたり、人生を豊かにするきっかけになるものですよね。だから誰もがいろいろなチャレンジができる場所と機会を提供することに、意義を感じています。そして、“誰かと一緒に過ごす何気ない時間”もこどもたちには大切だと思っています。「アトリエ・バンライ-ITABASHI-」では、プログラムがない日でも、読書やボードゲーム、映画上映会など、仲間と時間を共有できるしかけも用意しています。地域におけるこどもたちの居場所が減っている現代において、ここが、こどもたちがゆるやかにつながる”第三の居場所”になってほしい。そして、ここに集まるこどもたちも、こどもたちに関わる大人もともに育ち、豊かな人生を送っている未来が訪れることを願っています。

  • 大萱 亮子

    大萱 亮子 (おおかや りょうこ)

    株式会社三井住友フィナンシャルグループ
    株式会社三井住友銀行
    社会的価値創造推進部 上席推進役 シニアサステナビリティエキスパート

    1999年住友銀行(現三井住友銀行)西野田支店入行後、大企業法人営業、国際業務、海外大学院(MBA)派遣、投融資企画部を経て2017年より経営企画部CSR室で社会貢献に従事。公益財団法人三井住友銀行国際協力財団専務理事
    〈本件に関わる主な役割/「アトリエ・バンライ-ITABASHI-」の企画立案〉

  • 呉藤 舞

    呉藤 舞 (ごとう まい)

    株式会社三井住友フィナンシャルグループ
    株式会社三井住友銀行
    社会的価値創造推進部 上席部長代理

    2014年SMBCコンシューマーファイナンス入社後、個人営業、広報経験を経て、2023年度より三井住友フィナンシャルグループへ出向。体験格差、金融経済教育、プロボノ、社会貢献PRに従事。
    〈本件に関わる主な役割/「アトリエ・バンライ-ITABASHI-」プログラム・PR担当〉

  • 吉田 知史

    吉田 知史 (よしだ さとし)

    カゴメ株式会社ブランドコミュニケーション部
    野菜をとろうキャンペーン推進グループ シニアエキスパート

    1989年カゴメ株式会社入社。機能性研究・農業技術研究、冷凍食品事業・飲料事業・通信販売事業の商品企画、家庭園芸事業を経て、2022年より野菜をとろうキャンペーン推進グループにて野菜摂取促進の啓発活動に従事。
    〈本件に関わる主な役割/カゴメのプログラム“2つのしょくいく~植育から始まる食育体験~”の企画立案・運営〉

  • 森 悠介

    森 悠介 (もり ゆうすけ)

    ソニーグループ株式会社
    サステナビリティ推進部 CSRグループ ソーシャルイノベーションチーム
    シニアマネジャー

    2003年独立行政法人国際協力機構(JICA)に入構し、開発協力業務に従事。その後、監査法人にてサステナビリティに関するコンサルティング業務に従事し、2021年よりソニーグループ株式会社にて社会貢献活動に従事。教育支援、災害・人道支援、グローバル課題への対応などの社会貢献活動全体を統括。
    〈本件に関わる主な役割/ソニーグループ各社が提供するプログラムのコーディネーション〉

※所属や役職などは全て2025年3月末時点