2013年5月6日、欧州委員会は、グリーンインフラの活用を促進し、自然プロセスの強化が空間計画において体系的に組み込まれることを目指す新しい政策を盛り込んだコミュニケーション文書を発出した。グリーンインフラは、たとえば洪水を予防するためにダムを建設することをやめて、激しい降雨によりあふれ出た水を流し込むためにつくられた自然の湿地帯を指す。大雨の際に、湿地帯で水をスポンジのように吸収させようというのだ。こうした湿地は、CO2の吸収源となるほか、生物多様性の維持にも大きく貢献する。水質浄化、バードウォッチングなどの自然とのふれあいの場をつくることにもなる。
グリーンインフラは、1990年代半ばに米国で生まれた概念だという。土地利用において自然環境を十分に活かす計画手法であり、生態系ネットワークを重視するところに特徴がある。いわば従来の鉄やコンクリートに代表される人工物(グレー)を自然の仕組み(グリーン)で代替しようというのだ。こうしたグリーンインフラは単に「自然を守れ」という運動ではないことを理解する必要がある。何より、グリーンインフラは、従来の建設よりも費用が抑えられることが多く、メンテナンスのための経費も圧倒的に低く抑えることができるといわれているからである。前号でも、国土強靭化の考え方の中に「適応」の視点を盛り込むべきことを述べたが、もう1つ、国土の自然的・社会的条件に合致したグリーンインフラの視点を、ここに盛り込むべきこともぜひ、求めたい。