

2022年度 社会的インパクト評価報告
2022年度は成年年齢引き下げや学習指導要領改訂により学校教育に金融教育が本格導入され、また、資産所得倍増プランでは安定的な資産形成の重要性を浸透させていくための金融経済教育の充実を推進することが明記される等、金融教育はますます注目されております。SMBCグループでは、2020年度・2021年度にも金融経済教育における社会的インパクト評価を実施しましたが、2022年度も引き続き評価を行いました。
従来のような講義形式の「聴講集中型セミナー」と、正解のない問いに対して“お金”をテーマにしたグループワーク型プログラムである「アクティブラーニング型セミナー」がもたらす効果の違いについて、全国13校、合計1,600名以上の受講者のアンケート調査と、抽出した参加者へのインタビューに対して、プログラムを受講していない対象群と比較する形で評価を実施しております。
なお、本評価は特定非営利活動法人ソーシャルバリュージャパンが実施しました。
1.評価サマリー
社会的インパクト評価から得られた知見
1. 事業実施による金融リテラシー向上の効果確認
- ●客観的金融リテラシー(金融リテラシー・マップ分野)は、アクティブラーニング型セミナー、聴講集中型セミナー共に、セミナー受講による緩やかな向上が確認され、特に女子学生において高い効果が期待できる。
- ●主観的金融リテラシーは、アクティブラーニング型セミナーの受講により、全ての属性においてスコアが向上しており、当該コースによる高い効果が期待できる。聴講集中型においては、女子学生への効果は確認できなかったが、男子学生においては聴講集中型セミナー受講による主観的金融リテラシー向上の効果が期待できる。
2. アクティブラーニング型実施によるインパクトの確認
- ●資質・能力の育成プロセスは、聴講集中型セミナーによりスコアが緩やかに向上するのに対して、アクティブラーニング型では、「興味・関心」、「批判的思考力」、「外部知見の活用」を中心に大きくスコアが向上しており、アクティブラーニング型セミナー受講による高い効果が期待される。これは、学生が積極的に学び参加するアクティブラーニング型セミナーの受講が、金融経済分野に対する関心喚起や外部知見の活用の重要性を認識する契機となったと考えられ、アクティブラーニング型「PROMISE 金融経済教育セミナー」の目的・手法とその効果に整合性があると考えられる。
3.本評価の主な分析結果
- 1.客観的金融リテラシー及び主観的金融リテラシーのセミナー受講による変化を、受講群の2コース、未受講群全体にて比較
- ●客観的金融リテラシーは、アクティブラーニング型セミナー受講者、聴講集中型セミナー受講者共に、スコアが緩やかな向上傾向にあった。
- ●主観的金融リテラシーは、受講群のスコアが向上傾向にあり、特にアクティブラーニング型のスコアは有意に向上しており、アクティブラーニング型セミナー受講による主観的金融リテラシーへの効果が推察できる。
- 2.客観的金融リテラシー:性別による比較
- ●客観的金融リテラシーは、受講群の各コース全体では大きな変化が見られなかったが、性別で比較した結果、女子学生においては、アクティブラーニング型セミナー受講者では34.0%から36.9%へと向上、聴講集中型セミナー受講者では28.6%から30.6%に向上と、両コースともにセミナー受講によるポジティブな変化が見られた。
- ●未受講群に関しては、男子学生では変化なし、女子学生では減少傾向にあった。
- ●セミナー受講による客観的金融リテラシーは、女子学生において効果が期待できる。
- 3.主観的金融リテラシー:学校属性による比較
- ●主観的金融リテラシーは、アクティブラーニング型を受講した全ての学校属性でポジティブな変化が見られた。聴講集中型では、一般校、専門学科でポジティブな変化が見られた。
- ●専門学科では、アクティブラーニング型、聴講集中型共にポジティブな変化が見られたが、未受講群においても専門学科でスコアが向上していたことから、専門学科における、セミナー受講による客観的金融リテラシーへの効果は本調査の結果のみからは断定できない。
- ●進学校においては、アクティブラーニング型受講による、主観的金融リテラシーへの効果が期待できると言える。
- 4.行動特性・考え方のセミナー受講による変化
- ●行動特性・考え方は、学生が学びに積極的に参加するアクティブラーニング型において、「損失回避行動」、「外部知見の活用」においてポジティブな変化が見られ、投資などの題材を通して望ましい行動特性・考え方を醸造する本コースの目的や手法と、その効果が合致していると推測できる。
※ 横並びバイアス:反転項目(値が低いほど良い傾向にある項目)
4.分析から得られた知見
- 1.客観的金融リテラシーへのインパクト
客観的金融リテラシー(金融リテラシー・マップ分野)は、セミナー受講によりスコアが緩やかに向上し、未受講群のスコアが減少傾向にあった。なお、以下の属性において、PROMISE 金融経済教育セミナーによる客観的金融リテラシー向上への効果が期待できる。
- 2.主観的金融リテラシーへのインパクト
主観的金融リテラシーは、セミナー受講により多くの項目でスコアが向上した。特に、アクティブラーニング型セミナーによる主観的金融リテラシー向上は全ての属性に効果が期待できる。なお、以下の属性において、PROMISE 金融経済教育セミナーによる客観的金融リテラシー向上への効果が期待できる。
- 3.アクティブラーニング型実施によるインパクトの確認
- (1)行動特性・考え方
- ●学生が積極的に学びに参加するアクティブラーニング型において、「損失回避行動」、「外部知見の活用」においてポジティブな変化が見られており、投資など題材を通して望ましい行動特性・考え方を醸造する本コースの目的や手法と、その効果が合致していると推測できる。
- (2)資質・能力の育成プロセス
- ●資質・能力の育成プロセスは、聴講集中型がバランスよく、緩やかにスコアが向上するのに対して、アクティブラーニング型では、「興味・関心」、「批判的思考力」、「外部知見の活用」を中心に高い効果が確認されている。これは、学生が積極的に学び参加するアクティブラーニング型の受講が、金融経済分野に対する関心喚起や外部知見の活用の重要性を認識する契機となったと考えられ、本コースの目的や手法と、その効果が合致していると推測できる。
- ●資質・能力の育成プロセスは、聴講集中型では多くの項目で男子学生の方がスコアの向上率が高いのに対し、アクティブラーニング型では「知識・理解」、「興味・関心」、「自己効力感」において女子学生の方がスコアの向上率が高い。
- ●女子学生に対して、金融経済への関心喚起や自分事化、自己効力感の向上に働きかけるには、アクティブラーニング型の方が効果的であると推察できる。
- (1)行動特性・考え方
- 4.投資行動への関心喚起(「損失回避行動」への影響)
アクティブラーニング型、聴講集中型共に、2021年度評価と同様に、リスクのある投資行為を行うかどうか問うた「損失回避行動」においてのみスコアが大きく減少していた。高校生の多くは「投資にはリスクが含まれる」ことを当然と考えており、セミナーを受講したことで金融経済の中でも、特に投資に関する関心が高まったと考えられる。特に、投資を題材としたアクティブラーニング型を受講した場合、このスコアが大きく変化したことから、セミナー実施が「損失回避行動」が示す、投資行動への関心喚起に大きく影響を及ぼしていると考えられる。
- 5.金融経済教育の重要性に関する意識向上
定性調査の結果から、セミナー受講により、学校において金融経済を学ぶことの重要性について考える高校生が増えていたことから、PROMISE 金融経済教育セミナーが高校生の金融経済教育導入に関する意識向上に効果があったと考えられる。なお、定性分析からは、以下のポジティブな変化が確認された。- ●リスク行動の認識や予防意識の変化
- ●情報収集に関する意識の向上
- ●様々な金融経済に関する情報への関心喚起
- ⇒投資のポジティブな側面・ネガティブな側面
- ⇒税金の納め方や方法
- ⇒年金
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