BOOKS 〜環境を考える本〜

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私のおすすめ Eco Book

不思議可愛いダンゴウオ
佐藤 長明 写真・文 河出書房新社

不思議可愛いダンゴウオ

 成魚でわずか2センチほどの海水魚。幼魚は米粒大。まあるい体形で2頭身。赤などのカラフルなものから、そうではないものまでさまざま。約1年で一生を終える。泳ぎが苦手な代わりに、腹びれが変化してできた吸盤を持っているので、愛らしい表情で海藻などにくっついて揺られている姿が見られる-。

 この写真集の中心人物「ダンゴウオ」です。日本では、北海道や本州の沿岸部に生息するそうですが、この写真集のダンゴウオやその周辺の生き物たちは、東日本大震災前の宮城県南三陸町志津川湾で撮影されました。

 佐藤長明さんは、南三陸町生まれの海洋写真家。子どものころからの遊び場だった、思い出の詰まったその海で撮影を行ってきました。独自の地形で生物の多様性を支える志津川湾の「姿」やダンゴウオをはじめとする、海の中の小さな生き物たちの「表情」。それは、「地元の者同士」だからこそ、見せてもらえた姿かもしれません。

 本書の刊行は、東日本大震災直後。ダンゴウオたちのその後が気がかりでしたが、この春に発売された『ダンゴウオ 海の底から見た震災と再生』(写真:鍵井靖章、新潮社)では、岩手県宮古湾で生きる、震災以降のダンゴウオのたくましい姿を見ることができます。

推薦人:MARUZEN&ジュンク堂書店 渋谷店スタッフ 木戸 幸子さん

新刊紹介

漁業と震災
濱田 武士 著 みすず書房

漁業と震災

日本古来の漁労文化・魚食文化を守るには?
漁業経済学者が考えるこれからの日本漁業。

在来作物を受け継ぐ人々 種子は万人のもの
増田 昭子 著 農山漁村文化協会

在来作物を受け継ぐ人々 種子は万人のもの

自家採種をし、在来作物をつくり続ける人々がいる。
全国の農家を訪ねて聞いた話をつづる。

エコロジーをデザインするエコ・フィロソフィの挑戦
山田 利明 河本 英夫 稲垣 諭 編著 春秋社

エコロジーをデザインするエコ・フィロソフィの挑戦

生態系、社会的ネットワーク、身体。
エコ・デザインを鍵として、多角的に環境問題を考察。

温故知新 〜今こそ、古典を〜

スモール イズ ビューティフル
E.F.シューマッハー 著 小島 慶三 酒井 懋 訳 講談社

スモール イズ ビューティフル

英国石炭公社を退職した著者が1973年に発表するや、オイルショックを予言した書として世界中でベストセラーとなった本書が一貫して問うのは、人間を幸福にするシステムとは何か、ということである。その鍵は、大量生産・大量消費のシステムの奴隷とならずに、人間の身の丈にあった科学・技術の使い方をすること(=適正技術)にあると著者は考えた。インド独立の父・ガンジーに倣い、「大量生産(mass production)ではなく、大衆による生産(production by the mass)を」と説くとき、著者が思い描いていたのは、一人ひとりがつくることに参加する社会であった。すべてを巨大資本に委ねずに、自分の身の丈でできることは自分でやろうと提唱し、原発への依存にも警鐘を鳴らしていた著者の「人間は小さい。だからこそ、小さいことは素晴らしい(Man is small, and, therefore, small is beautiful)」という言葉は、40年たった今も輝きを失わない。3.11後を考える上で必読の書である。

推薦人:株式会社日本総合研究所 マネジャー 井上 岳一