BOOKS 〜環境を考える本〜

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私のおすすめ Eco Book

「ほしい未来」は自分の手でつくる
鈴木 菜央 著 講談社

「ほしい未来」は自分の手でつくる

 ソーシャル・デザイン』『スマートグリッド』『パーソナル・ファブリケーション』・・・そういった、「バズワード」という段階を超えて浸透しつつある現代の潮流には、通底する思想あるいは要素があります。それはたとえば「DIY(Do It Yourself)」という姿勢であり、あるいは「分散型」という在り方です。

 そうした関連性は、もちろん偶然の産物ではないはずです。「シュリンクする社会と限りある資源」という状況下において、必然として立ち上がってきたムーブメントであると考えるのが自然でしょう。

 経済成長と大量消費の時代はもう終わり、すでに世界は「いかに持続可能性を追求するか」というフェーズに入りました。しかし、「環境を“守る”」という上から目線ではうまくいかないことは、もうわかっています。

 現状を鑑みれば、「環境問題の解決」が、すなわち「未来をつくる」ことと直結する程度まで、人類は追い込まれていることは明らかです。じゃあ、具体的にはどうすればいいのか? その答えは、今のところありません。でも、そのやり方や取り組みの例は、この本にたくさん載っています。“緩くつながる”“小さく始める”“自分でつくる”。そんな「自律分散型な人」がもっと増えれば、世界は変わるかもしれません。

推薦人:ジュンク堂書店 難波店スタッフ 南端 宏尚さん

新刊紹介

世界がもし100億人になったなら
スティーブン・エモット 著 満園 真木 訳 マガジンハウス

世界がもし100億人になったなら

20世紀は何とか乗り切った。では、21世紀は? 全人類に贈るアップデート版世紀末論。

草魚バスターズ もじゃもじゃ先生、京都大覚寺大沢池を再生する
真板 昭夫 著 飛鳥新社

草魚バスターズ もじゃもじゃ先生、京都大覚寺大沢池を再生する

古代の実からも蓮は咲いた。では、京の古池の蓮はどうだ? もじゃもじゃ先生の風景再生奮戦記。

クマが樹に登るとクマからはじまる森のつながり
小池 伸介 著 東海大学出版会

クマが樹に登るとクマからはじまる森のつながり

生態系は「風が吹けば桶屋が儲かる」世界。では、「クマが樹に登る」と何が起きる? その答えを探しに、森へ。

温故知新 〜今こそ、古典を〜


中谷 宇吉郎 著 岩波書店

雪

 中谷宇吉郎は、1936年に世界で初めて人工雪の実験に成功した雪の研究の第一人者である。

 東京大学で、寺田寅彦の下、最先端の物理学を研究した後、満足な実験器材も揃っていない北海道大学に赴任した著者が研究対象として選んだのが、雪だった。雪だけは豊富にあったことに加え、「道具や器械が揃っていなければ科学的研究が出来ないと思うことそれが科学的精神に反する」という信念があったからだ。そうして研究を始めた著者は、難しい問題を前にしながら、できるところから手をつけ、観察と実験を繰り返し、より本質的な問いに近づいていく。そのたゆみないプロセスには、科学の精神と態度、方法とはこういうものなのか、と目を見開かされる思いがする。

 「雪は天から送られた手紙」という美しい言葉を残した著者は、同時に、「今日我が国において最も緊急なことは、何事をするにも、正しい科学的精神と態度とをもって為すこと」とも述べている。それは急速に軍国化する当時の日本社会に対する、科学者の良心の叫びではなかったか(本書の初版は1938年)。そして、今、我々が必要としているのも、まさにこの「正しい科学的精神と態度」ではなかろうか。

推薦人:株式会社日本総合研究所 マネジャー 井上 岳一