BOOKS 〜環境を考える本〜

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私のおすすめ Eco Book

GREEN Neighborhood グリーン ネイバーフッド
吹田 良平 著 繊研新聞社

GREEN Neighborhood グリーン ネイバーフッド

 タイトルにあるネイバーフッド(Neighborhood)とは近所、近隣、ご近所さんのこと。この本でキーワードとなる単語だ。

 ではグリーンネイバーフッドとはどこにあるのだろう。

 答えは、米国オレゴン州のポートランド。

 オレゴン州は都市成長境界線なるものが設けられており、郊外への開発拡大を制限しているため、都市と農地が近いコンパクトシティを実現している。それに加えて、ポートランドは都市部の再開発にも成功しており、環境先進都市として世界中から注目されている。その鍵となるのが民間デベロッパーと市による積極的な協力だった。最も活躍したデベロッパーであるホイト社は「Build the urban neighborhood」=「ネイバーフッドを創出する」というコンセプトを掲げ、この街は自分が帰属する場所であるという意識を市民に根づかせた。その結果、自転車通勤、ストリートテラスでのランチ、リノベーションされたホテルなど、これら1つひとつが重要な要素となってこの街の定番の風景を創造している。今、ポートランドは、都会でも田舎でも郊外でもない、私たちが普段なんとなく憧れている等身大の暮らしを実現できる街なのかもしれない。

推薦人:MARUZEN&ジュンク堂書店 札幌店スタッフ 鍜治 美波さん

新刊紹介

植調雑草大鑑
浅井 元朗 著 全国農村教育協会

植調雑草大鑑

身近な植物群でありながら、知られていない雑草のすべてを明らかにした大図鑑。

モンサント
マリー=モニク・ロバン 著 作品社

モンサント

モンサント社は、遺伝子組み換え種子によって世界の農業を支配するのか。その戦略を暴く。

エネルギー資源のすべてがわかる
矢沢サイエンスオフィス 編著 技術評論社

エネルギー資源のすべてがわかる

エネルギー資源輸入大国の日本。その実情を世界と比較しながら、わかりやすく解説。

温故知新 〜今こそ、古典を〜

方法序説
デカルト 著 岩波書店

方法序説

 デカルト(1596-1650)は、その生涯をかけて真理の探究を続けた哲学者・数学者です。デカルトが生きたのは、聖書の言葉以外の真理は認められず、地動説を唱えたガリレイが宗教裁判にかけられた時代。真理の探究がまさに命がけの行為であった時代に、デカルトは、ひとり探究を続け、真理に至るための方法論を編み出してゆくのです。そして、41歳の年、後に『方法序説』の名で知られることとなる本書を著し、その方法論を世に問いました。

 デカルトは、理性の力を正しく用いれば、真理を明らかにすることができ、真理を知れば、自然を意のままに操ることができると考えました。「自然の主人にして所有者」であるべき人間。デカルトが打ち立てたこの人間観が、自然の収奪、環境破壊の原因を生み出したと、後世で批判されることとなります。

 しかし、本書を読む限り、自然を所有し、支配したいという欲望をデカルトに感じることはありません。あるのは、自然を理解したい、「世界という書物」を読み解き、真理を知りたい、という純粋な欲望、飽くなき探究心だけです。

 デカルトは、「真理」と「真らしさ」とを分けました。せいぜい「真らしさ」しか知らないのに、「真理」を手に入れたと勘違いし、「自然の主人にして所有者」であるかのように振る舞ってしまった。そこに人間の錯誤があったのではないでしょうか。

推薦人:株式会社日本総合研究所 マネジャー 井上 岳一