また、著者と藤森照信氏の対談では、農業生産にとって重要な干す作業について、元は軒先で行われていて、やがて量産するために櫓で干すことになっていったという話や、ある地域の港近くにあった櫓が、よりよく干せるよう海からの風を求めて、段々と半島にせり出すようにつくられていった話などが語られる。
食べ物のために、人がせっせと建築土木(しかけ)をつくり、それにつれ景色も変わっていく。ただの小屋や櫓とは思えない、温かな気配がにじみ出てくるのもわかる気がする。こうした場所から、食卓に並ぶ食べ物の味わいが育つのだと気付かされる一冊だ。