ステークホルダー・ダイアログ

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2016年度ダイアログ 重点課題(マテリアリティ)における
「取り組むべき項目」の検証(2016年10月19日)

2016年度ダイアログの様子

2016年10月、SMFGは重点課題(マテリアリティ)における「取り組むべき項目」の妥当性を検証し、今後の取組に反映していくため、有識者ダイアログを実施しました。
SMFGは、2014年3月にGRIガイドライン(G4)に基づき、重点課題を「環境」「次世代」「コミュニティ」の3つに定め、それぞれに対応した「取り組むべき項目」を明確化しています。
重点課題の特定から約3年が経過し、2015年9月に国連で採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」の中核をなす「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals: SDGs)」や、国連気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)における「パリ協定」の採択などをはじめ、国際情勢が大きく変化している中で、SMFGが果たすべき役割はどう変化し、その社会の要請にどう取り組むべきかについてご意見をいただきました。

  • 出席者の社名、肩書き等は開催当時のものです。
    • SMFGの重点課題(マテリアリティ)特定プロセスについては、こちらをご参照ください

      SMFGの重点課題

      ダイアログにご参加いただいた有識者

      国連環境計画・金融イニシアチブ(UNEP FI)特別顧問 末吉 竹二郎氏

      国連環境計画・
      金融イニシアチブ(UNEP FI)
      特別顧問
      末吉 竹二郎氏

      CSRアジア 東京事務所 日本代表 赤羽 真紀子氏

      CSRアジア 東京事務所
      日本代表
      赤羽 真紀子氏

      SMFG参加会社

      • 株式会社三井住友フィナンシャルグループ
      • 株式会社三井住友銀行
      • 三井住友ファイナンス&リース株式会社
      • SMBC日興証券株式会社
      • SMBCフレンド証券株式会社
      • 三井住友カード株式会社
      • 株式会社セディナ
      • SMBCコンシューマーファイナンス株式会社
      • 株式会社日本総合研究所
      • 株式会社みなと銀行
      • 株式会社関西アーバン銀行
      • ダイアログの様子
      • ダイアログの様子
      • ダイアログの様子

      SDGs・パリ協定において、SMFGが果たすべき役割

      SMFGは、2014年度からの中期経営計画において「アジア・セントリック」を掲げています。SMFGが成長著しいアジアの新興国をはじめ、グローバルに事業を展開し、リーダーシップを発揮していくためには、現地を含めたグローバルな社会課題を意識する必要があると認識しています。そこで、近年注目される「SDGs」および「パリ協定」に関して、SMFGはどのような役割を果たすべきか、ご意見をうかがいました。

      主なご意見

      末吉氏:

      • SDGsで掲げられた17の目標

        SDGsで掲げられた17の目標

        昨年、国連で採択された「持続可能な開発目標(SDGs)」は、17の目標すべてに取り組もうとするのではなく、業務から見て一番重要なもの、無視したら困るものを選択することが重要。業種の違いに応じてSMFG各社がそれぞれ選択していくというのも、現実的な対応と考える。
      • そもそも、日本人の視点と、海外の視点にはズレがあるのではないかと、考えることが大切。SDGsをはじめとするグローバルなイニシアチブ等は、世界で問題になっていることを認識できる、いわば気づきの窓口で、特に海外ビジネスを展開する上では、そうした視点の違いも検討し、取り組んでいく必要がある。
      • パリ協定で「ゼロ・エミッション(CO2の排出ゼロ)」が採択されたことにより、世界の温暖化対策に対する路線が切り替わった。これにより、全く違う価値観が社会やビジネス、経済に要求されるのだという認識が重要だ。
      • 「Financing Change」、すなわち変革を金融でサポートすることが必要であるが、そのためには「Change Financing」、金融機関が変わる必要があり、SMFGにも変革が求められると考えるべき。そうでなければ誰かがとって代わって、変革は進んでいく。

      赤羽氏:

      • アジアでもCSRの取組が拡大しているが、本業を通じた取組に至っていない企業が多い。日本以外のアジア企業は世界や業界をけん引したいという意識が強いが、SMFGにもアジアのリーダーとして本業を通じた取組を期待したい。
      • SDGsについては、金融の本質である経済活動を軸に考えるべき(目標8.働きがいも経済成長も)。また、投融資のスクリーニングでは、社会・環境への考慮や、貧富の格差是正に向けた金融インクルージョン、リテラシーへの取組などが望まれる。SDGsの目標は17あるので、事業展開地域や将来像を考えて選択してほしい。建設ラッシュの都市部では「グリーンビルディング」(目標11.住み続けられるまちづくりを)、他にも、生物多様性への配慮(目標14.海の豊かさを守ろう、目標15.陸の豊かさも守ろう)などでも力が発揮できるのではないか。
      • 現在、最も意識が高まっている社会課題の1つが人権。取組が不十分である際のビジネスリスクは高く、グローバルリーダーを目指すのであれば、更なる意識の向上が必要。

      国内における将来課題

      少子高齢化問題をはじめ、男女格差、相対的貧困など、日本は世界基準で見ても深刻な課題を抱えています。ダイバーシティ推進など、進捗がみられるようになった分野がある一方で、ますます深刻化している分野もあると認識しています。そこで、国内における課題にどのように取り組むべきか、ご意見をいただきました。

      主なご意見

      赤羽氏:

      • ワーキングマザーの立場からは、女性にしわ寄せが行きがちな「家事時間」への支援を望みたい。働き方に関する企業の施策として、会社にいる間の生産性を上げる、残業時間を減らす、という取組があるが、同時に女性の家事時間を減らせるような働き掛けができれば、社会全体から見てもバランスのとれた労働環境になるのではないか。
      • ダイバーシティやインクルージョンという点では、日本企業には海外拠点にもっと注目してほしい。アジアの支社や支店では、日本人か否かで給与や処遇が異なり、根強い差別や区別が存在すると指摘されている。現地採用の優秀な人材が流出する要因にもなり、会社の競争力を高めるためにも見直すべきと思う。

      末吉氏:

      • 人材活用という視点から、今後はマルチキャリアパスという考え方が重要になると思う。一ヵ所でキャリアを積むことも重要だが、ひとつの仕事を数年かけて経験し、次は別の仕事をするといった変化も必要。そうした働き方も含めた会社の雇用のありかたを考えるべき。
      • 環境分野では生物多様性が非常に重要になると思う。たとえば、海洋水産資源の保全は、ビジネスのみならず私たちの日常生活にも影響を与える問題で、CO2削減にのみ固執するのではなく、グローバルかつ総体的に地球環境をどう保全するのかという視点を持つべき。

      重点課題における「取り組むべき項目」の検証

      これまでの議論やグループ各社の方針・取組などをもとに、重点課題における「取り組むべき項目」について検討しました。

      主なご意見

      末吉氏:

      • SMFGの重点課題(マテリアリティ)

        SMFGの重点課題(マテリアリティ)

        「マテリアリティ」とは、本来、すべてのビジネスの土台となるものであり、株価に影響があるような重要なインパクトを与えるものである。その中で、正しいビジネスを実践するために、ESGがマテリアルになってきたのが現状の流れ。
      • そのような観点から、SMFGの将来的な発展のために何が必須要素であるのか、どう本業の中に組み込んでいくのかを検討すべき段階。難しいことだが、早々に取り組めば、大きな差別化となる。
      • 金融には、社会のお金の流れを仲介する役割がある。「環境」「次世代」「コミュニティ」の3つのテーマごとに「10年後のありたい姿」を掲げているが、まさに、社会のお金を10年後の社会のあるべき姿のために流していくことが、金融機関の責務である。これを真摯に受け止めて、何をすべきかを考えてほしい。
      • マルチキャリアパスの考えが広がると、人材の流出を防ぐためにも、職場としての魅力の創出が重要になる。その際に、会社が本業や社会貢献を通じて社会にどのような影響を与えているかは、働く人にとっても魅力・価値になるのではないか。
      • 社会貢献は、従業員にとってSMFGで働くことの価値を創出する、という視点で実施したほうが、内外により良いインパクトが広がると思う。
      • 社会的弱者を救う施策や、莫大な資金が必要になる産業構造の転換、新しいビジネスの創出など、金融はあらゆるところで必要とされる。そういった場において、SMFGは最も効率的・効果的にビジネスを進めていくのだと強く意識して、是非、日本・アジアのリーディング金融グループになってほしい。

      赤羽氏:

      • アジアの実態に即して3つの重点課題について例を挙げれば、「環境」領域では新興国のローカル銀行等に対し、赤道原則に則った投融資のスクリーニングのノウハウを伝えるといったことが考えられると思う。「コミュニティ」では、ファイナンシャル・インクルージョンという視点。マイクロファイナンスなどの未開拓分野は、リスクも高いが是非取り組んでほしい。その際、「借りたお金は、教育や生産設備など将来への投資に使うべき(飲食等で使い果たさない)」という考え方も浸透していない地域が多いため、「次世代」領域で取り組んでいるような、金融リテラシー教育を行うことも必要だ。
      • また、SMFGの取組の一つひとつは良いと思うが、取り組んだ結果、どのような価値が出せたかという「バリュークリエーション」が、アジアでは注目されている。今後は、このような視点も加えると良いのではないか。

      ご意見を受けて

      ご意見を受けて

      本日は、SMFGがグローバルな金融機関として果たすべき役割として、「金融機関の責務と本質」「本業を通じた取組」「グローバルな視点」を再認識した上で、取組を進めるべきとのご意見をいただきました。
      また、SMFGが10年後を展望したビジョンの一つに掲げる「アジア・セントリック」を実現する上で、認識すべき重要な要素として、「グローバル・リーダーシップ」「バリュークリエーション」「職場としての魅力」なども挙げていただきました。
      特に環境分野では、パリ協定を踏まえて「ゼロ・エミッション」という全く違う価値観が社会やビジネス、経済に要求されることで何が起こるのか、という想像力を働かせ、ビジネス機会の捕捉とリスクの抑制に取り組む必要性を再認識しました。
      また、こうした局面においては、変革を金融でサポートする「Financing Change」が必要で、そのためには「Change Financing」、すなわち金融機関も変わる必要があるとのご期待もいただきました。
      私たちSMFGは、本日いただいたご意見やご期待を踏まえ、CSRの重点課題における「取り組むべき項目」を改めて整理の上、グループ一体となった取組を進めてまいりたいと思います。

      株式会社三井住友フィナンシャルグループ
      企画部グループCSR室 室長
      山岸 誠司