特集:ファイナンスを超えていくSMBCグループのデジタル戦略

Special Contents 1 デジタル時代を支える次世代勘定系システムの開発 執行役専務 グループCIO 増田 正治 Special Contents 1 デジタル時代を支える次世代勘定系システムの開発 執行役専務 グループCIO 増田 正治

 お客さまへのサービス価値向上と業務プロセスのデジタル化をより一層推進するため、三井住友銀行では、次世代勘定系システムの開発に着手しました。これまで実績として積み上げてきた「安定性」と「効率性」を強化しながらも、将来の変化に対応できる「柔軟性」と「迅速性」を実現するシステム構築に挑む背景と意義についてご説明します。

いつでもどこでも利用可能な銀行サービスの提供を目指して

 新システムで実現を目指すサービスのひとつが、24時間無停止のオンラインシステムです。決済の多様化やグローバル化の進展に伴い、昼夜を問わずオンラインシステムを使いたいというお客さまのニーズが高まる一方で、現在のシステムでは、メンテナンスのために日曜夜間はオンラインサービスを停止する必要がありました。今回の次世代勘定系システムの構築により、インターネットバンキングでの振込やコンビニATMでの入出金を24時間可能にするとともに、外国送金等のグローバル決済の即時化・受付時限延長のサービス機能を拡充することで、お客さまの利便性向上を実現します。

将来を見据えた布石を打つ

 システムの刷新にあたり重視したのは、従来の実績として積み上げてきた「安定性」と「効率性」を向上させつつも、将来の環境の変化に対応できる「柔軟性」と「迅速性」も兼ね備えたシステムを作ることです。
 三井住友銀行では、これまでもいち早く勘定系システムのアップデートを継続して行ってきました。1994年に住友銀行(当時)が他行に先駆けて勘定系システムの全面刷新を行い、口座振替等の大量一括処理の件別処理化(バッチ処理のオンライン化)といった先進的な取組を実装したことをはじめ、国内で初めてメガバンクを形成する大規模な銀行合併を実施した際、2002年に旧住友銀行の勘定系システムへ一本化する方式を採用することで、低コストでのシステム統合を実現しています。2009年にはすべての勘定系プログラムをオープン系システムで稼働させる仕組を構築し、これにより、低コストかつ最新の技術を取り入れやすい構成への移行を選択肢に持つことができました。今回の次世代勘定系システムは、こうした既存のオンラインシステムをベースとしてシステムを拡張する手法を採用しています。

三井住友銀行の勘定系システム変遷

三井住友銀行の勘定系システム変遷

既存のプログラムを活かし、低コストでの開発を可能に

 システムの改修にあたっては、既存のオンラインシステムの作り直しを含めた全面刷新も検討しました。しかし、既存システムの調査結果において、プログラムの肥大化、複雑化に関する評価指標がいずれも良好であり、ブラックボックス化していなかったことから、大規模な全面刷新を行うのではなく、既存システムをベースとした構築を選択しました。その結果、システムの改修に要する投資額は、全面刷新を行った場合には数千億円程度かかると試算されていたのに対し、500億円程度に抑えることができる目処が立ちました。
 次世代勘定系システムにおいては、先進的なテクノロジーを活用できるオープン系プラットフォームをシステムの一部として作り、そこに勘定元帳の全量をリアルタイムにコピーした「元帳ミラー」というデータベースを構築する手法を採用します。これにより、元帳を管理するメインフレームに新たな負荷をかけることなく、新しい機能や商品を迅速かつ低コストで開発するとともに、全量をリアルタイムに分析することが可能となります。これまでも三井住友銀行ではお客さまの取引履歴に応じて商品を提案する「イベント・ベースド・マーケティング(EBM)」に取り組んできましたが、今回の改修を踏まえ、お客さまの生の情報をよりスピーディーに分析し、一人ひとりに合わせた最適な商品をご提案する「ワン・トゥ・ワン・マーケティング」にも挑戦していきます。さらに、新たなプラットフォーマーとしてのビジネスの展開を見据え、内部および外部システムとの接続性を格段に向上させる勘定系APIを整備し、さまざまなパートナー企業との柔軟な連携を加速していきます。
 一方で、元帳を管理する勘定系システム本体は、日本電気株式会社の協力の下、次世代NECメインフレームを活用することで、これまで実績として積み上げた「安定性」や「効率性」をさらに強化していきます。

オープンとメインフレームの“ベストミックス”なシステム構築

 これまでのシステム開発の取組の総和ともいえる、オープン系プラットフォームとメインフレームの“ベストミックス”なシステムの構築には、現行システムからの移行を見越して開発してきた技術が活用されています。グローバルに見ても類似の形式を取っている金融機関は少なく、新システム完成後は、サービスや機能において他のメガバンクに大きく先行できると考えています。私たちはこれからもデジタライゼーションの進展を見据え、前例に囚われない新しい価値の創造に挑んでいきます。

次世代勘定系システムのイメージ

次世代勘定系システムのイメージ