その挑戦に、惚れた。

「シャカカチBOON BOON PROJECT」がいよいよ本格始動しました。2024年夏の募集開始以降、事務局・外部有識者による一次審査、学生・大学との面談が重ねられ、12月26日の「選考委員会」を経て選ばれた、団体への支援がスタートしています。

このプロジェクトでは、金銭的なサポートだけではなく、プロジェクトに係るさまざまな活動・経験を通した学生の皆さんの成長を重視。世界を舞台に活躍してきたトップアスリートとの交流もそのひとつです。

2025年2月。採択団体のひとつ、北海道教育大学旭川校陸上競技部を訪ねたのは、プロジェクトアンバサダーで400メートルハードル日本記録保持者の為末大さん。プロジェクトの支援に期待をふくらませる部員たちとの交流の様子をレポートします。

採択団体

北海道教育大学
旭川校 陸上競技部

応募
内容
●春秋季のトラック整備 ゴムチップを使用して陸上用スパイク対応に。
●夜間練習の安全性向上 充電式LED照明を導入し、夕方以降の練習を可能に。
●冬季トレーニングの充実 自転車エルゴメーターなどを導入し、
冬季の環境を改善・整備。
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アンバサダー為末大さん、
冬季練習中の
北海道教育大学旭川校を訪ねる

「着地と同時に次の足を踏み切るイメージで!・・・そう!そう!オッケー!」。声をかけられた学生も思わず笑みを浮かべます。

今年2月、為末さんが訪れたのは北海道旭川市。冬はマイナス10度を下回ることも多い厳寒の地。今年は暖冬で雪が少ないというものの、あたりは一面の雪景色です。
北海道教育大学は教員養成課程を中心にした国立大学で、道内に5つあるキャンパスのひとつが旭川校。約1000名の学生が学んでいます。

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「おまちしていました」

爽やかな笑顔で迎えてくれたのは、陸上競技部キャプテンの二階堂翔生(しょうま)さん。為末さんと同じ400メートルハードルの選手で、高校時代は為末さんのYouTubeチャンネルを見て、ハードル練習に汗を流したそう。

「この雪の影響もあってトラックに敷かれたゴムチップの劣化が進みやすいんです。既にところどころのゴムが剥がれ、コンクリートがむき出しに。スパイクでの練習は難しいですね」

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大学を案内しながら、為末さんにグラウンドの状況を説明する二階堂さん。練習環境を改善したいという思いが、プロジェクトへの応募に繋がりました。

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約20名いる陸上競技部部員は、ほぼ全員が教員志望。大学での授業やアルバイトに励むかたわら、限られた時間を陸上競技に充てています。

「練習は主に、旭川市の陸上競技場で行っていますが、市営なので10月中旬から4月中旬までは冬季閉鎖になります。練習したくてもできないもどかしさを感じることは多いですね…。
プロジェクトで実現したいのは、大学のトラックにスパイク練習ができるゴムシートを整備すること。環境が整えば限られた時間で効率よく練習でき、結果にもつながると考えています」

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二階堂さんの言葉に、為末さんも真剣に耳を傾けます。

アスリート対談
「選択から学ぶこと」

応募に至るプロセスも成長の機会としてほしいと考える「シャカカチ BOON BOON PROJECT」。場所を移して行われた対談で、為末さんは「矛盾する選択をする経験」が大切だと話します。

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「スポーツでは相反する選択を迫られることが多いんです。陸上で言うと、たくさん走ったほうがスタミナはつくけど、スピードは落ちるかもしれない。逆に短い距離を走ればスピードが上がるけど、スタミナはつかないかもしれない。正解はありません。『自分にとって何が大事か』を判断する力を養うことが、アスリートとしての成長につながります」

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社会に出て直面する課題にも、ビジネスにおける取り組みにも、正解がないことは少なくありません。それでも皆で議論をして進むべき道を選択する。こうした経験もプロジェクトが提供できる価値だと考えています。

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「資金の使い方について、部員からはさまざまな意見が出ました。その中には皆の負担になっている遠征費に充てるといった意見もありましたが、それだと、この4年間に在籍する部員だけが恩恵を受けることになります。せっかく支援を得られるのなら、後に続く後輩たちや、地域の子どもたちにもメリットがある使い道にしたい。そう考え、トラックにゴムマットを敷設することを考えたんです」

陸上競技部では地域の小中学生にボランティアで競技指導を行っており、グラウンドが整備された際は、子どもたちが参加できる記録測定会の開催も考えているといいます。

対談の様子は動画で!

部員たち大興奮。
五輪メダリストからの直接指導

為末さんはこの日、部の練習も見学しました。最初のうちは部員たちに声を掛ける程度でしたが、徐々に熱の入った本格指導に。為末さんの周りに自然と部員たちの輪ができます。

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「クイズ番組なんかで、マルとバツが書いてある発泡スチロールの壁にバーンって突っ込んでいったりするでしょ。イメージはそういう感じ。ハードルの上に壁があって、体ごとぶつかっていって…」

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身振り手振りを交えた説明に聞き入る学生たち。足の運び方は?着地の位置は?上体の姿勢は?アスリート同士ならではの専門的な視点でのやりとりが続きます。

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自らお手本を見せて練習方法について説明。その様子を学生たちも真剣に見つめます。
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練習に参加した感想を為末さんに聞いてみました。

「(練習に)ストーリーがあるのが良いですね。始めに全身に刺激を入れて、次にメディシングボールやボックスで股関節の動きを確認、そして走る。一貫してやっているので、信じて(練習を)続けて良いと思います」

為末先生の白熱教室!?
部員とのアフタートーク

練習終了後、もっと話が聞きたいという部員たちの声に応えて実施されることになったトークセッション。「走る哲学者」とも言われる為末さん。部員たちから寄せられる質問に、自身の考えを伝えていきます。

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大会前の食事について。練習の組み立てについて。体の軸の制御について。中でも時間をかけて説明したのが、夢と目的と目標についてでした。

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「夢っていうのはこういう風になったらいいなっていうある種の世界観です。オリンピックに出たい。こういう人生を送りたい。自分が向かう大まかな方向を示すもの。それに対して目的は、夢を叶えるためのもう少し具体的な道筋や方針です。抽象的な夢を“行動”へ落とし込むためのステップとも言えます」

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「そして目標は、具体的な数字を伴っている必要があります。今シーズン中に何秒出すとか。今の自分と目標の間にどれだけ差があって、どれだけ近づいたか、『距離』を把握できることが大事。ただ、目標は遠すぎても、近すぎてもだめで、僕の見立てだと、頑張れば5割の確率で成功するぐらいが一番やる気が出る。そして目標と日々の行動をつなぐ。
グラウンドに出る前に、今日は○○を改善する、○回中○回は成功させる、と設定し、練習が終わった後、できたか、できなかったか、原因は何か、を振り返る。この“目標 → 実行 → 振り返り → 修正”のサイクルが成長のカギになります」

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為末さんの話に聞き入る部員たち。

約1時間の“授業”ではたびたび笑いも起こり、アスリート同士の距離もぐっと近づいたよう。

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陸上の一番いいところは昨日の自分より速くなることだと為末さん。

「他のスポーツはどうしても他者との比較に入るけど、自分を探求していくというのが面白いところ。ぜひそれを楽しんでやってもらえたらなと思います」

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Digest Movie ダイジェスト動画

プロジェクトへの感想コメント

菅原美優さん

菅原 美優さん

プロジェクトに応募したことで、高校時代から憧れていた為末さんから直接指導を受けることができ感動しています。支援を受けてこれからどんどん練習環境が整っていくことを想像すると、本当にワクワクします。

野崎虎大郎さん

野崎 虎大郎さん

これから数年にわたってトラックや照明設備などが整っていくので、より密度の濃い練習ができ充実した競技生活を遅れるようになると思います。全日本インカレの舞台でトップレベルの選手たちと戦うことが目標です。

二階堂翔生さん

二階堂 翔生さん

人生で一番と言っていいほど貴重な経験ができました。練習環境の充実は、それができたから成長するというわけではありません。これを土台にして次の一歩を踏み出せるよう、チームとして取り組んでいきたいと思っています。

二階堂翔生さん

-訪問を終えて-
アンバサダー 為末大さん

二階堂翔生さん

大学によって練習環境に大きく差があるのは仕方がないことかもしれません。それでもこの学校の皆さんはいろいろな工夫をしながら各々の目標に挑んでいて、また地域の子供たちに教えるなど、陸上を介したコミュニティができているのが素晴らしいと思いました。プロジェクトの支援が皆さんの記録の向上や、アスリートとしての成長の後押しになれば嬉しく思います。

シャカカチ BOON BOON PROJECT
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